407話

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*第407話:ユフィの戦い スミスと共にカインがカズスの様子を見に行ってからしばらくが経った。 エッジは休息を取りながらも考える。果たしてこのままでもいいのかと。 「ユフィはどう思う?」 「うーん、やっぱりこのまま待ち合わせ時間までじっとしてるってのは暇だねぇ。  忍者といったらやっぱり諜報活動! あたしはカインを追ってカズスに行きたいね」 「だよな、でも危険も増えるぜ? あいつらは空飛べるから逃げやすいけどよ」 そんなエッジの懸念にもユフィは拳を振るって力説する。 「そんなん承知だよ。それに逃げることなら忍者だって専売特許じゃん。  敵に会うリスクもあるけど知り合いに会える可能性もあるし。  って、もう二人しかいないけどさ……シドとティファ。会えるなら会いたいよ」 寂しそうに俯くユフィを見てエッジもまた複雑な思いがよぎる。 (そうだよな、俺はカインと合流できたけどコイツにはまだ仲間がいるんだよな) 「よし」 決断してエッジは立ち上がる。 「行くか。カズスの周辺を索敵すんのは無意味なことじゃねえしな。  オメーは片腕ないんだから危なくなったら無理せずに逃げろよ。  俺がサポートしてやっから」 それを聞いてユフィも喜色満面で立ち上がる。 「うん! おっけー!!  アはは、エッジいい奴だねー」 「バカ、おめーのためじゃねーよ。行くぞ!」 そして二人は駆け出していく。その先に何が待つのかを知らず……。 サラマンダーはカズスを離れると、身を隠し、気配を殺しながら北上していた。 既に心は決まっている。参加者を見つけ次第殺す。 なるべく1対1の状況が理想だが、相手が複数でも構わない。 自らが感じている飢えを満たしてくれるのならば。 強者と戦う。自らを湧かせてくれるものと戦う。 待ち伏せなどはもう止めだ。自らが動き、獲物を探す。 その思いだけを胸に彼は走る。 そうしてカズス北の峡谷から最も近くの森と平野の境で一人の参加者を発見した。 広刃の大剣を背負い、服装から騎士だと想像できる。 サラマンダーはニヤリと笑みを浮かべると、飛竜草のカプセルボールを取り出した。 ただ投げるだけではない。彼の編み出したマカロフ投法にて騎士に向かって投げつける。 風を唸らせ、螺旋を描いてその騎士――ウィーグラフにボールが迫る。 もしスピードガンで計測していればその速度は時速100マイルを超えていたに違いない。 命中を確信したサラマンダーはその場を飛び出し、追い討ちをかけようとウィーグラフへと駆け出す。 するとボールが当たる寸前ウィーグラフは振り向き、飛来するボールを剣の腹で受け止めた! 「何!?」 流石にサラマンダーは驚いて、急ブレーキをかける。 剣の腹で弾かれたボールは破裂し毒粉を撒き散らすが、ウィーグラフは剣を盾にして 毒粉の飛散範囲から高速で離脱する。そして剣を手放し、拳を振り上げた。 「大地の怒りがこの腕を伝う! 防御あたわず! 疾風、地裂斬! 」 大地を伝う衝撃波が毒粉を全て吹き飛ばし、毒の効果がなくなるほどに空気中に拡散させた。 ウィーグラフは再び剣を取り、唖然とこちらを見つめているサラマンダーへと剣を向けた。 「何者だ? 我が仇敵以外に好んで剣を向けることはせんが、  邪魔をするというなら遠慮なく切り捨てさせてもらう」 それを聞いたサラマンダーは低く笑い出した。 「くっくっく、やるじゃねえか。流石に今のは俺も驚いたぜ。  こいつは存分に楽しめそうだ。さぁ、殺し合いをしようじゃねえか」 姿勢を低くして、戦闘態勢をとる。 赤い髪が獅子のように広がり、揺れる。 それを見てウィーグラフは思い出した。 「そうか、貴様。あのアグリアスと交戦していた者だな」 一瞬意味を図りかねたサラマンダーはその言葉について考える。 自分は目の前の騎士を知らない。