445話

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*第445話:光へと向かう力 『光が、また一つ消えたか……』 木々の間から満天の星空を仰ぎ見ながら、ギードは大きく溜め息をついた。 ファリス。 海竜を操り、女だてらに海賊の一団を率いた頭領。 一度は「無」の力によって消滅したギードが、今、存在しているのも…… 彼女らが持っていたクリスタルの欠片により、世界が再生されたおかげである。 だが、そんな勇ましい彼女も……クルルに続き、この地で儚く消えた。 ギードは目を閉じ、静かに祈りを捧げた。 再び、奇跡が訪れるようにと…… テリーは大木の根元に膝を抱え座っていた。 心配そうに目の前に佇むトンヌラの持つ、ランタンの赤い火が滲んで見える。 浮かんでは消える……自分達を守り戦った、リノアの笑顔……ドルバの最後の勇姿…… ……あの恐ろしいクジャでさえ、名前を呼ばれた。 ジタンが約束を守り、本当に落とし前を付けたのだろうか。 しかし……それ以上に、思ってもみなかった名前……『ワルぼう』 ……思えば、テリーがモンスターマスターになる、いや、ならざるを得ないきっかけを作ったのはワルぼうだった。 もしあの夜、ワルぼうが姉さんを連れ去らなかったら…… それまで通り、平穏で幸せな日々が続いたかもしれない。 でも…… わたぼうを始め、応援してくれるタイジュの人々、慕ってくれる魔物達、引いてはルカやイルに会う事もなかっただろう。 本気で憎んだ事もあった。 けど…… 淡い灯りの中で、赤い綿毛がいたずらっぽく笑い、跳ね回り……消えていく…… 「……テリー、歩けるか?」 長い長い黙祷の後、ギードは一向に動こうとしないテリーに声を掛けた。 「……悲しいのは、皆一緒じゃ……じゃが、いつまでも嘆いておる訳にはいかぬ。  ここから歩み出さねば何も解決せぬままじゃ……分かるな」 「うん……」 テリーはようやく顔を上げた。 「分かってる……分かってるさ……だから……オレ……」 「ん?」 「オレ……強くなりたい! 誰よりも強い……力が欲しい!」 思いつめたように、テリーは叫んだ。 「何を言う。お前さんには、マスターとしての立派な力があるじゃろうが。  魔物の言葉を理解し、心を分かち合えるという、希有な才能が……」 「それじゃ駄目なんだ!」 突然立ち上がったテリーに驚き、トンヌラが後ずさった。 弾みで、ガチャン、とランタンが地面に落ちる。 「オレは……あのスライムナイトの心を押さえられなかった……そのせいでドルバを死なせてしまった……  イルもあの魔物に殺されて……ルカだってどうなったか分からない……  何が星降りの勇者だ! 世界一のマスターだ! そんなものっ……何の役にも立たないんだ!」 「テリー、それは……」 「さっきの人みたいに殺されるのは嫌だ……けど、誰かの足手まといになるのは、もっと嫌だ!」 漏れたオイルにランタンの炎が移り、テリーの顔を照らし出す。 「リュカさんやジタンさん、サイファーさんみたいに戦えたら……リノアさんやギードみたいに魔法が使えたら……  いや、その半分でも……オレに力があったら……みんなを守れたかもしれないのに……  ……みんな、死なずに済んだかもしれないのに!」 涙に濡れた瞳が光る―― 「オレは強くなりたい! 誰にも負けない力が欲しいんだ!」 ――炎を映し――光る―― 「強くなれるなら……力をくれるなら何だっていい!  相手が魔女だろうが何だろうが構わない!」 ――光る――瞳―― 「ばかもの!」 なぎ払うようにギードは叱咤した。 強過ぎる衝動に、正気を失いかけている。あの時のトンヌラと同じように。 このままでは―― 「今のお前が……怒りと悲しみに支配されたお前が、力を得たところで何とする?!  そこから生み出されるのは正義でも平和でもない! 新たな悲劇だけじゃ!」 一瞬、テリーの瞳が揺らぐ。 ……突然、記憶が――忘れていた記憶が蘇る。 あれは――扉の中の記憶―― ――ほほう……良い目をしておるな。   連れておる魔物もなかなかのもの! その実力、並々ならぬと見た!   お前の実力は私と闘うに足るものか……まずはお手並み拝見といこう―― 不敵に笑う魔王。そして―― ――次は……なかなか歯ごたえのある奴だ。   最強の剣を求め世界を流浪し、ついに我が元へ辿り着いた剣士だ。   紹介しよう。   我に魂を捧げし、世界最強の剣士―― 「そんなものは本当の力ではない!  強大すぎる力を手に入れた挙げ句、その力に呑まれ……全てを失う者もいるのじゃ!  テリーよ、惑わされるな! 己を見失うな!」 ―― ――――お前……強いな……奴にも……勝ったんだな……     オレは……勝てなかった……奴……に―― ――――――剣もロクに使えない腰抜けだとバカにしたが……あれは取り消そう……       お前は最強だ。       たとえ剣を使わずとも……最高のファイターだ―― ――――――――お前に一つ忠告しておく……         ……オレのようにはなるな。         力に魅入られた者は、いずれ力に滅びる……         ……もう遅いかも知れんが、オレみたいになりたくないだろ――           ――――お前は――光の射す方だけを見ていろ―――― ―――――――――――――― 「あ……」 ふっ、と炎が消え、テリーはがっくりと膝を着いた。 「テリー……」 暗闇の中から、今度は、優しく静かに……ギードが語り掛ける。 「お前さんは言った……誰も死なず、殺されずに済む方法はないのかと。  ……ただ、はっきり分かっておるのは……それは、目に見える力だけではないという事じゃ」 テリーは微かに頷いた。 「お前さんの力は強き者を捩じ伏せる為のものではない。迷える魔物達の心を救い、導く為のものじゃ。  それに従い、トンヌラはお前さんの後を追い……ドルバは、命を掛けた。  そして、わしは……お前さんを、心から信じておる」 「ギード……」 「だからいずれ……ワシもきっちり落とし前を付け、お前さんに……全ての正しき者に報いよう」 気が付くと、トンヌラが横に立っていた。 おずおずと、テリーのザックを差し出す。 「ありがとう」 テリーはザックから自分のランタンを取り出した。 小さいが、暖かな光が灯る。 「これ……お前が持ってていいよ。何か、その方がサマになる気がする」 自分のが壊れてしまい、ちょっと落ち込んでいたらしい。 トンヌラは喜んでランタンを受け取った。 淡い光を映すテリーの瞳は、アメジストの色に輝いていた。 そう、いつも通り……ギードは安堵した。 が、その時…… 「待て……」 ギードは振り返り、後方を見た。 遥か遠くに小さな灯りが揺れ、微かに草木をかき分ける音が聞こえた。 「誰か、来る……」 一行は、じっと息を潜めた 【ギード 所持品:首輪  第一行動方針:様子を窺う 第二行動方針:ルカとの合流 第三行動方針:首輪の研究】 【テリー(DQM)(右肩負傷、3割回復)  所持品:突撃ラッパ、シャナクの巻物、樫の杖、りゅうのうろこ×2、鋼鉄の剣 、コルトガバメント(予備弾倉×4)  第一行動方針:様子を窺う 第二行動方針:ルカ、わたぼうを探す】 【トンヌラ(トンベリ)所持品:包丁(FF4) スナイパーアイ、りゅうのうろこ  行動方針:テリー達についていく??】 【現在地:カズス北西の森南部】

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