368話

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*第368話:森深きにて、闇深まりぬ 「本当に大丈夫?」 「大丈夫だよ」 「ほんっとに大丈夫?」 「大丈夫だから」 「ホントのほんとの本当に?」 森深く、明るい、だが真剣な声が響く。 あの草原からこの森にかけて、リュカとリノアはこんなやり取りを延々続けていた。 「そんなに信用ないかなぁ」 「リュカは何でも自分に溜め込んで、それを顔に出さないから恐いのよ」 表面上のリュカは落ち着き、元来の穏やかさを取り戻している。 けれどそれを、どこまで正直に受け止めるべきだろうか。 確かにリノアは、リュカの「大丈夫」を全く信用していないのだ。 視線をそらせば瞳を暗く沈ませて、ちらりと横目にそれを見ると、またすぐに笑顔を作り直す。 誰かに心配をかけないために無理をすることに、体が慣れきっている、そういう風にリノアには思える。 その気遣いは大したものだと褒めてやりたいが、張り詰めた糸の上でそんなことをやっていては身が持たなくなるのは歴然としている。 今は自分がリュカを気遣ってやるべきときだ。 「もう、しょうがないんだから」 リノアはリュカの手首を掴み、目指す城へ歩を早める。 そんな時だ。タイプライターの音が響いたのは。 レオンハルトを追って、デールは森を駆けていた。 だが基礎体力の違いだろうか。森の中腹まで来て自分が完全に巻かれたことに気づく。 「ちっ」 舌を打ち、しかしそれでどうにかなるわけでもない。次なる獲物を探さなければ。 そんな時だ。女の、明るい声が響いたのは。 デールは一目散にその声の者へ急いだ。 そこにいたのは男女の二人組み。 相手の死角から二人を確認して、デールは唇の片方を持ち上げた。 女の方は知らない。 だが男のほうは、ヘンリーに次ぐ大物じゃないか。 (まあマリア義姉さんには負けるけど、あの人はもう壊してしまったから。) 銃口を向ける。 二人はかなり近づいて歩いていたけれど、正確に女の方だけを狙って。 そう、リュカをこんな不意打ちで壊してしまうなんて勿体無い。 彼には絶望と言う名の美酒に酔い、恍惚の内に壊れてもらおう。 それがいい。 だって彼はヘンリーの親友なのだから。 タイプライターの音。舞い散る赤。 自分の手首を握ってくれていた彼女の手が、ほどける。 鈍い、物が落ちる音。足元に崩れる彼女。 「リ、ノア……、リノア!!」 反射的に抱き起こす。 脱力した身体は異様に重く、覗き見れば顔も、身体も張り裂け血にまみれて、人の原形をとどめていることがいっそ痛々しくて。 息を呑む。 呼吸が出来ない。 誰かが木々の間を縫って近づいてくる。 そのことが分かっているのに、体が全く動かない。 「こんなところで会えるなんて、思いもよりませんでした。嬉しいです」 彼は穏やかに笑いかけてくる。 自分と彼に境界線を引けるなら、彼のいる世界は例えば舞踏会。 そんな想像をしてしまうほど彼は優雅で、リノアの血に汚れた自分とはまったく別世界の人間ではないかと思える。 ただ彼の構える銃口だけが、彼が確かにこのゲームに参加しているという証明を果たしている。 「どうしたんですか、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして」 彼の笑顔が少し歪んだ。恍惚に引きつっている。 「まあコレは、そんな甘いモノじゃないんですけどね」 マシンガンを構えた腕に力が入る。 指が引き金を引けば、その先になにがあるのかを、リュカは知っている。 本能的に体が動く。 ザックの底にしまってあったスナイパーCRの残骸を回転をつけ投げる。 意識が一瞬それたその隙に前進、肉薄、引き金を引く隙を与えてはならない。 その動きに、デールは少なからず慌てた。 リュカの繰り出す竹槍の一撃に、不覚にもマシンガンを落としたのだ。 だが、とっさにザックから取り出したアポカリプスが、竹槍を真っ二つに切って落とす。 