424話

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*第424話:Believe it or not 『ティーダの服のポケットに、持ち主の人の手帳と鉛筆が入りっぱなしになってたらしい。  白紙のページも多いし、頼んでみたら譲ってくれたので、色々書き残すのに使おうと思う。  また記憶を無くした時、困ったり迷惑かけたりしないように。  あと、記憶が戻った時に、またみんなを裏切ったりしてしまわないように。  僕は今、ゼル達と一緒にいる。  カズスで偶然再会することができた。  本当はもう少し前に再会できていたかもしれなかったらしいけど  どっちにしても無事で良かった。  でも、そんな風に再会できたのも、ティーダと、ソロ達と、レナさん達のおかげだ。  いつかきちんと謝って、お礼を言おうと思う。  相変わらず、一日目のことは思い出せない。  誰を傷つけて誰を殺めたのか、スコールに何をやってしまったのか、  騙した女の子って誰なのか、バーバラと僕がどんな関係だったのか  肝心なことは何一つダメだ。』 『思い出せるのは、リチャードとギルバートを殺した時のことと  宿屋の中でヘンリーさんに散々家族自慢を聞かされたのと  何だか女の子ばっかり相手にしてた気がするのと  今以上に似合わない格好をしてた気がするってことだけ。  それ以上は思い出そうとしても頭が痛くなってくる。  イクサスの毒、種類はよくわからないけど、まだ症状が残ってる。  毒そのものの症状というより、後遺症なのだろう。  カズスに行くまでに結構時間が掛かったっていうし  命が助かっただけでも実は奇跡的だったのかもしれない。  それでも、ユウナやリルムが魔法で手当てしてくれた分、少しはマシになってきた。  こうして文字も書けるし道具も持てる。  ただ、やっぱり指先に力が入れられない。』 『ユウナの銃を借りたけど、トリガーが重くて引けなかった。  銀球鉄砲なんて子供の玩具、軽くしてもいいと思うけど、あれじゃ実銃並みかそれ以上だ。  それで、プサンさんが試しにと、とても軽い剣を貸してくれたので  ガーデンでのシゴキを思い出しながら素振りしてみたら  危うく殺害リストにティーダかプサンさんを載せてしまいそうになった。  しっかり握れないのに物を振り回すのは危険だってことを心で理解した。  剣は返して、ティーダの杖を貸してもらうことになった。  杖ならすっ飛んでも死人は出なさそうだから。    二度目の休憩。多分三時過ぎだろうか。  一時間ぐらい歩いたけど、やっぱり疲れる。それに木の根っこのせいで転んでばかりで足が痛い。  だいたいサスーンは遠すぎる。  じゃんけんで勝ったゼルが決めたのだが、人への配慮が足りないと思う。  図書委員の子がなんであいつに惚れたのか理解に苦しむ。』   『お腹が空いたから袋の中を調べてみた。  パンと水と、カンパンとビンヅメとふわふわの黄色いパンケーキが入っていた。  ゼル達の荷物には、カンパンもケーキも入っていないらしい。  ヘンリーさんが食料がどうこう言ってたけど、これのことだったんだろうか。  で、パンケーキを食べようとしたら、リルムに全部取られた。  仕方なくカンパンをかじったけど、何だかとても惨めになった気がした。  それで、パンケーキは誰が焼いたのかとか考えていたら  無性に悔しくなってきた。  ターニアちゃんお手製(だと思う)パンケーキ、一口ぐらい食べたかった。    突然、ゼルがセルフィって人のことを聞いてきた。  その人に言われたから日記を書いてると思ったらしい。  全然違うけど、面倒だから適当に相槌を打った。  誰だろう。図書委員の子? シュウの名字? 前に見かけたすげー巨乳な女子生徒?  CC団のダイヤのどっちか? カードクィーン? それとも大穴で風神の本名って…有り得ないか。』 道程は、至って平和だった。 どれぐらい平和だったのかといえば 6人という大規模な集団なのに、誰かに――見ていた者はいたのかもしれないが――襲われることもなく、 談笑などをしながら森の中を歩いて、毒や怪我の治療をし直したり、遅すぎる昼食や間食にありついたりして、 あまつさえ持ち出した服のポケットに収まっていた手帳などで日記をつけたりする余裕さえあったほどだ。 