しかしどうやら向こうは自分を知っているようだ。 アグリアスと交戦していた……アグリアス。 「久しぶりだな、アグリアス・オークスよ」 「貴様は……ッ!」 「私の目的はラムザ一人と言いたいが……  奴に組した者を見逃すわけにもいかぬし、ここで朽ちる気もない。  死んでいった仲間たちのためにも、我が妹ミルウーダのためにも、な」 「ウィーグラフッ!」 記憶が甦る。このゲームとやらに巻き込まれて一番最初に交戦した女騎士。 あの時は突然、矢で奇襲され暗闇状態にされたためその奇襲者の姿を見ていないが……。 「そうか、貴様がウィーグラフか。戦う理由が一つ増えたな。  あの時の借り、返させてもらおうか……」 サラマンダーの全身から殺意が溢れ出す。 それを平然と受け止めてウィーグラフもまた殺意を解放した。 「良かろう、このウィーグラフの剣。  とくとその目に焼き付けて死んでいけ」 そして二人は同時に地を蹴った。 フリオニールはアルスのギガデインによって大ダメージを受け、カズスへと逃走していた。 どういったつもりか追撃はない。 そのことに安堵しながらも彼は一刻も早く落ち着ける場所で潜伏しようと走っていた。 回復魔法を自身にかけながら走っていたので傷の方は幾分か回復している。 魔力を大分消費してしまったが、いつ敵と遭遇するかわからないこの状況では 温存などと言っている余裕はなかった。 カズスへと近づき、森を抜けようとしたところで殺意の衝突を感じて彼は立ち止まる。 (チ、こんな時に……) 気配を殺し、木々の隙間から殺意の根源を覗き見る。 森を抜けたすぐの場所で二人の男が交戦していた。 一人は騎士風の金髪の男。一人は格闘を主軸とした燃えるような赤髪の男。 互いに相当の実力を持っているようだ。 今、外に出れば確実に自分の存在は気付かれるだろう。 今の自分の状態で彼らのうち一人にでも勝てるとは正直思わなかった。 二人は様々な技を互いに繰り出している。 その結果、どうやら優勢なのは騎士のようだった。 剣と拳というリーチの差もさることながら、実力においても騎士が一枚上手のようだ。 (このままでは然程痛手も負わずに騎士のほうが勝つな。  あの騎士……俺が万全の状態でも互角に持っていけるかどうか、どちらにしてもかなりの実力者だ) フリオニールは考える。 赤髪がまだ五体満足な今のうちに加勢して騎士を倒すか? それとも赤髪が倒されるのを待って騎士をやり過ごすか? 前者は却下。 加勢しても今の自分の状態で倒せるとは限らないし、 例え倒せたとしてもその後、赤髪がこちらに牙を向けば劣勢に陥るかも知れない。 ならば後者か。 フリオニールが結論を出そうとしたその時、彼はこちらに迫る二つの気配を感じた。 気配を、音を殺しながらフリオニールは木を登り、枝葉の中に身を潜める。 そこに現れたのはエッジとユフィ、二人の忍者だった。 『おいユフィ止まれ!』 小声でエッジはユフィへと呼びかける。 ユフィも前方から感じられる戦闘の音に気付いたようだ。 言われるまでもなく、気配を殺す。 『どうしよう、エッジ~。戦闘の現場に直撃しちゃったよ』 『当然、止める。そんでもってゲームに乗ってる奴は倒すし、  乗ってない奴は仲間にできるかも知れねえからな』 『でも……』 チラリと交戦している二人をみやる。 『メチャクチャ強いよ、あの二人。あたしらで何とかできんの?』 『う……』 ユフィの指摘にエッジは言葉に詰まった。 相手を倒すというだけなら不意を討てば何とかなるかもしれない。 気配を殺すことにかけては自信があったし、飛び道具も忍術もある。 しかし戦闘を止めるということなら、まず正面に出て説得する必要があるだろう。 そしてもし聞き入れられなかった場合、正面からあの二人を相手取らなければならなくなる可能性もある。 しかもユフィは片腕だ。はっきりいって逃げるのさえ困難な状況に陥る危険性がある。 『そうだ!』 