136話

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*第136話:人探し ドーガは夜の川原で一人、目を閉じて集中していた。 彼の脳裏には、そこからはずいぶん離れた場所の景色がぼんやりと映っている。サイトロの魔法だ。 ドーガは、手負いのギルダーはおそらくすぐには行動せず、そんなに遠くないところに身を隠すだろうという考えから がむしゃらに追うことはやめ、相手の位置を確認できればと思いサイトロを続けていた。 …しかし、どうも上手くいかなかった。あまり魔法の範囲を広げられない上、景色もぼんやりとしか映らないのだ。 これは自身の病のせいか、怪我のせいか、それとも精神的なものか…。 数十分続け、向こう岸の森林内などでは数人の姿を確認する事が出来たが、肝心のギルダーは未だ見つからない。 ――ギルダーがなぜあんな行動をとったのか、ドーガは理解できなかった。 彼は光の戦士であるということを除けば、あとは至って普通の少年だったはずだ。 落ち着いた性格で冷静な彼が、殺し合いという恐怖に負けたとも思えない。 しかし何か理由があるとしても、クリスタルの力を悪用するならば放っておくわけにはいかない。 道を踏み外しそのまま堕ちていくならば、その前に…。殺すことになったとしてでも―― 「あのー…」 唐突に声をかけられて、呪文と思考が中断する。いつの間にか、背後に先程助けた少年が立っていた。 少年はフィンと名乗り、遠慮がちにドーガへと頭を下げる。 「ええと…さっきは危ないところを助けてくれたみたいで、本当にありがとう」 ドーガはいや、と首を振った。 「あいつはわしの知り合いじゃ。すまなかったな…」 「そうですか…」フィンは、ドーガのおそらくは複雑であろう心情を察し表情を暗くする。 「…怪我のほうは大丈夫なんですか?」 「ああ、大丈夫じゃ。このくらいなら放っておけばそのうちに治る」 その答えに少々驚いた様子のフィンに、ドーガは「人間とは治癒能力が違うからの」と付け足すと、再びサイトロの詠唱を始めた。 「何してるの?」 フィンの問いに、ドーガは魔法を続けながら答える。 「魔法で周りの様子を見ているんじゃ。わしはあいつを止めなくてはならないからな」 「…遠くが見えるんですか?」 ああ、とうなずくドーガにフィンは少し目を開き、少々勢い込んで言った。 「じゃあ、僕の仲間…金髪の王子っぽい人と、赤いマントの綺麗な女の人と、白い髭のおじいさんなんだけど  この近くにいたりしない?」 仲間のことを説明し――マリベルのことを思い出して少々悲しげな表情になるフィン。 ドーガはそんなフィンを見て、 「…わかった、ちょっと待て。今探してやろう」 それだけ言うと、再び思考を呪文に集中させ始めた。 【フィン 所持品:陸奥守 魔石ミドガルズオルム(召還不可)  第一行動方針:仲間を探す】 【ドーガ(負傷) 所持品:不明  第一行動方針:サイトロ使用中(フィンの仲間とギルダーを探す) 第二行動方針:ギルダーを止める】 【現在位置:大陸中央の川原(北の橋東側付近)】

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