4話

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*第四話:背徳の響き ギィ…… 重苦しい音とともに、カインは教会の扉を開き、中に入った。 この大陸に堕ち、彼の目に最初に入ったのがここの十字架だ。 彼は、支給武器を確認することも無く、誘われるように扉を開いたのだ。 ゲームに乗るか、あるいは正義を貫くか。それをこの中でゆっくり考えようと思っていた。 中は、閑散としていた。 取り立てて言うほどの特徴も無い。 教会らしく整然と椅子が並んでいる。ただそれだけだ。 ただ、その中に、カインの興味を引くものが、無造作に置かれていた。 「旧約…聖書」 本のタイトルを読み上げる。 そもそも神の概念が無い彼にとっては、この教会自体が異質なものとして捉えられていた。 そして其処にただ置かれた、一冊の分厚い本は、カインを誘惑するような、一層に異質な黒い光を帯びていた。 興味本位で、それを開く。 流れるように文を読み、ふっと溜息をつく。 「神が世界を創造し、人間を創った…?くだらない物語だな」 其処には、彼の興味を引くものはないと思われた。だが。 パラパラとめくり、彼はふと手を止めた。 「カイン…?」 自らの名か。いや、そうではない。 最初の人間、アダムとイブの間の子供の名前らしい。 …だが、気になる。 自分と同じ名を持つ男。 彼は、聖書をゆっくりと読み始めた。 数分後、彼は聖書を置いた。 これは自分へのメッセージか。 自分に、決断しろと言うメッセージか。 自らの為すべき事を暗示するのか。 このくだらない物語によれば、アダムとイブの子、カインは弟アベルを殺した。 人類最初の殺人者という称号を、彼は得たのか。 「俺と、同じ名前を持つ男よ」 …ならば決断しよう、カインよ。 「俺は、カインだ」 彼がゆっくりと支給武器を取り出した時、その思いは完全なものとなった。 『カインの槍』と名づけられたその槍は、不気味なまでに彼の掌に馴染んでいた。 ちょうどそのころ、一人の老人が、教会の前に立っていた。 「どうしてこんなことになったんじゃか…。姫様まで参加しておるわい」 彼の名はブライ。参加者一覧を、しかめっ面で読んでいた。 「もし勇者殿が味方をしてくれるならば殺されることもあるまい…か」 そう言って、少し微笑む。 「まぁ、姫様も十分強いがの」 どうも、さっきからアリーナ姫の顔がちらついて離れない。 この危険なゲームで、無茶をしなければよいのじゃが。 「おおそうじゃ、戦いの前にはまず神に祈りを…」 どうも頭の古いこの老人は、そう呟き、教会の扉をゆっくりと開けた。 何者かが扉に手をかけた瞬間、カインは大きく跳び上がった。 天井に飾られたシャンデリアに、器用につかまる。 少しの音も立てなかったのは、さすがと言うべきだろう。 入ってきたのは、老人だった。 老眼の彼には、シャンデリアにぶら下がる人の姿など見えまい。 それ以前に、彼はその方向など見向きもしなかった。 ただ、神に祈りを捧げるべく、奥の十字架へ向かって歩く。 …あまりに、無防備だな。一瞬で片を付けられそうだ。 老人が真下を通る直前、カインは槍を構えて飛び降りた。 …躊躇などする理由は、ついさっき捨て去ったばかりだ。 勝負は、あっけなかった。 カインは、真上から頭をかち割られうつぶせに倒れた老人の背中に、聖書を乗せた。 「神とやらが存在するのなら、その元に行くがよい」 …俺は行けまい。それを裏切った殺人者だからな。 カインは、老人の支給武器の笛を抜き取り、奥の十字架に投げつけた。 乾いた背徳の音が響くのを聞きながら、彼は教会を後にした。 【カイン 所持武器:ランスオブカイン  行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】 【現在位置:アリアハン教会】 【ブライ 死亡】 【残り 137名】
