389話

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*第389話:Regen Regen Regen ここはカズスから北西の方角に広がる森の中。 フリオニールは、カインに「好きに行動させてもらおう」とは言ったものの、素直にカズスの村へと移動していた。 それは、自分が余計な場所へふらふらと移動して無駄に窮地に陥ったりなどの危険を無くす為だ。 本当は色々な場所へと移動したかった。この世界やここにいる人間などの情報が欲しかったからだ。 だが今は相手に「日没に落ち合おう」という約束を自分からした身。そう危険な事は出来ない。 と、突然フリオニールは足を止めた。 突如何者かの気配を感じたのだ。 「先手を打つか」 彼はそう呟くと、ラグナロクを構えて気配のする場所へと走っていった。 丁度良い。このまま参加者を消してしまおう。 そう考えての行動だった。 気配の主であるアルスとシドはカズスの村へいく為、砂漠を選ばずにカズスの北西付近の森の一端を抜けようと進んでいた。 「やはりあそこはチョキを出すべきだったのか……」 「今更ぼやくなよ、意味無い意味無い。それにどんな反省会だそれ」 そう、アルスはシドとのじゃんけん勝負に負けてしまい、しぶしぶカズスへと歩いていたのだ。 「ところで、お前の傷口……本当に大丈夫なのか?僕の魔力ならほぼ塞ぐことは出来るんだが」 「ここで無駄に魔力使うのも能天気な話だろうが。大丈夫だって、軽く動かせるしな」 「だが……」 「煩ぇ、ガキは黙って大人の言うこと聞いてろ」 「なんだと?」 シドは左肩を軽く動かしながらそう言っていたが、 アルスは軽く不快感を示しながら反論していたが、 謎の気配を感じ、2人の言葉はそこで止まった。 目の前から迫ってくる人影。それは銀髪の謎の男。 銀髪の男――それはフリオニールなのだがアルスたちには知る由もなく――はラグナロクの一撃をアルスに叩き込んだ。 だがアルスはそれをドラゴンシールドでなんとか弾いた。 しかしまだフリオニールの猛攻は止まらない。何発も何発も斬撃を放つが、アルスはそれを黙って盾で受け止めていた。 「フッ、何かと思えば攻撃一辺倒とは……」 「フン、何も考えずに防御一辺倒とは……」 「「くだらない」」 2人の声が重なるその場で、シドはビーナスゴスペルを構え立っていた。 アルスに左肩は大丈夫だといったものの、自分の完璧なコンディションでは無い以上今は危険だ。 暫くはアルスの補助といくか、と彼は武器を握り締める力を強めた。 アルスはシドの状態を気にかけつつも、まずは目の前の人間をどうにかすることを先決としていた。 ドラゴンシールドとドラゴンテイルを構え、目の前の人間を見据える。 相手はかなり強敵だろうという事が雰囲気だけでわかる。だが、負ける訳にはいかない。彼は相手を更に睨んだ。 目の前にいる2人はなかなかの実力者なのだろう、とフリオニールは感じ取った。 そしてラグナロクを構え、少し考える。少年を狙うべきか、それとも体格の良い男を狙うべきなのか。 だがどちらにしろ自分でまいた種だ。この状況を切り抜けるには相手の命を絶つ事が最良の選択。彼もまた武器を構えた。 そして、最初に動いたのはアルス。 ベギラマを唱えて瞬時にドラゴンテイルを振ると、中規模の熱線と竜の尾を模した鞭が同時に相手に襲い掛かった。 だがそれはフリオニールにいとも簡単に避けられてしまった。 そう、障害物がある場所では鞭の様な攻撃は使いづらい。事実、ドラゴンテイルは周りの樹に当たってしまいそうになっていた。 更にあまりにも規模の大きめの呪文はこんな狭い場所、ましてや森の中では呪文自体が視界を覆い隠し使いづらい。 フリオニールはそのまま、アルスへと一直線に肉薄した。 そしてラグナロクをまたも振りかぶった。しかしそれはドラゴンシールドで止められる。 それはまたも競り合いに発展した。