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*第235話:信じるコトの一歩
――――2人の話は終わったようだ。
ギルダーが静かに「そうか…」と答えると、また階段の方へと戻った。
そして暫く、見張りを続行することにしたらしい。
ビアンカは、静かにギルダーを見ていた。
ピピンがギルダーに殺されたということが信じられないのか。
否、どうしても本当のことだとわかってしまうのが辛いのだろう。
気を落ち着かせるためにも、静かに深く呼吸をした。
そして、しばらくした後。
―――がっくん…ゆらゆら…がっくん…。
ギルダーは舟を漕いでいた。
「いい加減寝なよ」
「いや…見張りが……」
「僕がやるから」
「お前のほうこそ寝たらどうだ…」
「いいんだよ僕は。ザメハっていう目が覚める呪文あるし」
「だが…」
「寝 な よ 」
そこまで言うなら…と、ギルダーは椅子に座って倒れるように机に突っ伏した。
そして暫くすると規則的な寝息が聞こえてきた。よっぽど疲れていたのだろう。
そしてそれと同時に、タバサが目を覚ました。
「あれ…また起きちゃったんだ?」
「ごめんなさい…なんだか眠れないの。でもすっかり良くなったよ?」
「ふぅん……あ、本当だ」
セージがまた熱を確かめる。確かに熱は引いたようだ。
そしてタバサはそのままセージの隣に座った。
前を見るとビアンカがいる。彼女は、先ほどの悲しみを誤魔化して、タバサに訊いた。
「本当に大丈夫なの?辛くない?」
「心配しないで、お母さん。お兄さんやギルダーさんの言ってたとおり、寝てたらすっかり大丈夫になったから」
そう言って微笑んだタバサを見て、ビアンカは安心したらしい。
安堵の笑みを漏らすと、そのまま静かに何をするでもなく入り口を眺めた。
「あ、そうだ」
セージがタバサに向かって唐突に切り出した。
何?とタバサが聞き返す。そして軽く笑いながら言った。
「僕のこと『お兄さん』じゃなくて名前で呼んでくれたら嬉しいねぇ。
なんか他人行儀だし、ちょっとそんな柄じゃないから恥ずかしいんだよねぇ」
「……え?え?え?」
「ん?やっぱ駄目かな…。でもギルダーの事は名前で読んでるでしょ?」
「そ、それはそうだけど!なんか恥ずかしいしっ!恐れ多いといいますかっ!」
実はタバサはセージの事を名前で呼ぶ事に抵抗があった。
出会いがアレだったし、しかもずっとそう呼んでいるから定着してしまった。
だからなんだか子供心に恥ずかしいのだ。おかげで口調も混乱している。
「………で、でもお兄…じゃ、なくて……セー…ジさん、がそう言うなら…」
「お、やっぱそっちの方が慣れてるからしっくりくるよ~。仲間内では皆名前で呼び合う仲だったからねぇ。ホント」
フルートは”さん”付けで呼んでたけど、とここに来る以前の事を思い出した。
そして横目でちらっとタバサを見てみると、なんか顔が紅潮している。
「ぅう~、でも恥ずかしいよぉ」
「なんで?いいじゃーん、その方が自然で嬉しいよぉ?」
微笑ましく会話する2人を見て、ビアンカはくすくすと笑ってしまう。
「あれ?何で笑ってるの?」とこちらも笑いながらセージは訊いた。
「いや…なんだかタバサとセージさんが仲がいいなぁと思って」
「おっ…お母さん!」
「あら、悪いこと言っちゃったかしら?」
「え!?え、えー…そうじゃないけど……」
ビアンカの言葉で更に顔を真っ赤にするタバサ。
実はこれにはちょっとした理由があったのだ。
タバサがビアンカと一緒にグランバニアの本屋に出かけていた時。
なんとなく、ある1冊の本が気になったのだ。本当になんとなく。
