402話

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*第402話:運命の交差 『待て! 俺にあんたと戦闘する意思はない!』 口無しの効果によって話すことの出来ないザックスは掌を目の前に突き出し 制止の意を伝えようとするが、殺気を込めて歩いてくる剣士は別の意味に受け取った。 「呪文か! 唱えさせない!」 そう吐き捨てて剣士、テリーはザックスへと肉薄する。 いきなり攻撃を仕掛けてきた上に無言で掌をテリーへ向けたのだ。 彼がそう判断するのも無理はなかった。 テリーの初太刀をバスターソードで弾き返し、ザックスは更に後ろに下がる。 『ぐっ、マズイ!』 今のザックスは口を開くことができないため鼻で呼吸するしかなく、 それは彼の想像以上に体力を奪っていく。 『長々と戦闘を続けられる状態じゃねぇな。  話して誤解を解くことが出来ない以上、何とか逃げ出すしかない』 そう判断し、踵を返そうとするがそれをテリーは許さない。 「逃すか! 姉さんの敵はここで殺す!」 開いていた間合いを一瞬で詰め、テリーはザックスに連続攻撃を仕掛ける。 上下左右、あらゆる角度から超高速で迫る太刀筋をザックスは全て防ぎきる。 打ち合いながらザックスは戦況を分析していた。 『力は俺が上。速さは向こうが上。技量は互角……いや、向こうが僅かに上か。  何とか防ぎきれてんのは正直、相手に片腕がないおかげだな。  時々、バランスを崩すところを見ると失ってからそう時間も経ってない。  おそらくこのゲームに巻き込まれてからなんだろうがよくやるぜ……!』 ザックスは分析しながら逃走する隙を窺う。 おそらく傍にはあの魔物が潜伏しているはず。 いや、気配が感じられないところを見ると既に逃げ出したのだろうか? どちらにしろ悠長にしている暇はなかった。 攻撃を受けて急に駆け出したテリーにファリスはようやく追いついたが その戦闘に手を出せないでいた。 両者の位置が近すぎるため呪文で援護もできないし、あれだけの技量者同士の戦闘に ナイフ一本で割って入ることなどもできそうになかった。 そして割ってはいる隙を窺いながらテリーとザックスの戦闘を見守っていたファリスだが 不意にあることに気付いた。 『何だあの戦士? やけに呼吸が荒いな。どんどん顔色も悪くなっている。  毒にでも犯されているのか……それに、攻撃を全くしない。防御一辺倒だ。  テリーが何度かバランスを崩したが(その度にヒヤッとしたが)そこを突こうともしなかった。  これは……』 確かに攻撃を仕掛けてきたのはあの戦士のほうだった。 しかしその前にあの戦士は何者かと戦っていたはずだ。 その相手はどこにいるのか。もしかして敵を誤認したのではないのか? でもそれならば戦闘を続ける必要はないはずだ。 そこまで思考に上ってようやくファリスは違和感に気がついた。 『あの戦士、さっきから全く口を開いていない。  まさか口が開けないのか? あの症状は毒ではなく呼吸困難だとしたら……』 その瞬間、テリーは渾身の一撃をまたも弾かれ、大きくバランスを崩した。 『『殺られる!!』』 ファリスとテリーは同時にそう悟ったが、ザックスはまたも間合いを広げるだけに留めた。 テリーの追撃を警戒してすぐに逃走には入らない。 『もう決定的だ。あの男は敵じゃない』 「余裕のつもりか!? 舐めやがって!!」 情けを掛けられたと誤解したテリーは怒り心頭でザックスに向かって雷鳴の剣を振りかざすが、 それをファリスは押し留めた。 「待てテリー!  剣を引くんだ! そいつは敵じゃない!」 「姉さん!?」 テリーはその言葉に驚いて動きを止める。 「でもあいつから攻撃を仕掛けてきたんだぜ!  今殺しておかないと……」 「落ち着くんだテリー。俺達は戦闘の気配を追ってここに来た。  ならその戦闘を行っていたのはアイツの他に誰だ?」 「そ、それは……」 ファリスはテリーを制止し、ザックスの下へ歩いていく。 「あんた、まだ俺達と戦う気はあるかい?  