6話

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*第6話:帰りを待つ人のため 森の中、一人の男が怒りに満ちた表情で大きな木を殴りつける。衝撃で葉が舞い落ち、男の鉢巻が揺れた。 「くそっ…!ふざけやがって…」 決して大柄ではないが鍛えられた肉体。そんな身体に靴は不用なのだろうか、素足である。 そして拳法着に赤い鉢巻…典型的なモンクの格好をした彼の名は、ジオといった。 彼はこのゲームとあのふざけた魔女に、かつてない怒りを感じていた。 (あの女性は当然のことを言ったまでだ。何故殺されなくてはならない?殺し合いだと?俺に…俺にあいつを殺せというのか!) ジオの心に、ある白魔道士の姿が浮かんだ。優しい笑顔。 彼女はジオにとって大切な仲間であり、それ以上の特別な存在でもあった。…秘めた思いだったが。 「あいつまで…巻き込みやがって…」 苦難の表情で再び木に八つ当りをする。と同時に、先程の数倍の量の葉が落ちてきた。 「…ッ! うわッ!!」 …ドガァァァッ!!! ジオがそれに違和感を感じ、咄嗟に後ろへ飛ぶ。葉と一緒に落ちてきたそれは木の下で発光し―――小規模の爆発が起こった。 爆風の衝撃で茂みに吹き飛ばされるジオだが、すぐに体制を立て直す。大丈夫、怪我は無い。 (まさか、ずっと木の上に…!?んなバカな!) その気配に気がつかなかったのは、頭に血が上っていたせいだけではないだろう。 気配断ちというやつか。…相手は自分と互角、いや、それ以上かもしれない。 (くそっ…次に会ったら、覚えてろ!) ジオは逃げ出した。ここで死んだら彼女を守るどころではない。懸命な判断だった。 (逃がしたか…) ジオが走り去るのを確認し、赤いマントに羽帽子の男――赤魔道士ギルダーが木の上から降りてきた。 もう少し慎重になるのだった。そうすればきっと、確実に仕留められた。舌打ちする。 (…仕留める、か。何だか、動物を狩っているような言い回しだな) 彼は一人、苦笑した。世界を救う光の戦士である自分が…人を殺そうとしている。それも、こんなやり方で、だ。 突然殺し合いをしろ、と言われて戸惑い、一度は脱出できないかと考えたが―――彼はそれを無理だ、と判断した。 あんなとてつもない存在から逃れられるとは思えない。アレなら魔王ザンデを数十倍して二乗したほうがマシだ。 ここで戦わなければ死ぬのだろう、それだけだ。 (俺はこんなところで死ぬ訳には…いかないんだ) ギルダーは目を閉じて、かつての旅の途中出会った少々お転婆なお姫様の姿を思い浮かべる。 …それは、約束だった。 彼女は自分の目を見て…少し寂しそうに、言ったのだ。『必ず、帰ってきて下さいね』 と。 その言葉に、自分ははっきりとこう答えた。『…ええ、必ず』 「必ず…帰るから、サラ」 自分は何があろうとも、帰らなくてはならないのだ。サラの元に。サラを悲しませてはならない。 (生き残るのは、俺だ) 自分の為に、自分の帰りを待つ大切な人の為に、生き残る。そのためには殺すしかないのだ。 例え相手が同じ光の戦士であったとしても、それは変わることはない。 【ジオ(FF1スーパーモンク) 所持品:不明  第一行動方針:アリアハン方面に逃げる 第二行動方針:白魔道士を探し、守る】 【現在位置:アリアハン北の橋より東の森の出口付近】 【ギルダー(FF3赤魔道士) 所持品:ライトブリンガー・雷の指輪・手榴弾×4  第一行動方針:獲物を探す 最終行動方針:生き残る】 【現在位置:アリアハン北の橋より東の森の中】

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