218話

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*第218話:声、届かずに 寒い…、冷たい…、ココは…。 僕は、いったい、どうして…。 お父さん…。 「気分はどう?タバサ」 「ええ、だいぶいいみたい」  タバサが扉を開けたことで、すっと室内の温度が下がる。 「外は随分寒いみたいだねぇ」  セージがタバサの頬に触れると、とてもひんやりしている。 「夜が明けるまでまだあるから、もう少し温かくして寝ていなさい」 「でも、セージさん達も休まないと」 「僕たちは大丈夫。ちゃんと目を開けたまま寝ているからね」 そんなことが嘘であることは、タバサにも容易に想像できた。 かといってここで睡眠を強く勧めたところでセージは承知しないとも思う。 タバサは言われるままに、規則正しく寝息を立てている母の元へ向かった。 けれど。 「タバサ!!」 寝台まであと三歩とないところで、タバサは崩れるように倒れた。 セージが駆け寄り、抱き起こす。反応がない。 もう一度、頬に触れてみると、先程とは違い燃えるような熱さだ。 「う…ん、どうか、…タバサ!!!」 異変に気づいたのか、ビアンカはぐったりと倒れるタバサを見つけ、悲鳴を上げる。 「すごい熱。とにかく、このベッドに」 「すみません。僕が、冷える外になんか行かせなければ…」 「いいえ、あなたの所為じゃないわ」 顔の熱とは真逆に、手足は凍るように冷たい。 ビアンカはメラを弱くした熱で冷えた体を温める。 同時に、セージはヒャドを制御して顔の熱を下げた。 「ただの風邪ならいいけど」 ベットに横たえられたタバサは、ピクリとも動かない。 いや、唇は微かに震えているが、そこにいる者達はそれに気づかない。 (お兄ちゃん…) 唇は、そう動いていた。 城を囲む堀に、彼はいた。 フレアスターの直撃を受け、その勢いでこんなところまで飛ばされたのだ。 そこは陰になっており、外部からは見えぬ闇の中だった。 ダメージは深い。指一本動かせない。回復の魔法を使おうにも、今の彼にはそれが出来ない。 レックスの喉には、太い木の破片が刺さっていた。 おそらく攻撃によって大破した木の欠片が、爆風によって飛ばされてきたのだろう。 たとえどれだけ魔力があろうと、言霊に乗せなければ魔法は発動されない。 堀には水が張られている。 レックスは腰まで水につかり、血を流す。体はどんどん冷えていく。 (寒い…、冷たい…、ココは…。  僕は、いったい、どうして…。  光…、光が見えて、そして…。  そうだ、向こうに、いたんだ、お父さん…) フレアスターの光の中で、レックスは父を見つけたと思った。 本当に見たのか、それともただの思い込みなのかはわからない。 けれどこの状況で、レックスにとってそれは真実なのだ。 彼は、父を呼んだ。 (お父さん…。僕は、ここにいる…。僕を見つけて、お父さん…) けれど、声は音にならず、届かない。 (お父さん…、お母…さん…、タバ…サ……) タバサの頬に、一筋の涙が流れた。 そして、人々の希望を背負うはずの勇者は、誰に見取られることなく、闇の中で息を引き取った。 【タバサ(高熱、昏睡) 所持品:ストロスの杖・キノコ図鑑・悟りの書  第一行動方針:不明 基本行動方針:家族を探す】 【セージ (MP消費) 所持品:ハリセン・ファイアビュート・ライトブリンガー・雷の指輪・手榴弾×2・ミスリルボウ  第一行動方針:タバサの看病 基本行動方針:タバサの家族を探す】 【ギルダー(MP消費) 所持品:なし  第一行動方針:見張り 第二行動方針:ビアンカとタバサに全てを説明する  基本行動方針:セージと行動し、存在意義を探す/自分が殺した人の仲間が敵討ちに来たら、殺される】 【ビアンカ(MP消費) 所持品:なし  第一行動方針:タバサの看病 基本行動方針:家族を探す】 【現在位置:いざないの洞窟近くの祠内部の部屋】 【レックス 死亡】 【残り 93名】

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