エッジは名案を思いつき、ザックからあるアイテムを取り出す。 そのアイテムとは……三脚付大型マシンガン。 『うわーお、とんでもない武器持ってるねぇ』 『あん? これ知ってんのか?』 『うん、あたしらの世界じゃ割とメジャーな武器だし。  誰でも持ってるって訳じゃないけどね』 『そうか、とにかくここからコイツを使ってあいつらを牽制する。  そんであいつらの正面に出て説得するんだ。  その役は俺がやるからオメーはここでコイツを頼むぜ』 エッジは相手の正面に出る危険な役目を買って出たつもりだったが、それはすぐに頓挫した。 ユフィは手を上げる。右腕は肩から存在していない。 『あはは、気持ちは嬉しいけど片手じゃコレ扱うのは無理だって』 それを見てエッジは頭を抱えた。 『あ~、いきなり計画破綻かよ……どうすりゃいいんだ』 『心配ないよ、あたしがあいつらの前に出るから』 それを聞いてエッジはガバッと顔を上げる。 『駄目だ! そんな危険な真似はさせられねえ!』 エッジは却下するが、ユフィの目は決意に溢れていた。 『エッジ、そろそろあたしの力も信用してよ。  そりゃドジっていきなり片腕失くしちゃった間抜けな忍者だけどさ、あたしも結構やるんだよ?  大丈夫、エッジがいてくれるしマリアさんみたいなことにはならないよ』 ユフィはエッジの核心を突き、黙らせる。 そう、エッジはマリアのことから仲間を危険な状況に置くことに強い忌避感を感じるようになっていた。 仲間を、リディアを護ることができなかったこともある。 本当は今回の探索にユフィを連れてきたくはなかった。 元の場所に潜伏させておきたかったが、マリアのことが思い出され どうしても一人にさせておくことが出来なかったのだ。 『大丈夫』 ユフィは繰り返す。 『あたしはあのクラウドのスカウトから7回も逃げおおせた女だよ?  もしもの時はあいつらからくらい楽勝で逃げ出して見せるって。だーいじょうぶ!  それにたまには信用してくれないとあたしもエッジを信用できなくなっちゃうよ』 その言葉が決め手となった。 エッジは決意し、マシンガンを手に取る。 『俺が全力であいつらを牽制する。雲行きが怪しくなったらすぐに離脱しろよ。  信用、するぜ』 『ま~かせて!』 そうしてユフィは戦闘の真正面へと飛び出していった。 サラマンダーは劣勢に陥っていた。 騎士との実力差を感じ取った彼は魔力を消費して攻撃力を増加させることで なんとか均衡を保っていたが、その魔力が尽きかけてきているのだ。 このままでは遠からず自分は敗北する。 (そいつは面白くねえな……) 起死回生を狙って放ったグラビデ拳、秘孔拳も回避され手立てがない。 距離をとれれば、カプセルボールで逆転も狙えるのだがそうさせてくれるほど 相手は甘くはなかった。ウィーグラフが剣を構え、力を溜めている。 その技に自分はもう対応できないだろう。次の瞬間訪れるのは、死。 (だが充分に強い相手と戦って死ぬんだ。何の不満がある?) 違う。サラマンダーの心の中に苛立ちが広がっていく。 (奴は強い。だが何故だか心が湧かねえ……あの時ほど俺は) あの時……あの時の戦いの相手は、ジタン。 (ジタン、何故だ? 目の前の奴とジタンと何の違いがある?) 迷いが広がる。だが、その迷いに答えが出せないまま自分の時間は止まる。 永遠に。 (駄目だ!) サラマンダーは目前に迫る死を否定する。 その答えを出すまで自分は生き延びなくてはならない。 だがその思いも虚しく、ウィーグラフの聖剣技が発動した。 「命脈は無常にして惜しむるべからず… 葬る! 不動無明剣!」 死の刃がサラマンダーへと迫り……寸前で止まった。 ウィーグラフは斬撃を途中で止めると、バックステップでサラマンダーから距離をとる。 その一瞬後、サラマンダーの目の前に風魔手裏剣が突き立った。 「待ちなさ~い!」 少女特有の甲高い声がして、二人は一斉にその方向を見る。 