484話

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*第484話:Grim ギードの位置まで届いた声はすでに明瞭さを無くしており、ただ込められた激情だけをかろうじて解することが出来た。 しかし行動を決断するにはそれで十分で、彼は既に躍動を開始した二つの影へ向けて動き出す。 自分に助力してくれる青年を救うために。 すんでのところで騎士の突撃をかわし、地上より3メートル上の横に伸びた枝へ飛び移る。 下方からは憎しみに燃える、良く知った相手がいつかのような目をして自分を睨みつけている。 ウィーグラフの戦いの思考ならばこの間合い、次は彼の得意技。 そう察したラムザはとっさにその場所を離れ、必殺の聖剣技の焦点を逃れる。 「おのれェッッ!!」 「ミルウーダの仇!? ウィーグラフッ、それがあなたの目的かッ!」 両足を再び木の根の張った森の地面へつけ、吐き出すように問う。 着地したラムザを逃すまいと剣を振り上げ猛然と突進、その問いに対し動作で肯定するウィーグラフ。 負けじとブレイブブレイドを打ち合わせて防ぐ。 「ラムザッ、ようやく見つけたぞ! 貴様の命で我が妹ミルウーダの冥福を祈らせてもらうッッ!」 「まだそんなことを…ッ! あなたはこんな世界に身をおいてそれしか考えることは無いのかッ!  どうしてみすみす魔女の思惑に乗るッ!  義勇軍として立ったあなたならこの理不尽な世界に抵抗するという考えが理解できるはずだッ!  わかっているくせに、あなたは目を背けているッ!」 「口達者は変わらんな、ラムザ=ベオルブ! しかし背景がどうであれこれは私に与えられた機会ッ!」 一段と増した圧力に屈するように後方へ弾け飛ぶ身体、そして剣。 しかし、それがウィーグラフの優位を示すものではないことをラムザは次の動きで教えてみせた。 刹那の見切り――侍という戦闘者に伝わるすばらしき回避技術により追撃は身に触れることなくラムザの両手の間で停止した。 宙を舞っていたブレイブブレイドが少し柔らかい音を立てて地面に突き立つ。 「聞けッ、ラムザ=ベオルブ! そんなこと、と言ったなッ!  それが全てを失った私に残された目的なのだッ! 他のすべては私にとって瑣末なことに過ぎんッッ!!」 「夢も、理想も…善悪の判断さえも失ったか、ウィーグラフッ!」 「これは貴様と私の問題だッ! 戯言など不要ッ!!」 両手に捕まえた剣から与えられる負荷が消滅する。 それだけでラムザはためていた両足から力を解放してその場を離れていた。 しかし、ウィーグラフにとってもそれは計算に入っていること。 「大地――いや、我が怒りがこの腕を伝う! 防御あたわず! 疾風!地裂斬!」 地を伝う衝撃が複雑な凹凸を乗り越え突き抜けて走る。貪欲で情熱的なそれは地面から剣の身を一足で駆け上り、それをつかんだラムザの腕を絡め取った。 小さな音混じりの吐息がこぼれる。それでも、揺さぶられる身体を仕方なさ気に受け入れて剣を地の封印から抜き去り次に備える。 相手は再び手に握りなおした幅広の剣を手に一気呵成に向かってくるウィーグラフ。 「ウィーグラフッ! あなたの意志はよく分かるッ!  だが、それでも僕にはあなたと戦う理由なんて無いんだッッ!  個人的な決着はあとで必ずつけよう、だから今は剣を収めてくれッ、ともに……」 「黙れェェッッ!!!」 加速のついた力の方向を下へそらすように受け流す。 再びジャンプ。樹の幹を経由して空中を駆け、さらに戦場を移動してゆく。 金属の振動が共鳴を奏でる。小さな火花。空気の振動。二つの影が離れる。 離れていく。 ゆっくりと地を這っていたギードの視界から、闇へと溶けていく。 自分の足ではとても追いつかない、だから仕方がないのかもしれない。 少しでも長く生きるために、マスターと再会するために自分の命をつないでいた分の魔力。それを使うことにした。 レビテト。ゆっくりと大きなカメが浮上する。 それから、器用に使用魔力・威力共に必要最小限に抑えた爆発…フレアを解き放つ。 狐火のように突如森の奥に現れた炸裂は浮いている彼の身体を動かす推進力となり、滑るようにギードは二人を追った。 気づけば木々はまばらとなり、代わりに岩が場所を占める風景へと様変わり。 効果をなさない話術による説得、ジャンプと白刃取りによる回避を交互に繰り返しながら移動していたラムザが最初に気づいたのは赤――炎の色であった。 追いかけるウィーグラフとの交戦を拒否しながら、ラムザは自然、その場所へと近づいていく。 心底にあったのはウィ―グラフとの決着を避けたい気持ちだったか。 ともかく最終的にはそれは大きな過ちではあったのだがこの時点で彼を責めることなど誰に出来ないだろう。 