507話

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*第507話:MOON FANTASY 体が疲れていると反比例するように思考がぐるぐると回るようだ。 誰を信じればいいのか。 何を信じるべきなのか。 本当にアルガスを信用するべきなのか。 さっきから、同じ事ばかりが浮かんでは消えていく。 後ろを歩くロザリーは何を考えているのだろう。 まさか、アリーナを助けない選択をした自分を恨んではいないだろうか。 カナーンの街を出てから真っ直ぐ北へと歩いてきた。 ロザリーは一度、どこへ向かうつもりなのかと訪ねたきり、口を開かなかった。 自分は「とりあえず安全と思えるところまで」と答えた。 口調が突き放したようだったかもしれない。 信頼できる人を見つけなければ。 早くこんな現実から脱出しないと、壊れてしまいそうだ。 ターニアはどこにいるのだろう。 ハッサンは? テリーは? そしてサイファーは? ああ、テリーは死んだだっけ。アルガスが言っていた。 ―― しかしひどい有様だったぜ、テリーだったものはよ。 ――腕も足も。…頭もぐちゃぐちゃさ。 本当にテリーだったのかな。 死体を……見たほうがよかったのかな。 頭も腕もぐちゃぐちゃの、死体を。 ブルーのターバンを思い出した。 その下にあるはずの銀色の髪。整った顔、強い眼差し。 それらが、赤黒い血にまみれる。 片目はえぐられたようにぽっかりと穴が開き、 鼻は元からそこになかったかのようにつぶれ、ピンクの肉が覗く。 くちびると呼べるものもなくなり歯と歯茎もむき出で頭蓋骨に穴が開き中身が飛び出しているテリーの顔。 手足はきちんとそこにあったのだろうか。 あったとしても骨は粉々に砕けるか、あらぬ方向に曲がり飛び出しているかもしれない。 腹にも向こうが見渡せるような穴が開き内臓がこぼれ、衣服でしか識別が出来ないような死体。 それが、テリー……? うっ、と小さく呟いて、イザは足を止めた。 考えなければよかった。 くさった死体の方が何万倍もマシだ。 どうしてこんな想像をしてしまったのだろう。 胸が熱い。呼吸が苦しい。額に嫌な汗が流れてきた。 ロザリーの軽い足音が止まる。荒く小さな呼吸を整える気配。 しまった、早く歩きすぎた? 「ロザリーさん、すみません、大丈夫ですか?」 「ええ、足が遅くてすみません。……イザさんこそ、大丈夫ですか?  なんだかお顔の色がよくないですわ」 「大丈夫、ですよ?」 「月明かりのせいでしょうか」 ロザリーがぐるりと空をみわたす。 月も、星も、うつくしく輝いている。 月夜の散歩なんて、言っている状況じゃない。 早く、なんとかしなくては。 前を歩くピサロの足が急に止まった。 一歩先に歩いていたザンデも足を止め、ピサロを振り返る。 そんな自分達など気にも留めず、ピサロは前方を見つめる。 そんなピサロの様子に、ケフカでさえも首をかしげた。 ピサロの視線の先を追う。 森を出たのはしばらく前のこと。 山脈の谷間を抜け、低くはない山をぐるりと回ったら少々の平原が目の前に広がった。 このまま進めば程なくしてカナーンに到着するだろう。 その平原の中央にぽつんと影が見える。岩…ちがう、人だ。 ちょうど雲が月を隠し、薄明かりに慣れた視界を曇らせた。 マティウスは目を凝らしながら身構える。ザンデも同じ。ただ、ピサロだけが臨戦態勢をとらない。 人影は、動く気配がない。 「とりあえず、身を潜められるところへ行きましょう。  こんな見通しのよすぎる場所は危険です」 「はい」 「カズスに行こうと思います。村は危険ですが、情報があるかもしれない」 「そうですね……サイファーさんのことも探さないと。さぁ、行きましょう」 ロザリーが明るい声でイザに微笑みかける。 月明かりが彼女のうつくしい笑顔を一層うつくしく照らし上げる。 (やっぱりロザリーさんってものすごく美人だ) 改めてイザは思う。 彼女はまるで、童話の中のお姫さまのようだ。 いやいっそ、絵画や彫刻などの美術品かもしれない。 早く、ピサロを探して、ロザリーを安心させたい。このうつくしい笑顔を守りたい。 