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*第306話:姉と、弟と
「ふぅ…」
ようやく目的の村に辿り着き、ファリスは思わずため息をついてしまった。
何故こんなに時間がかかったのかというと、それは全て、あの森でこの少年を拾ってしまったからだった。
いまだ深夜にもならぬ夜の森で。
壮年の男二人組みと別れてから、ファリスは北にあるレーベの村を目指した。
人の集まりやすい集落なら、或いは捜し求める二人に会えるのではないかという期待からである。
そんな時、茂みの向こうに何者かの気配を感じた。
殺気は感じられない。
けれど十分に警戒しつつ茂みを掻き分ける。
そして見つけたのは、傷つき、うずくまっている、怯えきった少年であった。
ファリスは振り返る。
後ろには、黙々とついてくるテリーがいる。
目が合うと、テリーは顔を綻ばせ「どうしたんだ?」と尋ねてきた。
彼の姿は少年というには少々年齢が上なのだが、森で見つけた彼には「怯えた少年」という言葉が一番しっくりしていた。
テリーは左腕を失っていた。
けれど、右手には大層立派な剣が握られていた。
それでも突然現れたファリスにその剣を振るおうとはせず、焦点の定まらぬ瞳で彼女を見つめる。
或いは、彼女の向こうにある姉を。
テリーは左腕をファリスに向かって伸ばした。
けれど彼の左腕はその途中からを失っている。
腕はファリスに届かない。
姉にも届かない。
テリーは気を失った。
まさか捨て置くわけにもいかず、ファリスは効きの悪い回復魔法をかけつつ彼の目覚めるのを待った。
それでも一時間が経ち、二時間が経つと、流石にこんなことをしている場合ではないという考えの比重が重きを成してくる。
致命的な傷はもう塞がっている。
どこか安全な、少なくとも見つかりにくい木の影にでも隠してこの場を去ろうと決めて立ち上がる。
しかし、まるで図ったかのように彼のうわごとが耳についてしまった。
「…さん。……ねえ、さ…ん……」
姉さんと、彼は呼ぶ。
彼にも姉がいたのかと思うと、レナと重ならないことはない。
レナに初めて姉さんと呼ばれたときは、あのタイクーン城の夜は、とても驚いて、戸惑ったけれど、とても嬉しかった。
結局ファリスは、その場を離れることをどうしても躊躇ってしまうのだった。
彼が目覚めたのは夜明け直前。
初めは自分と姉を混同してしまい、混乱していたようだが、どうにかわかってもらえた。
そう、ファリスは考えた。
テリーは同行を申し出てきた。
彼の意図はわからないが、妙に懐かれているように感じるのは気のせいだろうか。
まるで犬か猫を拾ったようだと、自嘲気味なってしまう。
無碍にすることもないだろうと、ファリスはその旨を承諾した。
そしてあの放送。
幸いレナとバッツの名前は呼ばれなかった。
胸をなでおろしテリーを見ると、またあの、出会ったときの焦点の定まらぬ目をしている。
それだけで良くわかった。
テリーの姉の名が呼ばれたのだと。
(姉さん?どうして姉さんの名前が呼ばれるの?)
(だって、姉さんはここにいるじゃないか)
(…ミレーユ、それが姉さんの名前……違う!!)
(それはあの偽者の名前だ。姉さんの名前は…「ファリス」)
(そうだよ。姉さんはファリスなんだから、ファリスが姉さんなんだ)
(ミレーユなんか、知らない!!!)
「テリー、大丈夫か?」
「…ああ。心配いらない。…大丈夫だ」
それからしばらく様子を見ても、テリーの様子は至って普通に戻っていた。
ただ、ファリスはもう刺激はするまいと、テリーの姉について尋ねることはやめようと、そう誓った。
二人はレーベを目指す。
純粋に旅の扉を目指すなら、この森を探すべきなのだが、やはり村に集まる可能性は捨てきれない。
森を出て、平原を歩んで、ファリスは自分の探す二人のことを話して聞かせた。
(レナ?ファリスの妹?)
(俺は、レナなんて知らない…)
(でも、俺が知らなくても、仕方ないのかな)
(ファリスも、生き別れて育って、やっと再会できたって言ってるし)
(そうだ。俺の知らない妹がいるのか)
(レナって言うのか。可愛い子なのかな。綺麗な子かな)
(早く会いたいな。俺が、絶対に守る。この剣にかけて)
二人はレーベに着いた。
そこに探す人物がいないことも、今まさに復讐という戦いが繰り広げられていることも知らないままに。
【テリー(DQ6)(左腕喪失、負傷(七割回復)
所持品:雷鳴の剣 イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼
行動方針:『姉さん』(ファリス)の敵を殺し、命に代えても守り抜く】
【ファリス(MP消費) 所持品:王者のマント 聖なるナイフ
第一行動方針:レナとバッツを探す 第二行動方針:旅の扉を探す】
【現在位置:レーベ入り口】