465話

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*第465話:騎士の決断(後編) どうやらルカとハッサンがカズスの村の中からいなくなったらしい。 カインがフリオニールに叫んでいる内容を聞き取り、また彼らの顔色を伺えば真実である事は間違いない。 カインは捜索の為に再びミスリル鉱山付近に向かい、 フリオニールはカズスの村入り口付近を捜している。当然こちらを気にしながら。 ルカとハッサンは僕の持っていた武器のいくつかを持っていたままだ。 それを返してくれずにそのまま村を出たと言う事は、やはり僕を信用していないと言う事だろう。 カイン達や僕に気づかれずに村を出たとすると、行き先はおそらくウル方面。 ハッサンが自分で移動できない事を考えると、移動速度はそれほど速くないはず。 武器を取り返す事の意味も含め、彼らを追いかけるか…。 そして気になるのはカインとフリオニール。 ルカとハッサンが突然いなくなったと言うのは当然驚くべき事だが、彼らは妙に焦っている。 まるでこの場に2人がいないと困るような感じだ。 1時間半後にはエドガーやリュカという人が来るとも行っていた。 やはり彼らは殺人者で、カズスに参加者を一気に集めた後大量虐殺を試みる。 彼ら2人が何かを企んでいるのは間違いないし、その可能性が十分高いか…。 だとしたら、ルカ達がいなくなった事に焦っていることも合点が行く。 僕も今は武器を持っていないし、出来れば早めにカズスを出たいところだが…。 とそこへ、フリオニールがサックスに声をかけてきた。 「どうやらルカとハッサンがいなくなってしまったみたいなんだ」 「…あれだけ騒いでいれば僕にもわかりますよ」 「彼らが見つからないのは何かに巻き込まれたからかもしれない。すまないが、探すのを手伝ってくれないか。  今、カインの奴も探しに回っているところだ」 特に断る理由もないし、捜索を手伝えば彼の監視も甘くなるかもしれない。 となればカズスを抜け出すチャンスも大きくなるだろう。 「わかりました。僕も一緒に彼らを探しましょう」 サックスがルカとハッサンの捜索に加わってから約10分。 監視も甘くなると思っていたが、目に見える範囲内には常にフリオニールがいた。 やはり簡単に逃がしてくれる訳ではないらしい。 そんな事を考えてると、急にフリオニールが近づき、声をかけてくる。 「どうだ、調子は?」 「ぜんぜん見つからないですね。もう村の中にいないと考えるのが妥当じゃないですか?」 しばらく捜索の話をしていたが、突然フリオニールが別の話を持ちかける。 「話は変わるが、お前、大切な人が亡くなったって言ってたよな」 「…フルートさんのことですか? それとも…」 「まあ誰でも構わないんだが、単刀直入に言うぞ。  もし、死んだ人間を生き返らせる事が出来るとしたら、お前は何でもするか?」 「…………」 しばらく経過して、サックスが返答する。 「…僕に何を望んでいるんですか?」 そのセリフを聞き、フリオニールは手駒を掴んだと確認し、話を続ける。 「俺と手を組んでゲームに乗らないか? 魔女なら死者を生き返らせる事など容易に出来る。  まず、俺と一緒にカインの奴を殺して欲しい。  あいつもゲームに乗っているが、奴に優勝されても困るんでな。  それにあいつはお前の命も狙っている。ここで俺と一緒に殺した方が自分の身の為にもなるぞ」 予めカインが考えていた作戦を聞きながら、フリオニールも密かに自分なりに計画を立てていた。 己が優勝する為にはカインとスミスも殺す必要もある。 互いの利益の為に今は組んでいるが、いずれは奴らを仕留めなければならない。 …スミスが戻っていない現状を考えると、カインを仕留めるのは今が最大の好機なのかもしれん。 1対1では辛いが、サックス辺りを誘惑して2対1で仕掛ければ、勝てぬ相手ではないだろう。 