454話

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*第454話:眠る太陽 ひとりになると色々と考えてしまう。 やっぱり単独行動はやめといた方が良かったかも。とティーダは少しだけ後悔した。 魔女の放送があったのが十分くらい前。そこで一行はロランとフルートの名を聞く。 決別したとはいえ行動を共にしていた仲間が死んでユウナはかなり落ち込んだ。 『ゲームが始まってから知り合った人が亡くなったのは、ロランさんとフルートさんが初めてなんです。  前の世界でもですが、あまり人に逢えませんでしたから』 とプサンがこっそりと教えてくれた。 だがティーダとしては、とっととサスーン城を調べて早くアーヴァイン達の所に戻りたいのが本音だ。 他にも首輪の解析についてや、どうせならターニアやロックやリュックらを探して行動を共にしたい。 という訳で、時間を無駄にしない為にも不安定な状態のユウナをプサンに任せ、ひとり東棟を調べているところだった。 「……真っ暗だ」 ふと窓の外に目をやって呟く。 世界はすっかり闇に包まれ、月の明かりだけが微かに輪郭を浮かび上がらせている。 ティーダはぼんやりと月を見つめた。そうしていると考えてしまう。 はたして自分は何なのだろうか、と。 元の世界・スピラでユウナ達と旅し、悪の根源である敵を倒して世界を救った。 だがそれと同時に、ティーダは消滅した。ティーダは夢の世界の存在である。夢は現実ではない。 世界が平和になった時、それは同時に夢が覚める時であった。 だからティーダは消えた。 消えた時の事が昨日のように……いや、一昨日の事のように感じられた。 ──だったら今ここに存在している俺は何なんだろう。 そう考え、不安になった。 もし仮にゲームを抜け出して元の世界に帰ったとしても、はたして自分は存在できるのだろうか、と。 自分はどこに帰る事ができるのだろうか、と。 いまここにいる自分は、また誰かの見ている夢なのだろうか。 それともこの世界も痛みも人々の思いも夢なのだろうか。 こんな馬鹿げたゲームは単なる虚りなのだろうか。 だとしたらどんなに幸せなことか。 「そこの君……」 「!!!おんぎゃあああああああぁぁぁぁぁ────ッス!!!!!」 いきなり背後からした声に驚いて、ティーダは廊下中に叫び声を響かせた。 エドガーは考えた。 目の前に少年がいる。窓の外をじっと見ている。 一人でいるという事は……殺し合いに参加している可能性も低くない。 の、だ、が。 後ろ姿はあまりにも無防備すぎる。 大体まだこちらに気付いていない。 城外の様子を伺っているという訳でもなく夜空を眺めている。 剣を持つ手も緊張感なくだらんと下がっている。 「…………」 エドガーは考えていたが、その最中もこちらに気付く気配はない。 こっちは気配を消している訳でもないのに。 とりあえず危険性はないだろうと踏んで、エドガーは声をかける事にした。 「そこの君……」 「!!!おんぎゃあああああああぁぁぁぁぁ────ッス!!!!!」 エドガーは思わず耳を押さえる。 盗聴器の向こうの魔女もびっくりしているだろうな、と思うとちょっとザマーミロだった。 魔女の放送を聞いてリュカは現実へと引き戻される。 ビアンカがいたら、いつまでくよくよしてるの、と怒られてしまうんだろうな。 そう思うと、次第にリュカは気力を取り戻す。 自分のやるべき事は落ち込む事じゃない、彼女の分までタバサを守る事だ。 リュカはビアンカのリボンをぎゅっと握り締める。 そしてビアンカの亡骸に別れを告げると、静かに部屋を出た。 ……あああああああぁぁぁぁぁ──── 例えるならば夜の墓場でお化けに出会ったかのような叫び声を聞きながら。 「……って、叫び声!?」 リュカは不安を抱えながらタバサらの待つ部屋へと急いだ。 だが、その足は部屋へと向かう順路の途中で止められる。 廊下で知人を発見して。 「エドガー!?」 「ああ、リュカ。遅いから様子を見に行こうと思っていたところだ」 足音でリュカに気付いていたエドガーは、わざとらしく軽い口調で話す。 リュカは頭を抱えて考えた。 「いや、あの、それより……そのズルズルと引き摺ってる人は誰なんですか」 「よくぞ聞いてくれた」 とエドガーは悩ましげに答える。 「自分が気を抜いていたくせに、話し掛けたら勝手に驚いて慌てて転んで気絶した、見知らぬ間抜けな少年だ」 「はぁ」 さっきの叫び声の主はこの少年だったのか。 そう思いながら、リュカは気絶する少年──ティーダを見つめた。 「普通に気絶してるだけですね」 ベッドに寝かされたティーダの容態を看て、セージは言った。 「でもこの人、本当にゲームに乗ってない安全な人なんですか?」 「うーむ」 エドガーは考える。 一人で行動していたという事は、仲間とはぐれたか、もしくは仲間が殺されたか。 それより注目すべきはサックの中身。 