330話

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*第330話:死そのもの ドシャ 上空のゆがみから放り出され、着地もままならない体は投げ出される。 地面にうつ伏せたソレは、生まれたて赤子のように震えながら。 何度も、崩れては立ち上がることを繰り返す。 ソレにとって、そんなことは苦痛でも何でもない。 そんな感情も感傷もない。 ただ立つ必要があるから立つ。 崩れるからまた立つ、それだけのこと。 何度それを繰り返しただろうか。 何度目かの繰り返しの果てソレは立ち上がった。 そして、それに達成を感じるでもなく、ソレは歩き始めた。 ふらふらと、今にも崩れそうな歩みでそれは歩く。 そして、しばらく進んだ頃。おぼろげな瞳が獲物を捕らえた。 瞬間。 これまでの怠慢な動きからは、信じられないほどの速さでソレは駆け出した。 その動きはもはや、人の動きではない、獣ですらない。 ただ向かい獲物へと突き進む。 回復のできる者を捜さんと、森を駆け回っていたレオ。 その後ろから、突然の銃声が聞こえた。 同時に伝わる衝撃、レオは地面に倒れこんだ。 背負っていた女性が盾となったのか、弾丸はレオの体まで届くことはなかった。 「クッ、はっ、大丈夫か!?」 起き上がったレオは、すぐに自分の盾となってしまった女性の所に駆けつける。 「クソッ…死んでる」 もともと重症だったその体は、今の衝撃で完全に終わりを告げた。 歯を食いしばり、狙撃のあった方向をにらみつける。 だが、狙撃者の姿は木々に紛れ、確認することはできない。 真後ろで木の葉の揺れる音がした。 とっさに後ろを振り返る。 そしてそこには、何かがいた。 木々の間をすり抜けながら、銃を構えこちらを狙っている。 逃げねば。そう脳が命令する前に、レオの体は反応する。 幾多の戦場を戦い抜いてきた経験が、思考よりも早く体を動かす。 弾丸をかわしながら、果物ナイフを投げつける。 ナイフは拳銃に当たり、その手元から弾かれた。 着地したレオは体勢を立て直し、ザックから吹雪の剣を取り出した。 それと同時に、敵もこちらに向かい近づいてくる。 その動きは人の動きではなかった、ましてや獣でもない。 それは地を這うように、跳ねるように、木々を蹴り近づいてくる。 予測不可能なその動きは、レオをしても捕らえきれない。 懐に飛び込んできたソレは、ナイフでレオの胸元を切り裂く。 切り裂かれた胸元を気にせず、レオは反撃のため刃を振り上げる。 だが、レオが振り上げた刃を振り下ろした頃には、敵は間合いを離れ遠く距離をとった後だった。 そしてまた、先ほどの再現のように、敵が間合いが詰める。 だが、今回の攻撃はレオには届くことはなかった。 ボロリと、腐り落ちるように飛び回る左足が崩れた。 それは必然であろう。極限まで傷ついたボロボロの体が、これほど激しい動きに耐え切れるはずもない。 片足を失い、バランスを失った体は崩れる。 倒れこみ、まるで陸に上がった魚のようにバタバタともがく。 その姿を見たレオは、すでに戦闘能力はないものと判断し、一瞬、戦闘の緊張を解いてしまった。 その瞬間、残った片腕と片足、全身を跳ねさせソレは跳んだ。 不意を突かれたレオは、それを避けることができない。 レオにしがみついたソレは、頚動脈目掛け歯を突きたてた。 歯が肉に食い込み、血が吹き出す。 レオは引き剥がそうともがくが、その力は異常だ、とても片足、片腕とは思えない。 必死にザックからビームライフルを取り出し、しがみつくソレめがけ引き金を引いた。 撃たれたソレは、腹部を貫かれ大きく宙を舞い地面に落ちた。 そして、ピクリとも動かなくなった。 息を切らし冷や汗を流し、レオはその場にひざを着く。 そして、首に食い込み抜け落ちた歯を引き抜いた。 幾多の戦場を潜ってきたレオですら、これほどの恐怖を覚えたのは初めてだった。 魔物とも、ましてや人間と戦っている気がしなかった。 まるで、死そのものと戦っているようだった。 何なのだコレは、コレは人間なのか? 人間だったのか? このゲームの生み出す狂気、死者の怨念がこの化け物を作り出したのだろうか。 ならばそれは、なんと恐ろしいことか。 ならば、誰ともわからぬこの人間も、このゲームの被害者なのだろうか。 ならば、先ほど死んでしまった女性と共に手厚く葬ってやろう。 そう思いレオは二つの死体のある方向を見つめる。 そこに死体はひとつしかなかった。 そして銃声が響いた。 銃声のほうを見てみると。 そこには、地面をはいずりながら、こちらに銃口を向ける何かがいた。 「…ガハッ」 口元から血がこぼれた、そうしてやっと自分が撃たれたことに気づく。 体から力が抜ける、地面にひれ伏し地をなめる。 もう体は動くこととはないだろう。 見開いた目は動かすこともできず、自分の命を奪った者を見つめる。 同じように這いずりながら地をなめる、その口元は、 笑っていた。 【ティファ(HP一桁程度) (右腕喪失/左足喪失/全身火傷/感情喪失)  所持品:コルトガバメント(予備弾倉×4)、エアナイフ  第一行動方針:目に映るものを全て殺す 基本行動方針:生き延びる 】 【現在地:カズス北西の森南部】 【フライヤ 死亡】 【レオ 死亡】 【残り 79名】

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