541話

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*第541話:Umkehrung der Allianzen ?? 燃えている。故郷が燃えている。 魔物に襲われてやっとのことでたどり着いた村の門が、多くの客で賑わっていた宿が、仲間たちと探検した森が。 嫌な思い出も、いい思い出もふんだんに詰まった僕の故郷が、燃えてしまっている…。 これが実物とは別の、作られた空間だという人もいた。でも、どうしてそう断言できようか? 大体、これほどの広大な空間を作ることができるなら、住人だけを全部消してしまうこともできるに決まっているだろう。 あの魔女は魔王すら容易く拘束してしまうほどの魔力の持ち主なのだ。 「おい、どうしたんだ? なんか顔色悪くないか?」 「ああ、すみません、少し考え事をしていたので…」 「案内してもらってて言うのもなんだが、あまりそっちに気を取られすぎるなよ? 何が出てくるか分からないんだからな」 「そうですね、すみません」 ……考えるのはやめよう。本当に、何が出てくるか分からないんだから。 「井戸はこっちの方向です、足元に気をつけてください」 「ああ、あそこだな。誰かいるみたいだぞ? あれは…」 その『誰か』とやらを見つけた途端、ヘンリーは舌打ちをして駆け出していった。 あまり誰かに会いたくはないのだが、もう行ってしまったのだから仕方がない。 ヘンリーの駆けていった方向を見る。彼の言う、『誰か』。その一人と目が合った。 どう見ても身体能力は一般人以下、戦いに参加するどころか、武器もまともに持ったことがないだろう。 煙を吸い込み、体の内側からも相当冒されているはずだ。ときおり、ケホケホと咳をしている。 そのような人間が、今自分と真正面から立ち合っている。 この事実は少なからずサラマンダーを動揺させた。 何という心の強さ。勝てる相手としか戦おうとはしていなかった自分とは大違い。 「何故だ?」 なんという愚問。問うてはみたものの、自分の中でも答えは出ている。 それに加えて何故自分が動揺しているのか、という答えも出ている。 リュックが民衆を守る戦士の強さだとすれば、彼女は巷に言うところの、母の強さのようなものか、それを持っているのだから。 対面した相手が未知の相手であれば、自分にないものを持った相手であれば、多少の動揺は自然なこと。 そして、先ほどの問いには彼女はこう答えた。 「人を守るのに、理由なんて必要ですか?」 彼女は実に自然な動作で草花を取り出し、匂いをかぐようにすうっと息を吸う。 「スコールさん! 今すぐ村の南東の井戸へ!」 その一連の行動が何を意味するか、直感的に理解した。地を蹴り、エリアに肉薄する。 「素人だと思っていたが、思ったよりもいい反応だな」 サラマンダーの拳は、エリアの持っていた微笑みの杖によって受け止められた。 エリアから見て、サラマンダーの笑みに嫌味は感じない、むしろ彼の感嘆を感じるものだ。 サラマンダーにしても、戦いの素人に拳を受け止められたことへの不快感はない。むしろ、高揚してくる。 何かの魔法がかかったのだろうか? それもあるかもしれない。だが、気持ちが高鳴っているのは確かなのだ。 「それとも、実戦経験があったのか?」 「反応はいいと、昔からよく言われるんです」 「成程な…」 ただ、いくら反応がいいといっても素人は素人。拳を受けて、杖が軋む音には気付かない。 それに、エリアは下半身があまり動かない。先ほどまで建材に挟まれていたのだ、そう簡単に回復するわけがない。 背水の陣、火事場の馬鹿力、彼女にとって、今の状況はそう表せるか? 不意を撃とうと思えばいくらでも撃てた、だが、それで終わらせてしまうのは面白くない気がしたのだ。 それまでに感じていた動揺も収まり、今はただ高揚感がある。 先ほどから、青髪の少女が眠っているリュックを起こそうと必死だが、 あのカプセルボールの粉末を吸い込んだら当分起きないだろう。ビビが起きることもない。 エリアはスコールとやらの援軍を期待して耐えているのだろうが、その前に終わらせる自信はある。 奇跡か、それとも実力か。杖で拳による連撃を受け止める。そのたびに木材が軋む音が聞こえる。 