554話

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554話 - (2008/02/01 (金) 00:13:04) のソース

*第554話:騎士達の計略
放送が流れ、そして知った。 
仲間として一日を過ごし、そして自分達を見捨て裏切った男の死を。 
「……ゼルも、死んだのか」 
ふう、と息を吐く。 
悲しいという気持ちはあまりなく、むしろざまあみろという笑いを抑えるので精一杯。 
じゃあ今のため息は何なんだと言えば、人の死を喜べるようになった自分への驚きと呆れだ。 

周囲を見る。 
四度目の放送となれば覚悟やら耐性やらがついてしまうのだろうか、泣き出す者は予想より少なく、黙り込む者の方が多かった。 
そんな、数少ない泣いている人間――ターニアの傍らに、サイファーの姿があった。 
舌を打ちながら、小声で何か囁いている。 
もしかしたら慰めているのかもしれないが、遠目で見る限りでは少女を脅しているチンピラそのもの。 
見た目と態度で損をするタイプ、という奴だ。 

「サイファー! あんた、さっきから何やってんの!? 
 ターニアのことそんな泣かしてー!」 
「はあ!? うるせえよ、部外者は黙ってろ!」 
「何よ部外者って!」 

……この調子なら、ポーションの効果が発揮される日も遠くないだろう。 
どうせなら、そのまま殴り合いになって憎み合って自滅してくれればいい、とさえ思う。 
だが、世の中そんなに上手くいかないこともわかっている。 
ヘンリーとエリアが仲裁に入り、ターニアが目をこすりながら話の内容を漏らしたことで、口げんかは終わり。 
何でも、放送で呼ばれた彼女の兄とサイファーが一時期行動を共にして、そのときのことを話していたらしい。 
リュック達はもちろん、スコールまでもが似合わない行動に驚いたようだったが、ともかく彼女が頭を下げたことで一応丸く収まった。 
一応、というのはサイファーの機嫌以外、という意味でもあるし、僕にとってはつまらない結果だったから、でもある。 
みんなに背を向けて、パンを齧り始めたサイファーを見やり、僕はもう一度ため息をついた。 

さあ、いつまでもこんな茶番に付き合っていたってしょうがない。 
さっさと次の世界への旅の扉を見つけ、サラマンダーや毒を上手く利用してできるだけ多くの人間を葬り去る。 
それが僕のすべきことだ。 
……だから、ターニアに話しかけているエリアの姿は、できるだけ見ないようにしよう。 
もう戻れない道を歩んでいるというのに、彼女が生きているという、それだけで決心が鈍ってしまう。 
余計なものが視界に映らないように目を閉じて、最初は会話のシミュレートからだ。 
他の連中よりも早く旅の扉の位置を把握したいし、できれば罠なり何なりを仕込んでおきたいが、 
この状況で単独行動を申し出たとして、はいそうですか行ってらっしゃいで済ませてくれるとは思えない。 
上手く言葉を選び、それらしい理由をつけなければ、疑念を抱かれてしまうだろう。 
そこまで行かなくても、引き止められたり、誰かしらが一緒についてこようとするかもしれない。 
話しかける相手は集団のまとめ役であるヘンリーでいいとして、彼を納得させ、自分の意見を支持してくれるように仕向ける必要がある。 
しかし、謀略というのか行動の計算というのか、こういうのはどうにも苦手だ。 
ギルダーや他の二人ならこんな言い訳の一つや二つ簡単に考え付くんだろうな、と愚痴がこぼれそうになる。 
それでもどうにか文面が浮かんできたところで、誰かがヘンリーに話しかけるのが見えた。 

「旅の扉を探しに行ってくる。悪いが、あんた達はマッシュを見ていてくれ」 
僕が考えていたようなのと同じ文面を、その男――スコールは言った。 
たくさん持っているザックの一つを投げ渡し、返答も聞かずに歩き出す。 
「お、おい! 一人で大丈夫なのか?」 
「問題ない。こいつとGFがあれば大抵の敵は対処できる。 
 サイファーやサックスみたいに身体のどこかを怪我しているわけでもないしな」 
引きとめようとするヘンリーに、スコールは一振りの剣を見せた。 
奇妙な柄を持つ青い剣。バッツの持っていた剣だ。 
一体いつの間に交換していたのか、バッツの手元には見事な装飾の施された、しかし戦場には不釣合いなハープがある。 

