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ブロッサム戦記/Final」(2008/07/04 (金) 23:00:53) の最新版変更点

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『レーダーに複数の敵影反応。ホワイトブロッサムの出現と推測されます』 「奴だ!」 『ラーサ!!』 レーツェルの声に、鉄、ナロード、銀色の三人が応答する。 『こちらはちと離れすぎで時間がかかりそうだな』 『こちらも若干遅くなりそうですー……』 『俺はすぐにつく……や、ついた。二人がつくまでプリで周囲を掃除してる。好きに暴れてな!」 「ラーサ、先行して交戦開始する。銀ちゃん、周囲は任せた!」 「任せろ。レーさんにゃペンギン一匹だって近づかせない」 銀色の位置を把握すると同時に機体をブロッサムへ向ける。過剰とも言えるほどに操作系統を自分用にチューンナップされたプリストルO/Dが、望む通りにブロッサムへ肉薄する。 ブロッサムがレーツェルの駆るプリストルへと砲身を向けた時には既に跳躍し、背後をとっていた。 「遅いっ!」 渾身のスピアを突き出し、ブロッサムを串刺しにする。即座に引き抜きダッシュを繰り返し、集まってきた白マニモの総攻撃を回避する。同時にレーツェルに近い位置にいた白マニモ数匹にライフル弾が立て続けに着弾した。銀色の狙撃だろう。 レーツェルはマシンガンでダメージを与えつつ、ブロッサムの死角を取り続ける。 その圧倒的な被弾数の差から、はた目に見れば、チューンナップしてから散々対人戦で鍛えたレーツェルにとって、さほど苦になる戦いでもないかのように見えたかもしれない。 「短期決戦と行きたい所なんだが……」 「二人がつくまで死なない事が最優先だからな」 銀色が短く言う。レーツェルに迫っていたガロウをライフル弾が貫く。 「さんきゅっと!」 言いながらスピアを突き付ける。 ガヅッと鈍い音がしてスピアが固定される。そのまま背後に張りつきマシンガンを至近距離から連射する。 『白マニモが集まってきています』 「間に合う」 O/Dの危険信号とほぼ同時に銀色が言う。レーツェルに迫っていた白マニモが、次々とライフル弾に貫かれていく。 「ふっ!」 白マニモが全滅し出来た退路へと即座にダッシュする。数瞬遅れてレーツェルのいた位置にボムが落下していた。 「零距離なら、と思ったんだが。びくともしないな……」 マシンガンで地道に牽制しながらレーツェルが言う。飛び交うボムやエレキガンを時に余裕で、時に紙一重で躱し続けてはいるが、戦況は有利とは言い難い。相手はこちらの攻撃をうけても平然としているのに対し、こちらは一撃で命取りとなるのだ。 もう何度目になるか、スピアを突き刺し、マシンガンの零距離掃射を行なう。 「!?」 変に気が付いた時には既に遅かった。今まで張り付かれればボムによる迎撃を行なっていたブロッサムが、ライフルの射程ぎりぎりという遠距離から狙撃していた銀色にエレキガンの照準を合わせたのだ。 「な―――!?」 瞬時にバックダッシュで距離をとった銀色は驚愕の声を上げた。目視では霞んでしまうほどの距離、遠距離狙撃用のライフルでさえ射程外となるその空間を、ブロッサムの放ったエレキガンが一直線に迫ってきた。 「射程負けだと!?……うぐっ!」 距離による過信があった銀色は、若干、反応が遅れてしまう。 超高速で連射されるエレキガンにはさすがにライフルほどの集弾性は無く、プリストルSは撃墜されるには至らなかったが、HDがズタボロに撃ち抜かれていた。 「銀ちゃ―――ぬぉ!?」 レーツェルが銀色に気を取られた瞬間、プリストルがバランスを崩した。ブロッサムが跳躍、旋回してプリストルO/Dを振り払ったのだ。ブロッサムはそのままレーツェルをエレキガンの射線にとらえる。 「ちぃ!」 ギリギリで態勢を立て直し初弾を回避する。が、連射式の二連装エレキガンは、執拗にレーツェルを追う。このままでは――― (つかまる……!) レーツェルの脳裏に先の大敗の記憶が浮かぶ。 「くっそ!」 (ここまでかっ) 銀色の声が聞こえ、レーツェル本人も被撃墜を覚悟した直後、高空からグレネード弾の雨が降り注ぐ。 連発して起こる爆風にさすがのブロッサムも耐え切れずに怯み、今まさにレーツェルを捕らえたエレキガンは、致命傷となる前に連射を中断した。 「一旦離れてろ!」 