重力を練り上げ、拳に乗せる。グラビデ拳とも呼ばれる技だ。 これをも杖で受け止めるが、この拳による衝撃は並のものではない。 さらに一歩踏み込み、もう片方の拳に全体重を乗せ、エリアへと撃ち込む。 拳を受けようとしたその杖はぽっきりと折れ、勢い止まらず、エリアに直撃する。 精神面で互角に立てば、やはり力の差は出てくるものだ。エリアは紙くずのように吹き飛び、地に倒れ伏した。 青髪の少女がエリアに駆け寄る。どこからか、薬草を持ってきて飲ませている。 エリアが再び立ち上がって向かってくるも、もう一撃で終わる。はずなのだが、拳が空を切る。 確かに当てたはずなのに、手ごたえは無かった。 よく見ると、周りに怪しげな霧が立ち込め、エリアが何人もいることに気付いた。 「これ以上、彼女たちに手を出すな」 「貴様らは……」 「ヘンリーさん、それにサックス! 無事だったんですね!」 「まったく、一人でこいつと戦おうなんて無茶ですよ。まあ、ここからは僕たちに任せてください」 「エリアは、ターニアちゃんを連れて下がってろ」 緑色の髪をした男と、騎士風の男。ヘンリーと、サックスだったか。 どちらも以前に戦って、下した相手だ。 それだけなら問題はないのだが、そいつらも何人もいる。 いや、エリアも、リュックも、青髪の少女も、ビビの数まで増えている。 「これは……どういうことだ?」 小石を拾ってヘンリーの一人に投げつける。ヘンリーはかわそうともせず、それどころか石が体をすぅっとすり抜けていった。 「幻覚を見せる魔法か?」 ヘンリーのうちの一人が落ちていたナイフを拾い、突き出してくる。 単調な攻撃だったのでよけるのは容易かったが、悪いことに、幻覚含め全員がほうぼうへと動くために集中できない。 さすがにこの状態で、数人相手に戦うのは無理だ。さらに悪いことに、もう一人誰か来るはず。 接近戦で一度に複数を相手するには、相手の二乗分の実力は必要だと言われる。 「引き際か…」 敵を見つけることだけに集中すれば、音や気配、空気の流れで大体の敵の位置をつかむことはできる。 それに、動かないものの位置そのものが変わることはないはず。 だから、リュックやビビが倒れていたはずの方向に向かうことで、包囲網自体はたやすく抜けられた。 ただし、間違いなく誰かが追ってくるだろう。現に後ろから、ザッザッザと足音が聞こえる。 少々様子がおかしいようだが。 井戸のある空間から離れた場所。サラマンダーは追ってきた男、サックスと対峙。徐に口を開く。 「故意に俺を逃がそうとしたな? どういうつもりだ?」 「やっぱり分かりました?」 サラマンダーが逃げている間、サックスは例のラケットで攻撃はしていた。 だが、すべての攻撃の狙いが急所や足からは外れていた。 まるで、逃げてくださいと言わんばかりに。 「毒のせいかと思ったがな。それだけにしては不自然がすぎる」 サックスは短く笑う。昼間とはまるで別人であるかのような態度。 だが、口調こそ穏やかだが、飛びかかりたいのをギリギリで抑えているという印象も受ける。 「提案があるんです。明日の朝、おそらくこの周辺に旅の扉が出るでしょう。  僕がこの村の負傷者と共に旅の扉に入る予定なんですが、そこで襲撃して欲しいんです」 「俺と組むということか?」 「組むというほどのものでもありません。別に協力するわけではありませんから。  ただ、予め示し合わせておけば対応しやすいというだけのことです」 待ち伏せに関しては、サラマンダーにはあまりいい思い出がないが、確かに旅の扉の前ならば必ず人は通る。 さらにサックスが誘導するようだから、襲撃は確実に実行可能だろう。 だが、この申し出には気になることがある。 「解せんな。お前が今一番殺したい相手は俺ではないのか?」 サックスはサラマンダーがロランを殺したと思い込んでおり、フルートを殺したのも実質的にサラマンダーだ。 本当は手を組むのではなく、旅の扉の前で待機しているところを狙って、集団で襲おうという魂胆があるのではないか? 何より、これほどまでにあからさまに敵意を出しているではないか。 サラマンダーの懸念を読み取ったのだろうか、サックスが話し出す。 「僕は、このゲームで優勝すると決めました。  確かに、今すぐにでもあなたをブチ殺したい気分です。