431話

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*第431話:カナーンの夕凪  一行は街の南口から入り、そこからすぐの家にとりあえず怪我人を運び込む。  それから、二人の面倒と守りをパパスに任せ、死者を弔うべく探索を兼ねてオルテガは再び外へ向かった。  ザックスを拾ったあたりを目指し、それからさらに通りの奥へ。  血の香りが次第次第に強くなる。  そこで、知った顔と見知らぬ後姿に会った。  首がない躯が揺れる白いコートの足元に転がっている。  物体としてそこにある知った顔はなんともいえない表情でこちらを見ている。  …仲間には、妹には、会えなかったのか。  いつか、いやそのうち必ず出会ったろう知り合いの死体に直面し、浮かび上がる激情を飲み込む。  黙祷代わりとは行かないが数秒間目を閉じ、それからこぼれるように小さく哀れな名前を呟いた。  焦燥を表情に出さず、町の中央に横たわる大きな橋を駆け渡る。  護衛の騎士がいない間に守るべき相手が傷ついているようではお話にならない。  だから、通りの向こうから流れてくる血の香りは心臓の鐘を乱打する気がした。  だから、その首の無い躯を発見した瞬間、心臓が大きく爆ぜたような気がした。  直ぐに服装などの違いからそれが知らぬ者――恐らく起こっていた戦闘の犠牲者で、下手人はあの怪物に乗った騎士か――であると知ってその死体には悪いがほっとしていた。  落ち着いて周囲を見ればやや離れた位置に落ちているものがある。  丁度大きさは人の頭くらい…いや、頭だった。  状況からそれが足元の哀れな死体のものであることは簡単に推測できる。 「問答無用、迷いなく綺麗に一撃かよ」  身体と頭、両者の間で何度か視線を往復させたあとで、感想を漏らす。  きれいな切断面が加害者の恐ろしい技の冴えを雄弁に物語っている。  他に外傷が見られない、つまりほとんど抵抗できなかったということは何を示しているのか。  圧倒的な腕の差か。超人的な気配絶ちによる奇襲か。それとも…顔見知りか。  なんにせよ、疑問だらけだ。  カナーンでは激しい戦闘――それこそかなり遠くまで聞こえる爆音を伴う――があったはず。  だが、この被害者はその当事者にしてはあまりに動いていた様子が見られないのだ。  それはつまり、あの怪物騎士、この死体のほかにまだ戦闘参加者がいるということ。  背後からサイファーの知らぬ『第三者』に声をかけられたのはその時だった。 「失礼する」  思考を吹っ飛ばす野太い声にはっと振り返ると筋骨隆々の男が立っている。  考えていて接近してくる気配を見落とすとはサイファーらしくない。  動揺は見る間に沸騰へ、高揚した精神が危険信号を飛ばす。 「…重ねて失礼する。君は…テリー、だろうか?」  大股で近づきながら誰とも知れない名前を尋ねる相手にアラームの針は振り切れる。  沸き立った頭脳ではイザから聞いた名前は忘却の彼方へと蒸発していた。 「止まれ!そいつは捨てろ!」  ぴたり、と男の足が止まった。  やや興奮が過ぎている白コートの男の様子を冷静に観察する。  白いコートはボロボロで、くたびれきって汚れている。そこには変色した血の染みもある。  しかし、事前にザックスから得た情報から彼はここでの戦闘には関係ないこともわかる。  あの目立つ白い色は相当に印象に残るだろう。  何より正対する男の目はいくらかの焦燥と動揺があるにしろ、決意と責任を負ってこそいてもけして濁ってはいない。  以上のことはオルテガにしてこの男を信用するに足る条件。  ミスリルアクスを投げ捨てると、相手の反応を待った。  足を止めた男はただサイファーの目を凝視する。それから、傍らへと斧が投げ捨てられた。  続く沈黙はサイファーの言葉を待っているようでもあった。  刃を向けたまま、しかしようやく少しクールダウンしてサイファーは口を開いた。 