*第283話:敵ではないがお前の態度が気に入らない 「ひでぇな…」 城下町にたどり着いたアルガスは思わず呟いてしまう。 美しかった城も街も瓦礫の山と化し、あちこちに大穴が開いている。 もう戦いが終わって何時間も経っているのだろうが、未だに炎が燻っており、煙が立ち上っている。 彼自身、戦場となって廃墟と化した街を見たこともあるが、それ以上のひどい壊れっぷりだ。 これがたった数人の参加者によって行われたことなのだからゾッとする。 門の近くには放置された2人の死体。浜辺で見た女と、塔の上から見つけた、黒いドレスを纏っていた女だ。 両方とも目が閉じており、並べられていることから、誰かが動かしたのだろう。 近くにアイテムは落ちていないようなので、無視することにした。 ももんじゃのしっぽがある方向を指し示す。 放送で旅の扉が発表されたとき、手で弄んでいたこのアクセサリが突然動き始めたからもしやと思った。 間違いない、旅の扉を指し示す道具らしい。 井戸から青い光が漏れているのが分かる。もちろん、引き出された視力のおかげで分かるようになっているのだが。 そして井戸とは逆側の、この城下町では不自然なほど原型をとどめている建物から赤い光が漏れているのも見える。 その建物の扉が開いた。アルガスは光の剣を構える。 扉から出てきた人物を見て、アルガスは剣の構えを解く。 「何だ、誰かと思えばいつぞやのあまちゃんじゃないか。こんなところで何やってるんだ? まさか、旅の扉の位置が分からないのか?教えてやってもいいぜ。情報量もいただくがな」 アルガスはまるでカモを見つけたと言わんばかりに、笑みを浮かべて話しかける。 「君は確か…アルガス」 「知り合いか?」 知り合いとの再開にしては少々おかしな空気が流れているため、一応尋ねてみるサイファー。 イザはほんの一瞬だけ気まずそうな表情を浮かべ、答える。 「昨日向こうの塔で会ったんだ。色々と僕らに情報をくれた。…セフィロスのことも、ね」 アルガスの忠告に気を付けていれば少なくとも一人は犠牲者を減らすことができた。 あの行動の理念は正しかったかもしれないが、よい結果は生まなかった。 やはりそう簡単には割り切ることは出来ないのだろう。 「旅の扉の位置は分かっているよ。少し休んでいただけさ」 「チッ、どうせなら迷っていてくれたらよかったんだがな…。 まあいい、ところで脱出のメドは立ったか?」 「いや、まだだ。今、ギードさんが首輪について調べているところさ」 「ギード?あぁ、あのトロそうな亀か。やっと首輪を調べる段階に入れたんだな」 一瞬侮蔑の念が感じられたのは気のせいだろう。イザが話を続ける。 「僕たちはここを襲ってきた銀髪の二人組、…君が教えてくれたあの二人なんだが、 彼らを倒そうと考えている。でも、彼らは強い。それで…」 まだ話の途中だというのに、アルガスが割り込む。 「それで俺に付いてこいと言いたいわけか?断る。全く勝算の無い戦いに首を突っ込むような真似はしたくないんでね。 あまちゃんにチンピラに嬢ちゃんか。返り討ちに遭うのがオチだろうよ。 おっと、亀にガキにトカゲがいるのか。どっちにしろあまり変わらねぇか。 ま、たとえ勝算があろうとも、お前らと一緒に馴れ合うのはご免だがな。 単に脱出しようとしているらしいから、協力してやっているだけさ。 もし脱出に失敗するようなら、俺はお前らも、他の奴らも、殺してでも生き延びるつもりだぜ?」 不快発言がマシンガンのように乱射される。サイファーもさすがに黙って聞いてはいられない。 「テメェ、さっきから聞いてりゃ言いたい放題言ってくれるじゃねぇか…」 「サイファー!」 が、サイファーをたしなめるべくイザが叫ぶ。 「気持ちは分かるが、少し辛抱してくれ。ここで争っても何の利もない」 アルガスに向き直り、話を始める。 「来てくれないのならそれでもいい。強制するつもりは無いからね。 ならばせめて、君が知っていることがあるなら詳しく教えて欲しい。僕らが今までに見た、役立ちそうなことも話そう」 「情報交換か。いいぜ。ここでの戦いは見てなかったしな」 ザックから名簿とインク、羽ペンを取り出そうとする。 