208話

「208話」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

208話」(2008/02/15 (金) 23:15:26) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

*第208話:シノビーズ 「あー、あたしもあたしも!」 「やっぱりそうだったか! 衣装があまりに似てたからよ、きっとお仲間だと思ってたぜ。  で、忍術はどれぐらいマスターしてるんだ? 火遁ぐらいは使えるのか?」 「……かとん? なにそれ?」 「おいおい。忍者たるもの火遁は基本だろ。  水遁、雷迅まで扱えるようになって、ようやく忍者としては一人前! ってやつだ。  そこまで到達するのに俺も色々と壁を乗り越えてよ……へへっ……」 「あれ? ちょっとしんみりムードになってない?  もしかして触れてはならない禁断の落ちこぼれメモリーだった?」 「ば、馬鹿いってんじゃねーよ。  火遁もできないエセ忍者がそんな口を利くのは百年早いぜ!」 「な、なんだとぉー!」 「うわっ、よせ! 人の背中で暴れんな!」 「ええーっ!? 風魔手裏剣にしてはちょっと小さすぎない?  なんかマテリア穴もみあたんないし」 「まてりあ? なんだそいつは。  ……いや、待てよ? たしかどっかで……なんとなく覚えがあるんだが……」 「ふっふーん。知らないならこの1st級マテリアハンターであるユフィ様が教えてしんぜよう。  マテリアとは、様々なエネルギーを秘めた球体の名称である。  炎や雷、はたまた治癒といった魔法的な力を扱えるようになるものもあれば……」 「それだ! マリアさんが持ってたバカでかい剣に付いてた玉っころの説明書!  ……そういえば今頃どうしてっかな。ちゃんと待っててくれればいいんだが。  ここはひとつ、確かめてみるとするか」 「人がせっかく説明してあげてんのに、いきなり自己完結しちゃってるし。その態度はアリ?」 「杖が反応しない……移動しちまったのか?」 「ちょっと、聞いてるエッジ?」 「あ……ああ。わりぃなユフィ、聞いてなかった」 「ちょーむかつく! こんな美少女を無視するなんてさ!」 「口数が少なくなってないか」 「んー、ちょっとやんごとなき事情でグロッキー気味。克服できないってのは辛いね。  エッジこそあんまり喋らなくなったじゃん」 「……そうかもな」 「あたし、そろそろ自分で走ろうか? 命の恩人二号様に元気な姿を見せたいしさ」 「今は体力温存しとけ。目的地はすぐそこだ」 「それがこうしているだけで消耗しちゃ……っ!?  この匂い、微かだけど……もしかして……!」 「くそっ!」 不自然に堆く盛られた土。申し訳程度に添えられた一輪の花。 これが何を意味するのかは考えるまでもないだろう。 問題は、これが誰のために作られたものなのか。 その一点だ。 思案の末、二人は掘り返すことにした。 淡い希望と、押し潰されそうな不安を胸に。 最初に現れたのは腕だった。汚れてはいるが白くて華奢な――腕。 時が凍りつき、心臓を握られたような圧迫感が急速に押し寄せる。 もうやめたかった。――やめるわけにはいかなかった。 程なくして再会は果たされることとなる。 双方が望まぬ――残酷な形で。 エッジはしばし呆然とその光景を見詰めていたが、唇に触れた辛い感触を通じて我に返る。 涙があふれていた。 情けなかった。悔しかった。許せなかった。 こんな優しい人の命を奪った人間を、失わせてしまった自分を。 ユフィもエッジの背で泣いていた。 別段の面識があったわけではない。死の淵へ沈み行く際に、おぼろげながら彼女の記憶があるだけだ。 他愛もない世間話。王宮での生活。夫に対するおのろけ。 命を救われたことも勿論だが、移動中にエッジから聞かされたそれらの会話を思い出すと……それだけでたまらなかった。 無言でエッジの背から下り、よろよろと歩き――やがてバランスを失いその場にへたりこむ。 「ごめん……あたしのせいだよね……あたしのせいで……ごめっ……さい……」 冷たくなっているマリアの左手を握り締め、かすれた声を絞り出すように嗚咽する。 許してくれとは言わない。だが、ケジメだけはつけると約束するぜ……! エッジが吼えた。力の限り、心の中で。 「……やめとけ。きっと、喜ばねぇよ」 ユフィの提案をやんわりと制し、マリアの遺体に土を被せていく。 「でも……あたし、こんなことぐらいしかしてやれないよ」 プリンセスリングを手にマリアの姿をじっと眺める。 支給品の水で顔と髪を洗い、こびりついた血は拭った。 だが、それだけだ。 体は傷ついたままで、衣服はボロボロの状態。 感傷だとわかっていても、せめて少しでも綺麗に着飾らせて天上へ送ってやりたかった。 二度と伝える機会のなくなってしまった、お礼代わりに。 「うまく言葉に出来ないが……気持ちは届くぜ。絶対にな。  だからその指輪はユフィ、お前が持ってろ」 ユフィはしばらく俯いて動かなかったが、不意に面をあげた。 泣き腫らして真っ赤な目を決意の眦に変えて。 再度の埋葬を終えると、エッジはどうしても移動中には切り出せなかった出来事を語った。 ユフィが意識を失っている間に行なわれた――放送のことを。 「……マリベル。おそらく、これで全部だ」 微かにユフィが震えていた。 やはり、挙げた名前の中に親しかった者が含まれていたのだろう。 それでも取り乱したりはせず、表情も変えないで押し寄せる悲しみから耐えている。 傍から見れば数時間前の俺の姿と重なるのかもしれない。 まだマリアさんと一緒に行動していた頃、空から聞こえてきた二人の名前から生じた動揺を 必死で見せまいとする、自分の姿に。 忍術だとか、そんなものは関係ない。 こいつは正真正銘の――忍ぶ者。頼りにできる一人前の仲間。 心の底からエッジはそう思うのだった。 「まずはあの剣を所持している奴を探す。  マリアさんを殺して奪い取ったのか、たまたま通りかかっただけの人間が持ち去ったのか。  それを確かめるんだ」 ユフィがこくんと頷く。 「よし、それじゃ――」 手持ちの風魔手裏剣をユフィのザックに分けながら、エッジは続けた。 「特訓が先だ。片腕でもちゃんと動けるようにな」 「あたしなら大丈夫だってば。ホラ!」 シュッシュッシュッっと、左拳が空を切る。 しかし―― 「そら見ろ。それだけで態勢崩れてるじゃねぇか」 「うー、片腕がないだけでこんなに影響あるなんて……」 失った腕を偲ぶように、右肩をなでながらユフィは独りごちる。 「急がば回れ、だ。無理すんなよ」 「りょーかーい」 ……リディア。 知っての通り、俺は馬鹿で不器用だ。二つのことを同時になんてやれやしねぇ。 セシルもローザも逝っちまったらしいこの世界で寂しい思いをしているだろうが、もうすこしだけ辛抱してくれ。 必ず――必ず迎えに行く。それまで待っててくれよ。 二人の忍者は歩き出す。新たな誓いと命を背負って。 【エッジ 所持品:風魔手裏剣(10) ドリル 波動の杖 フランベルジェ 三脚付大型マシンガン  第一行動方針:マリアの仇を討つ 第二行動方針:ユフィの特訓 第三行動方針:仲間を探す】 【ユフィ(傷回復/右腕喪失) 所持品:風魔手裏剣(20) プリンセスリング フォースアーマー  行動方針:同上】 【現在位置:アリアハン北の橋から西の平原】

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。