374話

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*第374話:残映のキャスト ウィーグラフ・フォルズは森から現れた二人の男の姿を初めから見ていた。 かたや、忍者を思わせるような身軽さを備えた男。金髪だがラムザではない。 その男が連れていた仲間は死んだようだ。場の雰囲気から殺したのは対峙している男であろう。 かたや、かつての仲間、いや『同類』というべきか、 自分と同じく聖石―というよりルカヴィに選ばれた者、エルムドアを思い出させる銀髪の男。 奇しくも得物も同じ刀。 弾けるように二人が動きを為し、スピードと技量がしのぎあいを始める。 魅入られるようにウィーグラフはそれを眺めていた。 セフィロスのダメージを差し引いてもスピードは確かにジタンが上回っていた。 だが、その差とて絶対的なものではない。 簡単に言えばセフィロスの能力で対応可能な範囲なのだ。 動きで翻弄することはできるが攻撃には反応される。防御される。反撃される。 攻撃力という面では圧倒的にセフィロスが上回っていた。 お互いに得意の武器ではあるが、短刀と刀では分が悪い。 仮にセフィロスの太刀を一度でも浴びたならもう抵抗は不可能なダメージを負う。 翻ってジタンの武器では急所を打ち抜かない限り一発で、というわけにはいかない。 しかも目の前の相手、セフィロスはそのチャンスすら簡単に許すような相手ではないのだ。 それでも、幾多の激闘により蓄積されたセフィロスのダメージは大きい。 素早い動きから攻撃を繰り出すジタン、ほとんど位置を変えないままそれを捌くセフィロス。 戦闘開始よりずっとこれと同じ流れの攻防が繰り返されている。 反応して防いではいるものの防御に専念せざるを得ない。攻勢に出ることができない。 (クッ…予想以上に体が動かないか……気に入らん) 苛立たしさをその奥に隠しつつ、それでもセフィロスは悠然と刀を振るう。 連打をしのぎきったセフィロスがようやく放つ反撃を後方へひらりとかわし、すたっと着地する。 傍から見れば圧倒的優勢に戦闘を進めながら、けれどジタンの心理はそうではない。 どれほど手数を重ねようと決定的な一撃を許さない予想以上の相手の技量への焦り。 目の前で死んだクジャの為の復讐への、気負いすぎ。 何よりセフィロスの表情に残ったままの余裕と冷静さがジタンを追い詰める。 その余裕は何を隠しているのか、何を企んでいるのか。 不安、疑心、それが導いてくるのは敗北への恐れ。 自分は絶対に負けるわけにはいかないというのに。 (くそっ、弱気になるな!力を貸してくれ、クジャ!) 焦りが、激情が、不安が戦いの視界を狭めていく。 それはこのゲームでも幾人もの強者を呑み込んできた陥穽。 ウィーグラフの脳内の奥底から、 冷たく刀を舞わしている男の姿が自らの記憶の残照と重なってゆく。 メスドラーマ・エルムドア。 その名が思い出させるのは、振り返りたくも無い自分の歳月。 激動のイヴァリースの日々。 理想を求め、力を求め、復讐を求め、いずれも得ることなく敗れ去った。 自分の行動は正しかったなどと主張する気など最早微塵も無い。 正しさだとか正義などというものがどれほど下らないかは嫌というほど経験済みだ。 あの日、すべてをなげうって求めたものこそラムザ・ベオルブへの復讐。 今、異世界を彷徨う私が求めているものも同じである。 何故なら自分にはそれしか残されていないはずだったから。 それだけを思考し、それだけのために行動する。 それ以外のことなどどうでもよいはずだった。だが。 だが、目の前で銀髪に挑みかかる男に心が騒ぐのは何故なのか? 何度目の攻撃であったか。 