横たわっていた、少女の遺体を見つけるまでは。 ティーダにしてみれば、昨夜の、頭を踏み潰された男を思わせるほど酷い有様だった。 機関銃でも撃たれたのか、胸も腕も顔も爆ぜるように抉られていた。 それなのに人の姿を確かに留めていた。青いワンピースは赤黒く汚されていた。 その女性を見知らぬティーダ達さえ、あまりの惨状に激しい怒りと恐怖を覚えたのだが―― 問題は、無関係ではない人間がいたということだ。 『リノア=ハーティリー。  僕らの仲間だ。友達と言った方がいいかな』 淡々と言ったアーヴァインは、冷静というよりも、諦めたような表情をしていた。 その脇で、ゼルが遺体に縋り付きながら少女の名前を呼び続けていた。 繰り返し繰り返し、壊れたテープレコーダーのように。 「――ティーダ?」 ふと、名前を呼ばれる。 顔を上げると、ユウナが気遣うような視線を向けていた。 「どうしたの? ボーっとして」 「……なんでもない。ちょっと考え事してたッス」 首を横に振りながら答える。 それでも納得がいかないのか、ユウナは別の質問を投げかける。 「心配なの? ゼル君たちのこと」 ティーダは首を縦に振る。 そんな二人に、プサンが横から口を挟んだ。 「気持ちはわかりますが、一緒にサスーンに行くよりは安全でしょう。  あそこまで頭に血が上っていては、命に関わる勇み足をしかねませんよ」 「そりゃわかってるッスよ……でも、リルムとアーヴィンだけで、平気かなって」 「そういうことは、答えようがないですねぇ。  未来を知るなど、人にも魔王にも神にも無理な相談ですから」 悟った事を言う中年男に、ティーダは大きくため息をつく。 「……そりゃそうだけどさぁ。  そこはフツー、『二人を信じましょう』って励ますところじゃないッスか?」 「無責任なことを言うのは好きではないんですよ」 リュカやタバサが聞いたら、呆れるか突っ込むかしそうなセリフをさらっと吐いてみせる。 それからこほんと一つ咳払いをして、話を続けた。 「とにかく、彼らに天運の加護があることを祈るのみですよ。  そもそも人の身を案じる前に、自分の身を案じた方がいいかもしれません。  リノアさんを殺した人物は、間違いなくサスーンの方角へ向かったのですからね」 ――その本性こそオーブに封じてしまったといえ、プサンは曲がりなりにも『神』であった身だ。 未来こそ知ることはできないが、残されたオーラや魔力を手がかりに、人物やアイテムが辿った過去を見ることができる。 ただし、それなりの時間と気力を使い、静かな場所で深く瞑想をすれば――という話だ。 それにゴールドオーブのような、かなり強い力を放っている品でないと痕跡自体が残ってくれない。 しかも近くに同質の力を持つアイテムがあったりすると、途中で入り混じってわからなくなることもある。 ドラゴンオーブを中々見つけ出せないのもそのせいで、元が彼自身の力だけに、自分のオーラと判別がつかないのだ。 だが、長時間の過去視でなければ。 その場所でごく最近に起きた出来事を見るだけならば、そこまでの時間や気力を使わずにすむ。 そしてまた、直接歩いてオーラを辿るのは、犬が匂いを辿るのと同じぐらいに容易い。 「リノアさんが持っていたアイテムのオーラは、まだはっきりと残っています。  彼は確実に、数時間前にここを通り、城へ向かった。  もちろん、今はもう城を発っているかもしれませんが、ばったり鉢合わせないとも限りません。  ですから、我々の方も気をつけていかなければ……」 ――そんなプサンの言葉を、しかしティーダは殆ど聞き流していた。 あの時の、二人の姿を思い出していたために。 『許さねぇ……絶対に許さねぇ。リノアをこんな風にしやがって……』 握った拳から血を滴らせ、イクサスに似た目つきで復讐の誓いを呟き続けていたゼルのことを。 『ちょっと剣貸してよ。ゼルにバレないように、埋葬するついでに首輪取っておきたいから』 そう言って仲間の首を切り落とし、首輪とネックレスを拾っていたアーヴァインのことを。 確かに、ゼルをサスーンに連れて行くことは良い判断とはいえないだろう。 リノアを殺した犯人がいれば、無鉄砲に突っ込んでしまうかもしれない。 彼女に関わった者がいれば、犯人でなくても殴りかかったりしかねない。 