377話

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*第377話:撒かれた災いへの前奏曲 村には誰も居なかった。 道具屋や武器にも大したアイテムは置いておらず、民家にも使えそうな道具は無い。 何の収穫も無いまま探索を終えた六人は、武器の分配や今までの情報交換も兼ねて、宿屋で早めの昼食を取ることにした。 ソロとヘンリーが知ったのは、フリオニールがかつての親友と再会したということ。 ターニアが知ったのは、ティーダがロックと一緒にいたということ。 ロックが知ったのは、アーヴァインがティナを殺した張本人だったということ。 「あいつのこと……恨むか?」 ヘンリーの言葉に、ロックは少しだけ顔を伏せた。 「わからないな。言われても実感が湧かないんだ」 器代わりのコップに入ったスープが、彼の手の動きに合わせてさざなみを立てる。 「あんな気弱そうな奴にティナが殺せるだなんて思えない。  あのガキが言ってた、ティナが人殺しだって話も、信じられない」 ――ティナが死んだこと自体、まだ受け入れられてないしな。 そう言ってロックは一旦言葉を切り、コップを直接口に運ぶ。 冷めてもいないそれを一気に飲み干して、ふっと息を吐いた。 「多分、まだ、俺の中で整理がついてないんだ。  誰が誰を殺したとか言われても、遠い世界の話みたいにしか感じられない。  恨むとか憎むとか……そういうことが出来るほど、落ち着けてない」 「そうか」 呟いて、ヘンリーはパンを齧る。 「……俺も、単に落ち着いてねーだけなのかもな」 その意味を理解できたのは、ソロとビビだけだった。 レーベの村にいた、第三の殺人者。 その存在はロック以外の全員が知っていたが、それがヘンリーの弟で、彼の妻を殺した人物だと知るのはソロ達三人しかいない。 黙っていることがメリットになるとは誰も思っていないが、事情が事情だ。 アーヴァインと違っておいそれと話せる話題ではないし、ヘンリー自身、デールが弟だということを口外する気にはなれなかった。 だから、ピサロとターニアが知っているのは『貴族風の格好をした緑髪の殺人者がいる』ということだけだ。 ヘンリーが起きる前に出立してしまったレナとエリアに至っては、容姿すらロクに知らないだろう。 「あーあ。それにしても、みんなは何処に行っちゃったんでしょうかねー」 陰鬱な空気を少しでも吹き飛ばそうと、ソロがわざと明るい声で言う。 「シンシアにアリーナにライアン、ロザリーさんでしょ。  リュカさんにビアンカさん、タバサちゃん、パパスさん、ピエールさんでしょ。  イザさんにランド君にバーバラさん、ハッサンさんでしょ。  エドガーさんにマッシュさん、リルムちゃん、ゴゴさん、レオさんでしょ。  ジタンさんにフライヤさん、サラマンダーさん、ベアトリクスさんでしょ。  アーヴァインにティーダ君にフリオニール、レオンハルトさんにギルガメッシュさんでしょ。  これで20人以上ですよ?  こんだけいるんだから、一人ぐらいこの村に居たっていいじゃないですか」 「あの魔女のことだから、知り合い同士はわざと遠くにすっ飛ばしたんじゃないか?」 「やっぱそうなんでしょうか……」 ロックの言葉に、ソロは折り曲げた三本の指を伸ばしてからため息をつく。 実のところ、ソロが名前を挙げたメンバーのうち六人は既に命を落とし、三人はゲームに乗る決意を抱いてしまっている。 そしてもう一人、いや『二人』は大変な事になっているのだが―― 今の時点では、彼らがそのことを知る由も、術も無かった。 「そういえば」 黙って話を聞いていたピサロが、ヘンリーに視線を向ける。 「貴様、ヤツと何か話していただろう。ガーディアン・フォースなるモノがどうとか」 ヘンリーはしばらくきょとんとしていたが、唐突に、ポンと手を叩いた。 「やべーやべー、すっかり忘れてたぜ。そういや一回試してみようと思ってたんだよな」 「試すって……?」 首を傾げるビビとソロとターニア、ロック。 そんな四人に、ヘンリーは自分の頭を人差し指で突付いてみせた。 「アーヴァインの野郎が教えてくれたんだよ。ガーディアンナントカってヤツの使い方を」 「ガーディアン・フォースだ」 あまりのうろ覚え具合に、ピサロが呆れとも嘲笑ともつかない表情で訂正を入れる。 ヘンリーは苦笑いして誤魔化した後、「外でやった方がいいよな」と扉を開けて出て行った。 一人にさせるのが心配なのか、未知の力に興味があるのか、ソロとロック、ビビが彼の後を追っていく。 そして――ターニアとピサロだけが、宿屋の中に残された。 「小娘。貴様はどう思った? あの茶髪の男のことを」 急に話題を振られ、ターニアはきょとんとする。 「茶髪って、アーヴァインさんのことですか?」 ピサロはうなずく。ターニアはしばし考えを巡らせる素振りを見せ、ややあって口を開いた。 「悪い人じゃないと思いますけど……」 「我々や貴様を殺そうとした張本人であっても、か?」 ターニアはピサロから視線を逸らし、俯いた。 どれだけの沈黙が流れただろう。ピサロは目を細め、小さく息を吐く。 「……質問を変えよう。  ヤツの記憶喪失は演技だと思うか?」 彼女は即座に首を振った。――はっきりと、横に。 「そうか」 ピサロは面白く無さそうに呟き、石造りの天井に目を向ける。 「貴様は魔女の名前を覚えているか?」 「え?」 「主催者の魔女の名だ」 「はっきりとは覚えてませんけど、アルテ……ミシア、でしたっけ」 「そんなものだろうな」 ピサロはコツコツと机を叩く。 「ヘンリーも正確に魔女の名を言ってはいなかった。  ソロやビビやロックに聞いても、一回で正しい名を言えるとは思わん」 何を言いたいのかわからず、ターニアは首を傾げる。 ピサロは何も言わなかった。聞きたいことを聞き終えて、もはや興味を無くしたようだ。 