やるんなら今度こそ二人で決着をつけるけど」 ザックスはその言葉に首を横に振り、バスターソードを地面に突き刺す。 それを見て、ようやくテリーも剣を鞘に収めた。 「チッ、それなら訳を聞かせてもらうぞ」 「いや、どうやら彼は口が利けないみたいだ。  彼が戦っていた相手がまだいるかも知れないから、とりあえず場所を移動して  筆談で事情を……」 戦闘が収まりかけたその時、その様子を建物の陰でじっと気配を殺しながら窺い続けている存在があった。 ザックスと戦闘をしていた張本人、ピエールである。 ザックスの意識がテリーに向いた直後から、この場を離れようとしていたのだが 対人レーダーには村の周囲にいくつかの光点を映し出していた。 どうやら先ほどの魔法の玉の爆発で呼び寄せてしまったらしい。 今脱出すれば彼らとの接触は免れまい。 ならば彼らを村の中におびき寄せ、その後で身を隠しながら脱出するべきだろう。 ピエールは戦闘するザックスたちを尻目にボウガンを回収し、その機会を窺っていた。 そしてザックスたちの戦闘が収束を迎えたのに気付く。 外の者たちが村に入るには未だ若干の余裕がある。 彼らが和解すれば、次に探すのはピエールの身柄だろう。 ピエールは自分の放ったようじゅつしの杖がザックスに口無しの効果をもたらしている事に気付いていなかった。 『ならば油断している今のうちに先手を打つべきだ』 そう判断した彼は回収したボウガンを構え、彼らに向けて無情に矢弾を解き放つ。 「危ない姉さん!」 迫る数本の矢の存在に気付いたテリーは咄嗟にファリスを庇い、剣で矢をいくつか叩き落す。 しかし、呼吸を必死に整えていたザックスは反応が遅れて左肩に被弾してしまった。 背負っていたザックの紐が切れて地面に落ちる。 『あの野郎! こっちが戦闘中にも中々姿をみせねえし、気配も感じられなくなってたから  すでにこの場を離れていたかと思ったが考えが甘すぎたか!』 ザックスは歯噛みし、肩に刺さった矢を抜いて物陰に身を隠した。 テリーは雷鳴の剣を構えなおし、ピエールに向かって突っ込んでいく。 「よくも姉さんに!」 テリーの殺気に臆することもなく、ピエールは冷静に杖を振るって光弾を放つ。 予想外の攻撃にテリーは驚いたが、最小限の動きで身をかわした。 しかしその光弾はテリーを狙って放たれたわけではなかったのだ。 テリーの背後にいたのは……ファリス。 ファリスはテリーの姿が死角になって、光弾の存在に気付くのが遅れ…… 結果回避することができなかった。その効果は――引き寄せ。 テリーは気付かずにそのままピエールに肉薄し、必殺の斬撃を叩き込む。 そのピエールの前には、引き寄せの杖の力で瞬間移動したファリス。 「「え?」」 二人は同時に間の抜けた声を上げる。 そしてテリーの斬撃がファリスの首を跳ね飛ばす。 ファリスはバッツを……レナのことを想う時間さえも与えられず絶命した。 ピエールはその場所から飛びつきの杖を振るって消え去る。 テリーはそのことにも何も反応はせず、ただ呆然と首のないファリスの死体を見つめていた。 どん、と音を立てて今更ファリスの首がテリーの足元に落ちてくる。 『何だ、これは?』 『姉さん? 何で姉さんがここで死んでるんだ』 『俺が……殺した?』 『違う、俺が斬ったのはあの魔物だ』 『そうだ、これは魔物が俺を惑わすために変化した姿だ』 『そう、モシャスという呪文があった』 『全く間抜けな魔物だ。髪の色も違うじゃないか』 『姉さんの髪の色はもっと』 何色だっただろう? 蜂蜜色だった気がする。薄紅色だった気がする。 いや、違う。どちらも偽者の姉さんだ。 よく思い返してみる。 ―― テリー ―― そう優しげな声で自分を呼ぶ姉の顔は……真っ黒に塗りつぶされていた。 「ぐぁっ!」 激しい頭痛に襲われ、テリーは頭を押さえてうずくまる。 その場に嘔吐し、激しく咳き込んだ。 しばらくそうしていた後、虚ろな目をして起き上がる。 テリーはキョロキョロと辺りを見回した。 『本物の姉さんはどこだろう?  探さなきゃ……早く探して護ってやらなきゃ……』 そして――テリーは当てもなく走り出した。 