リュカは引かない。大剣であれば接近戦は不利。 覆いかぶさるように地面に押し倒し、デスペナルティをデールの眉間に突きつける。 今度はこちらが引き金を引けば、それで終わりだ。 けれど。 指が動かない。 使い慣れた剣や杖の類なら、戦闘中に思考の入る暇もなく、とどめをさせただろう。 けれど銃は、昨日使い始めたばかり。 どうすれば相手に向けて撃つことが出来るかを、身体が無意識に覚えているというほど使い込んではいない。 一度脳を通さなければならないその命令は、誰を撃とうとしているかを、撃った後どうなってしまうかを、同時に考えてしまう。 デールを、ヘンリーの弟を、殺そうとしているのだと、自覚を促される。 それは決定的な隙であって、デールがそれを見逃すはずはなかった。 腹部に強烈な足蹴りが打たれる。 アポカリプスの柄の打撃に、デスペナルティを落とす。 今度は逆に地面に押し倒され、首筋に、冷たい刃が突きつけられる。 デールはそのまま首を切り落とそうとはせず、刃を少し下にずらし、心臓のない右胸を、貫いた。 「あああああああーーーーーーーっ!!!」 悲鳴に聞惚れるよう目を細める。 さて次はどうしよう。目をえぐろうか、それとの舌を引き抜こうか。 いや、どれも駄目だ。 「あなたの悲鳴をもっと聞かせてください。あなたの瞳が絶望に染まる様を見させてください」 ではどうしよう。 アポカリプスはリュカを串刺しにするのに使っているから、刃物で切り裂くことは諦めなくてはならない。 マシンガンは残弾を考えると余り使いたくないし。 ふと視線をずらせば、すぐそこに先ほどまでリュカが使っていたデスペナルティがある。 「ああ、いいものがありました」 リュカは、アポカリプスの刃をそのまま握ることも構わず、胸に突き刺さるそれを引き抜こうともがいていた。 二発の銃弾が、その腕を撃ち抜く。 「駄目ですよ。逃げようなんて、思わないで下さい」 それは突然に、何の前触れもなく。 辺りは煙に包まれる。 「くそっ、誰だ、邪魔をして!!」 闇雲にデスペナルティを乱射するが、そはマシンガンとは勝手が違う。 何の手ごたえもなく煙が晴れるのを待てば、そこにあるはずの得物も、獲物も忽然と姿を消していた。 あるのはただ、城の方向へ伸びる人の通った跡のみ。 「駄目ですよ。逃げ切れるなんて、思わないで下さい」 「シンシア、大丈夫かい、そんなに大きな剣を持って」 「私は大丈夫です。それよりエドガーさんは?」 森を駆ける二人の男女。 男は右手を失くしていたが、器用に体格もそれほど違わない男を背負ったまま走っている。 「私は大丈夫だが、この彼は、かなり傷がひどい。城まで持つかどうか。たとえ持ったとして回復手段が…」 「その人が回復魔法を使えるのなら、私がモシャスをして助けてあげられます」 彼らは城へと駆ける。 【エドガー(右手喪失) 所持品:天空の鎧 ラミアの竪琴 イエローメガホン  【シンシア 所持品:アポカリプス 万能薬(ザックその他基本アイテムなし)  第一行動方針:サスーン城に向かいリュカの傷の手当てをする  第二行動方針:仲間を探す 第三行動方針:首輪の研究 最終行動方針:ゲームの脱出】 【リュカ(右肺刺傷、両腕被弾) 所持品:お鍋(蓋付き) ポケットティッシュ×4  第一行動方針:?  基本行動方針:家族、及び仲間になってくれそうな人を探し、守る】 【デール 所持品:マシンガン(残り弾数1/4)、アラームピアス(対人)  ひそひ草、デスペナルティ リフレクトリング 賢者の杖 ロトの盾 G.F.パンデモニウム(召喚不能)  第一行動方針:リュカを殺す為追いかける(サスーン城へ向かう)  第二行動方針:皆殺し(バーバラ[非透明]とヘンリー(一対一の状況で)が最優先)】 【現在地:カズス北西の森→サスーン城】 【リノア 死亡】 【残り 71名】

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