その時にビアンカにその本のことを尋ねると、「まだタバサには早いわよー」と笑いながら返された。
そして次の日、どうしても気になってその本屋で…あの本を読んでみた。
その内容は、実はちょっと大人向けの恋愛小説だったのだ。
男の人と女の人が仲良くなって、いろいろする話…ということは理解はできた。
で、実はその中に主人公たちをからかう人物がいるのだ。
丁度先ほどの母のように、「ずいぶんと仲がいいんだな」という風に。2人がとても仲良しなのを知ってて。
そしてその光景を自分たちに当てはめてしまい………。
「………タバサ、そこは照れる所?」
「なんでここまで赤くなるのかしらねぇ…」
こうなった。
そうとは知らず、2人はタバサのその姿を見て疑問に思いながらも笑ってしまう。
「でもねぇ。やっぱタバサが近づいてくれた感じがして、嬉しいなぁ」
「……え?」
セージの次の言葉を待つように、タバサはじっとセージの瞳を見つめる。
父とも母とも…兄とも違う独特の瞳だと、タバサは思った。
いつでも何か面白いことを探しているようで、いつでも何かを背負っているようで。
そんな複雑な瞳だという事を、感じる。
「最初はホラ、ああやってタバサと出会ったけどさ。
でも…怖かったでしょ?僕がいつか君を裏切ったりしないかとかいう不安とかさ」
「………」
そうじゃないと言えば、嘘になるかもしれない。
信頼できるけど、でもそれで足元を見られたらという思いもあった。
でも、今は違う。
「でも、今はそうじゃない目で見てくれてる。僕を信頼してくれてる。
今まで僕が…一方的に連れ回しちゃってるだけかもしれないって不安になってた」
「そんな事……ない…。私は、私は自分で…セージさん、と一緒に行こうって思ったから…」
「そうか…。今までずっと距離を置いてる気がしたからさぁ…所詮他人だからとあきらめた部分もあったけど…」
そこまで言って視線を上に外し、セージはまた過去を思い出した。
自分のココロの荊を無くしてくれたのは…他人だった。
他でもない、あの仲間たちだ。あの仲間がいなければ、きっと自分は一歩が踏み出せない人間のままだっただろう…。
そこまでで考えを止めて、またタバサを見て、にこりと微笑んで、
「僕に一歩でも近づいてくれて、ありがとう」
と、言った。
タバサは答えられなかった。
今度は顔いっぱいを赤く染めて、頷くだけだった。
「まーた赤くなってる。今日はどうしたのさ、一体」
セージの笑みを見て、タバサは胸の音が鳴ったのに気づいた。
でもそれがなんなのかはよくわからなかったけど。
ごくっと咽を鳴らして、緊張したみたいになる…。
「だ…大丈夫っ」
声が上ずる。自分はどうしちゃったんだろうと考えようとした。
でも考えはまとまらず、またわけのわからない感情が生まれるだけ。
なんとなく素っ気無く答えてしまった。それでも胸のドキドキは消えなかった。
見ていたビアンカが微笑しながら、「成程」と呟いた。
気づいていないのは、寝ているギルダーと…ばっちり主犯格のセージだった。
【タバサ 所持品:ストロスの杖・キノコ図鑑・悟りの書
第一行動方針:会話 基本行動方針:家族を探す】
【セージ 所持品:ハリセン・ファイアビュート・ライトブリンガー・雷の指輪・手榴弾×2・ミスリルボウ
第一行動方針:会話 基本行動方針:タバサの家族を探す】
【ギルダー(睡眠)所持品:なし
第一行動方針:ビアンカと対話中 第二行動方針:ビアンカとタバサに全てを説明する
基本行動方針:セージと行動し、存在意義を探す/自分が殺した人の仲間が敵討ちに来たら、殺される】
【ビアンカ 所持品:なし
第一行動方針:静かに見守る 基本行動方針:家族を探す】
【現在位置:いざないの洞窟近くの祠内部の部屋】