216話

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*第216話:夢と現実/罪と償い  終わりのない暗闇の中に、一人で立ちつくしていた。  いや、正確には、少し離れたところにはよく見知った人たちがいたけれど。  そこにいる友人たちの表情を見て、ギルダーは悟った。  …この距離は、越えられない境目だ。  『こっちへ来るな! …ずっと仲間だと思ってたのに…見損なったよ!』  『俺やサリーナ、ほかの奴らも殺すつもりか!? ふざけんじゃねえぞ!』  『ギルダー…クリスタルに認められたあなたが、そんな…… 残念です』  『やはり、道を踏み外したのじゃな…』  『とんでもないことしてくれたねえ。許されると思ってるのかい!』    ――サックスは、ほかの二人の仲間と、トパパとニーナを連れて。  ――デッシュは、恋人であるサリーナと、シドやアルスを連れて。  ――エリアは、俺の中にある風のクリスタルの力を奪って。  ――ドーガが、俺の腕をつかまえて。  ――ウネの爪が、俺の身体を貫いた。    みんなは、動けなくなった俺を忌々しそうに一瞥すると、闇に消えていく。  それでもなお、何とか立ち上がろうと必死でもがく俺に、今度は剣が突きたてられる。    『わかりましたか?あなたの罪の重さが』  『あなたはもっと苦しむべきなんだよ、僕たちのぶんも』  『あたしは助けようとしただけなのに! ひどい!』  『…お前は、アルティミシア以上の化け物だよ』    ガーネット、ピピン、エーコ、ラグナ。 俺が殺した人たち。  いつの間にか、四人が俺を取り囲むようにして立っていて。  それぞれが、怒りと悲しみと憎しみを込めて、俺を殴りつける。蹴りとばす。踏みつける。  意識が朦朧としてきたとき、四人もいなくなって。  そこには血にまみれた俺と、悲しそうに立ちつくすサラだけが残った。    『…サラ…… 助けて、くれ…』    俺は力を振り絞って、サラがいるであろう方向へと手を伸ばした。  けれども、サラはその手を取ろうとはしなかった。  ただ、悲しそうに俺を見下ろすだけ。    『サラ姫! そんなところにいたらそいつの血で汚れますよ!早くこっちに!』    その声に反応して、サラは後ろを振り返った。  みんなと同じように、足早に遠ざかっていくサラの背中に向かって、俺は叫んだ。    『サラ!! 俺は……俺はただ、お前を泣かせたくなかっただけなんだ!!』    それでも、サラは振り返ろうとは、しなかった。   「……ギルダー? ギルダー!」 「……?」 ――次に気がついたときに見えたのは、真っ黒な暗闇でも、真っ赤な血でもなく。 セージの、鮮やかな薄い水色の髪だった。 「大丈夫? ほら、しっかりしなよ」 それで、ようやく現実に引き戻された。 俺は殺し合いに参加していて、セージに会って、見張りをして、いつの間にか眠っていて、それで… 「……夢?」 「見張りするとか言っといて、気がついたらうんうんうなされてるんだもんねぇ。 汗びっしょりだし」 「……すまない」 汗で額に張り付いた金髪を袖で拭いながら、ギルダーは苦しげに息を吐き出した。 それを見て、セージも軽くため息をつく。 「…まあ、きっとそうなるだろうとは思ってたけどね」 「…どういう意味だ?」 「そういう意味だよ」 「…………」 一度罪の意識を持ってしまうと、これほどまでに苦しいということを、ギルダーは初めて知った。 (…夢の通りかも、しれないな) この罪は、仲間たちは誰も許してくれず。 血に汚れた自分には、サラさえも触ろうとしないで。 自分の殺した人たちは、自分が早く死ぬことを願っている。…… 「ギルダー」 ふいに名前を呼ばれて、ギルダーは顔を上げる。 セージは真剣な表情で話し始めた。 「思いつめるなとは言わないよ。  けど、君が思いつめたって死んだ人は帰ってこないんだから。生きなよ」 「……本当に、俺は生きていていいと思うか?」 「命は軽くない。それを忘れないでいてくれるなら、僕はかまわないと思うよ。  それに、君が殺した人たちが、君が死ぬことを望むと思うの?」 「……」 まるで、見透かされたかのように、さきほどまでの考えを否定されたように思えた。  『ギルダー。 罪を償うってどういうことだと思う?』  『……いきなり、どうしたんだ?』  『…僕はね、目の前で本当の両親と妹を殺されたのに、泣いて逃げ出したんだよ。   父さんは死ぬ直前、僕に言ったんだ。『妹を守れ』って。   もちろん、僕はそのつもりだった。二人で逃げ出した。   それなのに、妹がモンスターにつかまったとき、僕は戦おうともしなかった。ただ、泣いて逃げたんだ』  『…無理もない。 そのとき、サックスはまだ5つだったんだろう?』  『そうかもしれないね。 でも、僕は妹を守るべきだった。それが使命だったんだよ』  『……』  『だから、僕は火のクリスタルに選ばれたとき、ナイトのジョブを選んだ。   今度こそ、使命を守りきれるように。旅の途中でも、たくさんの人を守れるように。   …けど、それが罪を償うってことになると思う?   僕、最近思うんだ。これは自己満足だ、って…。罪を償うことにはならないって…』  『……そんなこと…』  『僕は今、こうして生きてて幸せだよ。 それに、妹が僕を恨んでるってこともないと思う。   でも…だからってあのことを忘れちゃいけないと思うんだ。   そして、精一杯、妹のためになにかしてあげたい。 …だけど、何をしたらいいかわからない』  『サックス……』 (罪を、償う…) セージの話を聞いて、サックスが昔、それをどういうことかと聞いてきたのを思い出した。 そのとき、悲しそうなサックスを見た自分も、その意味について真剣に考えたものだった。 結局、自分には到底答えは見つけられなかったのだけれども。 (今となっては……知りたいのは俺のほうだ、サックス) もしも、あのあとサックスが答えを見つけられていたのだとしたら…。 今度はこちらから質問してみたいと、心から思った。 (だが…やはり、お前は教えてくれないのだろうな) いや、それ以前に…セージが言う通り、この答えは自分で生きて見つけるべきなのかもしれない。 けれども… 階段を降りてきたタバサと、それを出迎えるセージを見ながら、ギルダーは思った。 ――夢と現実と、どちらが事実なのだろうかと。 【タバサ 所持品:ストロスの杖・キノコ図鑑・悟りの書  第一行動方針:休息ついでに悟りの書を読む 基本行動方針:家族を探す】 【セージ 所持品:ハリセン・ファイアビュート・ライトブリンガー・雷の指輪・手榴弾×2・ミスリルボウ  第一行動方針:見張り 基本行動方針:タバサの家族を探す】 【ギルダー(MP消費) 所持品:なし  第一行動方針:見張り 第二行動方針:ビアンカとタバサに全てを説明する  基本行動方針:セージと行動し、存在意義を探す/自分が殺した人の仲間が敵討ちに来たら、殺される】 【ビアンカ 所持品:なし  第一行動方針:睡眠 基本行動方針:家族を探す】 【現在位置:いざないの洞窟近くの祠内部の部屋】

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