剣と盾がぶつかり合う。しかしラグナロクの剣圧はアルスの盾の防御を大きく上回っていた。 このままでは負ける!アルスはそう思うも剣が無いため敵への攻撃がやりづらかった。アルスに危機が訪れる。 しかしその時、シドの槍がフリオニールを襲った。 その攻撃をフリオニールはラグナロクの非情な刃でなんとか受け止めた。 「1つの事で精一杯な甘ちゃんが剣なんか振り回してんじゃねぇよ!!」 「しま……っ!」 シドの思惑に気が付いたときは既に遅かった。 彼の攻撃は相手とアルスの競り合いを解消し、なおかつ敵に一矢報いることだった。 シドの槍とフリオニールの剣が鍔迫り合いを一瞬でもした瞬間にアルスが隙を突き鞭で攻撃するという思惑。 その作戦は見事に成功した。シドの思惑に気が付いたアルスがフリオニール目掛けて鞭の攻撃を放ったのだ。 「だが、浅いな」 だがその鞭の攻撃は近くに生えていたいくつかの樹に掠り、勢いを殺されていた。 相手の左の脇腹に命中はしたものの、相手の動きを制限させるほどではなかった。 「やはり怪我人を狙うべきだったか」 そう呟いたフリオニールはそのままアルスの横を素通りし、シドに向かって剣を振るった。 アルスはその行動に驚いた。当然次の攻撃もアルス自身を狙うものだろうと思っていたからだ。 「シド!?」 「状況の切り替えも大事だろう?」 しかしフリオニールの奇襲は、見事にビーナスゴスペルによって阻む事が出来た。だがその槍の防御は心なしか頼りない。 「俺を怒らせたな。怪我をしているのによくやるものだ」 「バレてやがったか……ッ!」 「当たり前だ。あんな肩が紅いんだ……怪我をしていると考えるのが普通だ」 そう言うと彼はそのままラグナロクでシドの体を上へと斬り裂いた。 その攻撃によってシドの胸に大きな傷が生まれ、そして思いの他簡単にビーナスゴスペルが上空へと飛んだ。 そしてそのままフリオニールはシドの胸を狙う。 「アルス!逃げろォ!!」 シドのその叫びは、彼の最期の言葉になった。 ラグナロクは確実に彼の心臓に突き立てられていた。 シドは大量の血を吐き、そのまま地面へと倒れて動かなくなった。 そしてフリオニールはそのまま回転して落ちてきたビーナスゴスペルを左手でキャッチした。 その一連の流れは、アルスが何か行動を起こす暇も与えずに終わった。 「あっけなかったな。まぁこんなものだ」 アルスは、先程フリオニールがシドの命を絶ったことを、信じられないという目で見ていた。 彼は強かった。それは自分が彼を見て感じたことだ。しかし今、自分を置いて勝手に死んでしまった。 何を戸惑っていた?何を迷っていた? たとえその場では不利な武器を持っていたとしても、盾で守るくらいは出来たのだ。 それが出来ず怪我をしているシドへの攻撃を許し、そしてシドは死んでしまった。 「シド………」 アルスは、その光景を見て怒りを覚えていた。 しかしそれは相手へのではない、自分への怒りだ。 勇者でありながら、親しい人間を救えなかった自分への憤りだった。 「……ああ、そうだ。もうすぐ雨が降る。後で体をきちんと拭いておけ」 「何を言っている?気でも触れたか?俺の奇襲に今頃恐れをなしたのか?」 「雨は雨でも……水ではないがな」 怒りに満ちてはいるが、アルス自身は酷く冷静だった。 唐突に、呟くように放たれる彼のその一つ一つの言葉も冷え切った刃の様だ。 「お前がゲームに乗っているのなら、僕はお前を殺す。  悪く思うな。これはお前の行動から始まった戦いだからな」 そう言うと彼はドラゴンテイルを片付け、番傘を差した。 それは雨よけの番傘だ。彼らから見ると洒落たデザインというだけで、特にこれといって変わった事は無い。 しかしアルスは気にせず番傘を差し―――そして今度は左手を真上に掲げた。 すると、空気が変わった。酷く乾いている。違和感を感じる。 「……なんだ?」 だがフリオニールが空を見上げるが雲は何処にも無い。 