215話

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*第215話:火は心の底に潜み 夜風が闇の色に染まった森をさざめかせ、あたりには炎のはぜる音が響く。 思いのほか夜は冷えるようだ。焚き火の前に座るシンシアは、いくつかの枯れ枝を火の中に投げ入れた。 めまぐるしく過ぎていった一日が終わろうとしている。 既にここまで30人以上が死に、散らばって行った参加者たちの居場所はどこともしれない。 今現在ここにいるのはエドガー、デッシュ、シンシアの3名のみ。 焚き火をはさんだ向こう側でエドガーとデッシュが対人レーダーを調べると言って、 筆談を交えつつなにやら話し込んでいる。 あたりを見回りに行ったザックスとランドはまだ帰ってこないままだ。 (ソロはどうしているのかな…) シンシアの頭にこのゲームに参加している唯一の知り合いの姿が浮かんだ。 小さい頃から何をするのにも一緒で、幼馴染というよりは兄妹のように過ごしてきた存在。 ちょっと生意気で、曲がったことが大嫌いで、超がつくほどのお人良しで…。 あいつはそう簡単には死ぬような奴じゃない。こんなゲームに乗るような奴でも。 炎のうちを見つめながら思案にくれる。と、この即席のキャンプ地を囲む茂みが、ガサッと音を立てて揺れた。 話し声とともに足音が近づいてくる。 現れたのはザックスとランドだった。 「ただいま、戻ったぜ」 「おかえりなさい、どうでした?」 尋ねるシンシアに、ザックスは首を振った。特に異常はなかったということだ。 ランドは皆の荷物がまとめてある場所へ歩いていき、皮袋に入っている水で喉を潤している。 ザックスは焚き火の傍に腰を下ろし、エドガー達のほうを見ながら口を開く。 「あっちはまだ時間かかりそうだなあ。シンシアもう寝たんか?」 「ザックスさん、あとは私が見張りをしてますから、休んでください」 「いや、まだ何が起こるか分からんし、いいよ。お前もメシ食っとけ」 シンシアは遠慮がちにしていたが、ザックスが微笑むのを見て、根負けしたように頷いた。 「じゃあ、お言葉に甘えて」 会釈して、シンシアは荷物置き場へ立ち去る。 シンシアは荷物からアリアハンから持ち出した干し肉やパンなどを持って、 再び焚き火のそばへやってくるとザックスとランドが参加者名簿を開いてなにやら談笑していた。 「…で、このターニアって娘がすごくいい娘なんだよ。まだ片思いなんだけどさー」 「へぇ、かわいいじゃん。生きて帰ったら紹介してくれよ」 「やだね。ザックスは誰か好きな女の子はいないのかよ?」 ──全くこの非常時に…。 そう思いつつもザックスの返答が気になり、シンシアは二人の後ろで立ち止まる。 「ああ、いたぜ」 「えぇっ!!?」 質問したランドよりも早く大声を上げてザックスの返答に反応するシンシア。 「な、なんだよいきなり!?」 「ザックスさん、好きな人って…!?」 「ああ、…でもシンシアにも好きな人がいるんじゃなかったっけ? 昼間に酒場で話してた時、何度も名前が出てたじゃないか。確かソロとかいう…」 「あ、あいつとは小さい頃から一緒だから兄妹みたいなものですっ!」 シンシアはなぜこんなにも自分は動揺しているのかと激しく戸惑いを感じた。 そしてそれと同時に違和感もおぼえた。先程のザックスの答え方がなにか引っかかったからだ。 「なあ、それでどんな娘なんだ?」 ランドが問うと、ザックスはおもむろに参加者名簿のあるページを開いて差し出した。 シンシアとランドは参加者名簿を覗き込む。 そして一瞬の間のあと、2人は表情を硬くして黙り込んでしまった。 ザックスが指し示した先には、「エアリス・ゲインズブール」という名の女性の写真と名前があったのだが、 その名の上には血のような朱い斜線が引かれていたからだ。 それを見た瞬間、シンシアは先程感じ違和感の正体を悟った。 違和感の正体、それはザックスが好きな人が「いた」と答えたことだ。「いる」ではなく…。 「ごめんなさい…」 「わ、わりぃ…」 シンシアとランドは同時に、口ごもりながら謝罪の言葉を口にする。 ザックスは軽く笑いながら二人に声をかける。 「どうしてお前らが謝るんだよ」 それから視線を目の前で燃え上がる炎に向けて、ザックスは独白するかのように語りだした。 「ま、確かにこのゲームが始まってからしばらくは無意識にあの娘…エアリスのこと探していたかもな」 「…もしかして、私やランドさんと出会ったことがその人を探すのを諦めさせてしまったんじゃ…」 ザックスの焚き火の炎を見るその目は、まるで遠くを見つめているかのような眼差しだった。 「だけど、酒場でシンシアと…それからランドと出会ったとき思ったんだ。俺、こいつらの事守りたいって」 「ザックスさん…」 「でも俺、2つのこと同時に出来るほど器用じゃないし、 それに守りたいと感じたお前らをオレのわがままで死なせるわけにはいかない。 結局、見捨てる形になっちまったエアリスには悪いけども、…悔いはない。俺はね」 相変わらず焚き火を見つめるザックスの横顔を覗き込んだシンシアはその瞬間、どきりとした。 ザックスの目は、真っ赤だった。 シンシアはこの時悟った。悔いが無いわけがない。わざと平気な演技している。 エアリスさんのために、考えて考えて苦しんで苦しんで、けれどそれを押し殺しているのだ。この人は……。 ザックスの心中を想い、思わずシンシアは泣きそうになった。 (ごめんなさい、ザックスさん……) しばらくごそごそしていたが、じきに規則的な寝息が聞こえるようになった。 シンシアとランドは眠ったようだ。ザックスは目を見開いたまま、炎を見つめていた。 エドガーとデッシュはレーダーの解析に没頭しており、そんなザックスの様子に気づいていないようだった。 すっと一筋、ザックスの頬に光る物が線を引いたと思うと、 それは止めどなく溢れて冷たい地面を静かに濡らした。 【エドガー 所持品:バスタードソード 天空の鎧 ラミアの竪琴 イエローメガホン  【デッシュ 所持品:ウインチェスター+マテリア(みやぶる)(あやつる)  第一行動方針:対人レーダーを調べる 最終行動方針:ゲームの脱出】 【ザックス 所持品:スネークソード 毛布  【シンシア 所持品:万能薬 対人レーダー 煙幕×2 毛布  【ランド 所持品:オートボウガン 魔法の玉 毛布  第一行動方針:森で夜を明かす 最終行動方針:ゲームの脱出】 【現在位置:アリアハン北部の森奥地】

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