「それに、あんたもわかっているはずだ。 
 待ち伏せを避けるために早急に旅の扉を探さないといけないことも、 
 怪我人を守るために無駄な人手は割けないってことも」 
スコールの言葉に、ヘンリーは俯く。 
沈黙は、肯定を意味しているのだろう。 
「あんたの荷物のうち、俺のもの以外は返しておく。 
 敵に奪われることを防ぐために、他の荷物はサイファーに預ける。 
 無事であれば十分置きに、問題が起きたなら即座に、この変な草で連絡を入れる。 
 何か問題はあるか?」 
ある。十分すぎるぐらいにある。 
だが、僕の口からそれを言うことはできない。 
苛立ち、というより殺意が沸き立っている僕の心中を知らないヘンリーは、首を縦に振った。 
「わかった。……気をつけろよ」 

それからスコールはサイファーに何事かを話し、いくつかのザックを手渡していた。 
話の内容は聞こえなかったが、そんなことはどうでもいい。 
スコール=レオンハート。 
ゼルが言っていた通りむかつくぐらい冷静で的確、だから、自覚もないまま僕の邪魔をする。 
それで腕も立つとなれば、目障りなんてものじゃない。 
こういうことになるならどれがスコールのザックなのか確認してからポーションを混ぜてやればよかったと、遠ざかっていく黒い影を見て、少しだけ後悔した。 
でも、仕方が無い。過ぎたことは過ぎたことだ。 
考えよう。これからのことを。邪魔者を消す手段を。 
全てを終わらせて、もう一度みんなに会うために。 

慰めなんて俺の柄じゃねえ。 
だが、イザの野郎が妹を心配する姿は、イヤってほど見てきた。 
知らないうちにくたばった――誰に殺されたにしろ、肝心な時に助太刀をしてやれなかったって負い目もあった。 
だから、せめてもの手向けのつもりで、泣き崩れるターニアにあいつのことを話した。 
……なのに誰がいじめてるってんだ? ああ? 
これだから慰めなんて柄じゃねえんだよ! 

リュックがペコペコ頭を下げたって、苛立ちはどうにも収まらない。 
メシでも食えば少しは気が紛れるかと思い、自分のザックを引き寄せた。 
他の連中に背を向けて、パンを取り出し、齧る。 
ついでに水も出そうかとザックをひっくり返したとき、不意に、それが転がりおちた。 

中身の入ったポーションの瓶。 
俺はこんなモン持っていなかったし、イザやロザリーの荷物にもポーションは無かった。 
他に紛れ込むとしたらスコールとマッシュの荷物しかないが…… 
これだけ怪我人がいて、ポーションを持っているなら、とっくに使っているはずだ。 
荷物が多すぎて忘れてるって可能性も、この状況じゃ考え難い。 
有象無象の武器ではない。回復手段が限られている状況下での治療薬だ。 
あのチキン――だからお前も知らねえうちにくたばってんじゃねえよ、それだからチキン野郎止まりなんだよ――ならともかく、 
スコールの野郎なら自分や仲間の荷物は把握しているだろう。 
ならばどうして、こんなものがここにある? 

胸に生じたわだかまり、しかし疑問を解く手がかりは無い。 
他の連中の目は、スコールとヘンリーに注がれていて、このポーションに気づいた奴はいない。 
仕方なく、俺はクソ怪しい瓶を自分の袋の中に戻した。 
スコールの野郎が俺の肩を叩いたのは、それから数分後だった。 

「村を探ってくる。その間、荷物を預かってくれ」 
第一声はそれで、俺が何かを言う前に、野郎は矢継ぎ早にまくし立てる 
「スタングレネードはエリアとターニアへ渡していい。配分はあんたに任せる。 
 変な兜はソロ、重い剣はリュックに渡してくれ。デザイン的に、揃いの武具のようだからな。 
 ちょこ笛は、どうせこの世界じゃただの呼子笛だ。誰に渡してもいい。 
 だが、他の武器はマッシュの物だからな。誰かが欲しがっても、勝手に渡すなよ。 
 特に、"村にいた赤い髪の男"には、絶対にな」 
――いつもの俺だったら、『テメエ何様だ!?』と掴み掛かっていただろう。 
だが、急に声を潜めた、最後のセンテンスが気にかかった。 
普通に考えれば赤髪はビビを殺したサラマンダーのことだが、武器を渡すわけも、ここに来てほしがるはずもない。 
こいつ特有の笑えねえ冗談だとしても、何もひそひそ話す必要はない。 
となれば、こいつが意図している相手は、サラマンダーではなく――ここにいる、もう一人の赤髪であるサックス。 
わざわざ回りくどい言い方をしなければならない理由となると、ひとつしか思いつかない。 
「まさか、この魔女の"騎士"が"裏切る"とでも思ってんのかよ?」 
いけ好かない奴だが、頭は回るのがスコールって野郎だ。 
俺の言いたいことぐらい汲み取れるだろう。 
「ああ。キンパツニキヲツケロってメモもあったしな。 
 そういえばカインも金髪だったな……本当に金髪には気をつけた方がいいらしい」 
……やっぱマジでいけ好かねえな。コイツは。 
小さく舌を打つと、スコールは囁くような小声で、言葉を続けた。 
「あんたも、"村で同じ髪色の男と話す"なよ? "疑いたくなる"からな」 

