241話

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*第241話:Tribute 『お兄さんとてりは、れくすを探しに行くつもりでした。  ぼくはキケンだとおもいました。でも、なにも言いませんでした。  だって外からアブナイ感じがゆんゆんしてて、その人がこっちに歩いてきていて、ここにいるのもキケンだと思ったからです。  だから黙って、二人とろざりお姉さんに着いていくことにしました。  本当は、れくすはもういないんだってわかっていたけど……黙って、着いていきました』 仲間との別れ、最愛の人の死。ただでさえ、アルカートの心は壊れかけていた。 それに加えてギード達に受けた、(彼女にしてみれば)言われなき暴力。 銀髪の男が言い放った言葉と、事もなげにしてみせた行為…… どちらも、壊れかけた心を閉ざさせるには――十分過ぎた。 彼女は歩く。戦場と化した街の中を、警戒もせずに無防備に歩く。 崩れた建物も、炎も、閃光も、悲鳴も、戦場も。彼女の瞳には映らない。 今の彼女に見えるとすれば、蠢く人間の姿だけ。 炎と閃光と悲鳴の向こうで、戦い続けている四人だけ。 「……の……キ、を……」 彼女は呟く。呟きながら、彼女は歩く。 横たわる骸を、乾いた骨を踏みつけて。 足元にあるそれが、ジオの命を奪った者の馴れの果てだと知ることもなく。 ぱきり、という音にも。それを踏みつけたということにすら気付くことなく。 「ジオの、仇を……」 白い珠を握りしめ、誘われるかのように、彼女は歩く。 もしクラウドがまだ生きていたのなら、気付く事ができただろう。 幽鬼のように彷徨う女性が持つ球体と……彼女の手から零れる、淡い緑の輝きの意味に。 『歩いていると、お堀の方から、かなしい感じが伝わってきました。  ぼくは、れくすはこっちにいるんじゃないかなと思って、てりに伝えました。  それでぼくたちは、かなしい感じがする方に向かいました。  そっちは、お城の入り口から大分離れていました。  建物の影になってわかりにくいところに、紫の布キレをかぶった人が土を掘ってました。  お兄さんが「金髪の子供を見なかったか?」と聞いたら、その人は驚いたみたいにぼくたちを見つめました』 当の『金髪の子供』――レックスの墓を作っていたリュカは、突然現れた奇妙な四人組をまじまじと見た。 「なぁ、オジサン! 知ってたら教えてくれよ、そいつはオレの友達なんだ!」 レックスと同じぐらいの銀髪の子供が、威勢良く言う。 それから見たこともない魔物が、小さな手をじたばたと振り回しながらつぶらな瞳をぱちぱちと瞬かせた。 彼の言わんとしたことを理解したリュカは、子供=テリーに視線を移す。 「そうか。君と、この子が……レックスと一緒にいてくれたのか」 「!! おじさん、コイツの言葉がわかるの?」 「僕も魔物使いだからね……レックスに、聞かなかったかい?」 悲しげな呟きに、サイファーはあることを思い出す。 目の前にいるのは、自分と殆ど年の違わない青年だ。間違っても5歳以上の子供がいるとは思えない。 だが、その顔をよく見れば――レックスと出会ったときに尋ねられた、その時に見せられた写真と同じ…… 「あんた、まさか……レックスの親父か?」 サイファーの言葉に、リュカはうなずく。 抑えきれない悲しみを、それでも見せまいとするかのように、両手を硬く握り締めて。 そして、ようやく三人は理解した。 リュカの手についた汚れと、彼の傍に盛られた土の意味に。 『りゅかさんが作っていたのがれくすのお墓だって知って、てりはわんわん泣きました。  ぼくもガマンできなくて、わんわん二人で泣きました。  泣きながらぼくは思いました。せりすさん、くらうどさん、ぱうろさん、れくす……みんなのうらみ、ゼッタイ晴らしてやるって。  そこまで思って、ぼくは急に思い出しました。  ここに来る前に感じた、ゆんゆんアブナイ感じのことを。  ぼくはてりに教えようとしたけど、てりは聞いてくれなくて、それでりゅかさんに言いました。  りゅかさんからそのことを聞いたお兄さんは、様子を見てくると、街の方に走って行ってしまいました』 怒りに任せ、釘バットを振るうジタン。そんな彼を翻弄しつつ、雷や炎を放つクジャ。 攻撃の余波に巻き込まれながらも、補助や回復の魔法でジタンを支援するリノアとケット・シー。 一進一退の攻防を繰り返し、双方ともに決め手を打てず――あるいは打たずにいる。 けれど、ケット・シーは考えている。 もう少しだ。もう少しで終わらせてやる、と思っている。 