*第4話:背徳の響き ギィ…… 重苦しい音とともに、カインは教会の扉を開き、中に入った。 この大陸に堕ち、彼の目に最初に入ったのがここの十字架だ。 彼は、支給武器を確認することも無く、誘われるように扉を開いたのだ。 ゲームに乗るか、あるいは正義を貫くか。それをこの中でゆっくり考えようと思っていた。 中は、閑散としていた。 取り立てて言うほどの特徴も無い。 教会らしく整然と椅子が並んでいる。ただそれだけだ。 ただ、その中に、カインの興味を引くものが、無造作に置かれていた。 「旧約…聖書」 本のタイトルを読み上げる。 そもそも神の概念が無い彼にとっては、この教会自体が異質なものとして捉えられていた。 そして其処にただ置かれた、一冊の分厚い本は、カインを誘惑するような、一層に異質な黒い光を帯びていた。 興味本位で、それを開く。 流れるように文を読み、ふっと溜息をつく。 「神が世界を創造し、人間を創った…?くだらない物語だな」 其処には、彼の興味を引くものはないと思われた。だが。 パラパラとめくり、彼はふと手を止めた。 「カイン…?」 自らの名か。いや、そうではない。 最初の人間、アダムとイブの間の子供の名前らしい。 …だが、気になる。 自分と同じ名を持つ男。 彼は、聖書をゆっくりと読み始めた。 数分後、彼は聖書を置いた。 これは自分へのメッセージか。 自分に、決断しろと言うメッセージか。 自らの為すべき事を暗示するのか。 このくだらない物語によれば、アダムとイブの子、カインは弟アベルを殺した。 人類最初の殺人者という称号を、彼は得たのか。 「俺と、同じ名前を持つ男よ」 …ならば決断しよう、カインよ。 「俺は、カインだ」 彼がゆっくりと支給武器を取り出した時、その思いは完全なものとなった。 『カインの槍』と名づけられたその槍は、不気味なまでに彼の掌に馴染んでいた。 ちょうどそのころ、一人の老人が、教会の前に立っていた。 「どうしてこんなことになったんじゃか…。姫様まで参加しておるわい」 彼の名はブライ。参加者一覧を、しかめっ面で読んでいた。 「もし勇者殿が味方をしてくれるならば殺されることもあるまい…か」 そう言って、少し微笑む。 「まぁ、姫様も十分強いがの」 どうも、さっきからアリーナ姫の顔がちらついて離れない。 この危険なゲームで、無茶をしなければよいのじゃが。 「おおそうじゃ、戦いの前にはまず神に祈りを…」 どうも頭の古いこの老人は、そう呟き、教会の扉をゆっくりと開けた。 何者かが扉に手をかけた瞬間、カインは大きく跳び上がった。 天井に飾られたシャンデリアに、器用につかまる。 少しの音も立てなかったのは、さすがと言うべきだろう。 入ってきたのは、老人だった。 老眼の彼には、シャンデリアにぶら下がる人の姿など見えまい。 それ以前に、彼はその方向など見向きもしなかった。 ただ、神に祈りを捧げるべく、奥の十字架へ向かって歩く。 …あまりに、無防備だな。一瞬で片を付けられそうだ。 老人が真下を通る直前、カインは槍を構えて飛び降りた。 …躊躇などする理由は、ついさっき捨て去ったばかりだ。 勝負は、あっけなかった。 カインは、真上から頭をかち割られうつぶせに倒れた老人の背中に、聖書を乗せた。 「神とやらが存在するのなら、その元に行くがよい」 …俺は行けまい。それを裏切った殺人者だからな。 カインは、老人の支給武器の笛を抜き取り、奥の十字架に投げつけた。 乾いた背徳の音が響くのを聞きながら、彼は教会を後にした。 【カイン 所持武器:ランスオブカイン  行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】 【現在位置:アリアハン教会】 【ブライ 死亡】 【残り 137名】

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