時も、地も、はるか遠く離れた
別世界の出来事を語ろう。
帝国歴165年、第14代皇帝ハドリアヌス。
高い知性、優れた決断力、たぐい稀なる感性。
賢帝と呼ぶにふさわしい者。
国はかつてない安定と栄華を誇ったが
彼には“完全なる皇帝”としての
壮絶な孤独があった。
しかし、その孤独から彼を救い出した
1人の美しい若者がいたのだ。
その名をアンティノス。
ハドリアヌスは、この若者を深く愛した。
そして、余生を伴に過ごすことを望み
辺境の地へ向かうと……
神殿都市<アンティノポリス>を建築した。
ところが、ある時を境に
彼はすべてを放棄してしまったのだ。
人前に姿を現すことはなくなり
ついには、その消息を絶った。
時がたち、新たな者が皇帝になると
主を失い荒廃の一途を辿る
神殿都市を調査するよう、命を下した。
その地では、盗賊や、あぶれ者が巣食い
魔物がはいかいするという噂までも広まっていた。
人々は真相を求め、怯えていたのだ。
そして、真実を明らかにすべく
調査隊が結成されると
<アンティノポリス>へと派遣されたのである。