「……すまねぇな、ちょっと頭に血が昇っちまってよ。  でな、これだけは言っておくぜ。オレは殺ってねえ。  あとな、オレはサイファーだ。サイファー=アルマシー、テリーなんかじゃねぇ。  大体そういうアンタは誰だよ?」 「オルテガ、という一介の戦士だ。サイファー、そちらはここで何をしていた」 「ああ、仲間を探してんだ、ロザリーってエルフの娘とイザっつうぼおっとしたお人好しの奴をな。  おっさんは見てねぇか? っと、あとテリーって誰だ」 「残念ながら。だが、うむ、ロザリーか、その仲間には会ったな」  サイファーはこの街にいる二人を探しているということは伝わっていないが、それはあまり重要なことではない。 「テリーは……私も名前しか知らぬ。  私はそこで倒れている男、ファリスには面識があってな。  ザックスが言うにはファリスとそのテリーが組んでいたらしい」 「んだぁ、そのザックスって奴は?」 「この街での戦闘の当事者の一人。そちらも戦闘の音を聞いたであろう?」 「ああ、でけえ音させてやがったからな。  しかし…なるほど、だいぶ状況が見えてきたぜ。ザックスと、こいつとテリーって奴。であの怪物騎士か…」  怪物騎士。オルテガにはそれが何のことかわからないが、明らかに不快な表情がサイファーに浮かんでいる。  次の二人の発言のタイミングは同時だった。 「チッ、思い出すのも忌々しい。アルスの奴もどっか飛ばされちまったしよ…」 「怪物騎士とは一体なn……アルスだと!?」 「なんだよおっさん、知り合いか?」  トーンを一転させた男にやや驚きながらも、サイファーが問う。 「…息子だ。それで、アルスは? おぬしと一緒だったのか」 「こっち来てから会って組んでたぜ。  けど、今は……なんかの魔法の類でどっかへ消えちまった。……無事だといいがよ」 「……そうか」  それから、短い会話の後サイファーは仲間を探すのだと路地の向こうへ行ってしまった。  そんなに焦っても仕方なかろうと思う一方、その焦りも理解できる。  とにかくオルテガはファリスの亡骸と首を連れてパパス達のところへと戻ることにした。  パパスもまた、現実に目にする見知った者の死を悼む。  出会った男、白いコートが特徴のサイファーのことを伝えた後、オルテガはファリスを埋葬すべく再び外へ向かった。  簡易な墓を作り、引き続いて街の探索を開始する。 「…遅いな。本当に」   魔法屋が面した大きな通り。そこから横に伸びる路地からあたりを窺うイザがいた。  魔法屋内部にいたイザが外へと出てきたのは実はサイファーが通り過ぎた数分後であるが、そんなことは当人らの預かり知るところではない。  サイファーの姿を見つけられないことに不安を持つ一方、誰もいないことに安堵もする。通りから自分が潜む路地の奥へと視線を移したとき、イザの緊張は一気に膨れ上がった。 「誰だ!」  見知らぬ、男。つい声量が上がる。  不安的中、敵なのか!?  装備していた剣の切っ先で相手を指す。だが、男は至極冷静に振舞う。 「ふむ、武器は捨てよう。私はオルテガ、敵対する意志は無い」 「え?」  上げたテンションが拍子抜けするほど潔い態度。 「あの……オルテガさん。貴方は敵ではないんですね?」  いつの間にか扉を開けてロザリーが戸口まで出てきていた。声、大きすぎたみたいだ。 「私はロザリー、こちらはイザさんです。私たちも戦う気はありません」  男から返ってきたのは意外な言葉。 「ロザリーとイザ…ほう、奇縁だな!先ほどおぬし等を探しているサイファーに会ったぞ。  まだこの街でおぬし等を探しているだろう。それにしても面白い縁もあるものだ!」 「サイファーに会ったんですか!?」 「…無事だったんですね!? 良かった…」  サイファーの話をきっかけとして互いへの警戒心は消え去った。  続いて治癒結界の存在からまず怪我人二人がそこへ移され、それからパパスとイザが今度はサイファーを探しに街へ出る。 「んだよ、オレがバカみてぇじゃねぇか!」  