森を背にして一人の少女が仁王立ちでこちらを見据えていた。 「大の男が二人して何やってんの! こんなんじゃあの魔女の思う壺でしょー!  恥を知りなさい、恥を!」 一方的に言い募るユフィに憤慨するウィーグラフ。 「何も知らぬ小娘がほざくな! 邪魔をするというのなら貴様も……」 ウィーグラフの殺意がユフィへと向けられたその時、ユフィが左腕を上げる。 そして。 ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ! 森の奥からマシンガンの銃弾が放たれ、ウィーグラフとサラマンダーの中間に着弾する。 その威力は地面をあらかたこそぎ取り、土煙をたなびかせた。 ユフィが腕を下ろすと同時に斉射は止む。 ウィーグラフは戦慄していた。 (な、何だ今の攻撃は。魔法ではない……いや、魔法なのか?  あの小娘は先ほどカズスから離れていた娘だ。となればもう一人忍者装束の男がいたはず。  今、攻撃してきたのはその男か? それにしても……) 彼は全く未知の攻撃を目の当たりにして戸惑う。 それはサラマンダーも同じだった。 (こいつぁ、大砲と同じ火薬を使った武器か? いや俺が知ってる大砲とは違いすぎる。  どうやら一度は死を逃れたみたいだが、また覚悟しなきゃならんようだな) ユフィもまた戦慄していた。 (エッジ、近い、近いよ。あたしにまで当たるとこだったじゃん!) それはエッジも同じだった。 (あ、危ねえ……コイツは反動がハンパねぇ。ユフィに任せなくて良かったぜ。  アイツに任せてたら今頃俺は敵ごと蜂の巣になってたに違いねぇ) それぞれの思惑が交錯し、膠着状態におちいる。 それを破ったのは気を取り直したユフィだった。 「い、今の見たでしょ? おじさんたちに勝ち目はないよ! だ、だから動かないでね?  さっき何も知らぬ小娘とか言ってたけどさ、そんなおじさんたちの事情なんて  あたしが知るわけないじゃん! だからさ、教えてよ!  場合によっては力になれるかもよ?」 ウィーグラフは答えない。サラマンダーもまた答えない。 沈黙を護りながら彼らは考える。どうすればいいのか。 再び場は膠着していた。 フリオニールは木の上から傍観しながら考えていた。 あの男忍者が使っている武器は、デールという男が使っていた武器と酷似している。 しかもその場から動かせないデメリットはあるものの、大型な分威力はこちらのほうが上の様だ。 薄く、笑う。 (一時はどうなることかと思ったが、どうやら運はこちらに向いてきたようだ。  この膠着状態。俺が打破してやるとするか) フリオニールは極力音を殺しながら木を降りはじめた。 エッジは集中する。ウィーグラフとサラマンダーの二人の動きに。 もしユフィを攻撃しようとしたら躊躇なく弾丸を撃ち込むつもりだった。 ユフィを護る。それはこの作戦を決行したときに彼が誓ったことだ。 全神経をユフィを護ることに注ぎ、そして……そのために彼自身に迫る危機を見逃した。 「いい武器だな」 いきなり背後から声をかけられ、エッジは振り向く……ことができなかった。 ドシュ! 鈍い音と共にエッジの胸から剣が生える。 「がっ、ゴボォ!」 喉から熱い血が込み上げ、吐血する。 「やれやれ、剣が血で汚れてしまった。仕方ない、洗浄代としてこの武器を貰おうか」 ずるり、と音をさせてラグナロクをエッジの胸から引き抜く。 その圧迫感から解放された瞬間、エッジは叫んだ。 「ユフィーーーーーーーッ! 逃げろぉぉぉぉっーーーーー!!!」 その叫びを最後にエッジの喉は込み上げてきた血で詰まり、気管を塞ぐ。 「ち!」 まさか叫ぶ余裕があったとは知らず、フリオニールは舌打ちする。  ―― ユフィ、カインすまねぇ……後は頼んだぜ            リディア、今、そっちに…… ―― ドカッ ラグナロクによって頭蓋を割られ、エッジは絶命した。 「ち、少し予定が狂ったな。