ザックスはその様子を一部始終見ていたが、動くことが出来なかった。 テリーとの戦闘での消耗が激しく、肩に矢傷を受けたことで さらに呼吸困難が深刻化していたのだ。 『畜生……何もできずに、俺は……』 顔を紫色に変色させ、ザックスの意識は薄れていった。 目の前に動く物がなくなったことを確認し、ピエールは再び姿を現す。 ザックスが落としたザックとファリスのザックを回収し、ついでにボウガンの矢も拾う。 そしてまた息のあるザックスに止めを刺そうと近づくが、その時背後からの気配に気がついた。 振り返るが姿は未だ見えない。しかしその雄叫びは聞こえてきた。 対人レーダーを見ると東側から迫る光点がある。それこそは――勇者の父、オルテガ。 ピエールは止めを刺す暇はないと判断し、北へ向かって走り出した。 そしてピエールが北の出口に差し掛かったとき、4人組の一団が向かってくるのに気付き建物の中に隠れる。 その4人組はアルスとサイファー達であった。 「! サイファー、今何かがあの建物に身を隠した。見えたか?」 「馬鹿にすんなよ。オイ、イザ、ロザリー、気をつけろよ」 アルスたちは警戒しながら、建物……魔法屋の入り口を取り囲む。 その時、中から光弾が打ち出された。 「危ない!」 咄嗟に身をかわすアルスたちだったが、その光弾は彼らを狙ったにしてはあまりにも外れすぎていた。 光弾は全員に避けられ、北の出口付近に着弾する。 すると、そこにピエールが出現した。飛びつきの杖を使ったのだ。 「何!?」 驚愕する一同。ピエールはそれを尻目に村の出口を抜け、逃走する。 アルスは悟る。間に合わなかったのだ。 戦闘は既に終了してしまっている。 「くそ、逃がさない!」 アルスは歯を食いしばり、戦闘を引き起こした張本人であろうピエールを追って駆け出す。 「オイ待て!」 サイファーの制止の声もアルスには届かない。 「チッ、俺はあの野郎を連れ戻す!  イザはロザリーを死ぬ気で護りながら村を調べろ!」 サイファーは一方的にそれだけ言うと、イザが頷くのも待たずに駆け出した。 それを見て、ロザリーは心配げにイザへと顔を向ける。 「イザさん、私達も追ったほうが」 「いや、サイファーの判断は正しいよ。  今は敵を追うよりも、戦闘で負傷した人たちがいるなら彼らを助けることが先だ。  それに君を危険な目に合わせるわけにもいかない。  もっとも……あのアルスって人を説得するなら口の悪いサイファーより  僕が行ったほうが良かったかもしれないけれど」 そういってイザは肩を竦める。 軽薄そうなイザのその仕草にロザリーは少しムッとするが、 彼の足が震えているのを見て考えを改める。 『私は、いつでも待つことしか出来ないのね……』 気落ちして俯くロザリーだが、イザが歩き始めたのを感じて顔を上げた。 「行こう。僕たちにはやることがある。  ただ待つだけなんて許されやしないんだ」 そして力強く歩いていくイザの言葉に、何故かロザリーは嬉しくなり 大きく返事をして後を付いて行った。 テリーは北に向かって走っていた。 村を出るとき、東の方向にクリムトの姿が視界に映ったが気にも留めずに走り抜ける。 クリムトのほうもテリーに気がついたが、視界を失っているため 相手がテリーだとは気付かず、またこの身では追うこともできないと判断して 当初の予定通りカナーンへと向かっていった。 テリーは純粋に姉を探していたため、邪悪な気を発していなかったこともある。 そしてテリーは走り続け……何時間が経っただろうか。 既に時刻も午後を迎えて大分経過していた。 テリーは深い森を掻き分けながら姉を探し続けている。 『姉さん、姉さん……ミレーユ姉さん。  どこにいるの?』 当てもなく、ただ森を無造作に歩き回りながら姉を探す。 思い出せるのは黒く塗りつぶされた姉の顔。 『大丈夫さ、今は少し混乱してるだけだ。  会えば姉さんの顔も思い出せる。だって姉さんだもの』 そうテリーは信じて疑わない。 そうしないと壊れてしまうから。 そして―――ついにテリーは姉と再会した。 森の木々の間から現れた亜麻色の髪の少女。 その顔が黒く塗りつぶされた姉の顔に上書きされる。 