384話

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*第384話:Rogue 「あ……あぁ……うう……」 エリアが重傷を負った事故から少しだけ時間が経った頃。 レナは未だ何かに怯える様に隠れていた。 ここはウルの村から北に位置する森。 彼女はそこにある1本の大樹に体を預け、隠れていた。 最早あの村にいた人間の事はどうでも良い。 今はただ逃げたいだけだ。罪からも、人からも。 ふと彼女は、ある音に気が付いた。 草を踏みしめて歩く人間が出す、その音。 2人ほどの人間がこちらに確実に近づいている。 「……い、嫌……来ない……で……」 レナはその現実から逃げるように目を閉じ耳を塞ぐが、確実に気配は近づいてくる。 そして、現れた人間は――――― 「ったく、ライブラだかラブラブだか知らねぇけど……やっぱちょっと信用できそうにねぇな」 「まだ言ってるのか?大丈夫だって、普通に話しかけてくれたじゃないか」 「んな事言ったってよ……」 話は数十分前に遡る。 2人の人間――――バッツとローグは祭壇の洞窟から少しずつ南下していた。 地図によるとどうやらウルという村があるという事を知り、 『じゃ、そこで手がかりゲットと行きますか』 というローグの意見にバッツが賛成、そしてウルの村へと2人は向かい始めたのだ。 それが数十分前。 そしてしばしの時間が経ち、2人が暫く歩いていると1つの気配に気が付いた。 「ローグ」 「わかってる、盗賊なめんな」 「なめてない」 「わかってる、盗賊なめんな」 「いや、だから」 「わかってる、盗賊なめんな」 「………」 どうやらローグは気配の方に意識を集中しているらしく、人の話をあまり聞いていない。 だが気づいているという事はなんらかの対処が出来るという事だ。 そして恐らく、彼の頭の中ではいくつかの戦術や遁走方法などが浮かんでいるのだろう。 「コンタクト取ってみよう。やけに大人しすぎる」 ローグのその提案を聞き、バッツは小さく頷いた。 そして、彼らが見た気配の主は――――― そして3人は出会った。 レナは怯えながら、かつての仲間がいることに気づき、 ローグは彼女が非常に怯えていることに気づき、 バッツは彼女の姿を見るや否や、その状況の意外性に頭が一杯一杯になってしまった。 そして、静寂が辺りを包んだ。 レナは酷く怯えていた。 ローグは現状を理解する努力をしていた。 バッツはレナが何故ここまで怯えているのかと考えていた。 「バ……ッツ……?」 「レナ!レナだろ!?」 そしてバッツは彼女とお互いに見つめあった後、1歩踏み出した。 そして彼女に今の状況を尋ねるつもりだったのだが――――― 「嫌っ!近づかないで……っ!」 「レナ……?なんでそんな……」 「嫌だ…嫌だ!バッツでも嫌ぁ!!」 レナが拒絶していた。その様子を見て、バッツは足を止めた。止めざるを得なかった。 「おいバッツ、こいつマジで仲間なのかよ?失礼だけど俺にはとてもそうには見えねぇ」 ローグが隣で冷静に客観的な意見を放つ。その声には彼女に対する猜疑心が篭っていた。 しかしバッツはまたレナに少しずつ近づいていった。 混乱しているかつての仲間を、バッツは放っておけなかったのだった。 だがレナはそんな彼の思いなど知らず、恐怖に押し潰されかけていた。 そしてついに、彼女の恐怖は許容量を超えてしまい、 「……フレア!!」 爆発呪文を紡ぎ、バッツに至近距離で爆風での攻撃を与えたのだ。 「レナっ!?」 「んな……っ!」 小規模ではあるが、爆発を喰らったバッツはかなりの勢いで吹き飛ばされた。 そしてその勢いは殺される事は無く、バッツは後ろにあった木の幹に体を勢いよく打ち付けてしまった。 ローグもローグで彼女を警戒し少し離れていたものの、やはりフレアの爆風に吹き飛ばされていた。 こちらは運良く怪我を負う事は無かったものの、少々混乱している。 「バッツ……バッツ!おい!」 ローグが必死に叫ぶものの、返事が無い。 爆風によって起こった砂埃が晴れていくと、気を失っているバッツの姿を目にすることが出来た。 彼は気絶しているだけではなかった。左足に火傷を負っている。 ローグは急いで自分の飲料水を、バッツの左足にかける。 だがそれだけで当然上手く行くはずもない。しかもローグには回復呪文というものが使えない。 不味い、不味い不味い不味い。どうする、どうすればいい。ローグは焦る。 とその時、レナの名を叫ぶ声が突如響いた。そしてその刹那、脇からある人物が現れた。 「いた!……おい、お前!さっきは……」 脇から姿を現した人物、それはロックだった。 ロックは先程の騒ぎを目にし、仲間に自分でレナを探すよう頼んだのだ。 人の治療が出来る人間が減ることに抵抗を感じたソロだったが、ロックの申し出を断る事は出来なかった。 ソロ自身、レナの事が気になっていた。そこで出たロックの申し出はありがたくもあったのだった。 