240話

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*第240話:穢れた希望は誰が手に在りて その名の由来は、誰も知らない。 造りし者の名なのか。場所の名なのか。 扱う資格を持つ者の名なのか。かつて携えた者の名なのか―― 誰も知らぬ、その名の意味はどうあれ。 その剣の持つ意味は一つ。 闇を切り裂く光を、天空の城へ誘うための道標。 だから、その剣は後に呼ばれる。邪悪を破る希望を……天空の勇者を導く剣。 ――『天空の剣』と。 けれど魔王の手に堕ち、英雄の血を浴びて曇った白銀の剣は。 今や、希望とはかけ離れた場所に立つ男の手に握られている。 殺人者として生きる決意を固めたその男には、剣自体は手に余る代物であれど…… 刀身に込められた魔力は非常に魅力的であった。 持つ者の力を倍増させる――男にとって、どのような武具よりも有用な魔力。 だから男は持ち去った。 己には扱いきれぬ剣を。 あらゆる魔を打ち払う、竜神の力を宿す器となるべき剣を。 未来の希望となるはずだった、血に穢れた剣を―― ロランがフルートに追いついたのは、数十分後のことだった。 「フルートさん!」 森の中でくずおれ、肩膝を着いていたフルート。 月明かりに照らし出された彼女の姿に気付き、ロランは駆け寄る。 「ちくしょう、あの野郎……小悪党らしく、逃げ足だけは早いってか……」 肩で息をするフルート。 その顔は青白く、抑えきれない苦痛が滲み出していた。 限界を超えた力を、長時間駆使した――その反動が彼女の身体を襲っていたのだ。 「フルートさん……早く戻ろう」 ロランの言葉に、しかしフルートは小さく鼻を鳴らす。 「フン、戻るだと? 冗談じゃねぇよ……あたしはまだ動けるし、さっき、ヤツの姿を見たんだ。  赤い髪の大男……あのクソッタレをぶっ飛ばすまで諦めるか。戻りたいならテメー一人でさっさと戻るんだな」 それだけ言い放つと、彼女は再び駆け出そうと立ち上がった。 その肩をロランが掴み、引き止める。 「サックスを死なせる気か?!」 『死なせる』という単語に、フルートの身体が一瞬硬直する。 「いくらリルムが回復魔法を使えると言っても、まだ子供なんだ……  魔力だって技術だって、フルートさんみたいな本職の人には遠く及ばない。  ……早く、戻ろう。今ならまだ間に合うかもしれない」 フルートは大きく舌打ちした。 それから、突然近くにあった木を殴りつけた。 彼女の胴体より一回りほど太かった木は、鉛筆のようにバキッと折れて地面に倒れる。 呆気に取られるロランを余所に、フルートはよろめきながらも踵を返した。 「オラ、何ぼーっとしてんだよ。グズグズしてっと置いてくぜ」 「あ……ああ」 「くそっ……あんな悪党は、一秒だって野放しにしたくねぇのに……  まぁいい、顔は覚えた。次に会ったら容赦なくブチのめしてやる」 「……」 今までのフルートとかけ離れた言動に、ロランの中の疑惑は確信に変わる。 多重人格。フルートは、少なくとも二つの人格を持っているのだ。 おっとりのんびりした、サックス達も知っているフルートと。 竜王を倒した時の、粗暴だが正義感に満ちたフルートと。 そして今目の前にいるのは――後者の人格…… そこまでロランが考えた時、フルートがまたもや膝を着いた。 「大丈夫か?」 手を差し伸べるが、平手で払い退けられる。 「触るな! ガキじゃねえんだ、一人で歩ける……」 だが、それが単なる強がりでしかない事は明らかだった。 ただでさえ、洞窟を迷いながら歩いていたせいで体力を消費している。 そして正体不明の敵――フルート曰く、赤髪の男――の攻撃でダメージを負っている。 それでこの距離を、数十分間も全力疾走して…… これ以上回復もせずに身体を酷使すれば、間違いなく筋肉がイカれてしまう。 「変な意地張って身体壊してたら、意味ないだろ?」 ロランはもう一度手を伸ばし、立ち上がらせた。 そして有無を言う時間を与えずに彼女の身体を背負う。 「おい、ロラン! ふざけてんじゃねぇ、下ろせよ!」 「これ以上あなたに無理をさせるわけにはいかないし、休んでる暇も無い。  ……大丈夫。これでも体力と持久力には自身があるから」 「そういう問題じゃねえ! 一人で歩けるって言ってるだろ!」 「こういう時ぐらい、素直に頼ってくれよな。  出会って一日でも、仲間だろ……僕達は」 「あたしに仲間なんていねぇよ!」 「僕にとっては仲間だ。  あなたも、もう一人のフルートさんも、サックス達も……パウロやムースと同じぐらい大切な仲間だ」 フルートは奇妙な生き物でも見るかのように、ロランに視線を注ぐ。 ややあって、肩を竦めて呆れたように呟いた。 「ケッ……バカ野郎が。  テメェみてえなお人よしは、いつか早死にするぜ……せいぜい気をつけるんだな」 そしてしばらく彼女は黙っていたが、ふと、何かを思い立ったように呪文を唱え始める。 首を傾げたロランの身体を包み込むように、淡い光が舞い上がる。 同時に、足の疲労が急激に薄れ、身体が軽くなっていくのを感じた。 「特別サービスだ……ピオリムみてーな補助呪文はガラじゃねぇが、ここでサックスに消えられても困るだろうからな」 フルートが呟いた。どうやら彼女が唱えたのは素早さを上げるための呪文らしい。 足に羽でも生えたかのように、楽々とスピードが出せる。 「ありがとう……フルートさん」 ロランは万感の思いを込め、呟いた。 