428話

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*第428話:巨山動く 眼下にあるのは広い湖と、その真ん中辺りにぽっかりと浮かぶ、島。 もし情報を得ていなければ、それが魔物だとは思わなかっただろう。 そのことを知れただけでも収穫は収穫なのだが、スミスは、面白くなかった。 この距離では相手の深い思考は読み取れないが、集中すれば単純な感情くらいなら感じ取れる。 それは不安と恐怖。 あのずぶ濡れの男の心に染み込んだ恐怖や、直接この目で確かめたことから、この巨大な魔物は十中八九随分な実力者のはずだ。 なのにこいつときたら、ただ怯え、隠れ、おそらくこの世界に来てから一歩も動かずにやり過ごそうとしている。 ゲームの参加者である義務を、半ば放棄しているのだ。 これがその辺にいる町娘なら、まだ腹も立たないが、 ひとたびその力を解き放てば幾人もの参加者を葬り、ゲームの成功に一役も二役も買えるくせに!!!! (いっそのことけしかけてやろうか? でもカインとの約束もあるしなぁ…) カインとの約束は、サスーン城周辺とカズズの間にいる人間の状況の調査。 参加者がいても接触はしない。隠密行動を心がける。 (でもなぁ、ぶっちゃけバレなきゃいい訳だし、もしバレたとしても…) 二人の利害は今のところ一致している。 カインは優勝を目指し、スミスはゲームの成功を望んでいる。 つまりカインの優勝の為に協力することはやぶさかではないが、別に、優勝するのがカインでなければならない訳でもない。 それはカインだって、承知の上のはずではないか。 カインと組んでいることはなかなか楽しい。 それはドラゴンライダーと竜騎士の相性がばっちりだから、だと言うことだけかもしれないが。 もう少し人数が減ったあとなら、全面的にカインに協力してやってもいいけれど、何分まだ生者は多い。 時には予想を超える混乱を招く必要だってあるはずだ。 いや。 だが。 しかし。 魔物の真上、こちらを認知されることを恐れてかなり距離をとった上空で、スミスは2、3周旋回し、逡巡する。 そして結論は、とりあえずカインへの義理立てを優先させると言うものだった。 まだサスーン城付近までの偵察は行っていない。 今ここで混乱の種をまいた場合、一応の任務であるそれを果たせない可能性も出てくる。 任務を果たせなかったときのカインの冷たい態度は、前の世界で経験済みだ。 (あれは、流石にさ、ちょっと悲しかったし…) とにかくその偵察を終え、帰りがけに寄ってその時どうするのかを決めようと、スミスは森へ向かって降下し始めた。 飛びっぱなしだった翼を休めるためだ。 そして、もう少しで森に届くと言うその瞬間。速度を落とすために翼を大きく広げた瞬間。一発の銃声が響いた。 うかつだった。 あまりに魔物に集中力を注ぎすぎていた。 翼に走る激しい痛み、落下の際に打った、身を蝕む鈍い痛みが、己の不注意を責める。 森の影に何者かがいるかなんて、考えてなければならなかったのに。 その何者かが、今確かに自分に向かって距離を詰めている。 止めを刺す気だ。 翼の負傷は、飛べなくなるほどではないが、速度を奪い、飛ぶ距離を奪うだろう。 地上を行けばこの巨体だ。森の木々が進路の邪魔をする。 闇雲に逃げても、逃げ切ることは出来ない。 だがスミスは、この襲撃者とまともに殺し合う気はなかった。 何のためらいもなく攻撃を仕掛ける、まさにあの湖の魔物とは対極のこの参加者をただ殺すなどもっての他だ。 かといって、まだゲームも中盤のこの時期に、大人しく殺させるのも気が引ける。 ならば。 この状況を最大限に利用させてもらうまで。 ニ、三本の木々のむこうに、奴の姿を確認した。 思ったより優男だ。貴族風の、大人しそうな男。 だが、とても嬉しそうに自分に得物を向けてくる。 スミスには馴染みのない武器、銃であるが、そこに込められた殺気を感じ取れないわけはなかった。 スミスが行動を起こす前に、男は銃の引き金を引く。 先ほど被弾した翼を前にし、致命傷を避ける。 スミスは男に突進するわけでもなく、森の奥へと逃げるわけでもなく、傷付いた翼をはためかせ、湖へ向かう。 バランスを崩し、何度も水面に叩きつけられそうになりながら、後方から容赦なく銃弾を浴びせかけられながら、 スミスは何とかあの魔物の許へ降り立った。 (う…、わぁ~~~!!!!  何、何なんだ。何だよあれ、バンッ、バンッって言って。魔法?  なんでもいいから俺様に気づくなよぉ~~~。  って、アイテ。  何かくっついた。鼻の辺りだ。むずむずするな。  