97話

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*第97話:叶わぬ願い マチュアはスミスを探し、城内の探索を続けていた。緊張から額には冷や汗が浮かんでいる。 …万が一襲われても、城内には逃げ場が少ない。危険も大きいことはわかっている。 それでも、スミスがここにいる可能性もある以上、素通りするわけにはいかなかった。 もちろん、それぞれの部屋に人がいないかどうかは十分注意しているし、両手でスナイパーCRをしっかりと握っている。 (一階には、誰もいない…?) …城内、少なくとも一階は、不気味なほどに誰もいなかった。 ひとつだけ気になったことといえば、半分凍っている部屋があったことぐらい。 しかし、やはりというべきかその部屋にも誰もいなかったし何も無かった。 (二階…階段が直接、王室に繋がっているのね…) マチュアは緊張しながら、恋人スミスを思いながら、二階への階段を上がった―――上がりきった、その時。 突然、彼女の手首に衝撃が走った。―――スナイパーCRが弾かれたのだ。 マチュアは弾いた主を確認する事もなくあわててそれを拾おうとするが、 目の前で振り下ろされた氷の刃がスナイパーCRを叩き割った。 青ざめながらも、顔を上げ、相手の顔を確認するマチュア―――刃の主は―――骸骨のような男。 「ふむ…そのような武器は…あまり美しくもないな…」 骸骨の男は一瞥するとマチュアに向き直り、氷の刃を構えなおした。 「…い、いやああああああっっ!!」 マチュアの心を、恐怖が支配した。―――男が凶器を持って…自分を殺そうとしている―――! 咄嗟に聖水を取り出し、蓋を開けようとするがそれもまた、氷の刃によって弾かれ、床を滑る。 今度は狙いが多少外れたのか、それともわざとなのか。マチュアの手が少し切れ、鮮血が飛び散った。 「ふむ、またも…必死で抵抗する娘か。見目は美しいというのに勿体無いものよ」 「…いやああああ!!スミス、助けて…!!」 …マチュアは、自分の悲鳴の中で倒れた。 ハインが攻撃したわけではない。追い詰められ、死の迫る状況、恐怖のあまり失神したのだった。 「美しい血だ…このまま、美しい死を…」 ハインは、床に倒れたマチュアへとゆっくりと歩み寄り氷の刃を静かに向けた…しかし。 「やめろーーーーっ!!!」 静かな部屋に突然の乱入者。マチュアの悲鳴を聞きつけたジオが、階段を上がってきたのだ。 ジオは一目で状況を理解し―――ハインが振り向いたときには、既に床を蹴っていた。 「…愚かな!」 ハインが邪魔された怒りで顔を歪め、氷の刃を振るう。とはいっても、人間の物ではない顔からは表情はわからないが。 今度は先程のようなゆっくりとした動きではない。迫りくるジオを狙い、素早く正確に振り下ろす。 「くっ!」 氷の刃は、空中で後方へと飛びのいたジオの、すぐ目の前を斬った。 着地したジオを狙い、ハインはさらに刃を振るう。 一瞬早く床を蹴り、横様に飛び避けたジオは―――ハインに向かって小さな袋を投げつけた。 「これでも…くらえっ!」 ドリームパウダー。 体制を崩しながらも狙いは外れることなく、袋はハインの骸骨顔の辺りに直撃し、そして。 「ぐあああああっ!」 息苦しい香りの粉が大量に舞った。ハインが悲鳴を上げ、顔を抑えた。 (チャンスだ!) ジオは急いでマチュアを背負い、ほとんど飛び降りるように階段を降りていく。 完全に意識を失っている女性、この状況で連れて逃げるのは危険だがそれでも、助けないわけにはいかない。 一階は、先ほど見た限りでは四角が多かった。大丈夫、隠れられる。 (まずはこの女性を安全な場所に隠して…それから、あいつを何とか) そう思考しながら、一階の廊下へと着地した、その瞬間。 ―――ざくり。 ジオは、嫌な音を聞いた。 「…ぐっ、あ…? …!げほっ、がはぁっ…!」 マチュアを背負ったまま、崩れ落ちるジオ。 口と身体からとめどなく血が溢れ出し、床を汚していく。 背後から投げられた氷の刃がマチュアの背中を貫通し、ジオの腹の辺りに深々と突き刺さっていたのだ。 (…まさか…効いてなかったのか…?後ろから、こんなでかい剣を投げ…) ぼんやりとする意識、動けなく、振り返る事も出来ない上に視界は掠れてきていたが…わかった。 あいつが、ゆっくりと階段を下りてくることを。―――自分にとどめをさしに来るのだ。 いや、もう相手はすぐそこに迫っていた。自分の身体から刃が引き抜かれたのがわかった。 (…やばい、立てねえよ…アルカート…) ここで、死ぬのか。彼女に、思いを伝える事も出来ずに。 …何をやってたんだ、俺は…アルカートを守るどころか、この女性さえも守れないで…。 「ごめん、アルカート…」 ジオが呟くと同時に、氷の刃がジオの身体を完全に貫いた。 彼の身体が停止する直前、閉じかけた目から涙がこぼれたが―――それを見るものは、いなかった。 「………」 ハインは二人の死体を前に、とてつもない怒りだけを感じていた。 見目では怒っているとはわからないのだが、周りの空気がピリピリとしている。 ドリームパウダーのような、対外ではなく体内に直接ダメージを与えるものは、今のハインにはほぼ無効だったのだが、 ハインにとっては、自分の顔に粉を投げつけられた―――その事実だけが問題だった。 怒りの対象、ジオは既に死んだというのに…その怒りは収まらないようだ。 「…許せぬ…許せぬぞ…」 ハインは怒りの発散を求め、すぐ目の前の城門を通っていく。 後には、ハインに蹴り飛ばされた、ジオとマチュアの無残な死体だけが残った。 【ハイン 所持品:破壊の鏡、氷の刃、ルビーの指輪  行動方針:殺戮】 【現在位置:アリアハン城下町へ】 【マチュア 死亡】 【ジオ 死亡】 【残り 109名】

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