だが…… 「どういたしまして~……ところで私~、何かしました~?」 返って来たのは、なんとも気が抜ける口調と言葉。 そう、本来のフルートの人格に戻ってしまったのだ。 少しだけ肩を落としながら、ロランは答える。 「いや、何でもないよ……それより、サックスが危険だ。  急ぐから、振り落とされないようしっかり掴まってくれないか」 「え? は、はい~」 フルートは困惑しながらも、ロランにしがみつく。 それを確認して、ロランは全速力で走り出した。 ロラン達が元の場所まで戻ってこれたのは、襲撃を受けてからちょうど一時間後だった。 「ロラン!」「フルート!」 二人に気付いたゼルとリルムが、木々を分けて駆け寄る。 「無事だったんだ! 良かったぁ」 リルムがほっとしたように胸を撫で下ろした。 「ごめんなさい、迷惑をおかけして~。  それより、サックスさんは~?」 「あっ……」 フルートの言葉に、ゼル達は――表情を翳らせ、顔を見合わせた。 「どうしたんだ?」 「……その、な。言いにくいんだけどよ……」 ロランの問いに、ゼルは彼から視線を逸らしたまま、やけに歯切れ悪く呟く。 「サックスさん、どうしたんですか~?」 フルートが不安げに尋ねる。 「その……」 幼い顔を曇らせて、リルムが言い淀んだ。 ゼルも、何か言い出し難そうに、ロランとフルートを交互に見つめる。 その様子に、ただならぬものを感じたロランは―― 「……まさか!」 ゼル達を押しのけ、サックスが倒れた場所へ向かう。 まさか……まさか……間に合わなかった――? 脳裏に浮かんだ最悪の光景を打ち消そうと、木の葉を掻き分け…… 「……!!?」 そして、ロランが見たものは。 見知らぬ、優しそうな女性の膝枕に乗っかって、シアワセそうな顔をしているサックスの姿だった。 「あ、ロランさん。すみません、心配かけて」 ロランの姿に気付いたサックスが、のんきに顔を上げる。顔色はまだ悪いが、それでも予想以上に元気そうだ。 「……えーと、サックス……大丈夫なのか?」 「とりあえず峠は越しました。もう生命の危険はありませんよ」 白いローブを纏った女性が、にっこりと笑って答えた。 その手から、暖かい癒しの光が溢れている。 「さすがにまだ、自力で歩けるぐらいに回復したわけではありませんが……  元々、白魔法は得意なんです。夜明けまでにはバッチリ治してみせます」 「ユウナさんはね、ジョブチェンジの力を持ってるんだってさ。  いやー、世界って広いんだね。僕とギルダー達しかそんなことできないって思ってたのに」 「……あ、そう」 ロランはがっくり肩を落とす。 ああ、急ぐ必要なんてなかったじゃないか。これならフルートが言った通り、襲撃者を追いに行くんだった…… ため息をつく彼を余所に、フルートがサックスとユウナに近づく。 「えっと、ユウナさんでしたっけ~。私も回復は得意なんで、お手伝いします~」 「あ、ありがとうございます」 「フルートさん! 無事だったんですね!  なんか襲撃者を追って行ったってんで、心配したんですよ」 「あれ~、そうなんですか? 私、また記憶飛んじゃって、良く覚えていないんですけど……  でも、サックスさんも助かって良かった~。ありがとうございます、ユウナさん~」 「いえいえ、当然のことをしたまでですから」 何だかあっさりと打ち解け、和気あいあいと話している三人。 ロランはますます置いてけぼりを食ったかのように、呆然と突っ立っている。 そんな彼の肩を、ゼルと、見覚えのない中年の男性――プサンが叩いた。 「ま、色々言いたいこともあるだろうけどよ……」 「誰も命を落とさずに済んだのですから、これで良しということにしませんか?」 「……そうですね」 ロランは息をつき、苦笑を浮かべた。 確かに、一応誰も死なずに済んだのだから……これで良かったんだと思おうとした。 ちょっとした不満と、一抹の不安を押さえ込んで。 ――彼らは知らない。 ロランとフルート、二人が焔色の髪の男を取り逃がしたことが、どんな未来をもたらすことになるのか。 神ですらも、まだ、知らない…… 【フルート(MP減少) 所持品:スノーマフラー 裁きの杖 魔法の法衣  第一行動方針:サックスの治療】 【ロラン 所持品:ガイアの剣 ミンクのコート  第一行動方針:サックスの回復を待つ】 【リルム(MP減少) 所持品:英雄の盾 絵筆 祈りの指輪 ブロンズナイフ  【ゼル 所持品:レッドキャップ ミラージュベスト  第一行動方針:微力ながら治療を手伝う】 【サックス(重傷、行動不能) 所持品:水鏡の盾 草薙の剣 チョコボの怒り  第一行動方針:回復待ち】 【第二行動方針(五人共通):なるべく仲間を集める 最終行動方針(五人共通):ゲームから抜ける。アルティミシアを倒す】 【ユウナ(ジョブ:白魔道士) 所持品:銀玉鉄砲(FF7)、やまびこの帽子 【プサン 所持品:不明  第一行動方針:サックスの治療/待機 第二行動方針:ドラゴンオーブを探す  基本行動方針:仲間を探しつつ、困ってる人や心正しい人は率先して助ける 最終行動方針:ゲーム脱出】 【現在位置:岬の洞窟から北西の森(デュラン達とは離れた場所)】 【サラマンダー 所持品:ジ・アベンジャー(爪) ラミアスの剣  基本行動方針:参加者を殺して勝ち残る(ジタンたちも?) 】 【現在位置:岬の洞窟から北西の森(デュラン達がいた場所)→移動】

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