この先、戦うことになるかもしれません。  でも、まだ潰し合うには早いでしょう?」 「ゲームに乗ったことは分かっている。俺はその動機を聞いている」 サラマンダーにこういう提案をする時点で、罠かサックスがゲームに乗っているかの二択。 ゲームに乗ったなら、その心境にどんな変化が起こったのか? 衝動的なものなら、また心変わりするということもあり得るが…。 「いや、どんな動機であろうと俺には関係のないことか」 自身の動機も大したものではない。どう動いて、どう思うかによってスタンスなどいくらでも変わるのだ。 「まあ、受け入れられるかどうかは問題ではないんです。僕の希望を伝えたまでですから。  それに、僕たちが旅の扉を潜るまでに一度は襲撃をしてくるつもりでしょう?」 「違いない」 「ところで、あのビンに入っている毒ってまだ余っていませんか? 余っているなら、譲ってほしいんです。  もちろん、ただでとは言いませんから」 サックスはザックから、チョコボの像のようなものを取り出した。 「なんだ?」 サラマンダーはその謎の物体をまじまじと見つめる。 ただの像ではない。あちこちから湯気が吹き出している。 「チョコボの怒りというアイテムです。使えばフレアと同じ威力の爆発を起こす代物です。  目立つので、僕には上手く使えそうにありませんから、交換してあげます」 サラマンダーは無言で、紫色の小瓶を取り出す。もっとも、これが毒か解毒剤かは彼には分からないが、問題ではない。 チョコボのいかりとやらも、効果があるのかどうかは疑わしいのだから。あれば儲けものというところだ。 「じゃあ僕はこれで。みんなには、思った以上に逃げ足が速かったと言っておきますから。実際速かったようですし」 互いにアイテムを投げ渡すと、悪辣な言葉を吐き、プイと後ろを向いてサックスは去っていった。 一分一秒でもこの場にいたくないということなのだろう。 サックスが去った後、サラマンダーは先の提案の真の意味を考える。 挑戦か、罠か。いや、自分を利用して何かを為そうというのか? 必ずしも、サックスの言ったとおりに事を進める必要はない。 彼が考えるのは、どうやれば効率よく人数が減らせるか、それだけ。 サラマンダーを仕留めたほうがいいと言って、ヘンリーたちから離れたものの、元々深追いはしないという方針だった。 予想以上に相手の逃げ足が速く、火もせまってきたので追うのを断念したといえば、怪しまれることはないだろう。 サラマンダーは当然、僕も襲撃のターゲットに入れているはず。 こちらとしてもそのことは前提となっている。 もちろん、迎撃に際してサラマンダーを殺すことをも考えている。 やつはこの手で殺してやりたい。村にいる人間を数人殺した後に僕に殺されてくれるのが一番の理想だ。 本当は、すぐにでも槍でブチ抜きたかったが、それをしなかったのは勝てるかどうか不安だったから。 …いや、本当の理由は別にある。 井戸周辺にいた人を殺害することはきっと出来ただろう。 だが、そこにエリアの姿があった。覚悟はしていたが、それでも彼女の姿を見て、動揺してしまった。 ここで生き残れるのは一人だけ。誰かが死ななくてはいけない。 だから、僕と会う前に誰かがエリアを殺してくれればいいと思っていた。 そうすれば、僕が殺す必要はなくなる。でも、再会した。 頭で考えるのと、実際に会ってみるのとでは大違い。 彼女に、僕がゲームに乗ったことは知られたくないと思った。 だから、サラマンダーを犯人に仕立て上げ、ここにいる間は罪をかぶってもらおうと思った。 言っておけば、きっとこの大陸を移動するまでの間に襲撃してくるだろう。 その裏で行動すればいい。サラマンダーにすべての犯人になってもらえばいい。 それでも、エリアにはいつかバレてしまうかもしれない。 もしそうなったら…? …考えるのはよそう。もっと別の事を考えて、気を紛らわそう。 そういえば、さっきよりも一層村が燃えている。 妹を見捨てて逃げ出した僕が命からがらたどり着いた村の門が、家族の眠る墓が、 エリアやサラに見せてあげると約束した秘密の花畑が、トパパやギルダーと共に過ごした家が。 楽しくて、悲しくて、つらくて、忘れたくない思い出が詰まった僕の故郷が、燃えてしまっている。 