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 砂漠において水源は訪れるもの共通の休憩点だ。そこでは同じく砂漠を行くものたちと出会いがあり、交流があり、協力があり、別れがある。
 そんな中、極稀にだが砂の上にシートを敷いて露天を構える、貫頭衣を纏った謎の太っ……ふくよかな男と出くわすことがある。
 男はターバンで顔を隠しているためにその表情を見て取ることはできないが、唯一露出している瞳は吸い込まれるような深さと優しさの色が秘められており、それが常に何かを思案しているようにどこか遠くへ向けられている。
 貫頭衣の胸元には大きな茶色のネズミ型をした刺繍が施されているため、砂漠に詳しい者からは「ネズミ印」と呼ばれているらしい。
 この「ネズミ印」だが、適当なオアシスにこれまた適当な時間と、何もかもが不規則に現れては前述の通り露天を広げ、スリッパから宝石までこれまた規則性のないものを商品として取り扱っているようだ。
 彼の扱っている商品の主たるものは、使用用途もわからないようなマジックアイテムであることが多い。砂漠を行くにあたって、水筒やら食料を扱えばそれなりの儲けになるだろうに、彼がそれらを扱うことは滅多にないうえに、扱っていたとしてもそれは何らかの効果を秘めたものだったりするから困りどころである。
 結婚直前のカップルが彼と遭遇すると、頼んでもいないのに結婚指輪に相当する品物がそそっと店先に並べられるらしい。
 また、取り扱っている商品の値段も高いものは高く、安いものは安いと極端なため、そもそも儲けようという考えがないようだ。
 そんな意味不明な彼なのだが、総じて女性には甘い傾向にあるようであり、砂漠で女性が迷っていると高確率で、しかもオアシスとは全く関係のない場所であっても、突如現れる事が多々あるという。
 彼の目的はまったく不明であり、単純に趣味であるという者もいれば、いや英雄の登場を待っているのだという者もいるほどであり、文字通り神のみぞ知るというものであろう。
 しかし正体不明、所在不明、目的不明と不明尽くしの彼だからこそもつ独特の神秘性が、砂漠を訪れる者達に「会えるかもしれない」という期待と夢を持たせ、砂漠という苛酷な環境を行く糧としているのかも知れない。