問題は、カインがいなくなる事で残りの参加者を消すのが面倒になる事だが、 エッジを殺した事により、奴からの信頼感が欠けてきていることも事実。 早い内にカインを消さねば、こちらがどんどん不利になってくる可能性も高い。 サックスを勧誘するためにはカインのいない所で会話をする必要があったが、 ルカとハッサンの捜索をする最中、そこでこのタイミングが生まれたのだ。 「…わかりました。フリオニールさんの考えに乗りましょう。  僕は、彼女を生き返らせるためなら何だってやってみせます」 「すまんな。今ならカインの奴も油断しているはずだ。  この武器を貸してやろう。カインを探し次第、一気に仕掛けるぞ」 フリオニールはそう言うと、ザックからビーナスゴスペルを取り出してサックスへと渡す。 自身はラグナロクを手にし、カインがいると思われる方へ進もうとした時…… サックスはフリオニールとは逆の方角に向かって走り始めた。 そのまま茂みの中に逃げ込んだサックスの方に目をやるフリオニール。 辺りは暗く、サックスの逃げ込んだ茂みは思った以上に深い。 明かりを灯していても、村の地理を知り尽くしている人間でない限り追うのは不可能だろう。 サックスを手駒に出来たと確認していたのが油断となったか…。 追いかけるのは無理だと判断したフリオニールは軽く舌打ちし、サックスが逃げた方向に向かって叫ぶ。 「サックス、貴様どういうことだ。  死者を生き返らせるためには何でもすると言ったはずではないか!」 茂みの中からサックスの返答する声が聞こえる。 「確かに魔女の力なら死者を生き返らせる事も出来るでしょう。  僕自身、殺人者となる覚悟も出来ています。  でも、僕はあなたと手を組むつもりはありません。  あなたと組んでも捨て駒として利用される可能性が高いし、自分の道は僕自身で切り開く。  …この武器はありがたく頂いていきますよ、フリオニールさん」 幸運にもフリオニールの誘いを上手く利用する事で、サックスは武器を手にする事も出来た。 茂みの中を進んでいけば、フリオニールやカインに気づかれる事もなく村から出れるだろう。 しかし、カズスから出たとしても行く当てはあるのか? 安全な場所はあるのか? 否、無い。 だが、彼の足は自然と北に向かっていた。 孤児として拾われ、ギルダー達と一緒に育ったウルの村に向かって自然と歩き出していた。 ルカ、ハッサンにカズスから逃げられ、フリオニールの謀反に気づいていないカイン。 ラグナロクとマシンガンがある為、武器の損失は大した痛手ではないが サックスの手駒化に失敗し、彼を逃がしてしまったフリオニール。 フリオニールから武器を奪う事に成功し、殺人者となってでも生き残ることを決意したサックス。 カズスの村に潜む3者のマーダーは、それぞれ異なる道を歩み始める事となった。 【カイン(HP5/6程度、疲労)  所持品:ランスオブカイン、ミスリルの小手、えふえふ(FF5)、この世界(FF3)の歴史書数冊、加速装置、  草薙の剣、ドラゴンオーブ、レオの顔写真の紙切れ  第一行動方針:ルカとハッサンの捜索、今後の行動方針を考え直す  最終行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】 【現在地:カズスの村 ミスリル鉱山付近】 【フリオニール(HP1/3程度、MP1/2)  所持品:ラグナロク、三脚付大型マシンガン(残弾9/10)  第一行動方針:今後の行動方針を考え直す  最終行動方針:ゲームに勝ち、仲間を取り戻す】 【現在地:カズスの村 入り口付近】 【サックス (負傷、軽度の毒状態、左肩負傷)  所持品:水鏡の盾、スノーマフラー、ビーナスゴスペル+マテリア(スピード)  第一行動方針:ウルの村に移動する  最終行動方針:ゲームに優勝する。出来ればゲームを無かった事にしたい】 【現在地:カズスの村 茂みの中→カズスの村を出てウルの村へ】

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