あれから結構ダメージを受けているし、何より頭に来ているのだ。興奮剤を打った後のように。 絶対に、なんとしてもキツイ一発をお見舞いしてやる。リュカの分も、リュカの子供の分も、キーファの分も。 だからあと少しだ。なんとか耐え切って、リミットブレイクして、一発かましてやる――彼は、そのつもりでいた。 一方、クジャもケット・シーと似たことを考えていた。 当初はジタンのトランスを待ち、それを起爆剤にするつもりでいたが……その必要はなかったようだ。 自分でもわかる。 セフィロスと共に歩きながら集めた、生きたいと足掻く魂達が叫んでいる。 自分の中に眠る、死へ反抗する力が噴出そうとしている。 あと少しだ。そうなるまでの、あと少しだけ……遊んでいてやるつもりでいた。 ジタンとリノアは、二人の思惑に気付くことはなかった。 ただ彼らは、クジャとケット・シーが気付かなかった『彼女』の存在に気が付いた。 ナッツイーターのきぐるみを着た女性――アルカートの存在に。 けれど……気付くのが、少しだけ遅すぎた。 『ぼくは不安でした。  お兄さんがいなくなるとは思わなかったけど、何か悪いコトが起こりそうな気がしました。  だから早く逃げたいと思いました。ろざりさんとてりの服を掴んで、引っ張りました。  でもてりは……ここにいるんだといって聞いてくれませんでした。  そうこうしているうちに、悪い予感はどんどん強くなりました。  そして……』 ケット・シーが叫ぶ。リミットブレイクの光に包まれて。 「よっしゃ、来た来た来たぁ! ボクの奥の手、見せてやりますわ!」 クジャが呟く。赤い輝きに包まれて。 「奇遇だね……僕もちょうどそうしようと思ったところだよ」 二人の力が解放されるのと同時に、アルカートが動く。 戦場から少しだけ離れた場所で。クジャと、ジタンと、リノアと、ケット・シーを睨みつけて。 緑の光に包まれた、白い珠を夜空にかざして、彼女は叫ぶ。 そして、魔力が解き放たれたその瞬間―― アリアハンにいた全ての者の視界が、白一色に塗りつぶされた。 『ぼくが目をあけると、ものすごくおおきな光が、お城を包んでいました。  光は、柱みたいにぎゅーんと伸びて、お空の向こうに吸い込まれていきました。  なんだか、ぼくのトモダチが使ってた、ホーリーのマホウに似てたけど……  ぼくはお兄さんが心配になりました。  だけど怖いから、ここでお兄さんの無事を祈ることにしました』 「ふふっ、ふふふ……」 アルカートは泣いていた。泣きながら笑っていた。 光に飲まれる城を、戦いを、戦っている者達を。聖なる光に裁かれる、最愛の人の仇を見つめながら。 両の目から涙を流して、それでも楽しそうに、狂ったように笑い続けた。 ジオへの手向けが出来たという満足感と―― それでも彼が戻りはしないのだという喪失感にも似た悲しみが、アルカートの虚ろな心を満たしていた。 「ふふ……ははは、あっはははは、あーっはっはっははははは……」 ……彼女は果たして気付いたのだろうか。 背後に立つ男の姿に。 その男の持つ剣が、自分の胸を貫いた事に。 鈍く濡れた音とともに、真紅の液体が流れ出す。 けれど、心臓を貫かれて鮮血を吐きながら――それでもアルカートは笑い続けた。 彼女は果たして、己の死に気付いていたのか。 気付いたから、滑稽だと笑ったのか。 気付かなかったから、笑い続けていられたのか。 どちらにしても、彼女は笑っていた。 胸から剣が引き抜かれても、支えを失って倒れても、心臓の鼓動が止まっても―― その身体から生命が抜け落ちても、彼女の顔から笑みが消えることはなかった。 「キチガイ女が……」 サイファーは忌々しげに吐き捨て、城の方を振り向く。 いや……もはや、そこにあるものは『城』とは呼べなかった。 半分以上が倒壊した――瓦礫の山になっていた。 そして戦闘が行われていた場所より大分離れた―― アルカートから数メートルも離れていない地点に、スパークを撒き散らす黒ネコと巨大なヌイグルミが倒れていた。 おそらくは魔法の衝撃でここまで吹き飛ばされたのだろう。 ネコの方はまだしも、モーグリを模したらしいそのヌイグルミは、表面がズタズタに裂けている。 背中のチャックも壊れて弾け飛び、中身が完全に見えている。 そう。中身が見えていた。 金色の髪も、猫のような尻尾も。――スカイブルーのワンピースも、黒い髪も、見えていた。 「リノ、ア……?」 サイファーは駆けより、少女の身体を引きずり出す。 「おい、しっかりしろ! リノア……リノア!」 必死で名前を呼ぶが、反応は無い。 