436話

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*第436話:Born to be free 「ふぅっ……」  何度目になるか分からない回復のための精神集中を終え、大きく息を吐き出す。  その効力は段違いに弱体化しており、特におそらく魔力を消費しすぎたためであろう疲労の方はいつまでも消え去らない。  チャクラはMPにかけてはほとんどその効果を失われていたが、それでも肉体の傷の方にはいくらかあてにできるようだ。  弾丸を抉り出した右肩、肉を削ぎとられた左太腿、簡易に止血したそれらはいくらかは回復し、すでに移動程度にはほとんど差し支えがない。  少しの無理程度で牙も持たぬ相手なら問題なく仕留められるだろう。  しかし――思い出せ。  自分が今まで戦ってきた相手のことを。  アグリアス。大剣を操り自分と互角に渡り合った女剣士。  フルート。細身にして強打、拳を肉体を凶器と化していた闘士。  ロラン。真っ直ぐな、そして勇敢だった、すでに亡き剣士。  サックス。防御に長けた、バランスの良い剣士。おそらくはあの女と共に生き埋めだろうがな。  ウィーグラフ。大剣と奇妙な技を使う戦い慣れた歴戦の戦士。  忍装束の男から武器を奪い、自分に金属の弾を撃ち込んだあの男。  そして、カズスで目にした「あれ」。  震えが来るくらいに強敵揃い。  最後のは異常なる存在、別格としても他は皆十分な強者、美味なる獲物。  彼らのような相手との戦いは命を懸けるに値し、勝利はサラマンダー自身を満足させるだろう。  勝利のためには万全であることが望ましい。  けれど、不思議に思う。  当初は、殺伐としたこの世界で戦いに身をおき、ただ単純に敗れ去るまで戦い抜くつもりだった。  だがウィーグラフとの戦いで死を垣間見た時、自分は何を不足だと感じた?  オレは何を欲しているんだ?  ようやく森を抜け、両側に山を見ながら間の平地を行く三人。  相変わらずザンデとピサロは長い質疑応答を続けている。どうやら今の話題はこの世界について。  「浮遊大陸」だの「クリスタル」といった単語が聞こえる。 (この地面、魔大陸みたいに浮いてるのかー…そういや空が近いよな)  なんだかんだいってそれを盗み聞きしているロックが三人の中でもっとも注意力散漫だった。  唐突に会話が途切れる。  急変した雰囲気に戸惑うロックであったが、彼もすぐに何がその原因かに気付く。  振り向いた方角から感じられた何者かの視線はもう消え失せていた。 「早いな。正しい判断をする頭はあるというわけだ」 「隠行…シーフか忍者かといったところか。ふむ、詳細が分からないのは腹立たしいが偵察索敵だけが目的ならばもう追いつけまいな」  冷静に分析する魔王二人と対照的に、ロックに浮かぶのは一つの懸念、一抹の不安。  だがそれを口にするより先にザンデはもう再びカズスへ向け歩き始めている。  ロックは歯がみして自分たちが来た方、ウルの方を見遣る。 (くそっ、みんな気をつけてくれよ)  最悪の予想が像を結ぶ。彼の直感は今の気配がゲームに乗った相手ではないかと疑っているのだ。 「……ソロの奴も信用が無い」  そんな不安な心をまるで読み取ったのかのように、ピサロが聞こえるくらいの声で呟いた。 「何の目的があるかは知らんが貴様もまずはすべきと思うことを為せ。  中途半端では何もできぬままに死ぬことになる。心しろ」  言いたい事だけ言ってピサロはザンデの横まで足を早めて行ってしまう。  追い付いた聞き手を待ち受けていたザンデがさっきの続きか、長話を再開する。 (…だよな。『中途半場で何もできないままに』…キツイこと言うぜ。実際、そうだった。  あいつらのことを信用して出て来たんだ。  なのによ…まるで自分がいれば大丈夫、すべて自分がいなきゃ心配なんて…何様だ)  不安やもやもやを吹っ切るようにパチン、とこぶしを手のひらへ打ち付ける。気持ちを新たに決意を再確認。 (この世界の真実、必ず掴んでみせる!)  それから、ロックも二人を追って再び駆け出した。  常に自分が先行して相手を発見できる場所を選び慎重に行動していたことがプラスに働いた。  やって来たのはクジャに匹敵するほどの強大な気配を秘めた男を二人を含む三人組。  巨大な力との戦いへの興味と、危険信号が同時に励起する。 (!! 気付かれたか!)  観察していた相手の雰囲気の変化を察し、彼らの進行方向とは逆へ即座に撤退。  せっかく塞がりつつあった傷が開いてしまったが勘定に入れるべき問題ではない。  暫く警戒しながら走っていたが、追ってくる気配が無いことを確認してサラマンダーは安堵する。  クジャ。感じた気配の大きさに思い出した姿、破壊的な魔力を振るう姿を思い出す。彼もまた参加者としてここにいる。  幸か不幸か自分が戦ってきた相手にはまだそれほどのクラスはいなかった。  だが時間の経過とともに弱者が淘汰されていけば生存者はいずれすべて強者のみになる。いや、すでにそうなっているのかもしれない。  それは当然の道理だ。  サラマンダーにはそれが面白い。  交戦して明確に勝敗をつけられなかった相手、実質自分を殺したウィーグラフ、4人殺しのアーヴァイン。  剣士、拳士、魔術師、忍者。竜騎士や召喚士、その他まったく未知の武器や戦法。  加えて自分の興味を誘うような未知の相手にどれだけ出会えるだろうか。  そして、ジタン。  かつての仲間ではある。あるが――今の自分では戦いへの滾りを、欲する何かへの滾りを抑えられまい。  ともかくも楽しませてくれそうな相手、来るべき戦いへの興味は尽きないのだ。  それに最終的に全員の頂点に上ればあの力、魔女への挑戦権が得られるわけだ。  応急処置の後に再度チャクラのため精神を集中。それから、同じように慎重に移動を再開する。  辺りの風景は次第に森へと変化していた。 【サラマンダー(右肩・左大腿負傷、MP1/5)   所持品:ジ・アベンジャー(爪) ラミアスの剣(天空の剣) 紫の小ビン(飛竜草の液体)、  カプセルボール(ラリホー草粉)×2、カプセルボール(飛竜草粉)×1、各種解毒剤  第一行動方針:慎重に移動する  第二行動方針:アーヴァインを探して殺す  基本行動方針:参加者を殺して勝ち残る(ジタンたちも?) 】 【現在地:ウル南の森】 【ザンデ(HP 4/5程度) 所持品:シーカーソード、ウィークメーカー  第一行動方針:仲間、あるいはアイテムを求め、カズスの村へ  基本行動方針:ドーガとウネを探し、ゲームを脱出する】 【ピサロ(MP1/2程度) 所持品:天の村雲 スプラッシャー 魔石バハムート 黒のローブ  第一行動方針:ザンデに同行し相手を見極める 基本行動方針:ロザリーを捜す】 【ロック 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード  第一行動方針:ザンデ(+ピサロ)の監視  基本行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】 【現在地:ウル・カズス間の平地→カズスの村へ】

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