451話

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*第451話:首輪雑談と方向転換 希望を打ち砕く三度目の宣告が夜の再来を教える。 南を目指していた三人は皆足を止めて押し黙り、それに耳を傾けていた。 (レオ将軍!?) 不安な心境は聞こえたよく知る名前に揺さぶられる。 動揺と狼狽に思わず泳がせた目には二人の魔王、二つの不動の背中が見えている。 (反応なしかよ。なんだコイツら…いや、魔王なんてこんなもんか) そう思った瞬間動揺よりも怒りや嫌悪のような気持ちが勝っていた。 自分の動揺と比較したその不動に氷のような冷たさを感じ取って思わず心中で悪態をつく。 だが、背中越しで分かりにくい角度であったがロックは確かに見たのだ、 冷徹だと思っていたその魔王がため息をつくところを。 (……ため息? ……なんだよ。そう、だよな…決め付けは良くないぜ、俺。くそ) 途端抱いていた怒りと嫌悪がなんだか恥ずかしく心の中に渦を巻く。 行き場を失ってしまったそのわだかまりを拳に込めてロックは地面を叩いた。 (『また』…か) 気にかける名前こそ無かったが代わりにあまり聞きたくは無かった名が告げられた。 一人の男の顔が浮かぶ。その男は今深い悲しみに沈んでしまっているだろう。 かけがえのない存在が失われたことを告げられたからだ。 だが、沈んだままではいないだろう。なぜなら彼には仲間がいるから。 一時の哀しみはあろうとその男は己に課した勇者たる責務から逃げたりはしないだろうから。 (ソロよ……悲劇は繰り返してしまった、な) 続けて浮かびそうになったことを打ち消すように深く息を吸う。 それからピサロは心中にわだかまっていた一抹の不安を大きく息と共に吐き出した。 (ドーガ…巨星堕ちる、か。ギルダー…どこで死に急いだか?) その顔にゲーム内で初めて見せる憮然とした表情を貼り付けて虚空を見上げるザンデ。 他者の生死はその他者のこと、興味はない。だが自分の目的を阻害するなら別だ。 探しているのは人でも物でもいい、旅の扉をジャックするために必要と考えられる膨大な魔力の持ち主。 ギルダーはともかくそのため無条件で当てにしていた同門の二人、その片割れは失われてしまった。 (残る当てはウネのみか、ふむ。求めるレベルが二、三人欲しい所なのだが…) 目を閉じ、鎮めた心からわずかな失意を心から追い出して普段の不敵な笑みを取り戻す。 傍らからの視線に気付いたのはその後であった。 「…どうした。知己でも呼ばれたか」 「なに、使えるとふんでいた当てが無くなっただけのことだ。しかし……」 値踏みするような視線で改めて一瞥。それからザンデは仮にだ、と前置きして話を続けた。 「ピサロよ、貴公がもし魔女の立場にあったなら、どの程度の統制を行う」 「統制だと?」 「そうだ。貴公も相応の身分にあったならば支配者の立場と言うものを知っておろう。  私のように反意を明確にしている者はどのように扱うか?」 「……ふむ」 質問を発しているザンデの顔の下、首には鋼鉄の首輪が有る。 ピサロは自身の首にも付けられている同じものに触れながら答える。 「最初に集められた広間を覚えているか。そこで魔女の手下が言っていた。  『禁止事項は以下の三つ。  一、会場から逃げ出そうとする。 会場に設定された境界線を越えれば爆発するということだ。  二、禁止された魔法や技を使用する。これは場合によって追加されることがある。  三、力づくで首輪を外そうとする。以上だ』とな。  貴様は脱出を考えている――反意があると言ったがこの首輪はどうする気だ?  この枷がある限りいかな反抗も無意味のまま。魔女の世界から離れたところで首が飛ぶだけだな。  ならば首輪をはずす手立てを何者かが見つけるまで誰を構うことはない。これが答えだ」 「ファファファ……相違ない。私は慎重すぎたか。しかし……ではそれで貴公は諦めるか?」 「馬鹿な」 即答する。向かい合う魔王の唇の端が僅かに釣りあがった。 「妨害か分解だ。この首輪、魔法と機械の結合…極めて魅惑的、古代文明の遺物に良く似ている。  ピサロよ、簡潔に言う。貴公は私と手を組む――否、共通の利害を持つつもりは無いか?」 