接近に従い炎の次に他に目に入ったのはオレンジの照り返しを浴びた白いローブ…白魔導士だ。 さらには倒れている男一人、子供の小さな姿が二つ。 ラムザ達の到着を待っていたようにはじけた爆発で不安と焦燥の発見は歓迎される。 騒がしい空気、熱と血と灰の臭い。 揺らめく炎と相伴う影の生無きダンスの舞台背景のごとく誰一人動くものは無い。皆死んでいるのか? 慄然とする光景を判断するよりも先に後方に生じた殺意をかわす為に跳ね上がる。 聖剣技の力を誇示するヴィジョンがラムザのいた場所を突き上げたのを眼下に確認しつつ、今まで移動してきた方向へと身体の向きを変えながら少し小さくなり燃え続ける火のそばへと軽やかに着地した。 森の間から姿を現したウィーグラフと向き合う。 これまで足を止めるたびに敵意をたっぷり含んだ言葉を投げつけてきた彼もさすがにこの異様な状況に口を開かない。 それでも燃え盛る眼はラムザだけを射抜いていたが。 「………テリー?」 沈黙の対峙、しかし目の端、2メートルほど離れた位置で炎に照らされている見覚えある銀髪に思わず反応する。 その隙を見逃すウィーグラフではない。 「貴様は人を気にかけていられるような立場では無いッッ!」 振り上げられた剣、帯電していく空気、続けてほとばしる幾条もの白い雷光。 無双稲妻突き、聖剣技を扱うものが最も信頼を置く技、その攻撃は否応無く辺りを巻き込む。 不注意だったと思う。 わずかに遅れた反応は電流となってラムザを蝕んだが、そのことではない。 それよりも問題なのはその範囲に、落雷の渦に巻き込まれた少年のこと。 体験からよく知る威力の雨が小さな身体を蹂躙する。 エネルギーを受けた炎がひと時散り乱れる。金属の剣が、小片が衝撃に跳ねあらぬ方向へ転がり散っていく。 ラムザは始動していた回避運動に従い地面を転がり、その勢いのままに立ち上がって叫んだ。 「関係ない人を巻き込むなッ! これは僕とあなたの問題なんだろうッ!?」 「貴様に物理的に係わっている時点で無関係ではないのだッ!」 「貴様ッッ!」 「なんとでも罵るがいいさッ、私は何の痛痒も感じんッッ!」 繰り返される動き。 ラムザはここを離れるべきだと即断していたが、それが行動に移されることは無い。 なぜならば、次の瞬間にはウィーグラフの身体は吹き飛んでいたからだ。 残り少ない魔力と生命を燃料に、低空を滑るそれは確実に二つの影を追っていた。 そして燃える火、落ちる雷を合図に最後の加速をかけたそれは増加した運動エネルギーをウィーグラフの背中へと叩き付けた。 恋焦がれた仇に向けて集中していたウィーグラフが高速で飛び込んできた予想外の円盤に反応できるはずも無い。 十分にエネルギーを受け取ったその身体は奇妙な緩慢さで浮き、放物線を描いて落ちる。 「追いつけた…間に合ったようじゃな、ラムザよ」 「何だ……ギードッ!? なんて無茶をッ??」 「そのような問題ではなかろう、あの男は危険な相手じゃぞッ!」 「わかっています、彼とは古い知り合い……」 「貴様ら……動くんじゃないッ! この娘の命が惜しくないならだッ!!」 ラムザは驚きが勝り、突撃に専念したギードもまだラムザ以外を認識していない、そんなタイミング。 ギードを認識し、二人の関係を認識したウィーグラフが誰よりも早くその先へと動いていた。 その生死は分からないけれど小さな体を樹へと預けている少女、その上に騎士の手と幹に支えられてギロチンのような刃が。 「そんなところまで堕ち果てたというのかッ、ウィーグラフッ!!」 「二度言わせるな、私はもはや全てを失ったのだッ!  復讐のために魂すら悪魔に売り渡した私だぞ? 理解しろッ、ラムザ=ベオルブ!」 「……貴様ッッ!」 「動くなと言っているッッ! 余計なことをするな、カメェッッ!」 搾り出すように大きな声で警告。その裏で探り当てるように自身の荷物へと片手を伸ばす。 何か手を考えていたのは隣のギードも同じだろう。 けれど双方の間に横たわる決定的な思考の差、他者の生命の尊重するか否かの差が対応の速度を決定付ける。 単純化された目的を有するが故、冷酷なまでに不要な価値を決している故。 三つの別の音がラムザとギードの動きを縛り付ける。 一つ目はウィ―グラフの手から放られた紙のような何か。実際には聞こえていない軽い音をたてて地面に落ちる。 二つ目は傍らの地面に倒れ臥している少年から聞こえた小さなうめき声。 そして三つ目、片手で卑劣な刃を支持したまま伸びたウィーグラフの手が拾い上げた一本の細身の剣。一度だけ、杖のように地を突いたそれはひとかけらの躊躇も無く次に空を切った。 注視の雰囲気、ラムザが見ている前で風きり音を叫んだそれは口から血を垂れ流したまま動かないバンダナの男の左足、膝上を抉る。赤い泉が湧き出す。 