56話

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*第56話:水の結びつき 頼りない。 エリアのギルバートに対する第一印象であった。 ギルバートは話をするにつれ落ち着いてはきたものの、 生来の気弱さなのかどうにも挙動不審のようなところがある。 これなら自分の方がよっぽど頼りがいがあるとエリアは思った。 しかし、先からどうもその視線がある一定の方向に集中して向けられていることも、エリアは感じた。 「…なるほど、それでセシルさんとリディアさんを探しているんですね」 「うん、そうなんだよ。君はサックスとギルダーを探してるんだね」 「はい、そうです」 ギルバートの視線がまた動いた。 「あの…」 「え、なに?」 はっとしたようにギルバートは答えた。 「向こうに何かあるんですか?」 「え、いや、まあ、その…」 ギルバートはしどろもどろに要領を得なかったが、やがてエリアの方に向き直った。 「向こうに誰かいる気がしてね」 「向こうに…ですか?」 「気のせいかもしれないけど…これでも吟遊詩人でね、なんだか音の気配っていうかな、そういうのを感じるんだよ…」 エリアは改めてその方向に視線を移すと、たしかにそのような気がしなくもない。 だがそれは、言われれば無が有にも見えるような類の錯覚にも思えた。 「行ってみますか?」 「…いや、ゲームにのったひとかもしれない」 「ああ、なるほど」 ギルバートがなかなかそのことを口にしなかった理由に合点がつく。 「でも、もしかしたら私たちの探してる人かもしれませんよ?」 エリアがそういうと、ギルバートは「うーん」と唸って頭を抱え込んだ。 (優柔不断…) サックスやギルダーならさっと決断しただろう。 「もし本当に人がいるのなら、行動しなくては始まらないと思いますよ」 「…うん、そうだね。よし、いこうか」 やれやれ、とエリアはこの年上の青年に対する自分の言動に苦笑した。 (年齢も性別も、これじゃどっちがどっちだかわからないな) やっぱりこなければよかった、とギルバートは心底思った。 その先にいたのは、負のオーラをびんびんと放っている見るからに強そうな男。 二人にしてみればまさにゲームにのってますといった感じ。 救いなのは今どうやら負傷しているらしいということ。 近くにいる黒魔導師はなんなのか気になったが、あまりよさそうな感じではない。 (…戻りましょうか) エリアが小声でギルバートに語りかけると、無言で頷き音を立てないように少しずつ足を動かした…しかし。 「逃げるな」 低い声。 その瞬間二人はぴんと背筋をのばし、お互い顔を合わせギルバートは思わず尻餅をつくと、 ぱきっと小気味よく木の枝の折れる音がした。 「そこに誰かいるのはわかっている」 「だ、誰かいるの?今なにか音したよね?」 黒魔導師の方も気づき、音の発生源へと目を向ける。 「人間…いかに負傷しているといえど、貴様らを葬るなど造作もないことだ」 男のその声にギルバートは震え上がった。 (ど、どうしようどうしようどうしようどうしよう、アンナ、僕はどうすればどうすれば…) それはエリアも同じこと、自分はもちろんこの同伴する男の戦闘力は様子を見れば一目瞭然であり、 先の男との戦闘力の差などは見る間でもなく、いや、比較することそのものがまったくの非礼であるとすら思える。 「待って下さい、私たちに敵意はありません」 「そんなことはわかっている」 姿を見せ、エリアは落ち着いた声で話しかけたけれど取り付く島もない。 黒魔導師は今の状況を理解し辛いようで、せわしなく男とこちらのほうを見比べている。 しかしそのようなことはおかまいなしに男――ピサロは瞬時に火球をつくると、二人のほうに向かって放った。 「きゃあっ!」 いきなりのことにエリアは声をあらげて間一髪それをよける。 ギルバートはといえば、あ、あ、と声を出しその場から動けない。 しかしそれに一番驚いたのは他ならぬ黒魔導師――ビビであった。 「ちょ、ちょっと!?」 「ふん、はずしたか、ではもう一度…」 「や、やめてよ!」 エリアは逃げようとしたけれど、足が動かなかった。 それは恐怖のせいかもしれない。しかし、エリアは今不思議な昂揚感を感じていたのだ。 ビビの抵抗で次の火球がくるのは遅かったが、 そのような時間など動けない二人にしてみればどうでもよいことで、 いずれくる死の瞬間への僅かな猶予期間でしかない。エリアは思った。 (ああ、ここで私はまた死ぬのか…でもどうだろう、この感覚。どこかで感じた、この感覚…  水の巫女、私はそのつとめを果たすために生まれて、その業務を果たすとき最高の生の鼓動を感じた。  ああ、それだ、その感覚…生きてる、私は今…生きているんだ!) その瞬間、エリアに生まれたのは生への願望であった。 ―――生きたい! 強く願った。 迫りくる火のたまを目の前に、エリアは生きたいと願った。 ―――私には、きっとやらなきゃならないことがある…生きたい! シュン! そのとき、強烈な冷気が火炎に襲いかかり、その勢いを沈下した。 「え?」 そう思ったとき、エリアとギルバートはその場から消えていた。 「もう一匹、紛れ込んでいたか。この状況下とはいえ気配にきづけぬとは、なかなか手練れのものらしい」 「ねえ!」 「ふん…体調さえ万全であればな」 「ねえったら!」 必死で話しかけるビビに、ピサロはようやく目を向けた。 「騒がしいな、なんだ」 「どうして!?」 「どうして、とは?」 「どうして攻撃したの!?」 「……」 (…むしろ、なぜ殺せなかったのかの方が不思議だ) 本当に、なぜ殺せなかったのか?それは自分の内的な要因か、それとも外的な要因か。 「…おまえにはわかるま…ゲボッ!」 「!?」 「ふ…まだ戦闘にははやかったようだ」 「…い、今は、安静にしなよ」 「別に、ここにいる必要はないんだぞ」 「……」 「勝手にするんだな」 「大丈夫?」 二人を助け、ここまで連れてきたのは美しい桃色の髪をした女性だった。 「私はレナ。危なかったわね、もう少しで死ぬところだったわよ」 「あ、あ、ありが、とう…ぼ、僕はギルバート…」 呂律の回らない下で答える。 「そうなの、でもギルバート、あなたちょっと震え過ぎよ…男なんだしもっとしっかりしなきゃ」 笑いながらも呆れ顔でレナはギルバートに話した。 「えっと、あの…」 「なに?あなたの名前は?」 「わ、私は…私はエリア、エリア=ベネットです!あ、あなたは…あなたはいったい!?」 「え?な…何?」 「私には感じます…あなたから、あなたから…」 「水のクリスタルの鼓動を!!」 【エリア 所持品:妖精の笛、占い後の花  第一行動方針:レナと話をする 第二行動方針:サックスとギルダーを探す】 【ギルバート 所持品:毒蛾のナイフ  第一行動方針:とりあえず落ち着け 第二行動方針:セシルとリディアを探す】 【レナ 所持品:不明  第一行動方針:エリアと話をする 第二行動方針:バッツ、ファリス、クルルを探す】【現在位置:レーベ北東の森】 【ピサロ 所持品:スプラッシャー、魔石バハムート(召喚可) 爆弾(爆発後消滅)  行動方針:ある程度回復するまで待機 【ビビ 所持品:?   行動方針:ピサロと共にいる 【現在位置:レーベ東の森中央付近】

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