「…貴様の考察は興味深い。が、何をさえずろうと貴様が二心を持たぬ証拠にはならん。  むしろ今私は貴様を監視に置くつもりで同行しているのだがな」 「なあ、今首輪の話して…たんじゃ……なかったか?」 二人の間へ割って入ってみたがそこは妙に険悪な空気。 夕方はなんだか意気投合していた気もするんだけどなぁ、と心中で愚痴りつつ左右から来る鋭い視線にひるむロック。 「ファファファ……何か言いに来たのか? 構わんぞ、言うが良い」 悪い雰囲気を裂いて唐突にザンデが笑い、それから高慢な態度でロックの発言を許可する。 態度の悪さに気を悪くして助けを期待してピサロの方を見るが無駄だった。 むしろ言うことがあるなら早くしろ、そういう風に目が語っていた。仕方ないとっとと言う事言うか。 「あー、あのな。ソロから聞いた話なんだがよ」 ロックは二人の魔王にソロから聞いた天空の武具の話をさらりと説明する。 曰く、『天空の剣にはあらゆる魔力を打ち破る力が宿っている』 そして『魔法で動いてるなら、その剣の力で打ち消せるかもしれないってワケ』だと。 「まあ解除用のアイテムを準備するなんざ罠の気がするけどよ、今は藁にもすがりたいところだろ?」 「支給品の中に天空の剣が存在するか。だが…言うとおり安易過ぎる。ザンデよ、どう思う」 「解呪、ディスペルの力か。無理なのではないか?  そもそも我々が単独で行使できる力で首輪をどうにかできるならゲームは破綻するであろう」 「どうかな、可能かも知れん。だが強引な解除による失敗のリスクは『死』だ。  それくらいは誰でもわかること。既に70名近い死者が出ているが試した奴がいるとは思えない」 「それこそ言い切れぬと思うがな。しかし強力な魔力を帯びた代物であるならば使い道はあるやも知れぬ。  とにかく直接は通じぬともよいのだ。要はどう狡猾に失敗せず無力化するか、であろう?」 ザンデの問いかけを受けてピサロが頷く。 (こいつら…やっぱり相性良いんじゃないのか? けどさっきの空気の悪さは何だよ?) なお首輪の解除について意見を交わしぶつけ合う二人をロックは傍観するしかなかった。 浮遊大陸の一角、カズスの北に広がる平原の片隅で続いていた議論を中断させたのは西よりの音、そして魔力の波。 言葉を止めて吟味するように思考した後、ザンデはゆっくりと歩き出す。 「……サンダガ? ファイガ…いやフレアレベルか?」 「!? おいザンデ、どこ行くんだよ!?」 二人に背を向け西へとゆっくり離れていく長身の魔王に驚いた声を掛けるロック。 「知れたこと。音の源には高レベルの使い手が確実にいるのだぞ? 協力を求めに行くのだ」 「あんたカズスに行くんじゃなかったっけ…」 「良かろう」 ロックの横から離れ、ピサロも動き出す。 「もとより貴様を野放しにする気は無い。わかっているな」 ザンデはただ哄笑し、それを返答代わりとした。二人はそのままロックを置いて西へ去ってゆく。 「ちょっと待てって! なんだよ、あいつら組んだのか?  …なんか俺追いかけてばっかりだな……くそっ、待てって!」 慌ててロックも二人を追い走り出した。 かくて南を目指していた魔王二人と盗賊一匹の三人組は西へと歩むことを選んだのだった。 【ザンデ(HP 4/5程度) 所持品:シーカーソード、ウィークメーカー  第一行動方針:仲間、あるいはアイテムを求め、爆発音の音源へ  基本行動方針:ウネや他の協力者を探し、ゲームを脱出する】 【ピサロ(MP1/2程度) 所持品:天の村雲 スプラッシャー 魔石バハムート 黒のローブ  第一行動方針:ザンデに同行し相手を見極める 基本行動方針:ロザリーを捜す】 【ロック 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード  第一行動方針:ザンデ(+ピサロ)の監視  基本行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】 【現在位置:ウル・カズス間の平地→カズス北西の森南部へ】

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