立ち直ろうとしたブロッサムに、新たに強化開発したAgーGxA01に乗り換えた銀色がブーストを全開にしてビームブレードをたたき込み、もう一度怯ませた。 「すまん、助かった!」 「応っ」 再びグレネード弾の雨を降らせながら遠方から答えたのは、ケンタクロスと融合する形で強化されたシャッテンドラッツェを駆る鉄だった。 重力の影響をうけるグレネード弾特有の弾道を利用した、長距離砲撃である。標的をロックオンせずに着弾点を推測して撃つため、命中させるには相応の技術を必要とする事は言うまでもない。 その砲撃をレーダーの範囲ぎりぎり、ブロッサムのエレキガンの射程さえ上回る長距離から瞬時に放った鉄の技術力の高さは、特筆する必要もなく理解出来るだろう。 「悪い、また油断した……!」 銀色が苦々しく言う。その彼は今、鉄の放つグレネード弾の弾幕を利用しつつ、ブロッサムを翻弄していた。 もはや、彼のなかに油断など――― (微塵も無い!) マシンガンで牽制、ビームブレードによる追撃を回避と織り交ぜ、グレネードの弾幕へと誘い込む。 今までの彼に足りなかった物、敵の攻撃を回避し続けられる空地のスピードとそのバランス。それが、Ag-GxAへとフレーム喚装した01にはあった。 基板となるポーンジャーは、比較的安価で装甲が高く、積載量も多いため、小型機の設計時には多用される機体だが、パワータイプのCRであるため、その速度は、決して遅くはないものの現存するCRから見ても『高速』と呼ぶには及ばない。 だが、今の、幾度となく対人戦を繰り返した銀色には、それだけの速度があれば十分過ぎるほどだった。 この場面だけを見れば、銀色がブロッサムをからかっているかのようにさえ思えたかもしれない。それほどまでに、銀色は余裕を持って翻弄し続け、時には弾幕へ誘い込むために機体を停止させたりもしている。 ブロッサムが銀色に翻弄されている隙に態勢を立て直したレーツェルがマシンガンを掃射しながら銀色のフォローに入る。 確実に圧していた。このまま行けば確実に勝てていただろう。 「ぬぅ!?」 弾幕により戦況を掌握していた鉄が唸った。 「鉄っちゃん!?」 ブロッサムから距離を取りながら、鉄の姿を見たレーツェルが悲鳴に近い声を上げた。 鉄の駆るシャッテンドラッツェを側面から容赦無く攻撃したのは、二匹目のブロッサムだったのだ。 「まだまだぁ!」 ケンタクロスと融合する事で得たスピードでどうにか致命傷を避けた鉄が唸る。 二匹目を完全に無視、一匹目にグレネード弾幕を浴びせる。当然、鉄に照準を合わせた二匹目を、メカジェッターに乗り換えた銀色のジェットアタックと、レーツェルのスピアが貫く。 「てめぇの相手は俺達だ!」 「銀ちゃん、交互に行くぞ!」 銀色が怒鳴り、レーツェルが鋭く指示を出す。 レーツェルがスピアを突き刺し、マシンガンを掃射しつつ距離を取った瞬間、銀色がジェットアタックをたたき込む。その銀色がマシンガンを掃射しつつ距離を取れば、レーツェルがスピアを突き刺す。 二人の完全な連携は、ブロッサムに反撃の隙を与えない。激しい攻撃を繰り返すため、エネルギー切れが早くなるのだが、今は気に等していられなかった。 二人が二匹目を引き付けているうちに、鉄が多少なりダメージが重なっている一匹目を先に落とそうという作戦だ。事前に決めていたわけではない。瞬時に、三人は言葉もなく互いの動きからこの作戦を決めたのだ。 「む……」 中距離で一匹目と射撃戦をしていた鉄が、判断し行動に移すのは、二人が気付くよりはやかった。 「ぬぅぅぅん!」 一気にダッシュして距離を詰め、両腕でガッシリとブロッサムを掴み、その巨体をエレキガンの銃口に押し当てながらグレネードを零距離で放射。 一匹目が、なかなか攻撃のあたらない鉄よりも、二匹目を足止めしている二人を狙おうとしたのだ。鉄は身を呈し、それを阻止した。 「鉄っちゃん、無理だ!」 レーツェルが声を上げる。如何に鉄の駆る重装甲といえど、そんな無茶が罷り通るはずがない。 「レーさん!」 エレキガンの砲身を真正面に捉えた銀色が言った。それだけで、覚悟は決まった。 「応っ!」 答えて、銀色と対側、ブロッサムの背後に回り込む。 「行くぞ!」 銀色が吠え、最大出力でジェットアタックを繰り出す。真正面からの突進を、エレキガンで迎撃するブロッサム。 だが、銀色はエレキガンの直撃を受けながら、勢いを緩める気配はなかった。 「づぁらぁぁぁぁ!」 否。止まらないのではなく、止まれないのだ。 わざわざ迎撃をする必要さえない。放っておけば自身の出力に耐え切れずに四散するだろう。