ギードの目の前で、小さく苦痛をもらしたはずのよく知る少年は後続を示さない。 「やめろ…やめろッ、ウィ―グラフッッ!」 「戦場の定石ッッ! よもや貴様が知らぬわけではあるまいッ!  だが1対2は望まん、選択権は貴様らにあるッ!  私はここから退かせてもらうぞ、ラムザ=ベオルブよッッ!  今を望まないのならば地図に示した場所まで一人で来るがいいッ!」 「待てッ! 待てーーッッ!!」 「次の魔女の刻まで待つッ、さらばだッッ!!」 人形のように静かだった眼帯の少女もろともに炎の赤の及ばない樹の影へとウィーグラフが消える。 このままではいけない、追うか? 反射的に地を蹴ろうと身構えた勢いは強い主張を再開した嗅覚に崩されて霧散した。 「…ザ、ラムザよ!」 ギードの声は音として認識されてはいるのみ。 脈を為す血の泉を左足の腿に刻まれた錆の臭いに包まれた男がいる。 未だ生死すら定かでなく崩れ落ちている茶髪の白魔道士がいる。 最初から説得を考えずにウィーグラフを殺すつもりで戦わねばならなかった。 結局のところ同情があったのかもしれない。歴史に、体制に志を潰されていった男に対しての。 少し語勢を強めたギードの声が聞こえる。 「回復の手段は持たんのか? ラムザよ、聞いておるのか? ラムザよッ!」 「えっ、はい? あ、いいえ、努力しますッ!」 「……頼むッ!」 思考再開。今はこの死の淵に瀕した彼らを助ける手段を見つけねばならない。 アイテムはあることを期待するほうが間違っている。 本職ではないとはいえいくらかの白魔法は習得してはいるが話術士の魔力では力不足だ。 だが、ジョブを変えるとなれば彼らの命をこの場に留めたままにすることは出来ないだろう。 すでにギードは回復呪文をテリー似の少年へと浴びせていたが、ギードだって重傷だ。 選択権は貴様らにある、とウィーグラフは分かっていてそう発言したのだろう。 だが選ぶ事のできる時間は極わずか。 ラムザは身につけた技能のうちから「白魔法」を選び出し、なお酷い出血を続ける男へと駆け寄った。 火の赤、影の黒、夜の闇が舞い踊る白いスクリーン。 地面に切り取られたその異質な四角は地図、その一点には確かな傷が刻まれている。 炎は心情もろとも照らす如く蠢く人間の影を揺らし続ける。 【アーヴァイン(変装中@白魔もどき、身体能力低下、一部記憶喪失)  (昏睡+重傷、右腕骨折、右耳失聴)  所持品:竜騎士の靴、ふきとばしの杖[0]、手帳、首輪  第一行動方針:?】 【テリー(DQM)(気絶+重傷、ショック、右肩負傷(5割回復))  所持品:突撃ラッパ、シャナクの巻物、樫の杖、りゅうのうろこ×3  鋼鉄の剣、雷鳴の剣、スナイパーアイ、包丁(FF4)  第一行動方針:?  第二行動方針:ギードを待つ/ルカ、わたぼうを探す】 【ロック (気絶+重傷、左足重傷・失血中)  所持品:キューソネコカミ クリスタルソード 魔石バハムート 皆伝の証  第一行動方針:?  第二行動方針:事態の処理後、ピサロ達と合流する  第三行動方針:ケフカとザンデ(+ピサロ)の監視  基本行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】 【ギード(重傷、MP大幅消費) 所持品:首輪  第一行動方針:負傷者の回復  第二行動方針:ルカとの合流  第三行動方針:首輪の研究】 【ラムザ(話術士 アビリティ:白魔法)(HP4/5)  所持品:アダマンアーマー ブレイブブレイド テリーの帽子  第一行動方針:負傷者の回復  第二行動方針:ギードに随行し、彼の仲間たちにテリーを託してからユフィを探す    最終行動方針:ゲームから抜ける、もしくは壊す】 【現在位置:サスーン南東・山の中、森との境付近】 【ウィーグラフ(HP2/3)  所持品:ブロードソード プレデターエッジ レーザーウエポン グリンガムの鞭  暗闇の弓矢 ブラスターガン 毒針弾 神経弾 不思議なタンバリン エリクサー×5  スコールのカードデッキ(コンプリート済み) 黒マテリア 攻略本 首輪×2 研究メモ  第一行動方針:地図に示した地点まで移動  基本行動方針:生き延びる、手段は選ばない/ラムザとその仲間を探し殺す(ラムザが最優先)】 【リルム(HP1/2、気絶、右目失明、魔力消費)  所持品:英雄の盾、絵筆、祈りの指輪、ブロンズナイフ  第一行動方針:?  第二行動方針:仲間の帰りを待つ】 【現在位置:サスーン南東・山の中、森との境付近】 ※地図には1点を示すように傷が付けられています。 ※手榴弾は消滅。他は未確認。 ※すべての未定の事項は後続に委ねます。

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