272話

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*第272話:親友になれた筈だった ――自惚れていたのだろう。 私が彼女を正しい道に案内したのだと。 私が彼女を狂気から救ったのだと。 そうやって私は彼女の信頼を得たのだと。 彼女の叫びと共に、疑った。 銃声と共に、気づかされた。 左肩を走る激痛と共に、思い知らされた。 二人の男性の叫びで、確信した。 彼女にとって、私は、クラウドという人とは比べられないほどに軽い存在だったのだと。 保護者を気取って、そのくせ彼女の発した警告に気づけなかった。 …私は、あまりにも、不甲斐無い。 確かに先程は、彼女の目に人を愛する心を見た。 ティナだって、彼女は正しい道を生きられると信じた。 彼女は確かに人を愛することを知っていた筈だった。 彼女は確かに正しい道を歩いていけた筈だった。 こんな状況でさえなければ。 こんな狂気の中にさえ身を置かなければ。 悪いのはアルティミシアだけ。 再度の銃声と共に、彼女の肩を掴んでいた腕から、力が一気に抜けていった。 身体が、後方に傾いた。 揺れる視界の中で、彼女は右手で銃を構えたまま、左手でスコールを突き飛ばしていた。 更に、右足でマッシュの顔面を蹴飛ばす。  モンクとしての一流の実力をもつ彼でさえ、戦いの中に躊躇や恐怖を感じなくなった彼女の前では、為す術が無く後方に弾かれた。 彼女は、銃を再び構えた。 誰を先に撃つべきか、其処に一瞬の迷いがあった。 私はその隙に、体勢を立て直した。 他の二人と比べて、私は大きくは後ろに下がっていない。 今、自分が動くしか、ない。 彼女が私の行動に気づく前に、私は彼女に飛び掛かった。 私は、彼女が咄嗟に構えた銃の銃身を掴んだ。 肩の激痛に気を遣っている心の余裕は無かった。 彼女にこれ以上誰かを殺させたくはなかった。 銃をもぎ取ろうと力を入れて―― ドゴッ、と嫌な音を立てて、腹に激痛が走った。 彼女は、その長い脚を咄嗟に振り上げていた。 身体が、大きく後方に捻れる。 思わず再び手を離し、身体を後方に泳がせる。 そして直後に、どこか遠くで、耳障りな、音が、鳴り響いた。 私の身体を貫く何かが、彼女の手で、発射された音だった。 「アイラ!」 マッシュとスコールの声。 それに重なるように、それをかき消すように、何度も、何度も、耳障りな銃声が、響いた。 体中を撃ち抜かれた。 もう、痛みも感じない。 このまま、苦しみも、悲しみも、何一つ、感じなくなってしまうんだろう。 でもその前にやらなくちゃならないことが、ある。 最後の力を振り絞って、彼女の肩に手を掛ける。 彼女の構えた銃は、再び引き金が引かれると共に、カチャリという空虚な音を立てた。弾切れだった。 彼女が慌てて脚を振り上げようとする。 ――そんなことをしなくても、どうせもう私には何も出来ない。 ――あなたを正しい道に戻すことも。 だからこそ、彼女の目を見て、言ってやった。 血塗れた顔を、彼女に見せ付けて、言ってやった。 「死んでも、あなたの傍にいるから」 一瞬、彼女の表情は硬直した。 その唇から、一種恐怖を帯びた声が、漏れた。 呪われた過去が、重なって、彼女は、呟いた。 「エア、リ、ス?」 それでも彼女の身体の動きは止まらなかった。 振り上げた脚が、私の身体を空へと投げ出す。 ほんの一秒ほどの筈なのに、それは何秒にも感じた。 自分の身体が地面に堕ちるまでの、空虚な時間。 目を閉じて、思う。 マッシュ、スコール。 命に換えても彼女を止めようなんて、思わないで。 あなた達を愛している人を、彼女みたいにしないように。 生きて。生き残って。 フィン。 あなたに、後は任せるわ… きっと、この理不尽な戦いを、止めてくれるわね? ティファ―― あなたが背負った悲しみのほんの一部でも、私に背負わせてくれればよかったのに。 そうすればきっと、仲のいい友達にだってなれた―― 回想は途切れ、地面に叩きつけられた感覚を最後に、永遠とも思われた時間に終焉が訪れた。 【マッシュ 所持品:ナイトオブタマネギ(レベル3)、モップ(FF7)、ティナの魔石】 【スコール 所持品:天空の兜、貴族の服、オリハルコン(FF3) 、ちょこザイナ&ちょこソナー、セイブ・ザ・クイーン(FF8)】 【第一行動方針:? 第二行動方針:ゲームを止める】  【ティファ 所持品:コルトガバメント(予備弾倉×5)、エアナイフ  第一行動方針:目に映るものを全て殺す? 基本行動方針:魔女にクラウドの蘇生を乞う】 【現在位置:東山脈中央部の森・川辺付近】 【アイラ 死亡】 【残り 86名】

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