最大出力とはつまり、そういう事なのだ。 ガギギギギギッ!! 甲高い音を響かせ、銀色のメカジェッターがブロッサムに食らい付いた。 自身さえ圧し潰しかねない出力に、ブロッサムが後方へと押される。 「そこだっ!」 その方向。プリストルの全エネルギーをバーニアに回して爆発的な貫通力を得たスピアが、ブロッサムに突き刺さる。 「ぬおぉぉぉぉ!」 深く唸り、プリストルをさらに直進させるべくバーニアを吹かす。 前方から押され、じわじわと後方へ圧しさげられるブロッサム。 そして、さがればさがるほど、逆のベクトルを持ったレーツェルのスピアが深く、深く突き刺さる。 スピアは既に柄まで埋まり、ブロッサムは前後からの強力な圧力により、体が宙に浮いている。 「ぁぁぁぁぁぁ!」 「ぉぉぉぉぉぉ!」 二人の怒号が重なり、スピアは完全にブロッサムの体内に埋まり、プリストルの腕さえも入り込む。 そして、 ―――ピキッ 乾いた音がなり、直後にブロッサムが爆散した。 スピアが、ブロッサムのコアを貫いたのだ。 二機のCRはそのまま爆風に呑まれ、レーツェルのプリストルO/Dはスピアと右腕が消し飛び、右半身はほぼ大破。銀色のメカジェッターは四散こそしなかったものの、緊急転送装置により送還された。 「て、鉄っちゃん……!」 レーツェルが呻くように言う。 「01……たの、む」 『ラーサ』 爆風の衝撃で、視点さえ定まらない二人だったが、休んでいる暇はない。 01の補助によるセミオート操作で鉄の救助に向かう銀色。 「鉄さ…も、もう」 「ぬう…すまん!」 呂律の回らない舌で鉄に呼掛け、それに答えた鉄は両腕を放しエレキガンに弾き飛ばされる形で距離をとる。 「もうひと…ふんばり…だな」 前面装甲の焼き付いたブロッサムを見ながら銀色は言う。 今、まともに戦えるのは自分だけなのだ。 マシンガンを掃射する。が、着弾したのは地面だった。01が補助動作により弾道修正をしてくれたが、もはや銀色にはマニュアルでロックオンする余力さえ無かった。 ブロッサムはそんな銀色を無視すると、銀色同様ふらつく頭でいつ機能停止してもおかしくないプリストルO/Dを動かし、銀色を助けようとマシンガンを構えて這いずるように近づいていたレーツェルへとエレキガンを放った。 「ちぃっ…」 「レーさんっ!」 「くそっ」 鉄がシャッテンドラッツェを盾にしレーツェルを庇う。しかし、限界なのは彼も同じだ。 初弾がかすめたプリストルO/Dはその場で膝を折り、追撃を受けとめたシャッテンドラッツェも吹き飛ばされ倒れた。 二人から注意を逸らそうとビームブレードを振るった銀色だったが、自らの判断ミスに気付くのが遅すぎた。 ブロッサムが鎮座した二人への攻撃を止め、ボムで銀色を迎撃したのだ。 「ごふっ」 打ち上げられ、そのまま重力により叩きつけられる。 先程のダメージからさえ持ち直していない銀色は、この衝撃に耐えきれなかった。 01はまだ戦えるだろう。だが、銀色の両手はもう、操縦桿に届いていない。 ブロッサムが振り向き、銀色にエレキガンを向ける。 「―――ビンゴッ!」 その瞬間、銀色は猟奇的でさえある笑みを浮かべ、 「ふっ」 レーツェルは当然だと言わんばかりにほそく笑み、 「うむ」 鉄は満足気に頷き、 「「「落とせぇぇぇ!」」」 三人の叫びに答えるかのように、 「うおぉぉりゃあぁぁぁぁ!!」 気合一閃。真紅が舞い、ブロッサムが真一文字に引き裂かれ、爆散した。 数秒の沈黙。 爆風の中から、バイキングアクスを振りぬいたままの姿勢のゲイルスナイプが現われる。 「すみませぬ、遅くなりましたー!」 ナロードがゲイルごと土下座しながら言う。 ガガガガガ… 「いた、痛いよ銀。俺はホワイトでもブロッサムでもないよ。マシンガン撃たないでくれよ」 「うっせ……ば………黙……回……なお……い……」 ※うっせーこの糞馬鹿野郎、黙って108回産まれ直して来いこのタコ 「いや、本気で申し訳ない……」 うなだれるナロードに、レーツェルが苦笑する。 「ふっ……そうだな。今日の晩飯はデゴグルメフルコースと行くか。勿論ナロ君の奢りで」 悪戯っぽく言う。 「ぶふっ」 「息子よ、諦めろ」 怯んだナロードに、鉄が止めを刺した。 「むー……。当然奢らせて頂きますが……お手柔らかに」 「「「無理だな」」」 声を揃えて死刑宣告する三人に、ナロードは力なく崩折れたのだった。

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