夜の静けさで夜鴉が起き
夜息で夜鴉が静まる
夜息 あなたの為に起き、あなたの為に衣を纏う もうよそう
けれど、朝から晩の間が まるで三つの季節のよう
雪が 岸辺の柳に舞い降りる
見て どこぞの凧かと彼方を眺める
風が 空高い雲を吹き揺らす
あなた 次はいつ会えるのか
待ち望み、紅の夕焼けがゆっくりと沈む地平線に酔う
再度 かすかな羽を取り戻す
あなたのため「鵲橋仙の繊雲」を一曲舞い歌い
あなたと共に酒樽の前で酔う
今日もまた夜雨が風に揺られ巫山に落ちる
誰も気に止めることはない、彼が切った赤い糸
ただ憎らしいのはあの夜鴉の声 この余韻を切り裂き
半生の縁をも葬ってゆく
夜の静けさで夜鴉が起き
夜息で夜鴉が静まる
夜息 一人寂しく手すりにもたれ溜息をつき、夕風に気をもむ 離れて
すでに三つの季節が経つが、まるで半日のことのよう
燕 座敷の前で雨音がつぶやく
花 葉の下にはあの時の凧
線 切れているのか繋がっているのか、まるで私のよう
あなた もう二度と会うことは叶わないのか
遠く離れた身の上を嘆きながらも、遊郭の間で歌い踊る
あなた 黒染めの弦、優雅な青衣
世間の噂は 全てが信じ難いが 夜ごとに同じ月を見つめ
夜ごとに夜鸦は衰えてゆく
長刀を握り、あなたは言っていた「三千の鴉を討ち滅ぼし、
春花秋月(四季折々の美しい外界)を私と共に歩んでくれ」
雨音が乱れ 玉笙は冷たく 街の灯りがまた倒れ
あなたは私に絵巻を与えた
帆 俗世から離れ手を携え長い歳月を ゆっくりと歩む、ゆっくりと遠くへ
我 琴は燃え、弦は切れ この身だけで幾万の山と川を歩む
笑 あの頃の孤独と心の寒さとは似つかぬ この異郷の暖かな夜
急に 風が吹き始め、鴉が鳴けば 自然と流れ落ちるのは誰の涙か
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