*第205話:破滅への序章 一 テリーがレックスのあとを追いかけようとするのを、クラウドが止めた。 「何するんだよ!」 「死にたいのか!今、ばらばらになったら、ここにいるみんな、どうなるかわからないぞ!」 「じゃあ…ほっとくのかよ!レックスを…!」 「今はこうするしかない!」 「……」 テリーは黙った。そして、クラウドの背中に手をあてて、しがみついた。 「…お姉ちゃん、ほんとにもう…?」 その答えはわかりきっている。 いったいどこに、路上で、息もせず居眠りをする女がいよう? クラウドの肩が震えるのをみながら、テリーは、悲しげに視線を落として、闇にむかって叫んだ。 「レックスーーー!戻って来るんだ…はやく、戻って…!」 ややあって、静かに、しかし力強く、クラウドは武器を構えた。 いる…間違いなく、強力な何者かが、この近くに潜んでいるのだ。 レックスは今、姿の見えない敵を探しているのだろう。 あちこちから、何かを壊すような音が聞こえる。 助けに行きたいが、この場を離れることはできない。 「おい」 サイファーがふいに、クラウドに話しかけた。 「…あまり喋らない方がいい」 「ふん、問題ねえ。それよりも、あの、ちびっこいトンベリの野郎が、さっきからずっと同じところをみてるぜ」 「…?」 「モンスターってのは、俺たち人間より、こういうことは得意だろうな」 「なるほど…」 「それとな…これはあんたじゃなくて、おまえだ」 サイファーが、呆然と佇立しているパウロに向かっていった。 パウロはうつろな目で、サイファーを見た。 「なに、ぼーっとしてんだよ」 サイファーはそういうと、せき込んで、よろよろと剣を持った。 二 セフィロスは、前方の一匹のモンスターを忌々しげに覗き見た。 どうも、気づかれているらしい。やはりモンスターというのは、人間に比べ格段に察しがよい。 あの少年はあさっての方向で暴れている。勝手に体力を消耗してくれればいい。 クジャは今、別の場にいた。 人数が多いのを知って、少しずつ減らしていこうと提案すると、クジャは了解して、その方が有利だからと別行動になったのだ。 よって、ここにいるのは一人彼のみである。 まともに戦えるのは、せいぜい三人か四人。それだけならば、一人でもなんとかなろうか。 しかし、セフィロスが今突入しないのはわけがある。 今、クラウドの顔には表情がない。 それは、激しい怒りの裏返しでもある。 下手につっこめば、使ってくるかもしれない…かつて、自分にトドメをさしたあの技を。 そのうえ、クラウドのもつ武器は、持ち主の生命力に呼応するあの究極の武器である。 さらに、クラウドはさほどの傷を負っていない。 もし、あの技をくらえば、とても無事ではいられないだろう。 そういった打算から、セフィロスは慎重に期を窺った。 そしてこのときに初めて、今この場にいないクジャのことを思った。 あのナルシストな男の、独りよがりな語りを道中ずっと聞いており、正直なところうんざりしていたのだが、 戦闘に関しては、恐らく自分と同等の力をもっている数少ない者であり、ある意味で信用のできる男である。 セフィロスは改めて、この状況をみた。 なるほど、クジャの動きを待つのもよい。だが、それは躊躇われた。 「上から…いくか」 セフィロスはみつからぬよう、闇に紛れ、台を伝い屋根の上へと飛んだ。 「なんだ?あいつは…」 城から、一人の男が飛び出ている。 ちょうどいい、あの男の叫び声をもって、再び混乱を生じさせるとしよう。 だが、それはセフィロス自身も予想できなかったことにより、遮られた。 三 大きな雷鳴を、クジャは聞いた。 「ふふふ…とりあえず、うまくいったみたいだね」 クジャは城下の混乱を愉快そうにみると、歩きながら、誰に向かってということもなく、語りだした。 「皮肉なものだねぇ…みているかい?ジタン。僕は今、この大地に生をうけてたっているよ…。 ふふ…これがいったい何を意味するのか、僕にもわからない。 ただ、今の僕にあるのは、破滅への欲求、それだけさ。 ジタン、このゲームに君がいるのは知っているんだよ…その仲間もね。 是非もう一度、君に会いたいよ…そして、この手で息の根を止めるんだ。 あはは、それはきっと、とても愉快だろうね…。 君の悲鳴を考えただけでぞくぞくするよ…ふふふ…それだけさ、生きる欲求なんて、いまさら僕にあるはずもないんだから。 目の前にいる敵を蹴散らしていくだけ…ごみを始末するようにね」 クジャの視界に、サイファーにベホマをかけるレックスの姿が見える。 「ああ、死に損ないが、汚い地面には這い蹲って、それでもまだ生きようとしている! 生への執着の、なんと醜いことだろう!…ふふ、それは、僕には言えた義理ではないかもしれないね。 