362話

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*第362話:償いを ジタンはどうやら、こちらを見失ったようだった。 あれからかなりの距離を走っていたが、自分を追って来たりする気配は無い。 クジャはあれから西へ西へと走りつづけ、眼前に森が広がり出した頃、一旦立ち止まって休んだ。 「…意気込んではみたものの」 荒い呼吸を整えながら、独り呟いてみる。 「セフィロス…一体どこにいるのだろう?」 セフィロスを止める。 そう意を決してジタンを出し抜き、ここまで走ってみたものの、彼を見つける手がかりも手段も、何も無い。 「しかしまあ、たださまよってるだけでも、何もしないよりはマシだよね」 言い聞かせるように言うと、今度は歩き始めた。 そして、それは森に入って暫くした後の事だった。 突然、首に何か冷たい物が押しつけられたのだ。 「動くな」と言う、聞きなれたあの声とともに。 「…ああ、お前か。会いたかったぞ」 そう続ける声の主に、クジャはゆっくりと振りかえる。 そしてそこには、紛れも無いセフィロスが立っていた。 これは運命が味方したのか?最後の最後で僕にチャンスをくれたのか? まさかこんなにも早く、探していた人間と鉢合わせするとは。 「僕もさ、セフィロス」と応えながら、クジャはふとそんなことを考える。 …が、その時のセフィロスの姿は、クジャの目から見ても恐ろしい物だった。 端正な顔の右半分は返り血のせいで赤い仮面を被ったかのような状態だったし、 銀の髪は同じく返り血でべっとりと固まり、手にする刀は銀の刃を血が汚すと言うより、 真っ赤な刀身の所々から銀色の鈍い光が漏れているといったほうが正しかった。 昨日自分とわかれた後に、彼がどれほどの人を殺したのかは手に取るようにわかった。 「セフィロス、一つ聞いて良いかい?」 彼が刀を鞘に戻した時、クジャはそう口を開いた。 「…なんだ?」 血の匂いのする手袋をはめなおしながら、目も合わせずにセフィロスが問い返す。 「…もう、これ以上誰かを殺すのはやめにしないかい?」 そんな彼に、クジャははっきりと問う。 一瞬、セフィロスの動きが止まった。 そしてこちらを見た。 その視線は、「何を馬鹿な」と言葉も無く語っていた。 「…何を言っている。止める筈が無いだろう」 当然のようにセフィロスは言うと、続ける。 「どうした?お前ともあろう者が。臆病風にでも吹かれたか?」 クジャの回りをゆっくり歩きながら、問い返してくる。 「…ちょっと、昔の知り合いと会ってね。彼と話をして考えが変わった」 「腑抜けめ」 クジャの答えに、セフィロスはそう吐き捨てた。 「それで?」 腕を組んで木に寄りかかり、今やこちらを敵意と殺気に満ちた眼で睨みながら、セフィロスが再び問う。 「私が殺しを続けると言うなら、お前は私を一体どうする気だ?」 クジャはため息をついた。 …やはり、この男は戦ってでも止めなければならないらしい。 「決まってるさ、セフィロス。  …力ずくでも、君を止めるよ」 言うとクジャは、右手に持っていたブラスターガンを構えた。 「オレを失望させたな、クジャ」 村正を鞘から抜き、セフィロスも言う。 黒マテリアを探し、その過程でクジャとともに邪魔な参加者を潰そうと考えていたが、 誰にこんな甘っちょろい考えでも吹き込まれたのか、どうやら無理らしい。 「この対価は死で払ってもらおうか」 「いいとも、セフィロス」 クジャはこちらを睨みながら、こう言った。 「でも、僕もただでは死なないよ。君も一緒だ」 こうして、戦いは始まった。 先に攻撃を仕掛けたのはクジャだ。 彼は神経針が装填されたブラスターガンの引き金を引き、セフィロスはそれを刀で叩き落す。 次の瞬間、二人は同時に後ろへ跳び退いた。 セフィロスは背後にあった木を両足で蹴りつけ、その反動でクジャに肉薄し、 クジャは真後ろに着地し、左手に炎を宿して迎撃の構えを見せる。 そして、激突。 クジャの放ったフレアはまたも刀で弾かれたが、 その衝撃はセフィロスの跳躍の勢いを殺して彼は縦に一回転してその場に着地し、 術者のクジャもクジャで、近距離での爆発のせいで後ろに跳ね飛ばされた。 