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*第328話:邂逅直前にて彼の考察を
簡素な魔法を数回窓の外へ撃ちながら、「成程」とギルダーは呟いた。
ここは浮遊大陸の西にあるサスーン城。
その東の棟にあるサラの寝室に、彼はいた。
別にやましい心でそこに来た訳ではない。
偶然そこに降り立っただけだ(それもどうかと思うが)。
話はそれたが、とにかくギルダーは満足気だった。
何故かというと、それは彼の得意分野に関係していた。
彼は魔法が使える。そしてその魔法には詠唱が必要だ。
そして唱えるのは人間だ。
人間というものは回りの雰囲気に飲み込まれやすい。
故に不安が重なると、本来の力を発揮できない状況に陥りやすい。
だがここは浮遊大陸。ギルダーの故郷だ。
舞台がそこに選ばれてしまったのに腹が立つが、有難くもある。
地の利などといった、自分に対する有利な状況が生まれたということだ。
そうして彼は精神的に余裕が出来たのだ。
「セージの詠唱が早すぎると思っていたのは……やはり気のせいか」
精神的に余裕が出来たことによって、彼の魔法のキレは確実に良くなっていた。
セージと戦った時のようにヘマをすることは少なくなるだろうし、自分も詠唱を気持ち程度ではあるが早く紡ぐ事が出来た。
セージ自身、以前の殺し合いの地が自分の世界だと話していた。
彼も地の利等の有利な条件が揃ったことで、不安がなくなっていたのだろう。
だからあの様な強敵と化していたのだろう。あのように落ち着いて素早い詠唱が出来たのだろう。
「逆に言えば……あいつは今少し危険ということか」
ならば今ここに来た彼はどうなるのだろうか。流石に余裕ぶる暇は無いだろう。
あの2人の女性を護れるのだろうか。
まぁ簡単に死ぬような事は無いだろう、そう信じたい。
そして、問題はまだある。
それは自身の世界の住人のことだ。
この世界の人間は、ギルダー以外に8人もいる。
その中にこのゲームに……かつての自分のように乗っている人間が出てくると、危ない。
くどい様だが地の利などの有利な条件を持っている。精神的にも余裕が生まれた頃か……。
と、唐突に彼の耳が音を感知した。
足音が聞こえる。更に言うと確実にこちらの部屋に向かっている。
何人いるのかは、無駄に音が壁に反響している所為でわからない。どうするか。
とりあえず、不確定要素が多すぎる。
彼はもしもの事を思い、ライトブリンガーに手をかけながら、その音が近づくのを待った。
【ギルダー 所持品:ライトブリンガー 手榴弾×2 ミスリルボウ
第一行動方針:こちらに近づく者を待つ
第二行動方針:サックスとエリアを探し、ビアンカ達と再会
基本行動方針:自分が殺した人の仲間が敵討ちに来たら、殺される】
【現在位置:サスーン城東棟 サラの寝室】