この世界はただの虚構かもしれない。僕もそう思いたい。 でも、どこからどう見ても、ここは僕の住んでいた場所、浮遊大陸のウルの村なのだ。 ここが本当に『本物』だったら、僕の帰るところはもう無くなってしまったということに……。 ……余計な事を考えるのはやめよう。優勝すればきっと、きっとみんな元に戻せる。 この村も、デッシュも、ギルダーも、フルートも、何事もなかったかのようにいつも通りの生活に戻れるんだ。 でも、エリアは元の世界ではすでに死んだ身。僕は彼女をどうすればいいのだろう? サラマンダーに殺してもらうのか。自分で殺すのか。それとも他人に殺されてしまうのか。優勝させるのか。 僕はどうすればいいのだろう? 【ヘンリー  所持品:アラームピアス(対人) リフレクトリング バリアントナイフ  第一行動方針:戦闘不能者の治療  基本行動方針:ゲームを壊す(ゲームに乗る奴は倒す)】 【リュック(パラディン)(眠り)  所持品:メタルキングの剣 ロトの盾 刃の鎧 クリスタルの小手 ドレスフィア(パラディン)  チキンナイフ マジカルスカート 毒消し草一式  第一行動方針:眠る  第二行動方針:ソロ・バッツに合流する  基本行動方針:テリーとリュックの仲間(ユウナ優先)を探す  最終行動方針:アルティミシアを倒す】 【ターニア(血への恐怖を若干克服。完治はしていない)  所持品:なし  第一行動方針:戦闘不能者の治療  基本行動方針:イザを探す】 【エリア(体力消耗、下半身を動かしづらい)  所持品:スパス ひそひ草  第一行動方針:休息  基本行動方針:仲間と一緒に行動】 【現在位置:ウルの村・東南の井戸周辺】 【サラマンダー(右肩・左大腿負傷、右上半身火傷、MP1/5)  所持品:カプセルボール(ラリホー草粉)×1、各種解毒剤(あと2ビン)  チョコボの怒り  第一行動方針:休息しながら、これからの行動を考える  基本行動方針:参加者を殺して勝ち残る(ジタンたちも)】 【サックス (HP半分程度の負傷、軽度の毒状態、左肩負傷)  所持品:水鏡の盾 スノーマフラー ビーナスゴスペル+マテリア(スピード)  紫の小ビン(飛竜草の液体)  ねこの手ラケット 拡声器  第一行動方針:体調と体力の回復  第二行動方針:ヘンリーたちと合流し、利用する(エリアも?)  第三行動方針:ウルの村にいるメンバーを殺す  最終行動方針:優勝して、現実を無かった事にする】 【現在位置:ウルの村・東南部の森】 (あいつは……サックス?) エリアに呼び出され、井戸へと向かっていたスコール。 どうもあちこちを走りまわされているような気もするが仕方がない。 さて、井戸へ行く途中で怪しいものを見つけた。 一人はサックス。カズスの村で見かけた多少暗い感じのある青年だ。 もう一人は燃えるような赤い髪をした男。確かゲームに乗っていると教えられた男であるように思う。 エリアを救出した男でもあったから、その情報が間違いだったのだろう。 その二人が向き合っているのだが、どうも様子がおかしい。 武器は構えているし、殺気立ってはいるが、戦う様子でもなし、何か相談をしているように見受けられる。 しばらくした後に何かを渡す様子も見られた。それだけだが、どうにも気になる。 もっとも、ここで時間を潰すわけにもいかないが。 早くエリアらのいる場所まで行かないといけない。 【スコール  所持品:G.F.カーバンクル(召喚○、コマンドアビリティ×、HP1/4)、G.F.パンデモニウム(召喚×)  吹雪の剣、ガイアの剣、エアナイフ、ビームライフル、セイブ・ザ・クイーン(FF8)  天空の兜、貴族の服、オリハルコン(FF3) 、ちょこザイナ&ちょこソナー、ひそひ草  ヘンリーの武器(キラーボウ、グレートソード、デスペナルティ、ナイフ)  アイラの支給品袋(ロトの剣、炎のリング、アポロンのハープ)  第一行動方針:エリアの元へ  第二行動方針:アーヴァインと緑髪(緑のバンダナ)の男、及びエドガーを探す  基本行動方針:ゲームを止める】 【現在位置:ウル南方の草原地帯から井戸の場所へ】

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