それで、わかった。 
スコールの態度も、回りくどい言い方をする理由も、怪しいポーションの出所もだ。 

「疑ってるなら、正体暴けばいいだろうが」 
俺の言葉に、スコールは肩をすくめてみせる。 
「迂闊に敵を増やすのはごめんだな。証拠もないし、それに、あんたの仲間の恨みを買いたくない」 
仲間……エリアのことか。 
確かに、エリアがサックスに対して強い信頼を抱いているのは傍目から見るだけでも明らかだ。 
逆に俺らが村の連中に信用されているかといえば、微妙なライン。 
常識で考えて、自分らを襲った男の知人と聞いて警戒する奴はいても、好感を抱く奴はいない。 
まあ、ヘンリーは事情ありって奴だし、ソロってのは常識を超えたお人よしのようだがな。 
ともかく、こいつの言うとおり、今すぐサックスを追い詰めるのは困難な話だ。 
それはそれで色々むかつくものがあったので、俺は負け惜しみのように吐き捨てた。 
「フン……テメエもベラベラ喋るようになったもんだ」 
「あんたほど変わっちゃいないさ。 
 それより、ここのことは頼んだぞ」 
スコールは涼しい顔でそう言うと、大量のザックを俺の足元に放り投げ、村の方へ歩いていった。 

さて。 
まず考えなきゃあいけないのは、あのクソ怪しいポーションをどうするか、だ。 
飲んで確かめる気はないが、十中八九、中身は経口摂取で効果を発揮する系統の毒物だろう。 
捨てるというのが間違いなく一番安全で確実だが、見た目が"ポーション"というのがネック。 
怪我人がいる傍で回復薬を捨てるって行為は要らねえ疑いを招くだろうし、そうなりゃ相手の思う壺にハマりかねない。 
何も知らないフリをして、サックスに飲むように勧めるって手もあるが…… 
狡猾な奴なら、中身を呷るフリをして、毒を盛られた被害者を装うぐらいやってみせる。 
そこまで筋金入りの策士でなくとも、余程のバカじゃない限り自分用の解毒剤はキープしているはずだ。 
だからといって長々と持っていれば、当然、間違って飲む奴が出てくる確率が上がる。 
その時に毒殺者として仕立て上げられるのは、"最初の持ち主"の俺か、でなければスコールかマッシュになるってわけだ。 
すかした奴も気に入らねえが、ナイトを名乗りながらこんな姑息な手を使うホネのない奴はもっと気にくわねえ。 

俺は苛立ちながら、サックスに視線を移した。 
俯いて、何か考え事をしている。心なしか険しい表情をしているようだ。 
これだけの人数を裏切って始末する算段となれば、旅の扉で移動する時に事を起こし、そのまま新しい舞台へ逃げ切るのが一番。 
だが、そのための第一手をスコールに邪魔された。 
だから他の案か、でなければスコールを始末する方法でも考えている……そんなところか。 
別にスコールの野郎はどうでもいいが、こんなふざけた手を使った奴はぶちのめす。 
ちょっとでもシッポを見せてみろ、即座に掴んでケリつけてやる。 
そんなことを考えていると、不意に、場違いな音が流れた。 

――ポロン……ポロン、ポロン……ポロロロロン 

竪琴を爪弾く音。誰かと思ったら、バッツの野郎だった。 
最初は確かめるように、やがて流麗な手つきで耳慣れない曲を演奏し始める。 

「うわ~。すごいねバッツ、楽器の演奏なんてできるんだ。 
 ていうか、どうしたの、その竪琴?」 
能天気なリュックの問いかけに、バッツは苦笑しながら答えた。 
「これ、元々俺やレナが使ってた奴なんだけど、なぜかスコールが持っててさ。 
 あいつのだっていう剣と交換したんだ」 
それにしたって、何も弾く必要はないだろうがよ。 
敵が来たらどうするか、とか考えてないのか? 
そんな俺の疑問に答えるかのごとく、バッツは言葉を続ける。 

「ソロもマッシュもまだ起きないからさ。 
 早く目覚めるように、癒しの力を持つ歌を弾いてみようかって」 
「へぇー。能力を上げる歌なら知ってるけど、そんな歌もあるんだ」 
「指がつるから、それほど長くは弾いていられないんだけどな」 