しかし、これしきの事で隙を見せるクジャではない。 空中で体勢を整えて2本の足で危なげなく着地し、ふたたびブラスターガンを撃ちまくる。 セフィロスは今度は刀で受け止めず、代わりに横に大きく飛び退いてこれをかわす。 クジャは追い討ちをかけようとなおも撃ちつづけるが、生い茂る木が遮蔽物となってその攻撃は当たらない。 セフィロスは真上の木の上に跳び乗り、村正を大上段に構えてクジャに上から襲いかかる。 クジャは咄嗟に右に跳んで斬撃を回避する。 次の瞬間、彼の背後にあった大木が真っ二つに切り裂かれた。 それまでクジャが立っていた地点に着地したセフィロスは、 今度は刀を持っていない左手をクジャのほうに突きつける。 そしてその手は、紅く燃えていた。 「シェル!!」 セフィロスが放ったフレアを、クジャは魔法の障壁を生み出して無力化する。 が、その隙に、セフィロスは接近戦の間合いまで詰め寄ってきた。 まずい。 次々と繰り出される斬撃をかわしながら、クジャは頭の片隅で呟いた。 この展開はどうしても避けたかった。 なぜなら、セフィロスは近距離での戦いを最も得意とするからだ。 破壊の剣でも持ってこない限り、本職の武器である刀を持ったセフィロスに接近戦で勝てる者はいない。 魔法主体の戦いを得意とする自分ならなおさらだ。 事実、接近戦に持ちこまれた後のクジャは防戦一方だった。 ほとんど一方的に繰り出される攻撃をかろうじてかわしてばかりだ。 それならと、クジャは自分からさらにセフィロスに肉薄する。 懐に飛び込めば、逆に刀に斬られる心配は無い。 そして、セフィロスが彼を間合いに入れる為にバックステップする前に、 クジャは左手に宿したホーリーの光を、彼の腹に至近距離で放った。 強烈な衝撃を受けて、セフィロスは後ろの木にそのまま吹き飛ばされる。 クジャも次の魔法の詠唱に入り、一気に追い討ちをかける。 といってもそれはフレアやホーリーのようなものではない。 今のクジャに使える中で最強の魔法、フレアスターだ。 セフィロスも周囲に鮮やかなオレンジ色の炎が出現するのを見て逃げ出そうとしたが、 体を強打し、その動きは遅々としたものだった。 次の瞬間、彼を中心に円を描くようにして、次々と爆発が起こった。 「………」 フレアスターを放った体勢のまま、クジャは微動だにしないでその場に立っていた。 手応えからして、ほとんど直撃だっただろう。 さらに範囲をかなり狭め、その分威力を高めたので、いくらセフィロスでも生きてはいないように思えた。 「…やった、か?」 呟いて構えを解き、彼がいた辺りの地点に近づく。 そこはフレアスターによって薙ぎ払われ、倒された木によって埋め尽くされていた。 そしてその木の内の一本に足をかけたのが、そもそもの命取りとなった。 突然だ。 突然足下の木が派手に舞いあがったかと思いえば、次の瞬間には黒い影と、 紅い閃きが目に入った。 クジャは咄嗟に左に跳び、致命傷を回避する。 しかしその代償はあまりにも大きいものだった。 グチュリ。 嫌な擬音が、左から聞こえた。 いや、正確に言えば、自分の右腕から。 もっと正確に言えば、自分の右腕があったところから。 クジャの女性のように白く華奢な右腕が、肩から斬り飛ばされて宙を舞っていた。 「―――うあああぁぁぁあああぁぁっっっ!!!!」 あまりの苦痛に、絶叫を絞り出すクジャ。 着地したその場に倒れこむ彼の耳に、何か重いものが地面にぶつかる音が響いた。 それは、セフィロスが嘆きの盾を、怒りに任せて足下に叩きつける音だった。 フレアスターの炎に呑みこまれる直前、丁度ハッサンとの戦いのときと同じように、 盾を取り出してその身を守ったのだった。 とは言っても、あの時ほど上手くいったわけではない。 自慢の銀髪は先が黒く焼け焦げ、黒いコートも所々裂けていてボロボロだ。 そして、彼の顔はその怒りによって燃えているかのような凄まじい形相だった。 その怒りの表情を浮かべながら、セフィロスが刀を手にこちらに向かってくるのを、 クジャは痛みと出血でぼやけがちな視界に捕らえていた。 「…あああぁぁあ!!」 