89話

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*第89話:理由 「無残ね…」 赤いマントに身を包んだ女性、アイラは、吐き捨てるように言った。 スタートからずっと歩いてきて、見つけたのは二つの死体だけ。 金髪の少女、そしてこの男。 …おそらく殺したのは同一犯だろう。 切り口の鋭さは違えど、おそらくは同じ剣で斬られていた。 男の開いたままの瞼を閉じようとして身を屈めたとき、彼女は気づいた。 「…?」 死体の傍に、剣が無造作に捨ててある。 切れ味はよさそうだけど。 …少女や男の道具を全て持ち去った人間が、どうしてあの剣だけを置いて行った? アイラはそれを拾い上げた。 「…重い…」 これまで持ったどの剣よりも、重かった。 しかし、アイラはそれをまた捨てるような事はしなかった。 武器らしい武器は一つも持っていなかったから、それを捨てるのは少し恐ろしかったのだ。 アイラは再び立ち上がった。 次に行くべきところは、わかっている。 「こっちね…?」 『ああ、多分そうだ』 アイラの問いに、彼女のザックの中から何かが答えた。 『緑の髪で…ティナという娘…』 「わかってるわ」 支給品の中にあった変な石が、アイラに語りかけているのだ。 おそらく精霊のアミュレットと同じようなものだろうと彼女は思っていた。 …だから、石を調べているときに語り掛けて来たのも驚きはしなかったし、 娘を探したいという話も承諾したのだろう。 その娘が倒れていた二人を殺したという事は、既に感づいている。 だがアイラは、躊躇うことなく魔石の言うことに従い、彼女を探している。 理由なんて単純だった。 ――殺しを止めたかったから。 【アイラ 所持品:魔石マディン(召喚不可、但し意識に語りかけることが出来る) 炎のリング ロトの剣(リチャードから回収)  行動方針:ティナを探し、更正させる 【現在位置:ほこら近くの山岳地帯】

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