一人でじっと腕を組み、ひたすら思案を巡らせる。 アーヴァインが記憶喪失になっている。 この前提は、もはや揺るぎようのない事実と考えていいだろう。 策略家の演技にしては態度が不安定過ぎるし、自分の身を省みない行動が目立ち過ぎている。 だが……本当に忘れているとすると、何故あの青年は『主催者の名前を正確に』言えたのだ? 『僕は人殺しだ! アルティミシアの脅しに屈した人殺しなんだ!』――と。 最初に思い浮かんだのは、アーヴァインが魔女の部下であり、主催者の差し金ということだった。 一日経たないうちに5人を葬る行動力。緻密にして大胆不敵な戦術、非凡な射撃の腕。 この大地に最初に降り立った男だという事実。 何より、あまりにもタイミングが良すぎる記憶喪失。 どの要素をとっても、遊戯を引っ掻き回すために用意された主催者側の道化――ジョーカーであることを裏付けているようだ。 しかし、それにしては言い方や態度がおかしい。 『脅しに屈する』とか、『尻尾を振った』というフレーズからは、忠誠を誓うどころか敵対していた印象を受ける。 それとは別に、広間で最初にアルティミシアの名を呼んだものの存在も気に掛かる。 (このゲームには魔女の部下、あるいは敵対者が参加している……  アーヴァインはその一人だったということか……?) 信じ難い部分もあるが、可能性は否定できない。 『魔女を倒すという目的のために、あえてゲームに乗ることを選んだ』。 あるいは『敵対者であるからこそ、その力量に目をつけられ、魔女に操られて利用された』。 仮定に仮定を重ねた仮定だが、どちらも有り得る範囲に入るだろう。 精神面がいくら脆かろうと、実力的には十分なものを備えていることも確かだ。 (……どちらにしても、早めにあの男の身柄を回収する必要がありそうだな) アーヴァインが本当に魔女について知悉しているのならば、その情報は有用な武器に成り得る。 ただの傀儡であっても、もしかしたら主催者側とのコンタクト手段やそれに次ぐ何かを持っているかもしれない。 ピサロはそう結論付け、そして、思案を打ち切った。 彼は知らない。 この殺し合いの中で誕生した、真のジョーカーの存在を。 それが仕組んだ邪悪な罠を。 その罠にかかったのが誰なのかも―― 「あーあ、やってらんないねー」 「そうだねー……」 リュックが呟き、わたぼうがうなずく。 エリアがため息をつき、レナは――相変わらず、心ここにあらずといった風情で膝を抱えている。 ここはウルの村。 森の奥に隠された倉庫の二階。 「まさか閉じ込められちゃうなんて思わなかったね」 リュックが言う通り、彼女達はここから出られずにいた。 階段はあるが、出口がどこにもないのだ。 本当は、隠しスイッチを入れると開く壁の向こうに出口があるのだが――残念なことに、誰もスイッチのことに気付いていない。 村を探索していたソロ達も、倉庫の存在そのものには気付いていたが、ロウソクに仕込まれたスイッチには気付かなかった。 「私、もう一度調べてきます。  何か見落としているだけかもしれませんから」 そう言ってエリアが立ち上がり、階段を下りていく。 「あ、じゃああたしもー」 リュックが後を追い、わたぼうもおたおたと歩き出した。 「レナはここで待つ?」 わたぼうに声を掛けられ、そこで初めて皆の動きに気づいたらしく、レナは慌てて立ち上がる。 「……う、ううん。私も行くわ」 そうして、訝しい表情を浮かべるリュックとわたぼうを余所に、さっさと階段を下りていってしまった。 レナは知らない。 別れたはずの彼らが、すぐそこにいることを。 リュック達は知らない。 レナの心を苛み、蝕んでいるのが何なのかを―― 【ソロ 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング   第一行動方針:ヘンリーに付き合う  第二行動方針:これ以上の殺人(PPK含む)を防ぐ+仲間を探す】 【ロック 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード  行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】 【ヘンリー(6割方回復) 所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可) キラーボウ グレートソード  第一行動方針:GFを試してみる 第二行動方針:デールを止める(話が通じなければ殺す)】 【ビビ 所持品:スパス 毒蛾のナイフ  第一行動方針:ピサロ達についていく 基本行動方針:仲間を探す】 【現在地:ウルの村・外】 【ピサロ(HP3/4程度、MP3/4程度) 所持品:天の村雲 スプラッシャー 魔石バハムート 黒のローブ  第一行動方針:しばらく休憩 基本行動方針:ロザリーを捜す】 【ターニア 所持品:微笑みの杖  第一行動方針:ピサロ達についていく 基本行動方針:イザを探す】 【現在地:ウルの村・宿屋】 【リュック(パラディン)   所持品:バリアントナイフ マジカルスカート クリスタルの小手 刃の鎧 メタルキングの剣 ドレスフィア(パラディン) 【わたぼう 所持品:星降る腕輪 アンブレラ  第一行動方針:出口を探す  第二行動方針:アリーナの仲間を探し、アリーナ2のことを伝える  基本行動方針:テリーとリュックの仲間(ユウナ優先)を探す  最終行動方針:アルティミシアを倒す】 【レナ 所持品:エクスカリバー  第一行動方針:? 基本行動方針:エリアを守る】 【エリア 所持品:妖精の笛、占い後の花  第一行動方針:サックスとギルダーを探す】 【現在地:ウルの村・森の奥にある倉庫の二階】

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