そのためにも早く、サイファーを探さなくては。 自分だけではロザリーを守りきれない。 心が少し、落ち着いた。 イザも微笑みを返した。 「さぁ、行きましょう」 雲が月を覆う。 歩くのがまたすこし困難になった。 しかし明るいうちに一度歩いた道だ。大丈夫、行ける。 とりあえず、前に進もう。 顔を上げて前を向く。先ほどまでは見えなかった黒いかたまりが前方に見えた。 「……だれか、おるな」 「ああ。向こうもこちらに気付いているな」 「アヒャヒャヒャ! たいしたことナーイ人たちのようですよ!  向かってくるなら殺しちゃいまショー!」 「黙れ道化」 「ムキー! さっきからお前たち、ぼくちんに対する態度がなってないですネ!  ぼくちんが本気になれば、お前たちなんかあっという間にゴミですよ! ゴミ!」 「ファファファ…その本気は後に回せ……  さてあまり大声はよくなかろう。少し黙っておれ」 「ピサロよ、」 どうした、とマティウスが声をかける前に、視界から彼が消えた。 ピサロが走り出したのだ。 あれは何だ、とイザは目を細めた。 かすかに声がする。人か? 複数人いるようだ。 さてどうしようか、などと考えているうちに、影がひとつ動き出す。 どうやらこちらに向かっているようだ。 雲が風に流れて月から退いた。視界が少し開ける。 「あっ」 ロザリーが小さく悲鳴をあげる。 どうする? ロザリーを守らねば。 イザはザックからすばやく剣を取り出し身構えた。 「ロザリーさん、僕が足止めをします。逃げてください」 男からものすごいプレッシャーを感じる。空気が震えている。 強い……すごく。 ぶるりと身体が震えた。 男の身体が見えない。ただ、長い髪だけが月光を反射してキラキラと銀色に光っていた。 ……金…いや、銀髪? ――銀髪は全員ヤバイと思っておけ アルガスの声が反響する。 銀髪だ……! 「ロザリーさん! 早く逃げて!!!」 ロザリーをちらりと見やる。逃げ出す気配がない。 「ロザリーさん!!」 もう一度怒鳴る。 ロザリーの身体が反応した。そうだ、それでいい。後ろを向いて、走ってくれ。 しかしロザリーは、あろうことか、男の方へと駆け出した。 「ロッ…!」 声にならない悲鳴。構えを解き、ロザリーの細い手首をつかむ。しかし彼女は信じられない力でイザを振りほどこうとする。 だめだ、この手を離すわけにはいかない。 「イザさん! 離してください!」 「ダメです! 危険です! 早く逃げてください!!」 「あの、大丈夫ですから、お願い! 離して!」 どうする? ロザリーは酷く興奮している。叫ぶように離して、と繰り返す。 このままでは、あの男の第一打を受けられない。 しかし手を離せばロザリーは走り出してしまうだろう。 男を見やった。もう間近だ。呪文の詠唱も間に合わない。あと数秒しか時間はない。 その男の後方に、もう一人、長髪の男を見た。 そちらの男も身体が見えない。髪だけが、キラキラと銀色に輝いている。 ――セフィロス!? イザはロザリーの腕を強く引き、銀色の男たちから庇うように彼女を抱きしめた。 第一打だけを甘んじれば、魔法が間に合うかもしれない。小声で詠唱を始める。 「ピサロ!」 後ろでマティウスが叫んでいる。 説明は後でいい。いるのだ。目の前に。走れば手の届く距離に。 薄明かりを反射して淡く輝く髪。白い頬。優雅なドレス。 ロザリー! 早く、その顔をしっかりと確かめたい。 その春のようとも星空のようとも思える笑顔を見たい。 やわらかで陽だまりのような声を聞きたい。 ピサロは走り続けた。 「…ですから、お願い!」 声が聞こえる。 たった2日だというのに、何と懐かしい声だろうか。しかしその響きはとても悲壮だ。 「離してください!」 男が、彼女の腕をつかんでいるようだ。もめている様が判る。 ピサロは走りながらザックから刀を取り出した。 「ピサロ、どうした」 マティウスが追いかけてきているようだ。 今はそれどころではない。 男が、彼女の細い身体に腕を回し動きを封じた。 右手に握った剣を握りなおしたようだ。 あの男……!! 男が、剣を握った右手を振り上げたかのように見えた。 「ピサロさま!」 