そしてロックは今レナを見つけ、ここにいる。 辺りを見回すとレナの他には気絶している男と、自分を奇異の目で見つめる男がいる。 「おい、なんだか知らねぇけど……こいつの知り合い?」 「ああ、近くの村でこいつが知り合いを負傷させた。そっちは?」 「こいつに自衛のようでそうでない攻撃されました。今も困ってます、そんだけ」 ロックはその言葉を聞いて大きな溜息をついた。 そして視線をもう一度レナに向けると、レナは奇妙な剣と支給品袋を持っていた。 こちらに構え、混乱しているものの臨戦態勢を取っている。刺激を与えれば襲い掛かってくるだろう。 「マズったな……爆風で連れの袋が盗られた」 「爆風?あいつ、そんな事まで……」 「で、そのアイテム盗られた連れはあの女の知り合いらしい」 「何?」 「それを踏まえた上でちょっとお願いがある」 ローグの「お願い」はこうだった。 単純明快、バッツをウルの村に連れて行き手当てをしてやって欲しいという趣旨だった。 「その間俺はこいつを退けたり陽動したり、臨機応変にするさ。囮作戦ってやつだ」 「大丈夫なのか?俺を信用するかどうかとか、お前が独りになることとか」 「大丈夫だ。俺は確かにまずは初対面の人間を疑う生き方をしてきた。でも今はそんなんじゃ無理らしいし、な。それに俺は丸くなった」 ロックは彼のその言葉を聞きながら、バッツの体を背負った。そしてローグを見つめる。 「行けッッ!!」 ローグの叫びを合図に、ロックはウルへと走り出した。 それを確認すると、ローグはアイスブランドを取り出して構える。 そしてそれから数秒も経たぬうちに、レナは早速ローグに肉薄した。 レナのその奇襲にローグは素早く対応したが、レナの攻撃はまだ終わらない。 それは彼女に眠る戦闘の経験がさせた業だろうか。彼の防御を鍔迫り合いへと発展させる。 ローグは主導権を握られかけたことを確認すると、すぐに後退した。そして考える。 フルートの様な単純な力ではない。状況に応じた「知恵」を働かせる。 次の行動は、ローグが先だった。 袋から取り出したのは数本のダーツ。そう、アリアハンで受け取ったアルスの支給品だ。 それをまずは1本、器用にもナイフを投げる要領で投げたのだ。普通に投げるよりも勢い良く矢は飛んだ。 レナはそれを見てすぐさま回避した。そしてローグの元いた場所を見る。 彼はいなかった。元いたところには何も無い。強いて言えば後ろで樹が無造作に生えている。 突然、彼女の顔をまたも1本のダーツが掠めた。見ると右頬に細い線が出来ている。 それは確実に斜めの軌道を描いていた。矢が地面にほぼ垂直に刺さっていることからも、上からの襲撃だという事を決定付けた。 「相手はいつの間にか木の上に潜伏した」という事を確信して、頭上を見る。 するとまたも葉の影から次は2本のダーツの矢が飛び出した。 今度は左腕に刺さった。血が流れ、激痛が襲う。 だがそれを耐え、先程の葉の影をじっと見つめた。しかしやはり、何もいない。またどこかへ移動したようだ。 「どうしてもってんなら、仕方ないよな」 「ひ……っ!」 どこからともなくローグの声が聞こえた。その不気味さにレナは思わず声を上げた。 そして怯えている彼女目掛け、今度は3本を一気に投げた。これで彼の持つダーツの矢は全て無くなった。 だがレナは、それを避けた。3本のダーツの矢を一気に避け、そして今度はどこから来るのかと上を見ていた。 だがローグはいつの間にか下に、しかもレナのすぐ傍にいた。 そう、今までのダーツでの攻撃は彼女の注意を上へ上へと惹き付ける為の行動だった。 そしてレナはその罠にはまり、すぐさま起こったアイスブランドによる斬撃を喰らってしまった。 ライオンハートがアイスブランドの衝撃で吹き飛ばされ、そして同時にレナの右胸も切り裂かれた。 服が裂けた場所からは、傷が見える。血が流れ、激しい痛みを呼び覚ます。 「あ……嫌!…痛い……痛い痛い痛い!」 そう叫ぶレナの目の前で、ローグは意外にもアイスブランドを鞘にしまった。 そして今度はローグが、先程のバッツのように静かにレナに近づいていった。 「今のお前は……ガキん頃の俺みたいに、全部に怯えて……全部信用しようとしない、そんな目をしてる」 「え……?」 「だから助けたい。お前と同じ眼をした俺の仲間も、いつか救ってやろうと思ってるしな。だから、お前も助ける」 「嫌!……私は……私は……っ」 「大丈夫だっつーの……俺だって、お前をボコってはいそれまでなんて考えてないしな。バッツの仲間ならなおさらだ」 ローグはそう言うと、また彼女にそっと近づいた。そう、村に連れて行くためにだ。 彼女は重度の混乱状態にあっただけだ。バッツの仲間なのだから、話せばきっと判る。 だがレナは、またもローグの知らぬ内に恐怖に囚われていた。 ―――――エリアは自分と同じように右胸に傷を負った。 そうだ、エリアと同じ。そして彼女を傷つけた人間は自分。