まぁいい、くたばれ」 フリオニールはマシンガンを手に取ると、エッジの見様見真似で引鉄を引いた。 「ユフィーーーーーーーッ! 逃げろぉぉぉぉっーーーーー!!!」 「エッジ!?」 エッジの断末魔を聞いてユフィは森へと振り向く。 返事はない。 森へと駆け込もうとしたその時、轟音と共に銃弾がばら撒かれた。 ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ! ユフィは咄嗟に身を伏せる。 その為、ユフィは右肩を掠らせるだけですんだ。 しかしウィーグラフとサラマンダーはそれだけでは済まなかった。 サラマンダーはエッジの叫びが聞こえた瞬間、逃走に入っていた。 しかし右肩に被弾し、左大腿の肉を銃弾がこそぎとっていった。 「ぐぉっ!」 しかし彼は減速せず、そのまま山の中へと逃げ込んでいった。 ウィーグラフは射界の真っ只中にいたため、なすすべなく蜂の巣となった。 血煙を舞い散らせ、その場に崩れ落ちる。 命中率の低さのため即死こそ免れたものの、このままでは死を待つだけである。 その場に動く物がなくなったことを確認し、フリオニールは射撃を止めた。 「ふ、ふははははははははははは!」 マシンガンの威力に酔いしれ、高笑いを上げる。 この素晴らしい力があればマティウスもあのアルスという小僧も物の数ではない。 ふと見るとウィーグラフが虫の息ながらも何かをザックから取り出している。 「フン、死に切れなかったか。情けだ、介錯してやるとするか」 マシンガンをザックに仕舞うとラグナロクを手に、ウィーグラフへと近づく。 ウィーグラフがザックから取り出していたのは何かの小瓶だった。 震える手で小瓶の蓋を開け、一気にあおる。 「何?」 見ると、ウィーグラフの傷が急速に癒されていく。古い皮膚が剥がれ、新しい皮膚が再生される。 「エリクサーか!」 フリオニールは駆け出すが、時既に遅く完全に復活したウィーグラフは飛び上がり、 プレデターエッジでラグナロクの一撃を受け止める。 ガキィンッ 剣の威力はフリオニールが上。しかし膂力はウィーグラフが上。 その力は互角。両者は互いに弾き飛ばされ、距離が開いた。 もとより、ダメージが抜け切れていないフリオニールはバランスを崩し、 ウィーグラフはその隙を逃さずに逃走した。 相手の未知の武器と、復活したばかりの自分の身体を警戒したのだ。 フリオニールが体勢を整えたときには既に南東の方角へと走り去っていた。 もうマシンガンでも魔法でも届かないだろう。 二人共に完全に逃げられたことを知ったフリオニールは歯噛みする。 「ち、結局殺せたのは二人だけか。まぁいい」 フリオニールはエッジとユフィのザックを回収しようと森へと戻る。 しかしそこにはユフィの死体がない。 「何? 生きていたのか?」 訝しみ、エッジの死体の場所まで戻るとそこには死体に手を置いて涙するユフィの姿があった。 フリオニールの姿を認め、キッと睨みつける。 「殺したな……エッジを、殺したな!」 フリオニールは笑う。 殺し損ねていたのは驚いたが、相手は片腕の少女。どうすることもできまい。 「ああ殺したよ。あの武器が欲しかったんでね。  寂しいのなら君も彼の元へ送ってやろう。何、礼はいらないさ」 ラグナロクを振りかぶり、ユフィへと襲い掛かる。 しかしユフィは持ち前の身軽さでそれを回避し、木の枝へと飛び移った。 「ほう、思ったより身軽だな」 余裕の表情でフリオニールはユフィを見上げる。 ユフィの手にはエッジの持っていたフランベルジュが握られていた。 「怒った……ちょー怒ったよ! もー怒髪天ってやつ!!」 「怒ったなら、どうする?」 「こうすんのよ! リミットブレイク!!」 ユフィの怒りが赤いオーラとなってその身を包む。 フランベルジュを頭上に掲げ、彼女は静かに言葉を紡ぐ。 「大地よ 海よ 空よ そしてこの世に生きている全てのみんな!  