514話

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*第514話:クジケヌココロ 「こっちだ、デカブツ!」  わざと注意を引くように声を上げ、ダーツを投げつける。  ダーツの矢は一直線に巨大な的に突き刺さった。  分厚い皮膚の前ではダメージは毛ほども無いだろう。  だが、コチラに注意を引くことはできた。  魔物の瞳に捕えられると同時に、敵に背を向け走り始める。  魔物は地響きを響かせながら、目の前の獲物を逃すまいとその後を追ってくる。  ここまではコチラの思惑通り。  まずは敵を誘導して、戦場をこの場から遠ざける。  宿屋を巻き込まない為、という理由もあるが。  何より、すぐ側で横たわる彼女の体をこれ以上傷つけたくなかった。  敵の間合いギリギリ外、付かず離れずの距離を保ちながら敵を誘導する。  地を揺らしながら進む魔物の動きは、巨体に見合って遅い。  だが、歩幅の大きさがコチラとは違いすぎる。  総じて進む早さに大差はない。  全力で走らなければ、すぐに追いつかれるだろう。 「ぐっ……!」  地を蹴る左足の火傷が痛んだ。  ガクンと走る速度が落ち、互いの距離が縮まる。  後方から大きく息を吸う音が聞こえた。  敵の間合いに入ってしまったと、気付いた時にはもう遅い。  モンスターの口から激しい炎が吐き出された。  背面から、避けられないタイミングで迫る激しい炎。  その赤い炎は白銀の盾に遮られ、空中に撒布した。 「こっちだ、ついて来い!」  横から身を割り込ませてきたソロが声を上げ、後を引き継ぐように駆け出した。  魔物は声に導かれるように、標的を変えその後を追う。  コチラも体勢を立て直し後を追おうとするが、左足の痛みがそれを引き留める。 「くそ……ッ! 痛くねぇぞ。こんな傷……!」  そう吐き捨て、痛みを無視して大地を蹴る。  この傷が原因で戦えないなんて事はあってはならない。  そうだ、彼女に付けられた傷など痛くはないのだ。  ウルを抜けた先の草原で、ソロの足が止まった。  ここなら辺りを巻き込まず戦えると判断したのだろう。  ソロはその場でクルリと身を翻し、正面から魔物へと向かい斬撃を放った。  後から追いついた俺も、タイミングを合わせ魔物の背後から一撃を放つ。  前後同時攻撃に対処しきれないのか、斬撃は魔物に直撃した。  だが、その感触は強固。まるで鉄だ。 「……恐らく、防御呪文だと思います。何とか、解いてみます」  そう言ってソロは天空の剣を敵めがけ振りかざした。  剣先から、全てを打ち消す凍てつく波動が迸る。  防御呪文の効果が打ち消された事を確信し、今度こそはと敵へと駆けた。 「ブオオオォォォン!!」  地を震わす獣の雄たけびを合図に、天からいかずちが降り注ぐ。 「って。マジかよ……ッ!」  走り出した勢いに急ブレーキをかけ、雷鳴から身をかわすためその場をゴロゴロと転がる。  雨霰と降り注ぐいかずちは半端な数ではない上に、正確にコチラを打ちぬいてくる。 「グッ…………!!」  全てを避ける事は叶わず、幾本のいかずちを身に受けた。  いかずちをまともに受けた姿を見て、ソロが慌ててコチラに駆け寄ってくる。  見れば、白銀の盾の恩恵か、同じくいかずちの雨をくぐりぬけたソロに目立った傷はない。 「バッツさん! 大丈夫ですか!? 今治療を…………」 「……いや。回復はいい」  ソロが回復のためにかざした腕を制す。 「ソロ。俺が囮になる。だから、残った魔力は攻撃に使ってくれ」 「……なっ」 「長期戦じゃ多分負ける。だから、勝つ為には、デカいの一発叩きこむしかない、だろ?」 「そんな。無茶です! 囮なら盾がある僕が、」 「駄目だ。攻撃はまともに動けるお前がやるべきだ。  