また叫んで必死の思いで立ち上がり、残った左腕にフレアの炎を宿す。 …が、その左腕も、彼に向けた瞬間手首から切り落とされた。 「―――!!!」 今度は声を上げる間もなく、クジャは蹴飛ばされ、背後の木にぶつかった。 「お前には」 辛うじて木に寄りかかるクジャの体を横に斬り裂きながら、セフィロス。 「本当に」 次は縦に。 「がっかりさせられた」 今度は斜めに。 「…こんなところで、私を裏切ろうとはな」 ああ、結局、ダメだったか… セフィロスにメッタ斬りにされながら、クジャは妙に冷静な頭の中で呟く。 死が近い。 結局、自分にセフィロスを止める事は出来なかった。 見い出した償いを果たせず、死のうとしている。 自分の屍さえも乗り越え、セフィロスはどこまで殺人者の道を歩みつづけるのだろう。 自らの最後を迎えるまでか?それとも最後の一人となるまで? どちらにせよこの二つ以外に、彼の道に終わりをもたらすものはなさそうだ。 ジタンは自分が死んだのを知って、どう思うだろうか? 少なくとも自分には、この犬死にを「死んで詫びる」などと言うのは、あまりに都合が良過ぎる気がする。 「さてと」 かれこれ十数回は斬りつけ、クジャがもう半ば意識を失った頃に、 セフィロスはようやく彼の首に刃を向ける。 「そろそろ逝ってもらうか」 言って、彼は大きく村正を構え、振り下ろした。 が、その刃はクジャではなく空を斬った。 ドンッ、という、それまでとは違う痛みと振動に、クジャは瞑っていた目を開く。 と、すぐ目の前にジタンがいた。 首をはねられる寸前、彼がクジャを助け出し、森の外まで連れ出したのだった。 「やあ…すまないね、ジタン」 やっとのことで、それだけ言ってみる。 すると、彼は悲しみと、少々の怒りを込めて言った。 「何が…なにがすまないだよ!死に急ぐなってあれだけ言ったろ!」 「ハハ…手厳しいね。僕だってなにも死ぬつもりは無かったさ」 ケホッと小さく吐血しながら、続ける。 「僕だって…君の言う通り償おうとはしたさ。その結果が…カハッ、これだけどね。  僕だけにできると大口叩いといて…このザマとはね…」 「…?」 「彼は…セフィロスは僕ですら止められない…  ジタン…早く逃げるんだ。でないと、君、まで、死、死ぬ事に、なるから」 途切れ途切れにそこまでクジャが言うと、ジタンはやっと彼の行動の真意を悟った。 そういえば、森でクジャを斬り刻んでいた男。 あれは、サイファーに顔写真を見せてもらったあの凶悪なマーダー、セフィロスに間違い無い。 「馬鹿野郎…」 「そうとも。僕が…僕がバカだった、のさ。僕は…また、気付くのが…遅すぎた。  もう逃げろ…じきに、彼が来るだろう…」 クジャは消え入るような声で言い終えると、ゆっくりと目を閉じた。 そして、それに気付いたジタンがなにか言葉を発する前に、彼は死んだ。 当のセフィロスが森のなかから荒荒しく現れたのは、それから間もなくの事だった。 彼は息絶えたクジャを見、そしてジタンを認めると、刀を構えてその場に立ち止まった。 「…さっきはよくも邪魔してくれたな。誰だお前は?」 訝しげに言うセフィロスに、それまでうつむいていたジタンは立ちあがり、はっきりと答えた。 「俺はジタン。ジタン・トライバルだ。  兄貴の仇をとらせてもらおうか、セフィロスさんよ」 彼は腹の鞘から短剣を抜き払い、無謀にすら思える戦いの準備を整えた。 【ジタン   所持品:英雄の薬 厚手の鎧 般若の面 釘バット(FF7)  グラディウス  第一行動方針:セフィロスを倒す  基本行動方針:仲間と合流+首輪解除手段を探す 最終行動方針:ゲーム脱出】 【セフィロス(HP 1/6程度)  所持品:村正 ふういんマテリア 攻略本 いかづちの杖 奇跡の剣 いばらの冠 グリンガムの鞭 ブラスターガン 毒針弾 神経弾     第一行動方針:ジタンを殺す  基本行動方針:黒マテリアを探す  最終行動方針:生き残り力を得る】 【現在地 カズス北西の森、最南端】 【クジャ 死亡】 【残り 73名】

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