115話

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*第115話:王子と魔女と盗賊と 台所には、不気味なほど安らいだ表情のまま首を切り落とされた男女がいた。 今いるここ、階段前の廊下では、男が女を背負ったまま串刺しにされていた。 そして死体の傍に、尻尾の生えた若い男が立っている。 「最低だ」 硬直するリノアとキーファの前で、男――ジタンはぽつりと呟く。 「アルティミシアとかいう魔女も、あの骸骨野郎も、命をなんだと思ってるんだ」 拳を固く握り締め、肩を奮わせる。 ジタンには許せなかった。殺し合い自体はもちろん、こんなゲームに乗って人を殺す連中がいるということが。 もちろん、頭の中では理解していたし覚悟していたことだ。進んで殺し合おうとする奴がいることぐらい。 だが、実際に『その場面』を見た途端、抑えきれない怒りが胸に沸いた。 数分前には生きていたはずの二人を助けられなかった、自分への苛立ちと共に。 十数分経った今でも、その感情は消えない。 二人と一人の間に、長い沈黙が落ちる。 不意に、ジタンは横に立つ二人組、リノアとキーファを振り返った。 射竦めるような視線を真っ向から見据え、意思表示代わりにキーファは支給品の本と袋を床へ投げる。 「オレも……いや、オレ達もあんたと同感だ」 「戦う気なんてない。殺し合いなんて、したくない」 そう言ってリノアもキーファに従う。 二人の言動に、ジタンはようやく相好を崩した。 「そうか……  ……なぁ、やりあう気がないなら少し話さないか? どっか落ち着ける場所でさ」 リノア達は一瞬顔を見合わせ、すぐに大きく頷いた。 ――それから、三人は小さな裏庭のそばに作られた小部屋へ移動した。 話すことはそれぞれにあった。 キーファは、グランエスタードの友人達と、支給された攻略本について話し。 ジタンは、ダガーを始めとする仲間と、この忌々しいゲームをどうにかしたいという思いを語り。 そしてリノアは、頼もしい恋人と、仲間達と、共に倒したはずの魔女アルティミシアについて知ること全てを伝えた。 だが、話の内容がたくさんあるからといって、収穫があるとは限らない。 結局、三人とも仲間達の行方はわからないまま。ゲームを抜ける手段も、攻略本の活用方法も思いつかないまま。 謎だけが、一つ増えた。 「魔女と時間圧縮ねぇ……一体、アルティミシアって奴は何がしたいんだ?」 「私にはわからないけど。でも、きっと理由があってこんなことをしてるんだと思う」 「あのな。理由もナシにこんなことされたらこっちがたまらないぜ」 キーファの言葉に、ジタンが「そりゃそうだ」と頷き返す。 それから、急に真顔になって二人を見つめた。 「なぁ。リノア、キーファ。正直なところどう思う?」 「どう、って?」 「だから魔女の目的だ。この殺し合いをさせる目的だよ」 「いや……突然振られてもなぁ」 ジタンの言葉にキーファは腕組みをし、リノアは頬に手を当てる。 それからしばらくして、キーファが顔を上げた。 「パターンとしてはやっぱり『娯楽』じゃないか?  昔の君主や貴族には、そういう悪趣味な見世物を楽しむ奴がいたそうだからな」 「うーん。それもありそうだけど……  前に読んだ本でね、集めた動物を殺し合わせて、生き残ったやつを使う呪いっていうのが出てきてたんだ。  もしかしたら、そういう呪いとか、何かの儀式なのかもしれない」 と、リノアが続ける。 「娯楽に儀式か……」 ジタンは天井を睨みながら、首輪に手を当てた。 ――キーファが言ったように単なる娯楽目的なら、首輪の解除自体は可能である確率が高い。  なぜって、その方が見世物として面白いからだ。  『こうすれば解除できる』のに、それに気づかず殺しあう参加者達。それほど難しくない解除方法が見つかるのは、数多の友や仲間の血で両手を染めた後のこと。  この手の演出も、あの冷徹な魔女ならやりかねない。  けれどももし、リノアが言う通りに『何かの儀式』であるなら……首輪を外すなんてさせてくれないはずだ。  殺し合いが止まればその時点で目的が達成できなくなる。 ――どちらにしても、自分たちに殺し合いをさせることが目的ならば、滅多なことでは首輪を爆破したりしないだろうが。 そこまでジタンが考えた時、突然轟音が鳴り響いた。 音が外からと気付いた三人は、慌てて中庭に飛び出す。 彼らは見た。天空に浮かぶ魔女の唇が、忌々しい言葉を紡ぎ上げていくのを。 そして……全ての放送が終わった時、三人の表情は蒼白なものに変わっていた。 世間知らずなお姫様だけれど、優しく芯の強い女性だったガーネット。 口は悪いけれど、根は真っ直ぐで正義感に溢れていたマリベル。 死ななくてはいけない理由なんて、どこにもなかった。 いや、他の人たちにも、同じことがきっと言えるはずだ。 「ねぇ、キーファ、ジタン」 リノアが口を開いた。 「こんなの、間違ってるよ。こんな形で人が死んでいくなんておかしいよ。  ねぇ、止めよう。止めさせようよ! こんなゲーム、続けさせたくない!  一緒に力を合わせて、止める方法見つけようよ!」 ――それは理想だ。確固とした計画もなく、ただ思いに任せただけの言葉。それだけで人を救うことは決してできない。 けれども、人を動かすことはできる。理屈ではなく感情から生まれた言葉だからこそ、心に訴える力を持つ。 「そうだな……マリベルだって、きっとそうしろって言うよなっ」 「こんな下らないゲーム、エーコやビビのためにも早いところぶっ壊してやらないとな!」 瞳に拭い去れない哀しみと決意の色を宿らせて、三人は立ち上がる。これ以上の悲劇を生まないために。 【ジタン 所持品:英雄の薬、厚手の鎧、般若の面  第一行動方針:仲間と合流+首輪解除手段を探す 第二行動方針:ゲーム脱出】 【リノア 所持品:不明  第一行動方針:スコールを探す+首輪解除手段を探す 第二行動方針:仲間と合流しゲーム脱出】 【キーファ 所持品:攻略本  第一行動方針:首輪解除の手段を探す 第二行動方針:フィンと合流しゲーム脱出】 【現在位置:アリアハン城・裏庭】

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