腕の中のロザリーが叫ぶ。 え? と腕を緩めたと同時に、背中に衝撃を受けた。 振り返ろうとしたのに体中の力が抜けて、ロザリーに寄りかかる。 「イザ…さん?」 大丈夫ですか? とイザは言葉をつむいだはずだった。 言葉は声にならず、目の前に雑草が広がった。 ロザリーの悲鳴がひびきわたった。 「ピサロ様……どうして……」 ピサロ? ああ、こいつがロザリーさんの探していた人だったんだ。 ロザリーさんは気が付いていたんだ。あんなに暗かったのに。 だったら言ってくれたらよかったのに。 それにしても背中が熱い。どうしてこんなに息苦しいんだろう。 頬に、ロザリーの暖かい手が触れた。 赤い結晶が、イザの虚ろなひとみにぽろぽろとこぼれ映った。 「イザさん、しっかりしてください! いま、結界を……!」 手が震える。ザックから守りのルビーを取り出そうとするが、上手くいかない。 手の先がとてもつめたい。でもさっき触れたイザの頬はもっとつめたかった。 その手に、ピサロの手が重なる。銀色の瞳が光っている。 「ピサロさま、イザさんを助けて……」 ロザリーの懇願に、しかしピサロは首を横に振った。 「ピサロさま!」 「お前を殺そうとした男だ」 「違います! ずっと私を守って下さいました!」 「ずっと、お前を殺す機会を伺っていただけかもしれん」 「違います!!」 「聞け、ロザリー。私にはこの男がその刀を振り上げたように見えた」 「そんなはず……!」 「ないとどうして言い切れる?  お前はこの2日間誰の死にも立ちあわなかったのか? 混沌に呑まれ、自我をなくした人間を誰も知らぬというのか?」 ロザリーは押し黙った。 反論の言葉が見つからないからではない。ピサロを、怖いと思ったからだ。 ロザリーヒルにいたあのころ、ピサロはよく血のにおいをさせてやってきた。 なにをころしたのか、などとは聞けなかった。 果たして殺したのは人だったのか魔物だったのか。 それは今でも判らない。 でももうどうでもよかった。終わったことのはずだった。 今のピサロの瞳はあの頃と同じ光を持っていた。 イザの背中からは、どくどくと血があふれ出している。 血のにおいは、エルフの心を弱らせる。 「なにかあったようだな。私たちも向かうぞ」 ザンデが促したが、ケフカは動こうとしない。 表情の読めない道化の表情が愉快そうに歪んだ。 「アヒャ…アナタを見込んで、お話があるのですけどネェ……聞いていただけますか?」 【ピサロ(MP1/3程度) 所持品:天の村雲 スプラッシャー 黒のローブ  第一行動方針:ロザリーの誤解を解く  第二行動方針:カナーンでアリーナを探す。ザンデ・ケフカを監視しつつ同行】 【マティウス(MP 1/3程度)  所持品:E:男性用スーツ(タークスの制服) ソードブレイカー 鋼の剣 ビームウィップ  第一行動方針:状況把握  第二行動方針:カナーンに向かい、ゴゴの仇(アリーナ2)を討つ  基本行動方針:アルティミシアを止める  最終行動方針:何故自分が蘇ったのかをアルティミシアに尋ねる  備考:非好戦的だが都合の悪い相手は殺す】 【ザンデ(HP 4/5程度)  所持品:シーカーソード、ウィークメーカー、再研究メモ、研究メモ2(盗聴注意+アリーナ2の首輪について)  第一行動方針:マティウスの協力を取り付ける  第二行動方針:カナーンへ向かいアリーナを探す。可能ならば首輪を奪う。  基本行動方針:ウネや他の協力者を探し、ゲームを脱出する】 【ケフカ(MP2/5程度)  所持品:ソウルオブサマサ 魔晄銃 ブリッツボール 裁きの杖 魔法の法衣  アリーナ2の首輪  第一行動方針:ザンデに取引を持ちかける  最終行動方針:ゲーム、参加者、主催者、全ての破壊】 【ロザリー(混乱) 所持品:世界結界全集、守りのルビー、力のルビー、破壊の鏡、クラン・スピネル、E猫耳&しっぽアクセ  第一行動方針:?   最終行動方針:ゲームからの脱出】 【現在位置:カナーン北の平原】 【イザ 死亡】 【残り 51名】

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