27話

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*第27話:交換交渉 様子を見ようと、そっと顔をのぞかせる。途端に、強烈な炎が木々を焦がしながら飛んでくる。 (冗談じゃない。こんなところで殺されてたまるものか)と、クルルは思った。 木立の影に身を潜め、必死で反撃の機会をうかがう。 その視線の彼方に立つのは一人の女だ。自分より少し年上の、緑髪を後ろで結んだ女性。 彼女の手には矢をつがえたボウガンが握られていた。 さきほどの炎魔法といい、ゲームに乗っている、という意思表示以外の何物でもない。 (どうする?) ――もしかしたら、先に仕掛ければ勝てるかもしれない。 狩人を極めた彼女にはわかるが、相手は弓に関しては間違いなくド素人だ。 構えはともかく、狙いのつけ方がなっちゃいない。 魔法は脅威だが、こちらにはミスリルの小手がある。ファイア程度なら、一度は耐えられるはずだ。 初撃をかわし、ニ撃目がくる前に間合いに入れれば勝てる。 けれどももし、相手が弓以外に武器を持っていたら。あるいはもっと強力な魔法を使ってきたら。 その可能性がクルルを躊躇させていた。 彼女だって命は惜しいし、バッツやレナやファリスにももう一度会いたい。 飛竜やモーグリ達、バル城の人々も、自分の帰りを待ちわびているはずだ。 彼らのことを思うと迂闊な行動は取れない。 だが、このままでは埒が明かないことも確かだ。 いちかばちかの可能性に賭けようと、彼女が木陰から一気に飛び出した時…… 勝敗は、予想外の形で訪れた。 突然、木の枝が大きくしなり、茶色の影が飛び出したのだ。 真上から落ちた。走り出そうとした少女に重なるかのように。 思わず立ちすくんだ緑髪の女――ティナの耳に、肉が断ち切られ骨が砕ける鈍い音が響く。 「よっ、と」 影が立ち上がった。木の葉を片手で払い落としながら。 ついさっき見たばかりの顔だった。長いコートに奇妙な帽子を被った、茶色の髪の優男。 「あ、あなた…………」 アーヴァイン。 広間で一番最初に名を呼ばれた、あの青年が目の前に立っている。 その手には長大な剣が握られ、ブーツの下には刃を食い込ませた少女の死体が倒れている。 なぜ彼がここにいる? もしかして、最初からずっとタイミングを伺っていたのか? 気配すら感じさせずに、彼女を――あるいは、私を殺すために。 そんなティナの思考を余所に、アーヴァインは微笑みながら突き刺さったままの剣を抜いた。 「そんな怖い顔しないでよ~。別に、君を殺そうなんて思ってないからさ」 「……あなたは思ってなくても、私は思ってるわ」 あまりに説得力のないセリフに、ティナは迷わずボウガンを向ける。だが青年は涼しい顔で 「君、そういう武器扱い慣れてないでしょ。狙いが甘いよ」と答えた。 「僕なら、もっと上手く扱う自信があるよ。これでも一応スナイパーだからね」 「そう、それで? 私から武器を奪うの? その子だけじゃなくて、私も殺すつもり?」 警戒し続ける少女に、青年は肩をすくめて苦笑いした。 「やめてよ。僕、そこまで悪党じゃないってば。  それに今のは不意打ちだから上手くいったんだ。  スコールやサイファーじゃないし、剣を振り回すなんて性に合わない。  それに木の上にいたのも身を隠して考え事してただけで、待ち伏せるつもりはなかった」 何を言いたいのか測りかねて、ティナは首を傾げる。アーヴァインはさらに言葉を続けた。 「僕ね、射撃なら自信有るんだよね~。こう、BANGBANGってさ。けど剣はあんまり扱いなれてない。  一方、君はボウガンを持ってるけど射撃は苦手。  でも戦いには慣れてるようだし、おそらく剣とか槍とか一般的な武器なら扱えるはずだ。違うかい?」 言い当てられて、思わずうなずいてしまうティナ。その後で、慌ててアーヴァインを見返す。 「つまり、武器を交換しろということなの? それとも仲間になれということ?」 「あー、仲間かあ。考えなかったけどそれもいいね。うん、その方が都合いいかな」 「お願いだから、回りくどい言い方をしないで。用件があるなら短く言って」 険しい目つきで睨みつけられ、アーヴァインは苦笑しながら言う。 「――実はね、殺す相手を交換してほしいんだよね」 ティナは自分の耳を疑った。殺す相手を交換してほしい? この青年はふざけているのか? だが、アーヴァインは真剣な眼差しでティナを見つめている。 「僕の知り合いがね、何人かこのゲームに参加しているんだ。  腕とか力とかそういうのを抜きにしても、僕には殺せない。これでも情ってものがある。  幼なじみ三人にその恋人に、幼なじみの父親だ。止めを刺そうとしてもためらっちゃうよ。  ――君にも、そんな奴が一人か二人ぐらいいるだろう?」 いる。確かにいる。 ロック、エドガー、マッシュ、シャドウ、セリス、リルム、ゴゴ……そして、レオ将軍。 ゲームに乗ることを決めた今でも、彼らと戦いたくないという気持ちが残っている。 「君にとって知り合いでも、僕に取っちゃ他人だ。逆もしかり。  僕は君の殺しにくい人を殺す。君は僕が殺しにくい人を殺す。  一人で全員殺すよりはよっぽど確実だし、多少は気も楽になるんじゃないかな」 なるほど、とティナは思った。この男に乗ってやってもいいかもしれない、と。 「わかったわ。……でも、一つだけ聞かせて。  なんでそこまでするの? そうまでして生き残りたいの?」 「生き残りたいね。どんな手を使ってでも」 ティナの問いに、青年は即答した。 「僕は帰らないといけない。  魔女が――アルティミシアが生きていたことを、ガーデンの仲間達に伝えないといけない……」 言いかけて、ふとアーヴァインの表情が自嘲に歪んだ。 「……なんて、言い訳だね。  本当は、元の世界に会いたい人がいるんだ。ずっと好きだった女の子が。  裏切り者とそしられても構わない。人殺しと蔑まれてもいい。  ただ、彼女ともう一度、生きて会いたいんだ。それが一番の理由だよ」 「私も、会いたい人達がいる」 ティナはぽつりとつぶやいた。 「ようやく見つけた、愛する家族がいる。  子供たちがモブリズで待っている」 あの日、再び剣を取った日に、交わした約束がある。 「だから私も死ぬわけにはいかない。必ず帰ると誓ったから」 ティナは真っ向からアーヴァインを見据え、ボウガンを向けたまま片手を差し出した。 「手を組んでもいいけど、邪魔になれば殺すわ。それでいい?」 「ああ、いいよ。僕もそういうつもりなんだしさ」 青年は血と土に汚れた手を拭いてから、少女の手を握り返した。 【アーヴァイン 所持品:キラーボウ 竜騎士の靴 G.F.ディアボロス(召喚不能) エアナイフ(回収)  行動方針:ゲームに乗る(ティナの仲間を殺す)】 【ティナ 所持品:グレートソード ちょこソナー&ちょこザイナ ミスリルの小手(回収)  行動方針:ゲームに乗る(アーヴァインの仲間を殺す)】 【現在位置:ほこら近くの山岳地帯】 【クルル 死亡】 【残り 132名】

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