だが、ぐったりとしていたが――呼吸はあったし、脈拍もしっかりしていた。 金髪の男の方も同じ状態だ。 意識は無いが、生きてはいる……死んでいない。生きている、二人とも。 「なぁ……お二人さん、ダイジョウブ、ですか?」 ボロ雑巾のようになったネコ型ロボット――ケット・シーが、呟くように話し掛ける。 サイファーがうなずくと、ケット・シーは満足げに微笑んだ。 「良かった……ちょーどな、スロットで、デブモーグリ……揃いまして。  ギリギリで合体、できたから……直撃、受けずにすんだ、思います。  ホンマは、クジャってヤツ、ぶっ飛ばすつもりでやったんやけどな……狙い外れても、結果オーライってヤツですか」 電光が弾ける。壊れかけた機械は、それでも言葉を紡ぎ続ける。 「ああ……そういえば、リュカさん……ダイジョウブですかな。  あのヒト、さっき、吹っ飛ばされて……そのまんま、戻ってきてないんや。  それに、クジャと……ホーリー、唱えたヤツ……まだ、生きてはったり、します?」 「……レックスの親父なら、あっちでガキの墓を作ってたぜ。  クジャって奴は知らねえが、近くにはいないようだし……魔法を唱えたらしい女は俺が仕留めた」 彼の言葉に、ケット・シーは安堵したらしかった。 「さい、でっか……良かったわ。これで、安心.……て、……ますな」 急に声が小さくなり、耳障りなノイズが混じり始める。 「なぁ、兄さン。正直、ボク……ブチョウや、クラウド達の、気持……、ホントは……わから……ったんデス。  自分が……死ぬ……も、シレなイ……に、他人や、星のコと……救お……なんテなぁ……  ……はは……ボクみたいな、キカイが……死ぬ、いう……も、変なハナシ、やけどな……」 バチバチと、スパークが激しさを増す。 それでもケット・シーは笑顔を崩さなかった。最期の時まで、崩さなかった。 「でモな、ニイさん……イマなら……みんなの気持ち、なんとナク……わかる気ィ、しま……す、わ……」 そして一際大きなノイズが響き――数時間ぶりに、アリアハンに静寂が戻った。 「あの……ネコ……は……」 停止したケット・シーを見つめていたサイファーの耳に、男の声が響く。 「モーグリに乗ってた、黒ネコは……どうした?」 朦朧とした意識の中、弱々しい声で呟くジタンに――サイファーは答えた。 「黒ネコなら……死んだぜ。  おまえらを救って――死んだんだ」 【ジタン(重傷、右足負傷) 所持品:英雄の薬 厚手の鎧 般若の面 釘バット(FF7)  第一行動方針:? 第二行動方針:仲間と合流+首輪解除手段を探す 最終行動方針:ゲーム脱出】 【リノア(気絶、重傷) 所持品:賢者の杖 ロトの盾 G.F.パンデモニウム(召喚不能)  第一行動方針:不明 第二行動方針:スコールを探す+首輪解除手段を探す 最終行動方針:ゲーム脱出】 【サイファー(負傷、若干は回復) 所持品:破邪の剣、破壊の剣 G.F.ケルベロス(召喚不能)  第一行動方針:リュカ達と合流し、リノア達を助ける 基本行動方針:ロザリーの手助け 最終行動方針:ゲームからの脱出】 【現在位置:アリアハン城下町、城正面の通り】 【リュカ(HP 3/5程度) 所持品:竹槍 お鍋(蓋付き) ポケットティッシュ×4 デスペナルティ スナイパーCRの残骸  第一行動方針:不明 第二行動方針:クジャを倒す  基本行動方針:家族、及び仲間になってくれそうな人を探し、守る】 【ロザリー 所持品:世界結界全集、守りのルビー、力のルビー(ルビーの指輪)、破壊の鏡、もう一つ不明  第一行動方針:サイファーを待つ 第二行動方針:ピサロを探す 最終行動方針:ゲームからの脱出】 【テリー(DQM) 所持品:突撃ラッパ、シャナクの巻物、樫の杖  第一行動方針:泣く 第二行動方針:わたぼうを探す 最終行動方針:ゲームから脱出する】 【トンベリ(トンヌラ) 所持品:包丁(FF4) スナイパーアイ 行動方針:テリー達についていく】 【現在位置:アリアハン城堀の近く】 【クジャ(HP 6/7以下、ホーリー直撃) 所持品:ブラスターガン 毒針弾 神経弾  第一行動方針:不明 第二行動方針:皆殺し 最終行動方針:最後まで生き残る】 【現在地:アリアハン城近辺のどこか、詳細な位置は不明】 【アルカート 死亡】 【ケット・シー 死亡】 【残り 89名】 *アリアハン城は半分以上が倒壊。地下牢への階段が瓦礫で塞がった可能性有り

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