201話

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*第201話:死に至る病 『早く起きよう。起きようよ』 (起きたくない。もう、何もしたくない) 『ダメだよ。戦わないでどうするの? 誰も代わりにならないよ。僕がやらないと』 (無理だよ。僕一人じゃ勝てっこない。魔女にも、あのヒトにも) 『彼女に生きて会いたいだろ? なら、戦って生き残るか、首輪を外すとかしないとさ』 (外せるわけないだろ。僕は機械に詳しくもないし、監視カメラや盗聴器が仕込まれてるかもしれない。  それにもう、戦いたくないよ。ずっとこうして寝ていたい) 『寝てたって、殺されるだけだよ』 (先のことなんか、考えたくない) 『彼女はどうするの? 誰が魔女のコト伝えるっていうの?  誰がみんなを守るの? 誰が僕の代わりにゲームに乗るっていうの?』 (……) 『人に任せてどうなるものでもないだろ? だから起きよう。起きて、戦おうよ』 (イヤだ。僕が戦ったって、生き残れるわけないよ。  僕の力じゃ、あのヒトには勝てない。勝てたとしても、あのヒトより強い奴がいるかもしれない) 『……』 (生き残れるなら……彼女に絶対会えるなら、僕はいくらでも殺せるさ。例えスコール達でも。  でも、わかったんだよ。無理なものは無理だ。努力だけじゃ、どうにもならない壁があるんだ) 『……可能性は0じゃない。諦めたら終わりだけど、諦めない限り0にはならない』 (100でもない。50どころか1ですらない。限りなく0に近い。それって、不可能と同じだよね) 『でも、死にたくないだろ? 会いたいだろ? 帰りたいだろ!  大切な人と、一秒でも長く一緒にいるために……そのためには戦わないと!』 (そうやって、ずっと戦ってきたよ。もう子供じゃない、黙って離れ離れにされるのは嫌だから。  でも、それでどうなった? 僕はここにいる。彼女と離れ離れにされて。  頑張ったってどうにもならないんだ。僕の力じゃ、どうにも……) 『諦めてどうするの! 二度と会えなくなるだけだよ!』 (もういいよ。これ以上考えたって辛くなるだけだ。頑張ったって無理なんだ。  ……いっそ、ラクになるのも一つの手かな。そうしたら、こんな思いしなくて済むよね。  こんな苦しい……辛い思いなんか……そりゃ、自分で死ぬ勇気もないけどさ) 『……』 (どうなったっていいよ……僕はもう、何も考えたくない……) レーベから北西に進んだ海岸の近くで、三人は静かに焚き火を囲んでいた。 正確に言うなら八人なのだが、残りの五人は眠っている。 ターニア……彼女は未だに深い眠りに落ちたままだ。 もっとも、怪我はレナが治療したから、目が覚めても暴れだすことはないだろうが。 レナは……精神的に参りかけていた上、戦闘で溜まった疲労もあったのだろう。 白魔法で全員の手当てを終えた後、ころっと寝てしまった。 ピサロは、自分の傷を治していたと思ったら、勝手に眠っていた。 ソロが「しばらくは僕が見張りをするよ」と宣言していたせいかもしれない。 ビビは、ソロと一緒に見張りをするといって起きていたのだが、いつの間にか寝息を立てていた。 何せ、ベッドに入って二時間もしないうちにあの騒動で叩き起こされたのだ。 きっと、本当は眠くて眠くて仕方がなかったのだろう。 そして…… 「本当にどうしたんだよ。コイツは」 ヘンリーが、地面に横たわらせたままのアーヴァインを見やった。 彼は、あれから意識を失ったままだ。蒼白な顔を歪め、浅い呼吸を繰り返している。 「まったく……これじゃ殴ってやることも、問いただすこともできやしねえ」 ヘンリーは苛立ちを紛らわすように、揺らめく炎に向かい小枝を投げた。 こんな状況で焚き火をするというのも目立つが、どうせこの大所帯だ。 何もしなくても十二分に人目を引くし、 いっそこちらから明りを灯して人数差を教えてやった方が、相手も戦意を喪失するかもしれない。 ――それとは別に、寒いのが嫌だとか、真っ暗闇だとうっかり眠ってしまいそうだという理由もあったが。 「そういえば」 ふと、ソロが顔を上げた。 「ヘンリーさんもエリアさんも、眠って構わないんですよ?  僕が見張ってますし、何かあったらちゃんと起こしますから」 その言葉に、エリアは首を横に振り、ヘンリーはわざとらしく舌打ちをする。 「いえ……私は平気です。それに、少し目が冴えてしまって」 「傷が痛くて眠れないんだよ。第一、眠気自体もどっかの誰かのおかげで吹き飛んだしな」 そう言って、ヘンリーはまたアーヴァインを見た。 しかし彼の場合、口で言うほどアーヴァインを恨んでいるわけではないようだ。 だいたい、本当に嫌いな相手なら、話題に出そうとすらしないだろう。 彼がデールの事を一切喋ろうとしないように。 ……エリアが、アーヴァインのことについて何も触れないように。 それで、ソロは二人に気付かれないよう、小さくため息をついた。 ――そのはずだったが、 「……ソロ?」 突然名を呼ばれ、反射的にビクっとしてしまう。 けれども――声の主は、ヘンリーでもエリアでもなかった。 