それでなくても殺し合いを強制されている状況だ。 判断を一つ誤ればゼル自身の命が危ないし、最悪の場合、無関係な相手と戦闘を起こしてしまうことだって有り得る。 そうなるよりは、比較的落ち着いているこの三人で用事を済ませ、後で合流した方がいい。 麓とはいえ山の中なら、通る人間も敵に会う確率もずっと少ないはずだ。 刺激を与えなければ、時間に比例して感情も多少は落ち着くはずだ。……が。 (ゼルだけじゃなくて、アーヴィンもどっかおかしいって……  向こうにはリルムもついてるけど、まだ子供だし……そんな、頼りには……) 「大丈夫ですよ」 唐突にプサンが言った。 心を見透かされたかのようなタイミングの良さに、ティーダは動揺の色をありありと浮かべる。 そんな彼を余所に、プサンは言葉を続ける。 「人の心は、確かにガラスのように砕けてしまうこともあるかもしれません。  ですが、鋼のように、打たれることで強靭さを増すものでもあります。  強くもあり弱くもある……弱くもあり、強くもある」 そこで彼は一旦言葉を切った。 ――常人であれば、起きた出来事を知っていたなら、決して言えないであろう言葉。 だが、全てを知るが故に、人ではない彼は言う。 「信じましょう、彼らの強さを」 ―― 『―― 突然、ゼルがセルフィって人のことを聞いてきた。  その人に言われたから日記を書いてると思ったらしい。  全然違うけど、面倒だから適当に相槌を打った。  誰だろう。図書委員の子? シュウの名字? 前に見かけたすげー巨乳な女子生徒?  CC団のダイヤのどっちか? カードクィーン? それとも大穴で風神の本名って…有り得ないか。』 気楽で、脳天気で、平和な文章。 一通り目を通したあと、ページをめくる。 『###ノ###を見####け##。#### ###### ####  ### ### ####   血####おい##が##て#%歩######っ##らぶよ####し####のを踏####けた  ##足###%##ノ##が##た####リノ####も##リノ#####なかっ####  ゼ###は泣###けど僕####け#####っ#### ### ## ####  ####  ##  ####アは顔####もぜん####たずたで####くて  ######  青####ン##ー####赤##く##なっ####て######### ##### ### ####た頭か####か落ち####色##ぶよ####して####  #### #####ダがいろ####声をか####た####### ####  や####り僕は####の####し####だ ####  ## ###』  ###僕####ィ####に頼####で#########た  #### ####  上####力##入れ#####な###た####足####んづ####切####  ####ノ####も####ノ#####ゃな#####ら ####た首か####輪を取##  僕####生######めに##必##な######から ###  #####で穴####って######じゃなく######た####アを埋#####』 殴り書きの上から、乱雑に塗り潰された文章。 その隣、殆ど白紙のページに、たった一行だけ書かれた言葉。 『 考えるな 忘れろ 』 ――それで、終わっていた。 リルムは手帳を閉じ、そっと地面に置く。 同時にがさがさと茂みが揺れた。 「あー、面倒くさー。僕、この手の地味な肉体労働なんて向いてないよー。  ねぇ、これだけあれば一時間は持つよね?」 リルムの挙動に気付くことなく、青年は抱えた木の枝を地面に置く。 焚き火の燃料になるはずのそれは、けれど細く小さいものばかりで、あっという間に燃え尽きてしまいそうだ。 自分の身体を影にして、手帳をザックの傍に寄せながら、リルムは意地の悪い微笑を浮かべてみせた。 「そだね。三十分持てばマシってところだけど、足りなくなったら集めてきてくれるもんね」 その言葉に、青年はあからさまに顔を引きつらせる。 けれど言い返そうとはせず、変わりに大げさな身振りで肩を竦めた。 「はーいはいはい……わかったよ、わかりましたよお嬢さん。  ……で、ゼルの様子はどう?」 