目の前にいるのは自分を傷つけた人間。自分を写した鏡の様な存在。 目の前の男は自分自身の罪の形だと思えて。そう、自分自身の罪は人となって自分を追っていた様に思えて。 それが、今、目の前で自分をどこかへ連れて行こうと―――――― 彼女の思考は、そこで止まった。 そして袋の中で輝いた様にも思える1本のナイフを取り出した。 そう、恐怖に囚われるほど強くなる、チキンナイフと呼ばれる短剣。 それを、 「嫌ぁああぁあぁああぁぁあぁあぁぁ!!!!」 ローグの胸へと、突き刺した。 「………マジ……かよ……」 ローグはそう呟くと、静かに地面へと倒れた。 彼の背から、刃が姿を現していた。そしてその貫通していたナイフを、レナは無理矢理引き抜く。 「わ……たしは……あ…ぁ……あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 そしてまた自分の新たな罪に怯えるようにそこから逃げていった。刺さったダーツを抜く事すら忘れて。 「………救えなかったのか……俺には……」 誰もいなくなった森の中で、ローグは自嘲気味に呟いた。 眼が霞む。もう助からない事は明白だ。 だが、酷く頭は冷静で。最早諦めにも似た感情が支配していた。 だからこそ、彼は考え始めた。 何もすることが無く、何もすることが出来なくなったからだ。 そして彼女のあの眼を思い出し、色々な事も思い出していた――――― ―――俺も、ガキの頃はあんな嫌な眼をしたガキだったんだろうか。 独りになって……道行く人に物を乞い、そして遂に人から物を盗むことを覚えたあの頃。 あの頃の俺は、さっきのレナって奴みたいな眼をしていた。何も信じようとしない、あの眼。 でも俺はアルスと旅をする内に……そんな眼は忘れてしまった気がする。 だからあのレナって奴も……きっと混乱してるだけで、あんな嫌な眼はすぐに消えてしまうと思ったのによ。 まぁ囮作戦を決行した時点で俺は死を予感してたけどな。それで予感が当たったから嫌な話だぜ。 だが、そういや凶暴な人格の方のフルートはずっと変わらなかった気がする。 俺たちのことをずっと仲間だと思っていなかった。自分でもそう言っていたな、アイツは。 そんで……セージに言われたっけな。「似たもの同士だ」って。あん時は反論したけど……今はそう思うぜ、悔しいけど。 だから、守ってやらないとって思ったのに……フルートと再会する前に甘さを見せてこのザマだ。 アイツは今良い仲間を見つけられただろうか。良い仲間に守ってもらえているだろうか。 そして、アイツ自身が仲間を仲間として認めただろうか。 『大丈夫だ、馬鹿』 ぁ?なんか今フルートの声が聞こえたような……。 って、お前こんな所で何してんだ?……いや、幻覚か。 俺もヤキが回ったな……まぁいいや。で、何が大丈夫なんだ? 『今はてめぇらも、今あたしの周りにいる奴も、皆……仲間だよ』 ……そうか、そりゃ何よりだ。良かった良かった……ってオイ!消えんのかよ! おいおい、なんだったんだあの幻は。俺の自己満足?自己満足か、自己満足なら仕方ないな。 でも、もしかしたら……なんかテレパシーみたいなので俺にあいつが伝えに来てくれたのかもな。 もしあのフルートが言った事が正しかったのなら……俺は満足して眠れるぜ。さっきのは心残りだけどな……バッツの仲間だし。 満足……か。本当に満足してるだろうか。でも、俺と同じ眼をしてたフルートやレナを救えたら……俺も同時に救われる気がしてたんだ。 打算っぽくて嫌な奴だな、俺。それでも仲間はこんな俺を救ってくれたのに。ごめん皆……俺、死ぬ。 「フルート……皆…死ぬなよ………」 こうしてローグは、静かに命を落とした。 そして同時刻、ロックはバッツを背負ったままウルの村へと到着した。 銀髪の盗賊は、皮肉にも最後に人を救おうとして足元を掬われた。 だが彼のフルートを守り、救いたいという思いは彼女に届いたかもしれない。 これは、皮肉な物語。 【バッツ(気絶 左足火傷有)】 所持品:なし  第一行動方針:気絶中(ロックに運ばれている)  基本行動方針:レナ、ファリスとの合流】 【ロック 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード  第一行動方針:バッツをソロ達の元へ連れて行く  基本行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】 【現在地:ウルの村入り口付近】 【レナ(重度の混乱状態 左腕負傷 右胸負傷) 所持品:チキンナイフ 薬草や毒消し草一式  第一行動方針:どこかへ逃げる】 【現在地:ウルの村周辺のどこか?】 ※ライオンハートとローグの支給品が落ちています 【ローグ 死亡】 【残り 66名】

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