本当に気が触れてしまったのかとアルスを見る。 彼の周りには魔力が渦巻いていた。 ただ静かに魔力は渦巻く。辺りもその魔力と同じように静寂したままだ。 「嵐の前の静けさ」という言葉が、よく似合った。 そしてその静けさの中で、アルスは静かに呪文を紡いだ。 「ギガデイン」 その彼の言葉に呼応し、魔力は姿を変えた。 そう、天から降る稲妻となって悪に裁きを与えるのだ。 この場合の「悪」は、勿論フリオニール。 「サンダー……?いや、違う!何だ!?」 天からの怒槌は雷鳴という轟音と共に、シドの亡骸があった場所へと降り注いだ。 それによって彼は持ち物ごと黒く焦げ、灰になっていく。だがフリオニールはそこから瞬時に離れ、なんとか直撃は避けた。 ここは森だ。雷は高い場所に降り注ぐ傾向がある。実際アルスはそれを覚悟していながらもギガデインを唱えた。 そして見事に雷は、まず最初にフリオニールの近くにあった樹に当たってしまった。 しかしそれでも勢いは少ししか殺されなかった。辺りのいくつかの樹をまとめてなぎ倒し、更に抉れた地面にも電流が走る。 その強力な攻撃は、そこから逃げるフリオニールにも多少のダメージを与えた。 「周りごと薙ぎ倒せるのなら、規模は気にする必要は無いだろう?」 そして衝撃で巻き上げられた土が、砂埃が、樹の破片が彼らに降り注いだ。 鬱陶しいほどに降り注ぐそれらの「雨」を、アルスは番傘を差して「濡れない様にしながら」見ていた。 一方のフリオニールは近くで倒れていた。どうやら軽く気絶している様だ。しかし思いの他すぐに立ち上がってしまった。 そしてアルスを見据え、何か呟くとそのまま走ってカズスへと逃げていってしまった。 だがアルスはそれを追わなかった。 呪文で魔力を使ったし、森の中での鞭を使った戦闘で到底勝てるとは思えない。 だから今は、シドがいた場所をじっと見続けている。 「シド、体が大変な事になってしまったな……済まなかった。  しかしこうでもしないと、あいつには当たらなかっただろうからな」 番傘を畳もうともせず、アルスはそう呟いた。 そして唐突に、先程は冷静さで封印していた感情をぶちまける様に叫びだした。 「本当に済まなかった……っ!僕の力の無さが、お前を殺してしまった!  お前にガキだと笑われても仕方が無いな、僕は。笑いものだ……道化だ」 そしてアルスは、そこから逃げるように歩き出した。 今度はカナーンへと。最初に自分が提案した方向へと歩き出した。 これから如何するべきなのかと、迷いながら。 ゲームに乗った人間への憎しみを、更に強く抱きながら。 一方のフリオニールは必死に走っていた。 先程の大規模な雷の呪文で自分は結構なダメージを受けている。 まずは村にでも入って潜伏し、休憩しなければ。 今の自分は戦える状況ではない。たとえどんな相手でも、正直今の自分では勝てる気がしない。 仕方が無い。自分の実力を計り違えてはあっけなく死へと体を突き飛ばされる。 急がなければ。 【フリオニール(HP1/2程度)所持品:ラグナロク ビーナスゴスペル+マテリア(スピード)  第一行動方針:カズスの村へと走って移動する  第二行動方針:日没時にカズスの村でカインと合流する  最終行動方針:ゲームに勝ち、仲間を取り戻す】 【現在地:カズスの村北西の森の一端→カズスの村の方角へ】 【アルス(MP4/5程度)所持品:ドラゴンテイル ドラゴンシールド 番傘 官能小説3冊  第一行動方針:南の村に向かう(カナーンの村)  第二行動方針:イクサスの言う4人を探し、PKを減らす  最終行動方針:仲間と共にゲームを抜ける】 【現在地:カズスの村北西の森の一端→カナーンの村の方角へ】 ※戦闘場所はかなり焼け焦げています・シドの死体は黒焦げの灰になっています 【シド 死亡】 【残り 65名】

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