死体の首から拝借したと思われる首輪が入っていた。 魔女に与えられた忌まわしき首輪を形見に持つという事は考えられない。 導き出される答えは一つ、この少年は首輪を調べて、おそらく外そうとしている。 つまりゲームからの脱出を試みている。 それに何より彼の持つ剣は、殆どと言っていいくらい汚れていない。 「彼の状況から推測すると99%シロであ……」 「そうだリュカさん。鞭と指輪はどうするか決まりましたか?」 無視されてエドガーはちょっと悲しかった。 「ああ」 リュカは答える。 「二つともタバサに持たせるよ。彼女に教わっていたタバサの方が鞭の扱いは上だし、護身用という事で」 「教わっていた……んですか。それは頼もしいですね……」 セージは窓の外を眺めているタバサをちらりと見る。 あの小さい身体で鞭を振るう姿は圧巻だろうな、と想像すると少し顔を引きつらせた。 「鳥さんいないなぁ」 タバサはがっかりしたように呟いた。 新しい客人についての情報を貰おうと思っていたのだが、夜の為か鳥は見当たらない。 「鳥はおやすみの時間みたいだね」 リュカはそう言ってタバサに歩み寄り、同じように窓の外を見つめた。 「「あ」」 そして父娘の声が重なった。 直後、破裂音のような爆発音のようなものが微かに耳へと入る。 「……花火?」 音だけ聞いたセージが呟いたが、タバサは振り返って顔をぶんぶんと横に振る。 「光ったの!真っ白に!遠くのほうで!」 「へぇ、そうなんだ……うん」 セージは相槌を打ったが、表情は困惑している。リュカの方に視線をやって助けを求めた。 「森の方に白い光柱が見えました。おそらく魔法の一種だとは思うけど」 「交戦中だろうか?」 同じく音だけを聞いたエドガーが尋ねる。 「判らないけど、恐らくは。だけど……僕たちがどうこうできそうな距離じゃない」 「なるほど。逆にこちらに被害が及ぶ事は無いと思って安心するのが懸命か」 「悔しいけど、そうだね」 本当に悔しそうにリュカは呟いた。 自分を落ち着かせるように、再びビアンカのリボンを握り締めた。 「あ、お父さん、そのリボン」 タバサがリュカの手に気付き、それからリュカの表情を見る。 「ああ、うん。これは……」 「私が結んであげる!」 タバサはリボンを奪い取ると、リュカの右腕へと巻き付けていった。 「これでいつでもお母さんと一緒でしょ?」 そう言って微笑んだ娘の頭を、リュカはそっと優しく撫でた。 「…………」 「……この釜、一度は試してみたいですねぇ」 ユウナとプサンは隠し部屋にそのまま残って待機していた。 ずっと黙ったまま落ち込むユウナと、手持ち無沙汰に錬金釜を調べるプサン。 「…………」 「……ティーダさん早く帰ってくるといいですねぇ」 「…………」 ティーダさん、本当に早く帰ってきて下さい。気まずいです。 と切に願うプサンだった。 幸か不幸か、二人のいる隠し部屋にはティーダの大絶叫も例の爆発音も届いていなかった。 【ティーダ(変装中@シーフもどき)  所持品:鋼の剣、青銅の盾、理性の種、首輪、ケフカのメモ、着替え用の服(数着)、自分の服  第一行動方針:気絶中  第二行動方針:ユウナ達の所へ戻る/首輪の解析を依頼する  基本行動方針:仲間を探しつつ人助け】 【リュカ(MP1/2 左腕不随)  所持品:お鍋の蓋、ポケットティッシュ×4、アポカリプス(大剣)+マテリア(かいふく)、ビアンカのリボン、ブラッドソード  基本行動方針:家族、及び仲間になってくれそうな人を探し、守る】 【エドガー(右手喪失 MP1/2)  所持品:天空の鎧、ラミアの竪琴、イエローメガホン、血のついたお鍋、再研究メモ、ライトブリンガー  第一行動方針:首輪の研究/アリーナ2を殺し首輪を入手/仲間を探す  最終行動方針:ゲームの脱出】 【セージ(HP2/3程度 怪我はほぼ回復 魔力1/2程度)  所持品:ハリセン、ナイフ、ギルダーの形見の帽子  基本行動方針:タバサに呪文を教授する(=賢者に覚醒させる)】 【タバサ(HP2/3程度 怪我はほぼ回復)  所持品:E:普通の服、ストロスの杖、キノコ図鑑、悟りの書、服数着、ファイアビュート、雷の指輪  基本行動方針:呪文を覚える努力をする】 【現在位置:サスーン城 東棟の一室】 【ユウナ(魔銃士、MP1/2) 所持品:銀玉鉄砲(FF7)、やまびこの帽子、官能小説2冊  第一行動方針:落ち込む  第二行動方針:首輪の解析を依頼する/ドラゴンオーブを探す  基本行動方針:仲間を探しつつ人助け】 【プサン 所持品:錬金釜、隼の剣  第一行動方針:ティーダを待つ  第二行動方針:首輪の解析を依頼する/ドラゴンオーブを探す  基本行動方針:仲間を探しつつ人助け】 【現在位置:サスーン城 中央棟の隠し部屋】

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