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*第321話:いざないの泉にて
放送より1時間45分ほど――
いざないの洞窟、その前で青い水をたたえる泉。
前の二人が扉に消えてから、泉のそばは風と木のざわめきだけが流れている。
静かで穏やかな調和を崩さないままにそこへ近づく人影が1つ。
盲目となった賢者、クリムト。
その足元の水の中に明らかに異質な流れが渦巻いているのを感じていた。
光を失ってより、ゆっくり、ゆっくりと大地を踏みしめ東へ向かった。
その道中、残された四感に加えて次第に気配、とでもいうようなものを
より鋭敏に感じ取れるようになっていくのがわかる。
耳に入る音、肌に触れる空気、土や緑の香り。それらを己の中の知識とかけあわせてゆく。
堅固たる大地、流れる風、命の息吹。姿を見るのではなく形を『感じとる』力。
それはもって生まれた才能の故だろうか、それともたゆまぬ鍛錬と克己の精神の結晶か。
つい先程より後方にある気配は、三度会う血の香りをまとった少女。
どうやら私の後を追ってきたらしい。
彼女のような存在もまた全てと等しく私に与えられている試練、課題なのだろう。
我が未熟な力でどこまでやれるだろうか?
わずかの間背後に意識を向ける。
これより先に続く世界にも険しい困難が待つのは間違いない。
「では、行くか」
簡潔にこの世界に別れを告げ、賢者は静かに次世界へと歩みを進める。
【クリムト(失明) 所持品:力の杖
基本行動方針:誰も殺さない。
最終行動方針:出来る限り多くの者を脱出させる】
【現在位置:新フィールドへ】
「なーーによあいつ!とっくに気付いてたくせにっ!!」
ぼろぼろの身体が悲鳴を上げている。
強靭な意志力でここまで歩いて来たアリーナが、あの嫌味な背中に追いついたのはついさっきである。
すぐにでも叩き殺したいところであったが肉体的にも、そして時間的にも限界は近い。
とりあえず移動を優先して身体を引きずっていく。
旅の扉が放つ青い光に包まれて、
わかってるくせにこちらを気にしないあの賢しげなムカツク奴は行ってしまった。
自分を見下ろしたあのなんともいえない表情をした顔がちらついている。
思い出すだけで心がささくれていくのがわかる。追い払うように大声を出した。
「ほんっっとに!覚えてなさい!後悔させてやるから!!」
はあ、大声出しただけでも疲れる。これも全部あいつのせい!
ようやく泉のふちにたどりつくと、崩れるように座り込む。
とりあえず水、と旅の扉のせいでやたら青い水面に手を伸ばし、一休み。
「よしっ。絶対に生き残ってやるから!」
決意も新たに、いくらか元気も湧いてくる。身体の痛みだって、今は感じられない!
おもいっきり地面を蹴って、アリーナも旅の扉へ飛び込んでいった。
【アリーナ2(分身) (HP 1/6程度) 所持品:E皆伝の証 E悪魔の尻尾
第一行動方針:出会う人の隙を突いて殺す、ただしアリーナは殺さない
最終行動方針:勝利する 】
【現在位置:新フィールドへ】