険しい表情で一点を見つめる二人、その視線の先にあるものに、ソロはようやく気付く。 いつの間に意識を取り戻したのか。アーヴァインは瞼を薄く開けて、炎を―― その先にいるソロを、じっと見つめていた。 ソロが声をかけるより早く、彼は疲れたような声で呟く。 「僕は……生きてるの?」 「ああ、そうだ。ソロとエリアとそこで寝てるレナに、よーく感謝しとけよ。  ソロが言い出さなければ……それで二人が納得しなかったら、お前は生きてなかっただろうからな」 ヘンリーの言葉も、アーヴァインの耳には届いてはいないようだった。 彼はただぼんやりと炎を見つめ、そして、また目を閉じてしまう。 「おい待て、寝るな! 起きろ! こっちには聞きたいことがあるんだよ!」 ヘンリーは苛立ったようにアーヴァインの襟首を掴み、肩を揺さ振った。 「……ナニ?」 眠いというより、億劫そうに彼は目を開けた。その声にも瞳にも、奇妙なほど生気が感じられない。 ――まるで、レーベにいたフリオニールのように。 ヘンリーも彼のことを思い出したのか、どこか後ろめたそうな口調で聞く。 「お前は……どうして、あんなことをしたんだ?」 アーヴァインはしばらくぼんやりとしていたが、やがて身を起こし、乾いた笑みを浮かべた。 フリオニールと違い、そこにははっきりとした意思の色があった。――ひどく沈んだ、闇のような意思が。 「あんなこと? あんなことってどんなこと? 金髪の女の子を、不意打ちして殺したこと?  あーんな重たい剣で戦おうとしたオジサンを、ティナと一緒に殺したこと?  邪魔になったティナを、ボウガンで撃ち殺してやったこと?」 くすくすと笑いながら、世間話でもするかのように。凍りつく三人を前にして、彼は言葉を続ける。 「あ、マリベルとかいう頭巾の女の子のことかな? 止めはさせなかったけど、放送で名前が呼ばれてたしね。  それとも、自殺しようとしてた女の子を騙して、スコール達を殺させに行かせたこと?」 「……お前……」 「あ、そっか。そこの人のオトモダチを殺したことか。  お人よしだよね、あの人も。いくらカインが顔見知りだからって、ホイホイ着いていくなんてさ~。  まー、おかげで僕も楽できたけどね~」 「いい加減にしろよテメエ!」 湧き上がる怒りに任せて、ヘンリーは彼の胸倉を掴んだ。 しかしアーヴァインは顔色一つ変えず、暗く沈んだ瞳で彼を見る。 「ムカツイた? なら殺せば? 構わないよ、それでも」 「……何?」 「別にどうだっていいよ。聞きたいなら答えるし、聞きたくないなら僕も喋らない。  殺したいなら殺せばいいし、生かしておきたいならそうすれば? 僕はどうだって構わないからさ」 ヘンリーは思わず手を離した。エリアも、ソロも、何も言えずに立ちすくんでいる。 それでもアーヴァインは逃げようとしない。武器を奪い取ろうともしない。 何をするでもなく、大人しく座ったまま、自嘲とも冷笑とも取れる笑いを浮かべている。 「アーヴァイン……」 ソロはようやく気が付いた。彼の心に宿ったものの正体に。 フリオニールのような虚無ではない。デールのような狂気でもない。 彼が抱えてしまったのは、多分――『絶望』という名の、病。 「どうしたの? 殺さないの?  ……ああ、僕がどうして殺し合いに乗ったか知りたいんだっけか。長い話になるけど、いい?」 「あ、ああ……」 ソロがうなずいたのを確かめて、アーヴァインは他人事のように話し出す。 果てしない闇を湛えた瞳で、揺らめく炎を見つめながら。 自分が凶行に走った理由を――彼と、仲間達と、魔女に纏わる全てを。 【ビビ(睡眠中) 所持品:スパス  基本行動方針:仲間を探す】 【ターニア(睡眠中) 所持品:微笑みのつえ  第一行動方針:不明】 【レナ(睡眠中) 所持品:エクスカリバー  基本行動方針:エリアを守る】 【ピサロ(HP3/4程度、MP消費、睡眠中) 所持品:天の村雲 スプラッシャー 魔石バハムート 黒のローブ  基本行動方針:ロザリーを捜す】 【ヘンリー(負傷、6割方回復) 所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可) 【エリア 所持品:妖精の笛、占い後の花 【ソロ(MP消費) 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング グレートソード キラーボウ 毒蛾のナイフ  第一行動方針:アーヴァインの話を聞く/周囲の見張り  第二行動方針:これ以上の殺人(PPK含む)を防ぐ+仲間を探す(ソロ)            デールを殺す(ヘンリー)            サックスとギルダーを探す(エリア)】 【アーヴァイン(HP1/3程度) 所持品:竜騎士の靴 G.F.ディアボロス(召喚不能)  第一行動方針:殺し合いに乗った理由を話す 第二行動方針:『どうでもいい』。成り行きに任せる】 【現在位置(全員共通):レーベ北西の茂み、海岸付近】

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