それに一撃で決めれるのは、その剣があるお前しかいない」  強い決意を持ってそう伝える。  その言葉にソロは言葉を詰まらせる。 「頼んだぜ、ソロ。残った魔力全部ぶち込んでやれ!」  そう言って、返事を待たずに動き始めた。  降り注ぐいかずちの間を縫いながら、銃剣を片手に敵へと突撃する。  敵の左目は潰れている。  だからこそ、囮である自分は相手の右手から攻める。  モンスターは領域に侵入した害虫を排除するため、右腕を高く振り上げた  単純に叩き潰すために振り下したその腕を、紙一重で何とか避ける。  弾き飛ばされた大地と暴風を身に受けながら、地に叩き付けられたその腕を掛け上がった。 「ウオオオォォオ!!」  雄たけびを上げ、一気に肩口まで掛け上がる。  そして、魔物の首筋に銃剣を突き立て、同時に銃剣の引き金を引いた。  ボンと篭った爆音を上げ、魔物の首筋が爆発した。  体はその反動にバランスを崩し、魔物の肩口から落下した。 「……へっ。ざまぁみろ」  落下しながら、挑発するようにそう言って笑う。  魔物は恨めしげにコチラを睨み、もう一方の巨大な腕でこの体を薙ぎ払った。  ゴミ屑のように容易く吹き飛び宙を舞う。  吹き飛ばされながら、最後の力で彼に叫んだ。 「…………今だ、やれソロ!」  その声に応え、ソロは天を突き刺すように白銀の剣を掲げた。 「天空を切り裂き、来たれ――――雷よ」  勇者の呼び声に答え、夜を切り裂き雷が落ちる。  魔物が操る落雷とは質の違う、聖なる雷。  雷鳴が落ちるは、天に掲げた白銀の剣。  天空の名を貸す剣は雷神の力を纏う。  雷を纏った白銀の剣は火花を踊らせ輝きを増した。  火花を散らしながら、魔王を目掛け、勇者が駆ける。  それは、雷を操りし魔法の力と、剣を極めし戦士の技を持つ、真の勇者のみが扱える絶技。  放つ一撃、その技の名は―――― 「――――ギガソード!」  振り上げられた剣の軌跡は、雷鳴となり肩口へと伸びた。  鋭い雷電は身を引き裂き、傷口より侵入し身を焦がす。  切り裂かれた傷口から黒煙と血が噴出した。  地が揺れる程の轟音と砂埃をあげながら、山のような巨体がゆっくりと地に倒れた。 「……ははっ、凄げぇ」  その一撃の凄まじさに、思わず口から笑いが零れた。  地に伏せる巨体を横目に、ソロはこちらへと向き直る。 「バッツさん! 大丈夫ですか?」 「あぁ。何とか生きてるよ。一歩も動けそうもないけどな」  受身も取れず地面に叩き付けられた体は、指一本動かせそうにない。  だが、返事が帰ってきた事に、ソロは安堵の息を漏らしている。  その様子は先ほどの一撃を放った人物と同一人物とはとても思えない。  本当に、不思議な男だ。 「……とりあえず、みんなのもとへ――――!?」  唐突に、後方から伸びた巨大な腕がソロを捕えた。  握りつぶす圧力を受けながら、ソロは何とか首を動かし元凶を見つめた。  そこにいたのは確かな絶望。  最大級の絶技をその身に受けても、その魔物は生きていた。  それはなんと言う生命力か。  否。それよりも恐ろしいのはその執念。  その目を潰されようとも。  その肌を焼かれようとも。  その身を裂かれようとも。  その心は挫けない。  その執念はくじけぬこころの魔力、否。呪いの力がなせる技か。 「くっ……ソロッ!」  助けるために身を起こそうとするが体が動かない。 「グッ……ガハ……ッ!」  ソロが赤い血を、吐いた。  万力と例えるのも生ぬるい程の圧力。  ミシミシと胸骨が歪む音が聞こえる。  左手に握り締められた天空の盾が、何とかその圧力に抵抗しているが、それも気休め。  ソロの意識が霞む、このままでは圧死するのは時間の問題だ。  そして、トドメとばかりに魔物の指に力が込められた。 