「少しブツブツ言ってたけど、寝ちゃったよ」 リルムは絵筆を手にとり、筆先ですぐ横の岩陰を指す。 そこには、すやすやと寝息を立てるゼルの姿があった。 「そっか……眠れるぐらい落ち着いたなら、もう大丈夫かな」 「落ち着いたってより、疲れてたのもあるだろうけどね。  ……でも、話聞いてくれてよかったね。  サイアク、スリプルかけちゃおうかって思ってたから」 「うわー、カゲキ」 「殴るのもカゲキだと思うよ。  『リノアのカタキ討つ前にやることがあんだろーがこのバカゼル!』、なーんて叫んでさ」 「……言わないで。そういう風に聞かされると自分でクサくなってくるから」 「いいじゃん。クサいの、嫌いじゃないよ」 そう言って微笑みながら、リルムは十数分前のことを思い出していた。  『……なんつったっけかなぁ、このライオン』  ゼルは地面に寝転がりながら、手首に巻きつけたネックレスを揺らす。  『ライオン?』  聞き慣れない言葉に、手帳を読んでいたリルムはふと顔を上げた。  ゼルは答えずに、しばらく、ネックレスに通された指輪を見つめていた。  そしてまた、唐突に呟く  『リノアと、約束してたんだ』  『約束?』  『この指輪……スコールのと、そっくり同じ奴作ってやるってよ。   それで、オレがスコールから借りたんだ』  『………』  リルムは文章から視線を離し、銀色の輝きに目をやった。  幻獣のような魔物のような、見たことの無い動物が彫られた指輪。  『テメーが借りたモンは、責任もって返しにいけよ、か……   そうだよな……カタキ討ちたいのも、オレだけじゃねぇしな……』  そう言って、ゼルは疲れたように目を閉じた。 「――まぁ、ゆっくり寝て、ちっとは頭冷やしてくれればいいけどね。  こんな状況で感情に任せて動いたりしたら、……大変なことになっても、知らないっての」 アーヴァインは愚痴でもいうかのように独り言をこぼす。 言葉の最後が震えていたのは、少女の気のせいか、そうでないのか。 リルムは遠慮しがちに口を開いた。 「……あのさ」 「ん? 何?」 きょとんとした様子で振り向くアーヴァインに、リルムは躊躇う素振りを見せ――俯く。 「ううん、何でもない」 アーヴァインは首を傾げ、リルムを見つめた。 拗ねるように俯く少女に、青年は途惑いのこもった瞳を向ける。 そうして、薄赤に染まり始めた空の下、しばしの沈黙が過ぎていく。 「あのさ」 やがて、意を決したようにリルムが呟いた。 「そこのニワトリ頭みたいにさ……辛い時は辛いって、悲しい時は悲しいって、素直に言った方がいいよ。  無理に我慢してても、余計辛くなるだけだよ」 青年は目を見開き、動揺と狼狽の色を見せた。 しかしそれは一瞬のことで、すぐに仮面のような微笑が口元に浮かぶ。 「……悲しいのは確かだけど、そこまで辛くもないさ」 わざとらしく明るい調子で答える青年に、少女は射抜くような視線を注ぐ。 「嘘つき」 「嘘じゃないってば。見てよ俺の目、嘘つきの目はこんな綺麗じゃないだろ?」 アーヴァインは道化じみた所作で、リルムの顔を覗き込んだ。 リルムは呆気に取られたが、すぐに肩を竦めてこう返す。 「そうだね。とても濁ってるよ」 「……絶望した。君のその一言に絶望した」 青年は額に手を当て、がっくりと肩を落とす。 けれども、ふざけた態度はそこで終わりだった。 ふう、とため息をつき、アーヴァインはゆっくりとリルムに視線を戻す。 「ま、こっから先はマジな話だけどね。  冗談抜きで、俺はそんな傷ついてないから大丈夫だよ」 そう言いながら腰を降ろし、子供のように前髪をくるくると指で巻き取る。 「ゼルはね。ネアカの単純熱血バカだから、リノアが死んだなんて考えようともしなかっただろうしさ。  リノア以外にも、俺のこととか、フルートって奴のこととか、色々あったから……  ショック受けて、プッツンキレるのも仕方ないさ。  でも、俺は違うんだ。今までのことは全部発散したし、リノアについても覚悟ができてた」 彼はそこで一旦言葉を切り、積んだ木の枝の一つを手元に寄せると、先端を地面に突き刺した。 手持ち無沙汰そうに動く手に従い、枝先は地面に乱雑な模様を描く。 「大体さ、リノアの力をバーバラが使ったってことは、リノアに何かあったって考えるのが筋だろ。  ……ずっと最悪の可能性しか考えてなかったし、ストレートに言えば諦めてたんだ。  だから、ショックなんか大して受けてない。  だいたい俺だって男だ、女の子に心配されるほど落ちぶれちゃいないよ」 「男だ女だって、それって男女差別だよ。そういうこと言ってると似顔絵描くぞ」 むすっとしたようにリルムは頬を膨らませると、ぴこぴこと絵筆を動かした。 その意味を図りかねつつも、アーヴァインは言い返す。 「年齢も問題だってば。これでも17歳だぞ17歳。  スコールやゼルやティーダと同い年なんだからな」 「6歳しか違わないじゃん。セリスとロックより差ないよ」 「11歳児に甘えるよーなヘタレにはなりたくないの~。  ……とにかく、気ぃ使うならそこのバカに使ってやりなよ。  俺は……平気だし、無理してるわけでもないからさ」 青年の言葉に、リルムは口を尖らせる。 しかし何かを言おうとはせずに、アーヴァインと同じように枝を取ると、地面の上で小刻みに動かし始めた。 二頭身にデフォルメされた、しかし一目で青年とわかる絵が瞬く間に描き上がっていく。 アーヴァインはしばらくその様子を眺めていたが、やがて何かを思い立ったように立ち上がった。 「俺、もう少し焚き火用の枝集めておくよ。  この世界、結構風が強いし、夜になって寒くなったら大変だからねー」 そうして、相変わらず作り物のような微笑を浮かべてみせてから、青年は少女に背を向けた。 残された少女は、土の上を見つめていた。 刻まれた線でしかないはずのそれに、触れてもいないのに色が塗られていく。 肌色、茶色、白、オレンジ、青…… そうして完成した『絵』は、まるで水面から抜け出すように、ふわりと浮きあがった。 ――それから、十数分後。 「ふー、やれやれ。やっぱ地味な肉体労働は向いてないよー。  ねぇ、これだけあれば二時間は持つよね?」 戻ってきた青年は、先ほどと似たようなことを言いながら木の枝を置く。 そして横の地面を見やり、眉をひそめた。 「ねぇ……なんで泣いてるの、この絵。  さっきはもっと元気な顔してただろー?」 「リルムのせいじゃないよ。  リルムの絵はコピーだから、モヤシがそうだからこうなったんだよ」 「……まーたまた、そんなテキトーなこと言っちゃって~。  俺のこと、そんなに泣かせたいわけ? サイファーじゃあるまいし、勘弁してよ」 青年は怒ったように、けれども張り付いた笑顔崩さぬまま、リルムの頭を軽く小突く。 「さーて。ちょっとだけ火、熾してみよっか。  都会人だから寒いの嫌いなんだよね」 彼はそう言って自分のザックを空け――「あれ、この手帳出しっ放しだったっけ?」――着火器具を探し始めた。 リルムは青年の後ろ姿を見ながら、小さな声で呟く。 「……さっきからオレオレって、それでカッコつけてるつもりかよ」 それから手を伸ばして枝を取り、泣き顔の絵の上からぐりぐりと線を描いて、塗り潰した。 「ちょっとは信じなよね、バカ」 【リルム(右目失明) 所持品:英雄の盾 絵筆 祈りの指輪 ブロンズナイフ  第一行動方針:見張り&休憩】 【ゼル(睡眠中)  所持品:レッドキャップ ミラージュベスト リノアのネックレス  第一行動方針:スコールを探してネックレスを渡す 第二行動方針:リノアの仇を討つ】 【アーヴァイン(変装中@白魔もどき、身体能力低下、一部記憶喪失)  所持品:竜騎士の靴、自分の服、ふきとばしの杖〔3〕、手帳、首輪  第一行動方針;見張り&休憩】 【共通行動方針:ティーダ達を待つ】 【現在地:サスーン南東・山の中、森との境付近】 【ユウナ(ジョブ:魔銃士、MP1/2)  所持品:銀玉鉄砲(FF7)、やまびこの帽子】 【プサン 所持品:錬金釜、隼の剣 【ティーダ(変装中@シーフもどき)  所持品:鋼の剣、青銅の盾、理性の種、首輪、ケフカのメモ、着替え用の服(数着)、自分の服  第一行動方針:サスーンを探索した後、リルム達と合流する  第二行動方針:機械に詳しい人を探し、首輪の解析を依頼する/ドラゴンオーブを探す  基本行動方針:仲間を探しつつ、困ってる人や心正しい人は率先して助ける】 【現在地:サスーン南東・山と森との境付近→サスーン城へ】

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