揺さぶりから死角を狙うジタンの攻撃をセフィロスが受けるという同じ流れは、 セフィロスの行動により崩される。 ジタンがそれに気付いたのは村正とグラディウスがぶつかろうとする瞬間。 何かを取り出すそぶりを見せたセフィロス、だが攻撃は止められない。 (来たッ、なにが来る!?) 通常考えられるような武器であればジタンには容易に回避できただろう。 だが、ザックから引き抜きざまに空間を薙ぎ払うのはグリンガムの鞭。ジタンの想像を超えた武器。 不馴れとはいえ三つ又の鞭が不規則に舞いながらジタンへと襲い掛かる。 刀での追撃に備え相手の間合いを外しながらそれらをなんとかグラディウスで弾く、が― 鞭を投げ捨てたセフィロスの手にあるのは、どこに隠し持っていたのか、銃。 (しまった!) 今までの剣劇とまったく質の異なる攻撃。 それ以前に既にギリギリの回避行動の途中、これ以上はかわせない。放たれた弾に肩を撃ち抜かれる。 崩れたバランスを立て直しつつ間合いを大きく開けて着地したジタンに訪れる変化。 そう、撃ち込まれたのは神経弾。 精神に重圧がかかる。視界が維持できない。だめだ、どうして、眠ってなんか…… 余裕の笑みを貼り付けながら凍りついた月のような眼がジタンを刺す。 「……クックックッ、復讐だと?気持ちだけで私に勝てるとでも思ったか?」 反応は、無い。神経弾により眠りに誘われているのだから。 「そんな些末な事に命を使い切るとは、哀れだな」 一歩、また一歩と死神がジタンへと迫る。 「お別れだ。兄弟ともども…永久に眠れ」 交錯の後、銃声。 片方の男が崩れ落ちる。決着―― だが、ウィーグラフは独りでいた時の冷静さに戻ることはできなかった。 心の奥底で脈動し湧き上がる何かがある。 観客は自分ひとりの陳腐な復讐劇。 失った者のために戦う男に自らを重ねていたのではないか? 声が、聞こえた。 『復讐だと?――』 心がざわつく。胸の鼓動が早くなる。 黙れ、エルムドア。 『そんな些末な事に――』 黙れと言っているッ!貴様こそ死を恐れ自らを悪魔に売り渡した臆病者の癖にッ! 何がわかるッ!奪う側にいたお前に、私の想いが、何がわかるッ! 私に残る最後のものまで奪い去らんとするかッ! 『兄弟ともども―――』 最後の言葉。全てを待たず、ウィーグラフの身体が躍動する。 銀髪の男へ向け、右手に渾身の力を込めてウィーグラフは駆けていた。 「大地の怒りがこの腕を伝う! 防御あたわず! 疾風―――」 去来した複雑な思いを込めて、大地をたたく。 「地裂斬!」 気配で存在自体は察していた。 この男を助けるためか、その姿を現した男。 だがセフィロスの思考よりも早く、放たれた一撃が存在を主張する。 地裂斬。大地を伝う衝撃がセフィロスに絡みつき、その足を止める。 (ーッ!地を伝う攻撃、だと!?) 思いもよらぬ未知なる攻撃にブラスターガンが手を離れ、地面を転がる。 なお間合いを詰めてくる新手の男に対して迎撃すべく刀を構えるが、 「死兆の星の 七つの影の 経路を断つ!」 予想外。斬り結ぶのでも飛び道具でもなく予想外に離れた位置で男は剣を振り上げ、 「北斗骨砕打!」 瞬間、身体を貫いて下から突き抜けるような衝撃。タイミングの全く読めない攻撃がセフィロスを襲う。 その場に膝から崩れ落ちる。 (ぐっ……何だ……今の攻撃は…!?) いかにセフィロスといえどこの未知、かつ初見の攻撃に対処する術など持ち得ない。 既に耐久の限界を超えた身体が警報を発している。この身体が後どれほどもつだろうか? (ばかな……私が、敗れる?) 見据えた男の姿に、アリアハンで戦ったあの少年の像が重なる。 あのときの続きとばかりに破壊の剣を自分に振り下ろしてくる残像。 (貴様は…!) 改めて目を凝らせば残像など無く、男がこちらへ向け剣を構えているのみ。 覚えの在る忌まわしい感覚が背中を這い上がる。 (クッ…ククッ……恐怖…恐怖か……再会、だな) 相手が五体無事なままで退くなどセフィロスにとって屈辱以外の何物でもない。 だが、いったんそう決断した以上行動は迅速だった。 次の攻撃のために動こうとする男の機先を制しザックから手が掴んだ何かを投げつける。 分厚い本がウィーグラフへ向かい高速で飛び、思わぬ投擲が足を止める。 その隙に魔法を紡ぐ。狙いも威力も要らない、ただ、速さだけを求めた詠唱を。 フレア。虚空に発生する強烈な爆発。 視覚、聴覚を襲う間隙をついてセフィロスはその姿を北へと続く樹海の奥に消した。 眠っている男を足元に見下ろしながらウィーグラフは自らの行為を反省する。 無用な危険に自らを晒した事。 最後の魔法は当たらなかったとはいえ、あの身体であの抵抗。正直軽率であった。 だがしかし、どこかに満足感を得た自分がいる。 それは、自分と同じ終幕を迎えなかった復讐劇に満足したからであろうか? (私と同じ道を行くもの、か) 今のウィーグラフには眠りに落ちたままのこの男を放置することはできなかった。 自嘲する。自分は何をやっているのか。この行為は必要ないだろうに。 共に行く気は無い。私は己の力だけで成し遂げる。その決意は変わらない。 それでも不思議と、この男と少しだけ話がしたくなっていた。 とりあえず人目につかない位置まで眠っている男の身体を抱え移動する。 (…さて、とにかく起こすとしよう) より深く森の奥へ、奥へとセフィロスは向かう。 敗因は明確に自らの消耗にある。 思えばクラウドのメテオを受けて以来万全であった時間が無い。 一時多少は回復したものの格闘家、怪生物、クジャ、そして先程と再びの連戦。 クジャとの盟約も消えた。あとはただ、ひたすらに勝ち残るのみ。 その為に戦闘は必然であるが、身体が先に朽ちては何にもならない。 まずは二度とこのような無様を晒さぬよう自らを癒すべきだ。 必要ならば一日ほどの時を費やすのも悪くは無いだろう。 それがセフィロスの判断。故に広大な森の奥深くへと身を沈めてゆく。 だが―覚悟せよ、未知なる技を操る男よ。いずれ私自らの手で葬り去ってくれる。 芽生えた復讐心が忌々しき相手の像を結ぶ。 その男、ウィーグラフが求める黒マテリアを所持していることなど知る術も無かった。 【ウィーグラフ  所持品:暗闇の弓矢、プレデターエッジ、エリクサー×10、ブロードソード、レーザーウエポン、  首輪×2、研究メモ、フラタニティ、不思議なタンバリン、スコールのカードデッキ(コンプリート済み)、  黒マテリア、グリンガムの鞭、攻略本、ブラスターガン、毒針弾、神経弾   第一行動方針:ジタンを起こす  第二行動方針:生き延びる、手段は選ばない  基本行動方針:ラムザとその仲間を殺す(ラムザが最優先)】 【ジタン(睡眠、左肩銃創)  所持品:英雄の薬 厚手の鎧 般若の面 釘バット(FF7)  グラディウス  第一行動方針:不明  基本行動方針:仲間と合流+首輪解除手段を探す 最終行動方針:ゲーム脱出】 【現在地 カズス北西の森、最南端】 【セフィロス(HP 1/20程度)、  所持品:村正 ふういんマテリア いかづちの杖 奇跡の剣 いばらの冠  第一行動方針:回復を優先  基本行動方針:黒マテリアを探す  最終行動方針:生き残り力を得る】 【現在地 カズス北西の森中央部へ】

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