ちょっと待てよ、俺様寄せ目って苦手なんだよなぁ。  ん~と、これはドラゴンかな? 何でもいいから、さっさとどっか行ってくれよなぁ、もう。  しかも何だコレ? 変な臭い。鉄臭っ!!! 血か? 血なのか? 血を流しているのか?  やめてくれ~!! そんな鼻許で血なんか流されたら、鼻血出たときの気分になるだろ!!!) 負傷して集中力が切れたとはいえ、直接相手に触れればそいつの考えていることの大体はわかる。 こうなればもう引き返せない。 カインには後で何とか言い訳しよう。 もちろん不注意をなじれられるぐらいは覚悟しなければならないだろうが。 (……さっきから黙って聞いてたら、ヒト(?)が怪我してるってのに、随分身勝手なこと並べれくれるじゃないか) 魔物は僅かに体を振るわせた。 多分端から見ればわからないくらい、である。 (そうだよ。僕は心が読めるんだ。ドラゴンライダーだからね。まぁ、あんまり詳しくはわからないけど) 魔物の心はまだ、自分に関わるな、さっさとどこかへ行ってしまえ、と唱えている。 (まあ、そういうなよ。大体は、君の所為なんだから。  君、片目は見えているんだろう? 森の方にいる男が攻撃を仕掛けてるのはわかるよね) しばらくの後、肯定と否定の入り混じった感情が流れてきた。 (そいつは僕を攻撃しているだけだって? 違うね。僕は君の仲間だと勘違いされただけ。魔物だからね。  あいつは本当は、君を倒すためにここに来たんだよ) サスーン城の戦闘を終え、デールは休息の為にこの湖に立ち寄っていた。 すると後にしてきた森から、一匹のドラゴンが飛び立ったではないか。 デールのいた世界は、マスタードラゴンと言う一匹の竜が治めている世界である。 この世界の住人なら多かれ少なかれ『竜』と言う存在を特別視している。 特に旅から旅で様々な魔物とともに多種多様なドラゴンと接してきたリュカとは違い、デールは本物のドラゴンを見たことなどなかった。 初めて出会えたドラゴン。 興奮はそのまま、「壊したい」という衝動に変わった。 ドラゴンは島に不時着した。 この距離では銃撃によって止めを刺すことは不可能だ。 だが、あいにくデールには湖を渡る手段など持っていない。 忌々しい。 せっかくの獲物なのに。 腹立たしさを紛らわせるために、届かぬと知りつつもデスペナルティをニ、三発撃つ。 銃声だけが、湖に響いた。 (ほら、この殺気。君に向けられているだろう?  だからね、君が逃がした緑の帽子の男が、仲間たちに触れ回ったんだよ。  ここに巨大な魔物がいる。危険だ。早く倒してしまうんだ、ってね。  この男は先鋒だよ。あの森の奥から、さらにむこうの森の外から、何人もの人間がここに押し寄せてくる。  しかも、とびっきり強い奴等ばかりがね) 一気に捲し立て、恐怖が臨界点へ向かっていくのがわかる。 あともう少しだ。 今度は魔物にはわからないよう呪文を紡ぐ。 『マヌーサ』 この距離だ。 かからないはずがない。 彼の視界にのみ霧がかかる。 霧の中には、幾人もの敵の姿が見えていることだろう。 恐怖はさらに煽られる。 その霧がかかったのと、デールの放った銃弾が掠ったのとは、ほとんど同時だった。 それは致命傷にはならないが、痒いし、痛いし、何より、ウザイ。 恐怖に怒りが上塗りされたとき、傷の塞がらぬ左目が疼く。 地の底から響きわたる咆哮。 銃声などとは比較にならないほどの震え。 振動に一匹のドラゴンが耐えかね、落下しようと、もはやそんなことに構うわけもない。 いま、島は、巨山は、魔物は、 動いた。 【スミス(変身解除、洗脳状態、右翼負傷、全身打撲、ドラゴンライダー) 所持品:無し  第一行動方針:???  第ニ行動方針:サスーン方面の偵察 終了次第カズスへと戻る  行動方針:カインと組み、ゲームを成功させる】 【現在地:湖(水中)】 【ブオーン(左目失明、マヌーサ、一部火傷) 所持品:くじけぬこころ、魔法のじゅうたん  第一行動方針:怒りに任せ、目の前の男(デール)を倒す 第二行動方針:頑張って生き延びる】 【現在位置:封印の洞窟南の湖の真ん中】 【デール 所持品:マシンガン(残り弾数1/6)、アラームピアス(対人)  ひそひ草、デスペナルティ リフレクトリング 賢者の杖 ロトの盾 G.F.パンデモニウム(召喚不能) ナイフ  第一行動方針:ドラゴンに止めを刺す  基本行動方針:皆殺し(バーバラ[非透明]とヘンリー(一対一の状況で)が最優先)】 【現在地:湖と南の森との境】

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