11話

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*第11話:魔王の不覚 木の葉の浮いた水たまりが風に煽られて揺れた。 遠くから、森の住人である動物の鳴き声が響いてきて、ピサロの耳を打った。 それに混じって、何者かの足音が近づいてくる。 非常に発達した聴覚で、遠く離れた場所にいる獣の声と参加者であろう者の忍び寄る音を聞き分けていた。 彼は重傷を負い、大木に寄りそって息をひそめていた。 彼らしくもない、大して警戒もせずうかつに開いたザックの中で爆弾が破裂したのだ。 全身が傷つき血にまみれ、美しいはずの銀髪も醜く焼け焦げていた。 魔族の貴公子たる己がそのような様になりはてて良いはずがなく、誰も見ていないこの森のなかで 懸命に平常であることを装っていた。 時おり苦痛の表情をうかべて、悲しい呻き声をあげながら。 自分の振る舞いに痛々しさを感じながら。 ピサロはうつむいたまま足を伸ばし、その先にある水面を蹴った。 立ち止まる足音。 ――人だ ビビはたった今ここに来て、それを見た。 しゃがんで動かなくなった人が木にもたれかかっているところだ。 「生きてるの……?」 うなだれてまったく動かない人の体を見るのは、辛いものだった。 もし、死んでしまっているのなら、弔ってあげないといけない。 ジタンやフライヤたちに、そう教わったのだ。 勇気をもって歩み寄る、そう決めた。 ビビはその焼け焦げてもまだ美しさの損なわれていない不思議な男に近づいた。 近づくにつれて妙な気分にとらわれるようになった。 力にひきつけられるような、呼ばれているような、そんな感覚。 いったいどんな人なんだろう。ビビはもうどうしても知りたくなっていた。 そして、足をとめ、顔を覗きこもうとした、 そのとき、 「わっ」 突然男の手がのびて、ビビの顔を両手ではさんだ。 ぐっと引き寄せられて、顔と顔がぶつかりそうになるくらい接近した。 「は、はなして」 きっと、この人はゲームにのっているんだ、このままだと殺されちゃう。 ビビは手をふりほどこうと、両足をじたばたさせて暴れた。 手や足が男の体にばしばしぶつかるが、まるでびくともしない。ぐいぐい両手で押さえつけられ、 顔がつぶれてしまいそうだ。力じゃ勝てそうにない。 もうこうなったら魔法だ。 ビビはがむしゃらになって炎の魔法の名を呼ぼうとした。 「ファイッ……」 すると、ビビの顔を掴んでいる手から力がぬけた。 「……」 ビビが飛び退き二人は向かいあった。両者とも動かない。 ピサロは、星のようなビビの瞳を何度もまばたきしながらのぞきこんだ。 ビビは、両手を前にだし、荒い息をつきながらピサロの目を見据えている。 ちょっとでも動いたら、魔法を使うよ、と。 両者の間に緊張が走る。ゆっくりと時間が流れる。 ビビが口を開く。 「ボクは戦いたくないよ。なのに、なんでこんなことしなくちゃいけないんだろう……」 悲しいビビの告白だ。 しばらく時間が過ぎた。 木漏れ日がさしこんで、二人の場を照らす。 思い出したかのようにピサロが言葉を口にする。 「人間ではないのか……」 その言葉には自嘲気味の笑いが含まれていた。 「えっ」 「人間ならば迷いもせず殺していたものを……」 ピサロは血を吐いてうなだれた。草の上に赤い粘液がぼたぼたとこぼれ落ちた。 辺りは小さなざわめきやささやきに包まれていた。小鳥のさえずりが聞こえて、森の清らかな空気がながれ 喉かといっていいほどだった。 それと逆にビビはピサロの様子に心を乱され、激しい鼓動が体じゅうを駆け巡っていた。 ――たすけてあげなきゃいけないんじゃ ピサロはビビの心を読みとったかのように呟く。 「くく……、幼子に身を案じられる……。これでも魔王か……」 ビビはもう何も考えずに駆け寄っていた。ピサロの手をとり声をかける。 「だ、だいじょうぶ?」 ピサロはうつむいたままだ。 「ごめん、ボク回復魔法がつかえないんだ……。ダガーかエーコがいればよかったんだけど。  ……でも、なんとかしなくちゃね。ポーションさがしてくるよ!」 「いや、必要ない……」 ピサロはわずかに首をふった 「でもこんなひどいケガじゃ」 「回復魔法は使える」 「えっ」 ビビはきょとんとしてピサロを見つめた。 「ただ、先程から魔力を高めているんだが、どうも上手くいかん。この大陸で魔力の行使を妨害する動きが  あるようだ…」 ビビは話をじっと聞いていた。 「魔法がつかいにくい場所ってこと?」 ピサロはうなずいた。 「ああ、回復するまで時間がかかりそうだ……お前は、一緒に行きたければ、ここでしばらく待っていろ」 【ピサロ 所持品:スプラッシャー、魔石バハムート(召喚可) 爆弾(爆発後消滅)  行動方針:ある程度回復するまで待機 【ビビ   所持品:?    行動方針:ピサロと共にいる 【現在位置:レーベ東の森中央付近】

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