あたしにほんのちょっとずつだけ元気を分けてちょうだい!! 」 フランベルジュを中心に収束していく力にフリオニールは戦慄する。 (な、何だこの力は? 何かわからんがとにかくマズイ!) 彼は足元に置いてあった「盾」を手に取り、近くの木に身を隠す。 「無駄よ! そんなほっそい木なんか木っ端微塵こ!  いっけぇええええええ! 森羅! 万! 象!!」 フランベルジュを核として極大にまで収束した気塊が怒涛の奔流となってフリオニールへと襲い掛かる! それは万物の気を武器に集めて放出するユフィの最強リミット技「森羅万象」。 ユフィの言葉どおりにその威力は木々をなぎ倒し、地面を抉り取り、炸裂した。 後に残ったのは真っ黒に焼け焦げた破壊痕。 ユフィは肩で息をしながら、それを見つめている。 すると、ボコリ、と地面が盛り上がり、その中からフリオニールが立ち上がった。 「嘘!? なんで?」 驚愕するユフィを尻目にフリオニールは自身を護った「盾」をその場に放り捨てる。 それはすでに炭と化したエッジの死体だった。 「え、エッジ……」 ユフィは呆然とそれを見守っていた。 フリオニールはユフィに背を向けて駆け出す。 (ち、流石にダメージを受けすぎた!  戦利品は手に入れた。この場はこれで満足して引くしかあるまい) 彼が目指すのはカズス。すでに廃墟となっているのも知らず彼はカズスへと駆けていく。 ユフィはエッジへと近づき、その頬を撫でる。 「ごめんね、仇は……討つから」 決意の表情で立ち上がり、ユフィはカズスの方向を見つめる。 フリオニールはカズスへと逃げていった。 カズスにはカインとスミスがいるはずだ。彼らと協力して今度こそフリオニールを討つ! 手には不慣れな剣。彼女が知る、剣を得意としていた人物は……。 「クラウド、力を貸してよ」 そして彼女もまたカズスへと走り出した。 【ユフィ(疲労/右腕喪失)  所持品:風魔手裏剣(19) プリンセスリング フォースアーマー      ドリル 波動の杖 フランベルジェ】 【第一行動方針:フリオニールをカインと協力して討つ  第二行動方針:アポカリプスを持っている人物(リュカ)と会う  第三行動方針:マリアの仇を討つ 基本行動方針:仲間を探す】 【現在位置:カズス北の峡谷→カズスの村へ】 【フリオニール(HP1/3程度 MP1/2)  所持品:ラグナロク ビーナスゴスペル+マテリア(スピード) 三脚付大型マシンガン(残弾9/10)  第一行動方針:カズスの村へと走って移動する  第二行動方針:日没時にカズスの村でカインと合流する  最終行動方針:ゲームに勝ち、仲間を取り戻す】 【現在地:カズス北の峡谷→カズスの村へ】 【サラマンダー(右肩被弾、左大腿負傷、MP1/5)   所持品:ジ・アベンジャー(爪) ラミアスの剣(天空の剣) 紫の小ビン(飛竜草の液体)、  カプセルボール(ラリホー草粉)×2、カプセルボール(飛竜草粉)×1、各種解毒剤  第一行動方針:一旦潜伏して傷を癒す 第二行動方針アーヴァインを探して殺す  基本行動方針:参加者を殺して勝ち残る(ジタンたちも?) 】 【現在地:カズス北の峡谷→移動】 【ウィーグラフ  所持品:暗闇の弓矢、プレデターエッジ、エリクサー×9、ブロードソード、レーザーウエポン、  首輪×2、研究メモ、フラタニティ、不思議なタンバリン、スコールのカードデッキ(コンプリート済み)、  黒マテリア、グリンガムの鞭、攻略本、ブラスターガン、毒針弾、神経弾   第一行動方針:この場から逃げる  第二行動方針:ラムザを探す  第三行動方針:生き延びる、手段は選ばない  基本行動方針:ラムザとその仲間を殺す(ラムザが最優先)】 【現在地 カズス北の峡谷→南東へ】 【エッジ 死亡】 【残り 63名】

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