でも、だからこそわかる、彼らの絶望が…癒しの光も決して彼には届かないだろう。 届く前に、この僕がその明かりを遮ってしまうんだから! 無理矢理に立ち上がったところで、しょせんは風前の灯火、僕がふっと息を吹くだけで消え去ってしまう、脆い存在なのさ…」 クジャはふと、視線を落とした。そして、今までとは少し調子の違う声で、語り始めた。 「セフィロスは癪に障る男だけれど、きっと僕と同類なんだろうね。 いや、わかるさ…彼は僕と同じなんだ。行き場を失った、絶望そのもの。 …でも、戦闘の好みが僕とはだいぶ違うみたいだね。 少しずつ、じわじわと殺していく…それも気分のいい最高のアトラクションの一つであるのに違いはないさ。 でも、あの女を一瞬で切り捨ててしまうなんて…。なぜもっといたぶらないんだろう? あの男の、この光景、この醜さ、見ているだけで心が躍るようじゃないか。 僕は今、華やかな血の惨劇がみたいんだ…慌て惑い、恐怖に絶望の色で顔を染めた、 虫けらのようなやつらが、何の存在意義も見いだせず、ただただ滅び行く様を」 クジャは歩みをとめて、空を見た。レックスの声が聞こえる。 「くく…正義の戦士様はお怒りのようだ…それにしても、あの声の醜いことだよ。 …さあ、頃合いかな。これには、セフィロスも驚くだろうね。彼には悪いけれど、今の僕はこんなまどろっこしいことはしたくないんだ。 僕はすぐに、今すぐに聞きたいんだ、彼らの悲鳴を…きっと醜い声を出すんだろう。醜悪な姿を晒して」 「…そういえば、彼は、あのとんがり頭の彼のことを、彼は随分警視していたね。 ことによると、僕とジタンのような間柄なのかもしれない。 ふふ、だとしたら、彼が慎重になるのも仕方ないのかもね。 でも、このままじゃらちがあかないよ。…ふふ、近づいてきたよ、おばかなネズミが一匹、自分から舞い込んできたよ…。 第一幕、破滅への序章の始まりだ…!」 四 「くそおおおおおお!!」 レックスは叫んだ。力の限り、叫んだ。 そして、視界にはいるものすべてを壊し、標的を探す。 「どこだ!?どこにいる!隠れてないででてこい!」 ルビスの剣を振りかざして、叫ぶ。 テリーの警告も、耳に届かない。 レックスはひたすら突き進んだ。 そして、アリアハンのある一角で、見た。 光を。 光? レックスは何だろうと思った。 だが、その考えは次の瞬間、止まった。 リュカは聞いた。 大地の劈くような響きを。 その中に微かな、掻き消されそうな叫び声を。 リュカは見た。 ライフストリームのような、大きな光を。 その中にいる、息子を。 光は、やがて炎になって、また、新しい光が次々と生まれ、それが爆発した。 爆発の連鎖は、向こう側から断続的に起こり、家という家は音をたてて崩れ落ち、ついには自分の後ろでも、爆発を始めた。 城が激しい爆撃を受けるのを、リュカは惚けてみていた。 次の瞬間、我に返って叫んだ。息子の名を、炎に向かって。 【リュカ 所持品:竹槍 お鍋(蓋付き) ポケットティッシュ×4 デスペナルティ スナイパーCRの残骸 第一行動方針:レックスを探す 基本行動方針:家族、及び仲間になってくれそうな人を探し、守る】 【現在位置:アリアハン城外】 【レックス(フレアスター直撃) 所持品:ルビスの剣 オーガシールド 第一行動方針:襲撃者(セフィロス)を倒す 第二行動方針:家族を探す 最終行動方針:ゲームから脱出する】 【現在位置:アリアハン城の手前】 【サイファー(瀕死) 所持品:破邪の剣 G.F.ケルベロス(召喚不能) 第一行動方針:事態処理 第二行動方針:ロザリーの手助け 最終行動方針:ゲームからの脱出】 【クラウド 所持品:おしゃれなスーツ アルテマウェポン 黒マテリア(メテオ) 第一行動方針:襲撃者に備える 基本行動方針:仲間を見つけ、守る 最終行動方針:ゲームから生きて抜ける】 【パウロ 所持品:破壊の剣(使う気0) 第一行動方針:? 第二行動方針:ロランを探す】 【ロザリー 所持品:不明 第一行動方針:不明 第二行動方針:ピサロを探す 最終行動方針:ゲームからの脱出】 【テリー(DQM) 所持品:突撃ラッパ 行動方針:襲撃者に備える 【トンベリ(トンヌラ) 所持品:包丁(FF4) スナイパーアイ 第一行動方針:不明 第二行動方針:わたぼうを探す 最終行動方針:ゲームから脱出する】 【現在位置:アリアハン城下町、南の入り口】 【セフィロス 所持品:村正 第一行動方針:城下町に居る参加者を皆殺しに 最終行動方針:参加者を倒して最後にクジャと決闘】 【現在位置:アリアハン中央あたり】 【クジャ 所持品:ブラスターガン、毒針弾、神経弾、 第一行動方針:皆殺し 最終行動方針:最後まで生き残る】 【現在位置:アリアハン城近く】