「姉さん! 会いたかったよ、どこに行っていたんだい?」 「は? アンタ何なの?」 突然、話しかけたテリーに少女は訝しげな表情で問い返す。 「何って、僕だよ。弟のテリーさ!  忘れちゃったの?」 テリーはまるで子供のような口調で不安げに少女へと答える。 その答えを聞いて少女はしばらく考え込んでいた。 そして不意にニヤリと笑うと、今度は優しげな表情でテリーに声をかける。 「ああ、ごめんなさいねテリー。敵に襲われたので少し混乱していたのよ」 そう言って彼女は腕を広げる。 テリーは疑いもせずにその胸に飛び込んでいった。 「ああ、会いたかったよ姉さん。やっぱり敵に襲われていたんだ。  ごめん、今度はしっかりと護って見せるから。  この命に代えても護り抜くから……許してくれ、姉さん」 「ええ、今度はちゃんと私を護ってね……私の可愛いテリー  愛しているわ……」 テリーの頭を撫でながら彼女……アリーナ2はニッコリと微笑んだ。 【アリーナ2(分身) (HP4/5程度)  所持品:E:悪魔の尻尾 E皆伝の証 万能薬  第一行動方針:テリーを手懐けて、護衛にする  第二行動方針:出会う人の隙を突いて殺す、ただしアリーナは殺さない  最終行動方針:勝利する 】 【テリー(DQ6)(左腕喪失、負傷(八割回復)  所持品:雷鳴の剣 イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼  行動方針:『姉さん』(アリーナ2)の敵を殺し、命に代えても守り抜く】 【現在位置:カナーン北の山岳地帯】 【ザックス(HP1/4程度、口無し状態{浮遊大陸にいる間は続く}、左肩に矢傷)  所持品:バスターソード  第一行動方針:気絶  最終行動方針:ゲームの脱出】 【オルテガ 所持品:ミスリルアクス 覆面&マント  第一行動方針:状況の確認と戦いの阻止、場合によっては戦う  第二行動方針:アルスを探す  最終行動方針:ゲームの破壊】 【現在位置:カナーンの村南部】 【クリムト(失明) 所持品:力の杖  第一行動方針:カナーンへと向かう  基本行動方針:誰も殺さない。  最終行動方針:出来る限り多くの者を脱出させる】 【現在位置:カナーン北東 村の近く】  【イザ(HP3/4程度) 所持品:ルビスの剣、エクスカリパー、マサムネブレード  第一行動方針:村を調べる。負傷者がいたら救う  基本行動方針:同志を集め、ゲームを脱出・ターニアを探す】 【ロザリー 所持品:世界結界全集、守りのルビー、力のルビー、破壊の鏡、クラン・スピネル  第一行動方針:同上  基本行動方針:ピサロを探す 最終行動方針:ゲームからの脱出】 【現在地:カナーンの村北部】 【ピエール(HP1/5程度) (MP一桁) (感情封印) (弱いかなしばり状態:体が重くなり、ときどき動かなくなります、時間経過で回復)  所持品:魔封じの杖、死者の指輪、対人レーダー、オートボウガン(残弾1/3)、スネークソード      毛布 王者のマント 聖なるナイフ      ひきよせの杖[3]、とびつきの杖[2]、ようじゅつしの杖[2]  第一行動方針:この状況を切り抜け、休息  基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す 【サイファー(右足軽傷)  所持品:破邪の剣、破壊の剣 G.F.ケルベロス(召喚不能) 白マテリア 正宗 天使のレオタード ケフカのメモ  第一行動方針:アルスを連れ戻す  基本行動方針:ロザリーの手助け  最終行動方針:ゲームからの脱出】 【アルス(MP4/5程度・疲労)所持品:ドラゴンテイル ドラゴンシールド 番傘 官能小説3冊  第一行動方針:ピエールを追う  第二行動方針:イクサスの言う4人を探し、PKを減らす  最終行動方針:仲間と共にゲームを抜ける】 【現在位置:カナーンの村→北】 【ファリス 死亡】 【残り 64名】

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