見つかったサイファーが愚痴りながら魔法屋に着いて、これで今カナーンにいる七人全員が一箇所に集まった。  それから情報交換が始まる。  オルテガとパパスにとって、それぞれの息子と同行したという彼らの話は何よりも聞きたいこと。  サイファーらにとっても確実にゲームに乗っていない、共闘できそうな相手の情報は有益。  レオ、アリーナ、スコール&マッシュ。エドガー&シンシア。  ただまあ、スコールの話をしている時はサイファーは微妙な顔をしていたけれども。  そして、全員にとって有益であるマーダーの情報。  カナーンでの混乱を招いたスライムに乗った騎士のこと。  アリーナと同じ姿をしているという、腕輪がなく手袋をしている偽アリーナのこと。  アーヴァインという狙撃手のこと。  狂気にとらわれてしまったティファという娘のこと。  脅威の戦力を誇る二人の銀髪、セフィロスとクジャのこと。  まだ判断は控えたい微妙な情報もある。  ケフカという奇妙な男について。  「キンパツニキヲツケロ」との謎のメッセージを伝えるメモ。  また、口のつかえないザックスから断片的な情報を得られたテリーをイザはひどく心配していた。  最後に、この世界で出会えていないそれぞれの知り合いのことについて情報を出し合い、交換を終えた。 「世話になった。そして二人を頼む。では、再び生きて会おう!」  低角度で入射する赤い光に染まりながら、二人の偉大な親父は北へ向けカナーンを発っていった。 「…ま、怪我人が増えたわけだがよ。動けそうなのは幸いだな」  ティファの話に衝撃を受けていた様子のザックスであったが、今後については自らの意思でサイファーらと共に行動することを決めた。 「セフィロスやクジャに対抗するにはもっと仲間が必要だしね」 「ああ……そうだな」  ギルガメッシュはまだ起きない。 「サイファーさん、この方も起きそうにないですし、今の内にお休みになられてはいかがでしょう。  今日は動き詰めでしたでしょう」  ロザリーに促されて既にザックスは壁にもたれるように座り込み身体を休めている。 「そうだな。肝心なときに疲れて万全じゃねぇんじゃ意味ねぇ」 「にしても、夕暮れか…。もうすぐまた魔女が……」 「ですね。皆様、無事だと良いのですが……」 「………」「………」「………」  こうして、放送前の夕刻の一時は過ぎていく。  この世界でそんなことがどれほど無意味で儚いかは分かっていても、今のカナーンは穏やかな街だった。 【オルテガ 所持品:ミスリルアクス 覆面&マント  第一行動方針:アルスを探す  最終行動方針:ゲームの破壊】 【パパス 所持品:パパスの剣 ルビーの腕輪  第一行動方針:仲間を探す  最終行動方針:ゲームの破壊】 【現在位置:カナーンの町→北へ】 【イザ(HP3/4程度) 所持品:ルビスの剣、エクスカリパー、マサムネブレード  第一行動方針:しばらくは休息  基本行動方針:同志を集め、ゲームを脱出・ターニアを探す】 【ロザリー 所持品:世界結界全集、守りのルビー、力のルビー、破壊の鏡、クラン・スピネル  第一行動方針:同上  基本行動方針:ピサロを探す 最終行動方針:ゲームからの脱出】 【サイファー(右足軽傷)  所持品:破邪の剣、破壊の剣 G.F.ケルベロス(召喚不能) 白マテリア 正宗 天使のレオタード ケフカのメモ  第一行動方針:同上  基本行動方針:ロザリーの手助け  最終行動方針:ゲームからの脱出】 【ザックス(HP1/3程度、口無し状態{浮遊大陸にいる間は続く}、左肩に矢傷、仮眠)  所持品:バスターソード  第一行動方針:ロザリー達に協力  最終行動方針:ゲームの脱出】 【ギルガメッシュ(HP2/5程度・睡眠)  所持品:厚底サンダル 種子島銃 銅の剣  第一行動方針:不明】 【現在位置:カナーンの町・魔法屋】

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