103話

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*第103話:錯乱 「指笛?」 「そうッス。こうやって指を口に入れて…吹く!」 シューッ、と空気の抜けた音だけがする。 「うーん、出来ない」 蒼い髪の少女は、既に笑顔を取り戻していた。 「諦めちゃ駄目ッスよ」 ティーダとターニアが、まるで兄妹のように、指笛を練習している。 あんな妹がいたら良かったと、エアリスは思った。 平和、だった。彼女が現れるまで。 森を行く一つの影。 ティファは、森の暗がりの中を歩いていた。 右手には銃。 ――何を狩る訳でも無く。防衛手段だと、自分に言い聞かせて。 レーベを出て、何時間か歩いた。 鬱蒼と生い茂る森。ここで何を見つけることになるだろう。 その時はまだ、あまりの緊張感からか、近くにいる三人には気づいていなかった。 「誰か近づいてくる…?」 エアリスが、何者かの気配を感じた。 その方向を見やると、タンクトップ、長い髪の女性… 見覚えのある、姿だった。 「ティファ!?」 エアリスは叫んだ。 …それが、不幸の始まりだった。 狂気のゲームで。命が惜しくて。 極度の緊張感の中で声を掛けられ、とっさに行動を起こした。 声を掛けたのがエアリスであることに気づいたのは―― ――ティファが振り向きざまに放った弾丸が彼女の胸を貫通した後だった。 「あっ…」 血飛沫が、エアリスの胸部から飛び散る。 …一瞬の、静寂。 「何するんッスか!!!」 ティーダの怒号が、立ちすくむティファに浴びせられる。 「きゃぁぁぁっ!」 蒼い髪の少女の悲鳴がまた、ティファとティーダを別々に刺激して。 「許さないッス!!!!」 鋼の剣を構え、怒涛の勢いでティファに迫るティーダ。 (どうしよう。ここにいたら、殺される。 死にたくなんか、無い。ここにいてはいけない…) 気づいたときには既に、ティファは走っていた。 ――あの人、エアリス…? じゃ、無いよね。 もう死んだ人だから。 エアリスじゃないよね… エアリスな訳が、無いよね。 ゼッタイニソンナワケナインダカラ… ――ティファが、撃った。 私が死んでから、性格が変わったのだろうか? それとも…ゲームに、乗ったの? それは違うよね? ただ恐怖のあまり、撃ったのかもしれない。 驚いたから、咄嗟に撃ってしまったのかもしれない。 …どうしてだろう? 納得できる理由を見つけたかった。 瀕死の状態でも、ティファを許したかったのか。 「エアリス、大丈夫ッスか!?」 ティファを追うのを止め、倒れたエアリスの元に駆け寄るティーダ。 「私は大丈夫…それよりターニアちゃんを…」 エアリスが右手を上げて指差した。 血を見て混乱した少女の姿は、エアリスの指差す森の奥へと消えていた。 「間に合わないッス!きっとすぐに正気に戻って… それより、エアリスの怪我を…」 言いかけて、エアリスを見て、凍りついた。 美しい…? 否、死に顔に、美しいも何も無い。 もう、動くことは無い。 そう、はっきりとわかったのだ。 人が死ぬことに関して、自分はあまりに、無力だった。 『思い知ったか』 誰かが頭の中で言った。 「あぁ」 空返事をすると、一人、泣き崩れた。 【ティーダ 所持品:鋼の剣 青銅の盾 ゴディアスの剣 麦わら帽子 理性の種 ふきとばしの杖〔4〕(エアリスから回収)  行動方針:泣く(その後は不明)】 【現在位置:レーベ北東の森の中】 【ターニア(錯乱) 所持品:微笑みの杖  行動方針:とにかく走る】 【現在位置:レーベ北東の森の中(移動中)】 【ティファ 所持品:コルトガバメント(予備弾倉×5)、エアナイフ  基本行動方針:死にたくない  第一行動方針:ティーダから逃げる 第二行動方針:クラウドやバレットと合流?】 【現在位置:レーベ北東の森の中(移動中)】 【エアリス 死亡】 【残り 108名】

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