が、名簿が引っかかったのか、いくつかのアイテムをその場に落としてしまう。 「チッ」 舌打ちをしながら、アルガスがアイテムを拾い集める。 たまたまロザリーが近くに転がってきたクラン・スピネルを手に取る。 「あら、これは…?」 「おい、それも俺のものだ。返してもらうぞ」 ロザリーはこの宝石に見覚えがあった。世界結界全集をめくったとき、 最高レベルの結界として紹介されていたものの材料にこの宝石があった。 もっとも、魔力も知識も必要なため、彼女自身がそのような大層なものを作れないのだが、 「何だ?それが欲しいのか。別に何かと交換してくれるんなら、やってもいいが?」 「分かりました。これと交換でよろしいでしょうか?」 脱出に一歩近づくかもしれないと感じた。故にその交渉に応じた。 取りだしたのは趣味の良い腕時計。いつでも正確に時間を知ることが出来る。 無くて困るということはないが、使い方によっては非常に有効な支給品だ。 アルガスは即座に取引に応じた。 そして十数分後、両者はアリアハンで起きた戦いの詳細やゲームに乗っている人間についての詳細などの情報交換を終えた。 アルガスの名簿にはデータ集のように色々と情報が書き込まれている。 「次に会う時には脱出できることを期待してるぜ。あまちゃん同士、みんなで仲良く頑張ってくれよ。じゃあな」 そういうと、アルガスは建物の角へ消えていった。 もうすでに放送から1時間程度の時間が経っている。 「そろそろ私達も出発しますか?サイファーさん、おけがはだいじょうぶですか?」 「まだ少し痛むが、問題ねぇ。むしろ、これ以上ここに留まって、また襲われたら困るだろ。 あのアルガスとかいうヤツとも当分は会いたくないしな。あいつは一緒にいなくて正解だぜ」 「でも、この先彼と協力することもあるかもしれない」 「ああ、分かってるって。…さっさと行こうぜ」 「次の世界はどのような場所なのでしょうか…」 「さぁ、天国でないことは確かだろうぜ」 (ターニア、次の世界で会えるだろうか…?) 様々なことを考えながら、3人は旅の扉へと入っていった。 【イザ(HP3/4程度) 所持品:ルビスの剣、エクスカリパー、マサムネブレード 基本行動方針:同志を集め、ゲームを脱出・ターニアを探す】 【サイファー(右足軽傷) 所持品:破邪の剣、破壊の剣 G.F.ケルベロス(召喚不能) 白マテリア 正宗 天使のレオタード 基本行動方針:ロザリーの手助け 最終行動方針:ゲームからの脱出】 【ロザリー 所持品:世界結界全集、守りのルビー、力のルビー、破壊の鏡、クラン・スピネル 基本行動方針:ピサロを探す 最終行動方針:ゲームからの脱出】 【第一行動方針(共通):セフィロスとクジャを倒す 第二行動方針(共通):ゲームからの脱出】 【以上、新フィールドへ】 *アルガスから、昼の湖周辺にいたマーダーについてはある程度聞いています。 (セフィロス、クジャ、ギルダー、デールなど) 「開けたものは、閉めておかないとな」 3人が次の世界へ旅立った直後、アルガスが井戸に備え付けの蓋をした。 明るくなってきたのもあって、目薬草で強化された視力を以てしても旅の扉の青い光はほとんど見えない。 まわりの瓦礫のせいで、注意しておかないとここに井戸があることすら気付かなくなっている。 つまり、今アリアハンの旅の扉の位置を把握しているのはアルガス1人というわけである。 「さて、死体の位置も大体聞けたことだし、アイテム回収といくか」 【アルガス(視覚聴覚向上、旅の扉をくぐるまで) 所持品:カヌー(縮小中)、兵士の剣、皆殺しの剣、光の剣、ミスリルシールド、パオームのインク 妖精の羽ペン、ももんじゃのしっぽ、聖者の灰、高級腕時計(FF7)、インパスの指輪、他2人分の支給品、武器ではない。 第一行動方針:時間ギリギリまでアイテム回収、また他人から交渉などで有用なアイテムを頂く 最終行動方針:脱出に便乗してもいいから、とにかく生き残る 【現在位置:アリアハン城下町】 *アルガスの殺人嫌悪は意識下でのことです。 旅の扉がある井戸に蓋がされました。 アリアハン戦の詳細をイザ達から聞いています。