……確かに、曲を聴いていると、右足の痛みが薄れる気がする。 
だが、それでも目立つことは確かだし、歓迎せざる客がきたらどうすんだか。 
釈然としない気持ちはあったが、サックスの表情を見て、言うのは止めた。 
考えてみりゃあ、必ず敵がやってくるとは限らないし、サックスが今まで何をやっていたかなんて誰も知らない。 
俺らの前に、他の集団に襲い掛かったり、何人か取り逃したりしている可能性もあるわけだ。 
誰か来たらどうするんだと言わんばかりの迷惑そうな表情がそれを物語っている。 
そもそも、俺の頭ン中のケルベロス、それにヘンリーのピアスがある限り、不意打ちは防げるわけだ。 
武器も大量にあるし、現時点でリュック、バッツ、ヘンリーの三人は戦闘に加われる。 
サックスの動向にさえ気を配っていれば、"万が一"が起こっても対処できるだろう。 
後は意識のない二人がいつ起きるかと、赤髪野郎の出方次第だな。 

俺らの思惑を知ってか知らずか、やがてソロが小さく身じろぎした。 
最初に気づいたのはリュックで、バッツの肩をぱんぱんと叩いた後、ソロの身体を揺さぶりに行く。 
その騒ぎ方が、どっかの誰かに似ている気がして、俺は舌打ちした。 
こんな感傷なんざ柄じゃない、と思いながら。 

【ヘンリー  所持品:アラームピアス(対人) リフレクトリング バリアントナイフ 銀のフォーク 
 キラーボウ、グレートソード、デスペナルティ、ナイフ 
 第一行動方針:スコールを待つ 
 基本行動方針:ゲームを壊す(ゲームに乗る奴は倒す)】 
【ターニア(血への恐怖を若干克服。完治はしていない) 
 所持品:スタングレネード×4 ちょこザイナ&ちょこソナー 
 第一行動方針:泣く】 
【エリア(体力消耗、下半身を動かしづらい) 
 所持品:スパス ひそひ草 スタングレネード×2 
 第一行動方針:ターニアを慰める 
 基本行動方針:仲間と一緒に行動】 
【バッツ(HP3/5 左足負傷、魔力0、アビリティ:うたう) 
 所持品:アポロンのハープ アイスブランド うさぎのしっぽ 静寂の玉 ティナの魔石(崩壊寸前) 
 第一行動方針:体力の歌でみんなを回復 
 基本行動方針:『みんな』で生き残る、誰も死なせない】 
【サックス (HP2/3、微度の毒状態、左肩負傷) 
 所持品:水鏡の盾 スノーマフラー ビーナスゴスペル+マテリア(スピード)  ねこの手ラケット 拡声器 
 第一行動方針:体調と体力の回復 
 第二行動方針:タイミングを待ってウルの村にいるメンバーを殺す(エリアも?) 
 最終行動方針:優勝して、現実を無かった事にする】 
【サイファー(右足軽傷) 
 所持品:破邪の剣、G.F.ケルベロス(召喚不能) 白マテリア 正宗 天使のレオタード ケフカのメモ、猛毒入りポーション 
 マッシュの支給品袋(ナイトオブタマネギ(レベル3) モップ(FF7) バーバラの首輪) 
 レオの支給品袋(アルテマソード 鉄の盾 果物ナイフ 君主の聖衣 鍛冶セット 光の鎧) 
 スコールの支給品袋(吹雪の剣、ガイアの剣、ビームライフル、セイブ・ザ・クイーン(FF8) 
 貴族の服、オリハルコン(FF3)、炎のリング)】 
 第一行動方針:ポーションの始末を考えつつサックスを監視 
 第二行動方針:協力者を探す/ロザリーと合流 
 基本行動方針:マーダーの撃破(セフィロス、アリーナ優先) 
 最終行動方針:ゲームからの脱出】 
【リュック(パラディン) 
 所持品:メタルキングの剣 ロトの盾 刃の鎧 クリスタルの小手 ドレスフィア(パラディン) 
 チキンナイフ マジカルスカート ロトの剣 
 第一行動方針:怪我人を看病しつつスコールを待つ 
 基本行動方針:テリーとリュックの仲間(ユウナ優先)を探す 
 最終行動方針:アルティミシアを倒す】 
【ソロ(HP3/5 魔力微量) 
 所持品:ラミアスの剣(天空の剣) 天空の盾 さざなみの剣 
 ジ・アベンジャー(爪) 水のリング 天空の兜 
 第一行動方針:状況把握 
 基本行動方針:PKK含むこれ以上の殺人を防ぐ+仲間を探す 
※但し、真剣勝負が必要になる局面が来た場合の事は覚悟しつつあり】 
【マッシュ(重症、右腕欠損、昏睡) 所持品:なし】 
 第一行動方針:- 
 第二行動方針:アーヴァインと緑髪(緑のバンダナ)の男、及びエドガーを探す 
 第三行動方針:ゲームを止める】 
【現在位置:ウルの村西の草原(ブオーンが丘そば)】 
ツールボックス

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