「――――爆裂拳!」  握りつぶすその直前、横合いから現れた男が魔物の腕を弾き飛ばした。  拘束を解かれたソロの体は、その勢いのまま空中に弾き出された。 「ソロ!」  投げ出され、地に叩き付けられるはずの体は、現れた男に空中で受け止められた。  そして軽い音を立て、男は俺のすぐ横に華麗に着地した。 「大丈夫だ。生きてるよ。気を失ってるだけだ」  男はそう言ってそっとソロを地面に下ろす。 「…………アンタは?」 「……とりあえず、そいつと一緒に下がってろ」  背を向けた男は質問には答えず。  ただ一歩、魔物へと踏みよった。  そして、男――マッシュは巨大な魔物を見上げた。  思わず飛び出したものの、状況はまったく持ってよろしくない。  ウルの様子を見にいき、まず目に入ったのは巨大なモンスターだった。  と言うか、このデカさだ。目にするなと言うほうが無理がある。  それが、村の騒ぎの元凶であるのは一目瞭然だった。  それが今も戦闘中である事がわかったため、すぐさま自分は駆けだした。  魔物のもとたどり着き、目に飛び込んできたのは今にも握り潰されようとしている少年だ。  考えるでもなく、体は動いていた。  だが、冷静になって見ると、状況は一向によろしくない。  目の前の巨大な魔物はハッキリ言って規格外だ。  緊急時ゆえ助けたが、この少年がマーダーである可能性もある。  しかも、少年は緑髪。可能性は高い。  今は、とりあえずの迷いは置いておこう。  まずは目の前のモンスターに集中しなければ。  迷いを断ち切るように首を振る。  敵は重傷だが、手負いの獣に油断は禁物。  そのことはコルツ山での生活で充分に理解している。  迷いあって敵う相手ではないだろう。  気合を入れなおして、目の前の敵を睨みつける。  丹田に力を込め、腹から深く息を吐き出す。  精神を統一し、精神を切り替える。  ここから先は、ただのマッシュでも、フィガロ王国第二王子マシアス・レネ・フィガロでもない。  ――――ダンカン・ハーコートの弟子、格闘家マッシュだ。  ゆっくりと構えを取り、ただ一言、開始を告げる。 「――――来い」 【ソロ(HP1/3 魔力0 気絶 体力消耗)  所持品:ラミアスの剣(天空の剣) 天空の盾 さざなみの剣 ジ・アベンジャー(爪) 水のリング  第一行動方針:目の前の怪物(ブオーン)を倒す。  第二行動方針:宿屋の3人(エリア・ビビ・ターニア)を助ける。  第三行動方針:ヘンリーを助ける。  基本行動方針:PKK含むこれ以上の殺人を防ぐ+仲間を探す ※但し、真剣勝負が必要になる局面が来た場合の事は覚悟しつつあり】 【バッツ(HP1/10 左足負傷)  所持品:ライオンハート 銀のフォーク@FF9 アイスブランド うさぎのしっぽ 静寂の玉  第一行動方針:目の前の怪物(ブオーン)を倒す。  基本行動方針:生き残る、誰も死なせない】 【マッシュ 所持品:ナイトオブタマネギ(レベル3) モップ(FF7) ティナの魔石 神羅甲型防具改 バーバラの首輪  レオの支給品袋(アルテマソード 鉄の盾 果物ナイフ 君主の聖衣 鍛冶セット 光の鎧 スタングレネード×6 )】  第一行動方針:目の前の魔物(ブオーン)を倒す  第二行動方針:アーヴァインと緑髪(緑のバンダナ)の男、及びエドガーを探す  第三行動方針:ゲームを止める】 【ブオーン(HP1/5 左目失明、重度の全身火傷 重度の裂傷)  所持品:くじけぬこころ ザックその他無し  第一行動方針:潰す  基本行動方針:頑張って生き延びる/生き延びるために全参加者の皆殺し】 【現在位置:ウルの村西の草原】

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